※この作品はR-18です。

女子高生准査ヌルデバと萌える寄生虫の共生捜査本部   作:ぬるでば

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第9話 ぶっ殺す

「おい、アイスおごれ」

 二人で下校する途中、学校のすぐ下にある古いパン屋の前で茶々が龍生にねだった。

 昼休みの約束を果たせというのだ。

「覚えてたのか」

 龍生が苦笑した。

「勉強はすぐ忘れるけど、こういうことは絶対忘れないからな」

 茶々が得意げに言った。

「勉強も忘れないようにしようよ」

 龍生が説教した。

「さーて、どれがいいかな……今日は基本のバニラアイスだな」

 茶々が、アイスのショーケースからカップのバニラアイスを1個取り出した。

「あれ、お前は食べないのかよ」

 龍生がアイスを選ばないので茶々が声をかけた。

「うん、今日はいいや」

「そっか、じゃあ遠慮なくごちになるぜ」

「どうぞ」

 そう言って龍生は財布から1個分のアイス代を出して店番のおばあちゃんに渡した。

茶々は、アイスのふたを取り、木のスプーンで一口すくい口に運んだ。

「うめえ」

 茶々は、ふにゃふにゃの笑顔になった。

「ちゃーちゃんがおいしそうに食べてる顔は、いつ見てもかわいいね」

 龍生が茶々の笑顔に癒された。

「ん、そうか。ありがとな」

 スプーンを口にくわえた茶々が礼を言った。

 茶々は、口からスプーンを抜くとアイスを一口すくった。

「お前も食え」

 すくったアイスを龍生の口の前に差し出した。

「えっ」

 龍生が一瞬戸惑った。

 直前まで茶々の口に入っていたスプーンが目の前に差し出されている。

 それを茶々自身が自分の口に差し込もうとしているのだ。

 龍生は生睡を飲み込んだ。

「いいの?」

「いいに決まってんだろ。早くしろよ融けるじゃねえか

 茶々が龍生の唇にスプーンをぐいぐいと押し当てた。

「分かった、分かったから」

 龍生が口を開いた。

「ほれ」

 茶々がスプーンを龍生の口に中に突っ込んだ。

 龍生はスプーンを口にくわえ、口の中でスプーンを舌で舐めた。

 茶々が龍生の口から優しくスプーンを抜き出した。

「あ、スマホがぶるった」

 茶々のスマホがバイブレーションでメール着信を知らせた。

 茶々は、ポケットからスマホを取り出そうとしたが、アイスのカップとスプーンで両手がふさがっていた。

 茶々は、きょろきょろと自分の両手を交互に見て思案した。

「ぱくっ」

 茶々がスプーンを口にくわえた。

 そして、空いた右手でポケットからスマホを取り出した。

 それを見ていた龍生が目を剥いた。

 そのスプーンは、今まで自分の口に入っていたものだ。

 それを、茶々は当たり前のように口に入れた。

「やっぱりあれだな。二人で食べたほうがうまいな」

 メールを確かめた茶々は、アイスを自分の口に運びながら言った。

 そのあとは、自分と龍生の口に交互にアイスをスプーンで運んだ。

 茨城県警のニクシロンに対する捜査は熾烈かつ陰湿を極めた。

 県警の捜査方針は、エージェントが茶々に語った「ぶっ殺す」という意向が強く反映されていたのは間違いなかった。

 ニクシロンが、超大物クラッカーであろうと、リアルな社会では弱々しい市井の民にすぎない。

 茶々と萌により顔写真が作られてしまった今は、ネットワークの匿名性という擬態が使えなくなったカメレオンのようなものだ。

 本人は神のごとく隠れているつもりでも、捕食者から丸見えの滑稽な姿を晒していた。

 エージェントのイリーガルな捜査によりニクシロンが使うネットワーク機器には、すべてスニッフアーが仕掛けられた。

 ニクシロンは、自分が捜査対象になることは絶対にないという自信があった。

 その自信が仇となった。

 ニクシロンのネットワーク設計には、ほとんど気づかれない程度の穴があった。

 その穴をエージェントに衝かれた。

 エージェントは、蟻の一穴からニクシロンを丸裸に剥いた。

 しかも、それをニクシロン本人が気づくことはなかった。

 県警は、まずニクシロンが茶々に語ったマイナンバーシステムの乗っ取り計画に対する捜査に着手した。

 マイナンバーの情報を盗取するのは、改正された組織犯罪処罰法でテロ等準備罪に該当することとなった。

 たとえニクシロンが犯罪の実行行為に着手しなくても、共謀関係にある組織の中の誰かがその準備行為を行えばテロ等準備罪が成立する。

 県警が具体的な捜査に着手する直前、茶々とエージェントがチャットで会話をしていた。

 

/dev/null: おっさん、ニクシロンの野郎、計画を聞かされただけで共謀罪になるとか言いやがったんだぜ。あのやろー

POLICE: まんまと騙されたな。お前が時事問題に疎いということを見抜かれていたんじゃないのか

/dev/null: う……

POLICE: 言い返せないか。これに懲りたら少しは時事問題にも関心を持つんだな

/dev/null: わかったよ。ちょっとはニュースも見るようにするよ

POLICE: お、いつになく素直じゃないか

/dev/null: まあな。肩の荷が下りるっていうか、気になってたことが一つ解決したからな。気分がいい

POLICE: そうか。それはよかったな

/dev/null: なんだよ。「それはなんだ」とか訊かねえのかよ

POLICE: 訊いてほしいのか?

/dev/null: いや、訳かれても内緒だから教えねえ

POLICE: まあ、お前の性格だからな。学校でいいことでもあったんだろ

/dev/null: そんなことあるわけねえだろ。ばーか

POLICE: うろたえるな。口からでまかせを言っただけだ。お前は、すぐ墓穴を掘ってくれるから扱いやすい

/dev/null: くそったれ!

 

 茶々は、エージェントに投げつけている言葉と裏腹に、ふにゃふにゃの笑顔で煙草をふかした。

 

/dev/null: お前、会ったことないけど、絶対リアルであたしのこと見てんだろ

 

 根拠はないが、そんな確信ができていた。

 

POLICE: ああ、割とよく見張ってるよ。大事な手下だからな

/dev/null: ニクシロンもストーカーだったけど、おっさんもかよ。この業界、ストーカーだらけだな

POLICE: 私は、お前の安全のために見張ってるんだ。あんなデブと一緒にするな。それに

/dev/null: それに?

POLICE: 安全が保証された監視を喜んでいるのはお前自身だろう

/dev/null: なに訳わかんねえこと言ってんだよ。このドSのド変態ポリ公

POLICE: そう喜ぶな。さて、ニクシロンの野郎だが、どう始末して欲しい?

/dev/null: 社会的に抹殺して欲しいよ。マジで

POLICE: 分かった。お前の希望、受け止めたぞ

/dev/null: 頼むよ

 

「なんだよ、おっさんの奴。あたしの希望を訊いてみたり、希望を受け止めたぞとか言ってみたり。やたら距離感が近いじゃねえか」

 茶々が独り言をつぶやいた。

「ていうか、どこで見張ってんだよ、あいつ」

 エージェントの監視が気になった。

 翌日、学校で龍生に会った茶々は、エージェントの監視のことを話して、何か心当たりはないか訊いてみた。

「うーん、ちゃーちゃんに尾行が付いているようには見えないよ」

 龍生には、まったく心当たりがないようだった。

「そりゃそうだよな。尾行してたとしても、あたしら高校生にばれるような尾行なんてしねえだろうしな」

「あはは、そうだよね。でも、害がないんだから気にしなくていいんじゃない?」

「なんか県警のおっさんも似たようなこと言ってたぞ。あたしが安全が保証された監視を喜んでるとかなんとか。失礼なこと言うよな」

 茶々は、立腹してみせた。

 一方、県警は着実に捜査を進めていた。

 ニクシロンを首謀者とするテロ等準備罪で共犯関係にある人物を数名特定した。

 その他、ニクシロン側からトレースした証跡でニクシロンの不正アクセスやサーバーへのクラックを多数把握した。

 県警は、まずニクシロンの配下にある bot を潰した。

 国内にとどまらず海外にまで広がるニクシロンのbot網を根こそぎ壊滅させた。

 bot網の壊滅理由がわからないニクシロンは焦った。

 すぐに新しい bot 網を構築しようとしたが、県警がスニッフィングしているため、ニクシロンがやろうとしていることは県警に筒抜けだ。

 bot を構築するそばから潰されるという事態に陥り、ニクシロンは激しく動揺した。

 bot も踏み台もすべて潰されたニクシロンは、ネット上で身動きが取れなくなった。

 次に県警は、テロ等準備罪でニクシロンの周辺者を一人ずつ時間をかけて逮捕していった。

 一気に逮捕するのではなく、「次は自分か」と思わせる心理戦だ。

 時間をかけて共謀関係にあった者を逮捕していくと、残された者同士が口裏合わせを行う可能性がある。

 しかし、県警は、被疑者が一言もしゃべらなくても犯罪事実を立証できるだけの客観的証拠を揃えていた。

 県警は、テロ等準備罪で首謀者の周辺を順次逮捕していることを逐一報道に発表していた。

 そして、情報セキュリティの危機と、危機回避のための対策について、セキュリティ業界を巻き込んだ一大キャンペーンを展開した。

 このキヤンペーンもニクシロンの精神を蝕んだ。

 ニクシロンは、大手セキュリティ会社の役員だった。

 この会社は、インターネット黎明期からUG界に巣食っていたクラッカーが集まり、表家業として稼動しているものだった。

 ニクシロンは、その中心人物としてセキュリティに関わる事件があると、たびたび報道のインタビューを受ける立場にあった。

 今回のマイナンバーシステムに対するテロ計画についてもたくさんの報道機関からインタビューを受け、テレビニュースなどで放映された。

 いつ自分が逮捕されるか分からない状況の中、自分が計画したテロについてディフェンス側の顔でインタビューに答えるという矛盾がニクシロンの精神を追い詰めていった。

 県警は消耗戦の手を緩めない。

 ニクシロンが役員を務める会社の本社ビル、国内に分散している拠点、契約しているデータセンター、ニクシロンの自宅、まだ逮捕されていない関係者の自宅など、合計30箇所以上にのぼる場所への捜索差押許可状を取った。

 そして、計画的に報道機関に情報をリークして、多数のカメラが待ち受ける中、本社ビルほかに一斉に捜索差押えに入った。

 ニクシロンらは情報の隠蔽と破壊のスペシャリストだ。

 県警は、証拠隠滅に細心の注意を払い、わずかな痕跡をも見逃さないようにするため、本社ほか多数の場所からパソコンやネットワーク機器などを根こそぎ 押収した。

 その量は、大型の貸し倉庫1棟を丸ごと借り上げても足りないほどであった。

 これにより、ニクシロンがネット内で活動することができなくなり、その会社は物理的に機能できなくなった。

 これがニュースで大きく取り上げられ、会社の信用は地に落ちた。

 公開していた株も株価が暴落して管理銘柄に指定されるほどであった。

 時価評価額にして数百億円が一瞬で蒸発するように消えた。

 顧客からも苦情と契約解除、損害賠償請求が相次ぎ、会社は息の根を絶たれた。

 ニクシロンは、会社を清算せざるを得なくなった。

 県警は、ニクシロンの会社が消滅する流れに不可逆的に乗ったのを確かめると、満を持してニクシロン逮捕に踏み切った。

 逮捕されたとき、ニクシロンは重篤なうつ病を患い、強力な薬を服用しなければ精神を保てない状態になっていた。

 ニクシロンは、テロ等準備罪のほか、多数の不正アクセスや電子計算機使用詐欺などの罪で順次再逮捕を繰り返され、最終的には100を超える罪で起訴された。

 ニクシロンは、起訴事実をすべて否認した。

 それに加えて弁護人が心神耗弱による無罪を主張した。

 しかし、ニクシロンが精神を病んだのは、犯罪実行後であったため、この主張は退けられた。

 結局、ニクシロンは保釈も認められず、起訴された事実すべてで有罪を言い渡され、執行猶予の付かない懲役10年の刑を受けた。

 たとえ仮出獄が認められたとしても、技術が日進月歩のコンピューターやネットワークの世界で、5年以上も現場を離れるのは致命的だ。

 おそらくニクシロンは、出所後、この業界では役に立たなくなっているはずだ。

 当然、警察の監視も付く。

 これでニクシロンは、エージェントが言ったとおり社会的に、そしてネットワークの世界でもぶっ殺された。

「警察ってすげーな。ていうか、やることえげつねえなあ」

 県警の捜査が始まり、徐々にニクシロンを追い詰めていく状況になり、茶々は、それをエージェントから教えられた。

 茶々は、クラッキングするとき、相当えげつないことをしていた。

 しかし、今回の県警の捜査は、それを上回るえげつなさだった。

「ま、あれだ。今回、あたしは逮捕監禁の被害者だから捜査にはタッチしなくていいんだよな。とりあえずお役御免だ」

 事件の見通しが立ったこともあり、茶々は、2週間ほどお休みしてしまった日焼けサロンに行くことにした。

 愛車ひろちゃん号を借りて、半キャップヘルメットを頭に乗せて牛久の街へと走らせた。

 茶々は、龍ケ崎から牛久に向かう寂しい田舎道を鼻歌交じりに走っていた。

「ねえ萌」

〝なにかしら〟

「これから日サロ行くんだけど、大丈夫?」

〝ええ、身体の奥に引っ込むから全然問題ないわ〟

「そう、ありがとう」

〝だけど、呼んでも答えられないから、いつぞやみたいに慌てないでね〟

 萌が意地悪な笑いを浮かべた。

「はーい」

 茶々が赤面しながら返事をした。

 いま、萌は茶々の乳房の中にいる。

 十分な脂肪の厚みがある乳房の中が日焼けサロンの紫外線から避難するのに適している。

 萌は、わざと麻酔成分の分泌を少なくして乳房の中で自分が動くのを茶々に分からせた。

「んふっ、ちょっと、萌……やめて」

 乳房の中で虫がうごめく気持ち悪さに茶々が悶えた。

 もちろん、その気持ち悪さが快感に変わる。

 萌は、乳首を内側からつついて刺激した。

「ひゃん! そんなことしたらダメよ。やめてってば」

 ふにゃふにゃの笑顔で懇願するが、萌がやめてくれるはずがない。

 経験したことのない快感に茶々の意識は乳首の裏側に集中した。

 ひろちゃん号が信号のない交差点に差しかかった。

 茶々は、視線が定まらず交差点の存在に気づいていない。

 茶々の進行方向には一時停止の標識があった。

 しかし、標識を見落とした茶々は、そのままのスピードで交差点に入ろうとしていた。

 交差する道路の左側から乗用車が迫る。

 乗用車は時速80キロは出ている。

 茶々のひろちゃん号に気づいて急ブレーキをかけ、クラクションを鳴らした。

 そのクラクションで茶々が正気に戻ったが、そのとき茶々はすでに交差点の中だった。

 乗用車はタイヤをロックさせ悲鳴のようなスキッド音を発しながら交差点に進入してきた。

 茶々は、目を見開くだけで何もできなかった。

 乗用車の右前部とひろちゃんの号の前輪が接触した。

 その勢いで茶々は右回りに回転しながら吹き飛ばされた。

 宙を舞いながら夕暮れの空が見えた。

〝顎を引いて〟

 萌の声が聞こえたような気がした。

 茶々は、その声に促されるように顎を引いた。

 次の瞬間。

 茶々は背中から激しく路面に叩きつけられた。

「んぎゅ!」

 叩きつけられた衝撃で息が漏れた。

 背中の次に路面にぶつかったのは後頭部だった。

 茶々が顎を引いていたために背中で衝撃を吸収した後に一瞬の間を置いて路面とぶつかった。

 しかも、半キャップヘルメットを後頭部に乗せていたので、ヘルメットが衝撃を吸収して割れてくれた。

 それでも頭に受ける衝撃は大きく、茶々は意識を失い、その場に倒れた。

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