※この作品はR-18です。

転生特典はハーレムで   作:MJ

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大変長らくおまたせしました

前回の更新から気づけば2年……いや本当に申し訳ありません
実を言えば2話は早々にできていたのですが、特に重要ではない冒険ストーリーが長くなり、肝心のエロシーンが短くなってしまったため、3話とまとめて投稿しようとしたのが間違いでした

感想欄では心配の声があったりしましたが、風邪ひとつなく健康体ですので(仕事は不調ですが)、ご安心ください


02.依頼へ

 朝食ついでに性欲を満たした後、純太はすっかり着慣れた黒一色の服装に身を包み、外出の準備を整えた。

 朝食を摂る間ずっと口淫奉仕をしていたリズリットや文字通りの手慰み者として体をまさぐられていたティアーユやイラストリアスは彼の性欲が落ち着く頃にはすっかり発情し、どろりと濡れた目で純太を求めていたのだが──残念ながら仕事がある。

 万年発情期の純太としても断腸の思いだったのだが、帰って来たら目一杯可愛がるという約束で手を打つこととなった。

 

「旦那様、お忘れ物はございませんか?」

 

 と、これまた真っ黒なロングコートを手渡しながら、薫が問う。

 忘れ物、と言っても純太が持って行く物は多くはない。手早くばさりとコートの裾を翻し、着込んでしまえば後は小物をポケットに入れるだけ。

 この世界での通貨が入った財布と、スマートフォンに酷似したデバイスをポケットに滑り込ませ、準備完了。

 サングラスをした姿は残念なことに不審者そのもののため外しているが、マトリックススタイルには男心をくすぐられるというものだ。

 

「おう、問題ないぞ」

「そうですか。では……ん、ちゅっ」

 

 そっと背伸びをして軽く、唇を重ね合わせる。

 

「ふふふ……行ってらっしゃませのキス、でございます」

「ムラッと来た──あだっ」

 

 クール(に見える)なメイドの無垢な少女のような笑みに、一度は落ち着いた欲求がむくりと鎌首を上げる。が、ゴンッ、と頭に響く鈍い衝撃にすぐさま平静を取り戻した。

 

「発情期の猿ですか、貴方は」

「否定はしない」

「……」

「あ、ごめん。冗談。冗談だって」

 

 冷ややかな紅い瞳で見つめられ、蛇のように金色の髪が蠢く様子に流石に危機感を覚えた純太はささっと薫から身を離し、玄関の扉の前で待つ二人──ヤミと雪菜の許へと早足に歩み寄った。

 

「先輩がエッチな人なのは分かっていますけど、少しは状況を考えてください」

 

 ムスッとした顔で苦言を漏らす雪菜を収めた視界の端に、フライパンが金髪へと変わる瞬間が映り込む。

 どうやらあれで頭をドつかれたらしい。

 未だに頭部に残る鈍痛を、頭を擦って誤魔化しつつ、綺麗に磨かれた安全靴に足を通した。

 

「──うしっ。じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃいませ、旦那様」

 

 見送る薫の視線を背に、純太は玄関の扉に手をかけた。

 ドアノブを捻り、扉を開くと、そこには雲一つない青空──ではなく、薄暗い部屋。

 家具一つ置かれていないガランとした部屋の風景が何処となくもの悲しさを醸し出している。

 

「うぅん……やっぱシュールだよな。玄関開けたら外は室内って。意味分からんし」

「……言い出したのは貴方ですよ、純太。何もない所に扉が出現するのは目立つから、と」

「まあ、そうだけど」

「でも、いくらカモフラージュのためだけとはいえ、掃除くらいはした方がいいかもしれませんね」

 

 ガタガタと音を鳴らしながら、木製の窓を開いた雪菜が室内に舞う埃に眉をひそめた。

 ようやく外の光が差し込んだ室内はあちこちボロボロで、壁や床、更には天井までも木材が腐って穴が開いていたりと酷い有様である。

 とても人が住めるような環境ではないが、何せタダで貰った家(というより小屋)だ。

 純太の特典を考えれば住む場所には困らないのだが──

 

「……何回見ても『どこでもドア』なんだよなぁ」

 

 閉ざされた扉がすぅ、と音もなく空間に溶けるように消えて行く怪奇現象そのものを眺め、思わず純太は苦笑いを浮かべた。

 何もない所に突然扉が出現し、音もなく消えて行く、というのはやはり目立つ。

 二度目の人生、思うが儘、好き勝手に生きると心に誓った純太ではあるが、だからと言って特別目立ちたいわけではない。

 美女美少女を引き連れていれば嫌でも人目を惹くだろうが、それはそれ、これはこれ。

 羨望の眼差しを奇異の眼差しは違うのだ。

 

(それに、こういうところでエロいことするのもそれはそれでそそるしな)

「……また変なことを考えていますね」

「……えっちぃ顔です」

「おっと」

 

 美少女二人にジト目を向けられた純太は慌ててニヤケ面を引き締めた。

 男たるもの女の子の前では格好を付けたい物なのだ。もう遅いが。

 

「先輩がいやらしい人なのは何時ものことですが……今日は私たちだけでギルドに行くんですか?」

「んー……いや。あと二人くらい呼ぶ。後衛いるだろ?」

「そう、ですね。確かに、三人共接近戦がメインですから、後方支援が出来る方がいればより安全に戦えます」

「だろ? よし、じゃあ早速──」

 

 パッと手を虚空へかざす。

 別に特別な動作は必要ないのだが、要はイメージを固めるためだ。

 視線の先で、PCを立ち上げるイメージ。

 そうして現れたのは青い半透明のパネル。

 ステータスでも書かれていそうなパネルだが、描かれているのはステータスではなく、様々な種族、年齢の女性たちのバストアップ写真。

 これが、純太が得た転生特典の一つ、〈二次元の女性キャラクターを召喚する〉能力。

 このパネルに描かれた女性キャラクターをタップすることで現実世界に召喚することが出来るのだ。

 まさかの転生、まさかの特典に舞い上がった結果生み出された力だが、後々「普通に二次元キャラクターの召喚にすればよかったのでは?」と自らの短慮に頭を抱える羽目になった。思い付きを軽々しく実行に移すべきではない。

 とはいえ、至ってノーマルな性癖である純太にとっては女性しか召喚できなくてもそれほど困るものでもない。

 更に言えば超常の存在から授かった力だけあって、純太にとって都合よく、使い易く作られている。

 さながらスマホのソーシャルゲームのように検索機能、項目によるキャラクターの振り分けなどなど便利機能も盛り沢山。

 難点を上げるとすれば、キャラクターの数が多すぎるくらいだが、それもまあ、嬉しい悲鳴というやつだ。

 

「──ま、これでよかろ」

 

 ポンポン、と項目を選び、写真をタップ。

 続けて、分かりやすく【召喚】の文字が書かれたボタンをタップ。

 その瞬間、蛍火のような小さな光の粒子が降り積もるように人型に収束し、色付いていく。

 二つ並んだ人型が色付き、見慣れた少女の姿へと変化する。

 銀と金。

 先刻まで睦み合っていた影響か、イラストリアスとティアーユと同じ色の少女たちは、彼女らと比べると幾分肉付きは薄い。

 もっとも、流石にあの二人と比べてしまうのは可哀そうと言うべきだろう。

 

「……ねえ、なんか、失礼なこと考えてない?」

「あはは……純太さん、ちょっとエッチなところあるから……」

 

 金と銀の少女──システィーナ=フィーベルが不満げな顔で純太を見つめれば、それをルミア=ティンジェルが苦笑交じりに窘める。

 両者共に人目を惹く端麗な少女ということもあって、今にも崩れ落ちそうなボロ家の中であっても実に絵になっている。

 

「ちょっと……?」

「ちょっと、ですか……」

「酷くない? いやまあ、自覚はあるけど。あいたっ」

 

 ルミアの言葉に首を傾げ、ヤミと雪菜がじとー、とした目を向ける。

 自覚はあるので否定は出来ない、と頷きつつ、側にいたヤミの尻を撫でてみる。

 ペチンと手の甲を叩かれた。

 

「まったく……ふざけてないで行きますよ。仕事をすると言ったのは貴方なんですから」

「あー……はい。すぐ行きまーす」

 

 ぷい、とそっぽを向くようにくるりと背を向けてすたすたと歩くヤミの後ろを苦笑いを浮かべた純太が追う。

 彼の背中を追うように自身も足を踏み出したルミアは、ふとあることに気が付いてくすっ、と小さく笑みをこぼした。

 

「素直じゃないなぁ……」

「……? ルミア、何か言った?」

「ううん。何でもないよ。私たちも行こう、システィ」

 

 ヤミの後ろを歩く純太の空いた右の手首。

 そこに、見慣れた金糸が甘えるように巻き付いていたことは──顔を真っ赤にした彼女に怒られそうなので黙っていよう、とルミアは胸中に誓うのだった。

 

 §

 

 峰岸純太が転生したのは、彼が生まれ育った現代日本のように科学が発達した世界ではなく、剣と魔法のファンタジーな世界だ。

 中世を思わせるような世界観に、人間だけでなく多種多様な亜人と呼ばれる種族が暮らす、純太が前世にて散々読み漁り、掃いて捨てるほどに創作として描かれたような、そんな異世界。

 そんなよくある異世界ファンタジーによくあるテンプレの一つが、〈ギルド〉と呼ばれる組織。

 依頼人からの依頼を受けて薬草採取やモンスターの討伐などをこなす、異世界版ハローワークとも呼ぶべき組織は、彼が転生し、今も拠点として活動しているブライト王国のある領土、〈モンティス子爵領〉にも存在していた。

 

「……あら?」

 

 両開きの扉を開け放ち、ヤミを伴ってギルドへと足を踏み入れた純太は不思議そうに首を傾げた。

 彼の記憶にあるギルドの様相とは少し雰囲気が違っていたからだ。

 

「……随分と賑わっていますね」

 

 ぽつり、と純太の疑問を汲み取ったのか、ヤミが喧騒に賑わうギルド内を見回しながらそう呟く。

 言われて見てみれば、確かに彼女の言う通り記憶にあるギルドハウスよりも幾分人が多い。酒場と併設されたモンティスの冒険者ギルドは朝っぱらから得た報酬で酒を飲む飲んだくれ共の巣窟と言ってもいい場所だったのだが、目に見えてそんな飲んだくれは少ない。

 一体何があったのか、と純太はヤミと揃って首を傾げた。

 

 ――と、そんな時。

 

「よーう、ご両人。随分不思議そうだな?」

 

 横合いから投げかけられる陽気な声。

 揶揄うような声音を辿って視線を向けると、椅子に座ってジョッキを掲げるろくでなしの姿があった。

 如何にもお調子者、と言った風貌の男だ。見た目だけで言えば純太と同じか、それより少し年上と言ったところか。

 

「……バートか。朝っぱらからまた酒か」

「冒険者は稼いだ金で酒と女と飯を買う! そんなことは大陸中の常識だぜ? ってかお前、一瞬俺の名前忘れてただろ」

「会わなかったら忘れるだろ、別に友達でもないし」

「ひでぇ奴だな! お前が冒険者になった時からの付き合いだってのに! ヤミちゃんもそう思うだろ?」

「…………」

 

 ヤミはそんな言葉を冷めた視線で黙殺。ふい、と視線を背けた。

 彼女に平然と無視されたお調子者ことバートは「相変わらずつれねぇなぁ」と肩を落とし、ぐびりとジョッキを呷る。

 彼との付き合いは今から約五年前。純太が転生し、色々と落ち着いて頃にまで遡る。

 当時、異世界テンプレの冒険者になってみようかと思い立った純太がこのギルドハウスに足を運び、彼に声をかけられたのが出会いの始まりだ。

 もっとも、その時の彼の言動や行動は、所謂“お約束”のテンプレートそのものであり、そのこともあって純太を含めた彼の身内から未だに信用されていないのだが。

 

「まぁ、そんなことより、引き籠りのお前のことだ。最近何があったのか知らねぇんだろ? 教えてやろうか?」

「……そうだな。教えてくれるなら聞こう。ビール一杯なら奢ってやる」

「お? 気前がいいな。交渉する手間が省けたぜ――おーい! こっちにビールのおかわりくれ!」

 

 露骨に顔を顰め、服の袖を引っ張るヤミの手を握って宥めてやりながら、純太はバートのいるテーブルの椅子に二人揃って腰かけた。

 テーブルの上には料理の乗った皿がいくつか置かれているが、食べ散らかされていて食欲はそそられない。冒険者になる者と言うのは大抵の場合、育ちが悪いのだ。

 

「……なるべく早く済ませてください。みんなを待たせているので」

「そう焦んなって。今日は仕事に来たんだろ? 人が減るまでもう少しかかるぜ?」

 

 見てみろ、と指さす方向に顔を向けてみると、その先には依頼の受注・報告を行うカウンターが人でごった返しているのが見えた。更に依頼が張り出された掲示板にもまだまだ人が多い。

 確かに彼の言う通り、今から依頼を受けに行こうとすれば、あの人混みの中に突っ込んでいく羽目になりそうだ。

 な?と得意げな顔をするバートには腹が立つが、その憤りはひとまず胸中にしまっておくことにする。

 

「そうは言っても、大したことでもないんだがな」

 

 ウェイトレスから注文したビールジョッキを受け取りながら、バートが口を開く。

 

「最近、魔物(モンスター)の数が上昇傾向にあるってのは知ってるな」

「いや……悪いが知らん」

「マジかよ! お前今まで何処にいたんだよ! ――ったく。まぁ、それで、数が増えて来てるんだよ。どういうわけかモンティス周辺でな」

「モンティス周辺……? 周辺の領地は何も変わらなかったと?」

「そうだ。何故かこのモンティス領でだけモンスターの数が増えてきているって話だ。ギルドが直々に調査したってんだから、確かな情報だと思うぜ? そんでもってモンスターが増え出したってんなら、当然ギルドにはそいつらの討伐依頼が増えるだろ? こういうのは軍より冒険者の方が勝手がいいからな。領主様からも支援があるって話さ。ま、こっちは噂だがね」

 

 ビールを呷りながら、バートは肩を竦めた。

 何故かは分からないがモンティス領でのモンスターが増え始め、増えたモンスターによる民衆への被害が増え、それらを討伐するためにギルドへ依頼が増える。当然の流れである。

 今日のギルドでの賑わいも、今日に限ったものではなく連日続いているのだろう。

 冒険者として依頼を受けない日は自宅に引き籠って爛れた生活を送っている純太には知りもしなかった情報である。

 

「じゃ、その報酬目当てにみんなやる気出してるわけか」

「いんや。それもちょっと違うぜ」

「違う、とは?」

 

 にやりと唇を吊り上げるバート。

 軽薄と言うかチャラい見た目のせいでどうにも警戒心を抱かずにはいられない表情である。

 

「モンティスでのモンスター大量発生の噂を聞きつけて、“流れ”が今この町に集まってるんだよ」

「“流れ”、ねぇ……」

 

 流れ、とは簡単に言えば自身が登録した冒険者ギルドから離れ、別の領地で冒険者として活動する者たちのことだ。

 同じ国であれば冒険者のランクは変わらないため、拠点を移すのはそれほど珍しいことでもない。が、町が違えば人もルールも変わるもの。

 俗にいう暗黙の了解を知らない状態でやってくるため、その町の冒険者たちが維持・管理している狩場や採取場所などを好き勝手に荒されることも少なくない。

 そのため、基本的に流れはどの場所でもあまり好意的には見られない。

 

「今は依頼も報酬も十分すぎるくらいだからな。流れの連中もいらぬ恨みを買う確率が低いならそっちの方がいいわな。うちの元々いた連中もこれを機にランクを上げようと張り切ってるみたいだぜ」

「ほー……それはそれはご苦労様だな」

「……純太も彼らのようにやる気を出してみては?」

「俺はいいんだよ、俺は」

「お前ね……そんな調子じゃあ折角のアーティファクトが泣くぞ? ……まぁいいや。それよりジュン! お前ちょっと気を付けといた方がいいぞ?」

 

 と、バートは不意に表情を真剣なものに切り替えて、低い声で警告する。

 その際、ちらりと興味なさげに無表情を貫くヤミに視線を向けていた。

 

「気を付けろって?」

「お前、いっつも綺麗どころの女を連れてるだろ? この町の連中は大体手を出したらやべぇってのは分かっているが、流れの奴らはそうじゃないからな。そこそこランクが高くて腕に覚えがある奴なんかは絡んでくるぞ」

「ふーん……経験者は語るって奴か?」

「おまっ!」

 

 にやりと意地悪く笑って言ってやれば、バートは分かりやすく表情を引き攣らせた。

 

「はー……ったく! 人が親切に忠告してやってるってのに……まぁ、お前たちなら心配いらないか。そんじゃ、ついでにこいつはどうだ?」

 

 そう言って、バートが懐から取り出したのは一枚の羊皮紙。

 依頼内容と報酬、期限が書かれたその紙は、冒険者が依頼を受けるために必要な物。

 つまりは、依頼書(クエスト)だった。

 

 

 

「──ってことで、今日はリザードマンの討伐に行くことになった」

 

 と、ギルドとは別の場所で待機していた雪菜たちと合流した純太は、依頼書の写しを人差し指と中指で挟んでひらひらと揺らしながらそう言った。

 

「リザードマン……じゃあ、沼地にまで行くんですか?」

「いや、何か森の方の湖に巣があるらしいから、そっちの方」

「巣って……じゃあ、数も多いんじゃない? 私たちだけで足りるの?」

「まだ小規模で巣というよりは別の巣から追い出されたはぐれの集まり、らしいです」

「これから居ついて繁殖する前に、今のうちに討伐するんですね」

「おう。……水が綺麗だったら泳げるかもな」

「……顔がえっちぃです」

 

 これから向かう湖で、種類の違う美貌の四人のあられもない姿を思い浮かべ、純太は思い切り鼻の下を伸ばした。

 何せ、彼女達には好意しかない。幻滅される心配がなければどんな間抜け面も晒せるというもの。いや、流石にちょっとは格好つけた方がいいか、と思い直して表情を(今更になって)引き締めた。

 

「──……ぐっ、て、てめぇら……俺たちにこんなことしてタダで済むと思うなよ……」

 

 不意に、苦し気な男の声が地面から聞こえてくる。

 改めて視線を向け、やけにボロボロ(ちょっと焦げてる)になった三人の男の姿に、うぅん、と首をひねる。

 

「……やっぱ覚えてないな。誰、これ」

「さあ……? 急に襲って来たので……」

 

 純太とヤミが合流した時には既に男たちは地面に倒れ伏した状態だった。

 事情を聴こうにも気絶していて会話が出来なかったため、まあいいか、と後回しにしたのだが、どうやら意識が回復したようである。

 雪菜たち三人によれば、声を掛けられ振り向いた瞬間に襲い掛かってきたのだとか。

 見目麗しい彼女らを誘拐しようとでも思ったのだろうか。

 

「いや、君らのことなんぞ知らんし。大体、何がしたかったん?」

「だ、誰が言うかよ、ばーか」

「あそ。じゃ、いいや」

 

 彼らにも彼らの目的にも一切興味がなかったので、さっさと会話を切り上げる。

 そんなことよりもエロである。いや違う。クエストである。

 世のため人のため、人に危害を加える危険なモンスターは未然に討伐しなければ。多少スリルを感じてからの方がその後の行為が盛り上がるとか、そんな不純な思惑はない。ないったらないのだ。

 言葉通り一切気にするそぶりも見せずに立ち去ろうとした純太たちに、流石に予想外だったのか地面に倒れたままの男が慌てて声を上げた。

 

「待て待て待てっ! 本当に何も聞かないやつがあるか!?」

「いや、マジで興味ないから……」

「聞けよっ! せめてもうちょい粘れよっ! 女拉致ろうとして速攻で返り討ちにされたこっちの身にもなれよっ!」

「最低ですね……」

「聞いたし、もう行くわ」

「おいぃぃぃぃぃっ! だからっ! もうちょっと興味持てよっ!」

「なんでこんなに必死なのかしら……?」

「なんでなんだろうね……」

 

 やけに食い下がる誘拐未遂犯に色々と面倒になった純太は、ガシガシ頭を掻いてはぁ、とため息。

 

「ルミア、頼むわ」

「あ、はい。じゃあ……《身体(からだ)に憩いを・心に安らぎを・その瞼は落ちよ》」

「ちょまっ──」

 

 純太の頼みに彼が何を望んでいるのか察したルミアは苦笑を浮かべながらも自らの力──〈魔術〉を行使した。

 肉体を傷つけることなく眠らせる白魔術、【スリープ・サウンド】により、折角意識を取り戻した男は再び夢の世界へと突き落とされた。

 

「ルミア。ついでに他の二人にもかけておいてください。……この後目覚められると面倒ですし」

「あはは……いいのかなぁ……?」

「いいんじゃない? こいつら、私たちを誘拐しようとしてたんだし、遠慮は無用よ」

 

 辛辣なヤミと不機嫌を隠そうとしない親友に困った風に笑みを浮かべるものの、結局残りの二人にも簡単に目覚められないよう【スリープ・サウンド】をかけておく。

 この魔術はただ対象を眠らせるだけでなく、既に意識のない相手を更に深く眠らせることも出来るのだ。

 ──ちなみに、ルミアは別に彼らに対し同情心を抱いているわけではない。

 単純に、自分たちで対処せず憲兵に届けた方がいいのでは? と思っているだけである。

 男たちに魔術をかけ終わったのを見て、純太はぐっと背伸びをした。

 

「ふぃ~……うし、今度こそ行くか」

 

 首肯する四人を引き連れて、目的地を目指して純太は歩き出した。

 

 §

 

 町を出た純太たちは、件の湖を目指して馬車に揺られていた。

 馬車、と言っても荷車を牽くのは馬ではなく、馬の半身に人間の上半身を持つ亜人、ケンタウロスだ。

 馬、と言っても純太が前世で見ていたような競走馬よりも一回り馬体も足も大きく太い、見るからに頑強そうだ。人間の上半身も同様、盛り上がった筋肉が服の上からでもよく分かるほどに筋骨隆々。

 馬車を牽引する一人とは別に、馬車の後方三メートルほど離れた距離を二人のケンタウロスが走っている。

 異世界情緒あふれるケンタウロス馬車。

 前世で言うところのタクシーのようなもので、彼らはギルドと連携する運び屋の人たちである。

 三人共元冒険者であり、後ろの二人は護衛。安全対策もばっちりだ。

 

「は~……辛い」

 

 馬車の外を流れる景色を無感動に眺めつつ、純太はぐてぇ、と体の力を抜いた。

 

「んっ……もっとしっかりしてください。だらしないです」

 

 そう苦言を呈したヤミは、純太の腕の中。

 キュッと引き締まった尻肉を純太の膝の上に乗せ、後ろから抱き締められるようにして座る彼女は背中にかかる体重に吐息をこぼした。

 

「そうは言ってもなぁ……生殺しは辛いわぁ」

 

 少女の温もりと鼻腔をくすぐる何処か甘い芳香。

 ぷるんと形と張りの良い臀部のコンボに純太のペニスはすっかり臨戦態勢。

 張り詰めた男根は朝、中途半端なところで奉仕を止めたことも影響しているのかもしれない。

 

「先輩……どれだけ我慢が出来ないんですか」

「馬鹿、我慢し続けてるぞ、俺は。我慢比べならに世界一取れるね」

「だったら腰を動かさないでください。……ひゃぅっ! ど、何処触っているんですかっ」

「太腿」

「それでどうして我慢しているなんて言えるのよ、アンタは……」

「あ、あはは……」

 

 六人乗りの馬車の中は五人が乗っているにも関わらず、広々としている。

 というのも、純太がヤミを膝の上に抱え込んでいることもそうだが、彼の両隣に座る雪菜とルミアがぴったりと、それはもう紙一枚通る隙間もないほどにぴったりと密着しているからだ。

 ルミアの柔らかな肢体と四人中トップのバストの感触と、雪菜の引き締まった四肢の中に残る「女」の柔らかさ。

 そして、純太が欲情しているということは当然彼女たちも欲情しているということ。

 発情した雌のフェロモンに包まれて、純太の理性は溶鉱炉に突っ込まれた鉄のようにどろりどろりと溶かされていくようだ。実際には鉄ではなくぺら紙だが。

 

 ──もっとも。

 

 実のところ純太を諫めている彼女たちも彼が本気で求めるのなら一切の躊躇もなく淫行に耽る。それが例え、ギルドや町中と言った衆人環境であれ、何時でも彼の求めに応じる。

 転生したことによって二十代前半の肉体年齢となり、それに応じて精神も幾らか若返っている純太ではあるが、それでも五十余年立派な社会人として生きてきたのだ。TPOを弁える分別くらいはある。

 自分が求めれば、彼女たちは何時如何なる時であろうと彼の求めに応じる──そう思えば心に余裕も出るというものだろう。

 

 まあ、スリルを求めることもあるのだが。

 

「んっ、んっ……ふぁ……っ……純太っ」

「おっ、と……いや、ごめん。ごめんて。ヤミが可愛いから調子乗ってた」

 

 膝の上に座るヤミの露出した白い太腿にすりすりさすさすと痴漢よろしく手を這わせていた純太だったが、当のヤミにキッ、と鋭く睨まれては手を止めるしかない。

 睨む、と言っても目は潤み、頬は紅潮し、正直言ってまるで怖くはないのだが、他の男に見られている状態で、彼女らの痴態を晒すのは気が進まない。

 純太は性欲も強ければ独占欲も強かった。救いようのない男である。

 

「我慢する気なんてサラサラないじゃないの……」

 

 呆れたように嘆息交じりに体面に座るシスティーナはジト目だった。

 両脇も膝の上も先に占拠されてしまい、純太にくっ付けなかった彼女の機嫌は少々悪い。

 

「ふぅ……せめて手を握るだけにしてください……どうせ、終わったら我慢の必要もないんですから」

「そうですよ、先輩。仕事の時は真面目にするって言ってたじゃないですか。その……く、クエストが無事に終わったら、ちょっとくらいなら……その、エッチなこと、してもいいですから」

「クエストが終わるまでは駄目ですけど、終わったらその分遊んでも大丈夫ですから、それまでは頑張りましょう? 私も頑張りますから」

「俺を何だと思ってるの?」

「変態なんじゃないの?」

「くそぅ、否定できないぜ……いや、やるよ? ちゃんと真面目に。マジで」

 

 不満げな表情を浮かべる純太だったが、妥当な扱いと言うより他にない。

 そして目の前で四人のイチャイチャを見せつけられるシスティーナの機嫌は右肩下がりだ。

 漫画だと彼女の周りに真っ黒な瘴気が漂っていそうな雰囲気を醸し出している。

 だからか、つい口が滑って余計なことを口走ってしまうのも、仕方のないことと言えるだろう。

 

「しっかりしなさいよね。そうすれば、終わった後にあんたが好(・)き(・)な(・)だ(・)け(・)付き合ってあげるんだから」

『……あ』

「……ほほぅ?」

 

 何気なくシスティーナが口にした言葉に、三人は「うわぁ」と言いたげな表情を浮かべ、一人はケダモノの眼光をギラリと光らせた。

 内訳は、言うまでもないだろう。

 

「え? ……あっ、終わった後! ちゃんとクエストが完了したらの話だからねっ」

「いえ、そこではないかと」

「システィーナさん……大胆です……」

「システィ……それはずるいよ」

 

 頬を赤く染め、慌てたようにピッ、と人差し指で純太を指さすシスティーナに、三人が向ける眼差しは複雑だった。

 自分たちが互いを牽制しつつアピールしていた中、いきなり切り札を切ってきた彼女には驚嘆を禁じ得ない。色んな意味で。

 

「んぁ……っ。また大きくなって……変態」

 

 じっとりとしたヤミの眼差しに若干のバツの悪さを感じつつも、純太は期待に心が躍るのを止められない。

 むふー、とだらしのないニヤケ面のまま、背もたれに体を預ける。

 前世では想像も出来ないような美少女たちとのキャッキャウフフを想像すれば、今日これから行う面倒事も苦にならない。

 

「先輩……鼻の下が伸びすぎです」

 

 流石にちょっとは体裁を整えよう。

 呆れを多分に含んだ言葉に純太は少しばかり反省した。

 

 

 草原を抜け、馬車が森の中へと入ってから十数分。

 風を切って駆けていた御者が緩やかに速度を落とし、馬車を停まらせる。

 

「──お疲れ様です、皆様方! 本日も無事に到着いたしましたよ!」

 

 額に浮かんだ眩しい汗を拭いながら、ケンタウロスの御者が爽やかに到着を告げる。

 ルミアは自身の膝の上に頭を乗せ、呑気に寝息を立てている純太の体を優しく揺すった。

 

「純太さん、到着しましたよ。起きてください」

「──……んぁ?」

 

 起こされた純太はゆるりと瞼を開き、勢い付けて上体を起こすとぐぐっ、と両手を上に伸びをする。

 凝り固まった筋肉がほぐれ、ゴキゴキと骨が鳴る。

 

「くぁ~……はぁっ」

 

 馬車が止まっているのはリザードマンが集まっているという湖──ではなく、そこへ行くための脇道のある道路上。

 商人や隣町へと向かう者たちが利用する道路で、道幅は相応に広い。純太の感覚で言えば、六車線程か。

 小さな雑草がぽつぽつと生えた学校のグラウンドを思い出す道である。つまり、それだけ利用者が多いということに外ならず、今回のクエストが出されたのも、リザードマンが道まで下りてきて被害を出さないように未然に食い止めるためだ。

 速やかに解決して欲しい案件のためか、内容の割に報酬がいい。

 こればかりはバートに多少は感謝してもいいかもしれない。

 

「ありがとうございました、トーマスさん」

「いえいえ、我々の仕事は人々を素早くっ! 安全にっ! 指定の場所まで送り届けることっ! わざわざ礼を言う程のことではありませんとも!」

 

 御者──トーマスは軽く頭を下げて感謝を述べる雪菜に明朗快活に言う。

 朗らかな笑顔を浮かべる彼だったが、不意に悩まし気に顔を歪めた。

 

「しかし……今回の一件は我々にとっても無関係とは言えぬこと。むしろ、礼を言うべきは私たちの方でしょう」

「別に……まだクエストが終わったわけではないので」

「はっはっはっ! ヤミ殿は相変わらず冷静でいらっしゃる! ええ、ですがあなた方は私たちが信頼するに足る実力と実績をお持ちの方々だ。であれば、今ここで礼を言うのも、後で感謝を述べるのも、結局のところ遅いか早いかの違いでしかありませぬ」

「──言われてるわよ、純太さん?」

「むぅ……」

 

 何処か意地悪気な笑みのシスティーナに脇腹を肘でつつかれた純太は思わず渋面を作った。

 此処まで言われて「面倒」だの「やる気でない」などと言っていられるほど人でなしではないのだ。

 自分が反則染みた、というか反則そのものの力を使っているせいで、まるでその功績を誇る気にならないのだが。

 

「では、我々は一足先に戻らせていただきます。……しかし、よろしいのですか? ご要望であれば、クエスト完了までこの場で待機して置くことも出来ますが?」

「いや、大丈夫です。念を置いて一日二日は野営する予定なので」

「なるほど。取り逃しのないように、ということですか。であれば私から引き留める理由はありませんな!」

 

 折角の行為を断られた形にあったが、トーマスは不満げな顔一つ見せず、相変わらずの爽やかな笑顔を浮かべている。

 少し休憩をしてから町に戻るとのことなので純太たちは彼らの見送りはせず、件の湖へと向かうことに。

 ご武運を! という快活な言葉にそれぞれ応えつつ、広い道路とは違い、人が二人通れるかどうかといった広さの脇道に入り、歩くこと数分。

 生い茂る木々の密度が薄くなり、その先にキラキラと光る湖面が目に映ると同時、ヤミの髪が伸び、他四人の手首に巻き付き、純太は咄嗟に錬環勁氣功を発動。

 ヤミの髪を媒体に全員に自らの氣を送り、存(・)在(・)を(・)同(・)化(・)さ(・)せ(・)た(・)上(・)で(・)完(・)全(・)に(・)氣(・)を(・)消(・)す(・)。

 こうすることで、例え視界に入っていたとしても誰の気にも止まらない路傍の石と化すことが出来るのだ。

 錬環勁氣功の使い手であり、ある物語の主人公である青年が、その小説内でやっていたことだ。

 このおかげでわざわざ物陰に隠れる必要もなく堂々と相手に気付かれることなくじっくりと観察することが出来る。

 

「いやめっちゃおるやん。わらわらしとるやん。誰だよ、まだ巣にはなってないって言ったの」

「リザードマンの巣は五十体以上の群れになるから、まだ巣にはなっていない、のかな?」

 

 リザードマンは端的に言えば二足歩行する巨大なトカゲだ。

 基本的には湿潤な沼地などに生息し、五十を超える群れを築き生活している。

 純太たちが来た湖にいるのは目に映るだけでざっと二十体ほど。もっと奥へ行けば更に数は増えるだろう。

 人型に近付けば近付くほど知能が高くなるモンスターの性質上、二足歩行で人型に近いリザードマンはそれなりに知能が高く、群れが生活するテリトリーには家と言える建造物が作られてたり、自分たちで加工した道具を使ったりするほどだ。

 もっとも、技術力自体は然程でもなく、武器や防具なども人間を襲ったり、森に廃棄された物を拾って再利用したり、形だけそれっぽく整えた物を使う程度だが、道具を道具として真っ当に扱えるだけの知能はあるということだ。

 気配を消したまま足を進め、森を抜けて開けた水辺に移動する。

 

「……しっかりいるわね」

「小規模と言えばそうですけど、これはもうリザードマンの巣になってますね……」

「ですが、クエストはギルドで受注したものです。調査が不十分だったのか、あるいは……」

「……誰かが人為的にリザードマンを住み着かせた?」

「少なくとも……ありえない、と断言することは出来ませんね」

「──面倒臭い! そういうの俺たちの仕事じゃねえから!」

 

 錬環勁氣功による気配遮断を解除。

 突如として現れた人間の気配に、それまで思い思いに寛いでいた様子のリザードマンたちが慌てた様子で起き上がり、威嚇するように「ふしゅるるるるる」と呼気を吐き出す。

 更には奥から警備担当なのか、しっかり武装を整えた十数体のリザードマンたちがぞろぞろと姿を現した。

 

「先輩……いくら何でも突然すぎます」

「だまらっしゃい。そういう面倒なことは俺の分野じゃないの。パパッと仕事を終わらせてエロいことに集中したいの」

 

 最低なことを口走りつつ、純太は懐から金の装飾が施された大型のナックルダスターのような物を取り出し、右手に握る。

 剣と魔法が支配するこの異世界で、ただの一般人に過ぎなかった峰岸純太が戦うための変(・)身(・)ア(・)イ(・)テ(・)ム(・)だ。

 

「はぁ……もう、しょうがないですね」

 

 呆れたようにそういいながらも、雪菜もポケットからスマートフォンに似たデバイスを取り出し、スイッチを入れる。

 純太を始め、彼に召喚されたキャラクターたちが共通して所有し、使用するこのデバイスは、天才発明家、ララ・サタリン・デビルークが彼女の登場する原作にて作り出した〈デダイヤル〉を更に改良、発展させた後継機だ。

 名前を〈デダイヤルⅡ〉。そのまんまである。

 光が灯った液晶画面を操作すると画面から光が溢れ、一振りの槍が出現する。

 姫柊雪菜の持つメインにして最強装備、〈雪霞狼〉。

 デダイヤルⅡをポケットに収めつつ、感覚を確かめるようにくるりと回し、静かに構える。

 美しささえ感じさせられる洗練された動作は、そのまま彼女の力量を表しているかのようだ。

 

「……まったくです」

 

 雪菜に同調しながらも前に出たヤミがするりと右手を伸ばす──と、彼女のその手がぐにゃりと歪み、大振りな片刃の刀身へと形を変化させる。

 これが彼女、金色の闇の能力。

 自分の意思で肉体を自由な形に変化させる〈変身(トランス)〉能力。

 髪の毛を動かしたり、フライパンに変えたりしていたのもこの能力によるものだ。

 

「このメンバーなら私は動かなくてもいいか……ルミア、サポートよろしくね」

「うん。任せて、システィ」

 

 システィーナとルミアはやや後ろへ下がる。

 彼女たちは魔道の力を扱う〈魔術師〉だ。

 前衛をこなせる仲間がいないのならともかく、そうでないのならわざわざ前に出る必要はないと判断した。

 そして、武装したリザードマンたちの集団が駆け足に迫る中、システィーナは一切慌てることなくすっ、と左手を突き出し、詠唱を口ずさむ。

 

「《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》ッ」

 

 瞬間、超高速の雷閃【ライトニング・ピアス】が一直線に先頭を走る一体のリザードマンの鼻頭から後頭部までを一撃で貫通。同時、雷撃がその体を駆け巡り、真っ赤な血を飛び散らせて即死しながらガクガクと痙攣を起こさせる。

 

『──ッ!?』

 

 敵意もあらわに純太たちを睨み付けていたリザードマンたちの脚が止まり、突然の出来事に目を瞬かせる。

 その隙を、ヤミと雪菜の二人は見逃さない。

 

「はぁ──ッ!」

「ふっ──」

 

 瞬きの間に彼我の距離を詰め、腕が、槍が振るわれる。

 ヤミの剣がリザードマンの喉を掻っ捌き、血飛沫を上げさせながら一瞬で絶命させ、閃光の如き雪菜の槍の穂先が反応を許さず心臓を貫き、血を吐きながら絶命する。

 ほんの数秒で仲間を三体も殺されたリザードマンたちはようやく我に返り、威嚇の声を上げ武器を振るうも、素早く左右に距離を取ったヤミと雪菜には届かなず、切先が空を切る。

 前に出てきたリザードマンの数はざっと数えたところ十五前後。先刻三体が死に、残りは十二体。

 これからもまだまだ増えるとなるとやはり面倒を感じざるを得ない。

 

「……お?」

 

 二手に分かれたヤミと雪菜を追うように数をばらけさせたリザードマンたちだったが、当然厄介な遠距離攻撃をしてくる後衛のシスティーナたちを放置するわけもない。何せ、数の上では圧倒的に有利なのだから。

 ヤミ、雪菜、そして前方のシスティーナたちの三方向へと別れた内、血気盛んな二体が更に加速して前へと飛び出してきた。

 仲間をやられて怒ったか、あるいは仲のいい友達だったのだろうか。

 モンスターの表情など分からない純太には理解できない。

 

「……悪いね、君たち」

 

 囁くように呟いて、純太は懐から大型のナックルダスターを取り出す。

 金の装飾が施された、神聖さを帯びながらも機械的なナックルを、手の平へと押し当てる。

 

『READY』

 

 ぎこちないシステムコールと共に、警告音のような音声が鳴り響く。

 剣を振り上げ全力で駆けるリザードマンを視界に収めながら、純太はその言葉を口にする。

 

「変身ッ」

『FIST ON』

 

 何時の間にか彼の腰に巻かれていたベルト、その欠けた右側にナックルが装填。

 電子音声と共にデータ化されていたパワードスーツが実体化してその体に装着される。

 

「ふっ──ノールック変身……ッ!」

 

 グッ、と拳を握るその姿は、生身の姿とは似ても似つかない。

 全身を黒いアンダースーツに包み、その上から身に纏うのは穢れなき純太白の装甲。

 十字架を模した黄金のフェイスガードに顔を隠した姿は、機械的でありなながらも神聖さを感じさせる。

 これこそが純太の戦闘形態。

 ナックルとベルト──〈イクサナックル〉と〈イクサベルト〉を用いて変身する、彼の故郷日本で放送されていたある特撮ヒーローその物である。

 ヒーローの名前は、〈仮面ライダー〉。

 そして、純太が変身したその姿は、〈仮面ライダーイクサ〉。

 彼の転生特典によって生み出し、その上で自分用にカスタムした専用装備である。

 幼き頃より死して転生するその日まで、憧れた空想の英雄を、自分の薄汚い私利私欲で穢すことに何も思わなかったわけではないが──

 

「……うん、問題なしだな」

 

 ガキンッ、と鈍い音を響かせて、ほぼ同時に振り下ろされた二刀が肩口に衝突し、その白き鎧に傷一つ付けることなく制止させられる。

 爬虫類特有の特徴的な眼球を驚愕に見開いて動きを止めたリザードマンに、純太は仮面の内で微苦笑を浮かべた。

 表情を読み取ることは出来ないが、彼らが動揺していることは分かった。

 

「ふんっ! ──どりゃっ!」

 

 ガンッ。

 両腕を振るって肩口に乗っかったリザードマンの曲刀を払いのけ、パワードスーツによって強化された膂力によろめいた彼らの隙だらけの胴体に、握った両の拳を叩き込む。

 

「ぐきゃっ!?」

 

 肉を潰し、骨を折る確かな感覚。

 基本的に人間よりも数倍は頑強なモンスターの肉体だが、イクサのパワーならば問題なく破壊できる。

 口の端から血を流しながら素早く起き上がったリザードマンたちは威嚇の唸りを上げて、何時でも動けるように背を丸めるように構えた。が、関係ない。

 彼らの得物ではイクサの防御を突破できないと分かったなら、必要以上に警戒する必要もない。

 

「行くぞっ」

 

 声を上げ、踏み込み、そして一瞬で接敵。

 横に並ぶように立つ二体の内、左の一体へと右の拳を叩き込む。

 リザードマンは咄嗟に武器を持っていない方の腕を持ち上げ盾にするも、先刻とは比較にならない威力のパンチに腕を潰され、よろよろと後退させられる。

 

「シャア──ッ!」

 

 殴られた同僚には目もくれず、右のリザードマンが剣を振るう。

 風を切る鋭い一太刀はしかし、引き戻した右腕の手甲で受け止められ、お返しとばかりに左のジャブが顔面に突き刺さる。

 骨を砕き、鮮血を散らしながらよろめくリザードマンへ追撃をかけようとする純太の動きを阻むように、腕を砕かれたリザードマンが剣戟を仕掛けるも、剣先が届くより早く、その動きを読んでいた純太のキックが腹部に直撃。吹っ飛びこそしなかったもののあまりの威力に血を吐き、膝を着く。

 

「どっ──せいっ!」

 

 低い位置へと降りてきた頭部に、情け容赦のない回し蹴りが炸裂し──地面に叩き付けられるように死亡。

 回し蹴りを放った勢いのままくるりと回転、向きを整え、背後から決死の特攻を仕掛けてきたリザードマンの胸に、全力右ストレート。

 衝撃が突き抜け、二メートル近いリザードマンの巨躯が浮き上がり、数メートルほど吹き飛ばされて背中から地面に着地。

 そのままピクリとも動かなくなった。

 交戦から一分足らずで二体を撃破。

 自分も中々強くなったんじゃないか、と内心自画自賛していた純太だったが、ふと周りを見てみると、十はいたリザードマンたちが一体も残らず地面に倒れ伏していた。

 

「……いや、早くね?」

「どうしたんですか、純太?」

「何か気になることでもありましたか?」

「いや……うん。何でもない。何でもないっす、はい」

 

 返り血一つ、汗すらかかずに平然としている二人に少し引く。

 なんだかんだと見慣れてはいるものの、ふとした瞬間に異常に思えてしまう。頼もしい限りではあるのだが。

 

「次、来るわよ!」

 

 システィーナの声に思わず力が入る。

 見れば、奥から先程の倍以上の数のリザードマンたちが溢れるように姿を見せていた。しかも、しっかりと武装した上で、だ。

 彼らが手にする武器は根元から切先へかけて幅広く後ろへ湾曲した刀身が特徴的な片手剣、確かファルシオンだったか。それと、彼らの身長と同じくらいの長さの槍。

 剣兵と槍兵は皆片手に武器を持ち、もう片方の腕に円形の盾を装備していた。陽光を受けてギラリと光を反射する鋼鉄製の盾だ。

 そして、その二部隊とは別に、もう一部隊。

 弓を携えた十数体のリザードマンたちがぞろぞろと前に出て矢を番え──放つ。

 

「ルミア、行くわよ──ッ! 《大いなる風よ》ッ!」

「うんっ、任せてっ! 《大いなる風よ》ッ!」

 

 システィーナとルミア。

 二人が唱えた突風を生み出す魔術、【ゲイル・ブロウ】が雨のように殺到する矢を散り散りに吹き飛ばす。

【ゲイル・ブロウ】は人間を容易に吹き飛ばすことが出来るほどの突風を巻き起こす魔術だ。人間よりも遥かに軽く、風の影響を受けやすい矢では、どれだけ射ようと意味はない。

 

「純太、今の内に」

「よっしゃっ」

 

 変身者の意思を汲み取り、パッと開いた純太の右手に光が集まり、実体化する。

 金の装飾が施されたロングマガジンが特徴的なイクサの主武装〈イクサカリバー〉だ。

 イクサカリバーの銃口を矢を無効化されにわかに騒めくリザードマンの弓兵たちへ向け、間髪入れずに発砲。

 秒間三十発ペースで発射される特殊エネルギー弾が容赦なくリザードマンの皮膚を裂き、肉を抉り、血を撒き散らせる。

 

「《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》ッ!」

「《冴えよ風神・剣振るいて・天駆けよ》ッ!」

 

 純太が撃ち漏らし、あるいは銃弾から逃れた者は、容赦なく後衛二人の魔術が襲い掛かる。

 ルミアが放った【ライトニング・ピアス】がリザードマンの体を貫き、システィーナが放った風の刃、【エア・ブレード】がその体を切り裂く。

 瞬く間に弓兵を殲滅させられたリザードマンたちは意を決したように一気に突貫する。

 

「っ! 数が多いわね……」

「此処からは私たちに任せてくださいっ」

「援護は任せました」

「うんっ、頑張ってっ」

「……あんま張り切られると俺の立つ瀬がないんだよなぁ」

 

 ぼやきつつ、先に駆け出した雪菜たちに追従して純太も地面を蹴って走り出す。

 

「これでも喰らっとけっ!」

 

 響く銃声。

 強烈なマズルフラッシュを焚きながら銃弾がバラまかれる。

 真っ直ぐに飛翔する銃弾はリザードマンたちの身に纏う革鎧を突き破り、肉体を穿つものの、絶命には至らない。

 先の惨状から学習したようで、すぐさま盾を構え銃弾を受け止める。

 

「やぁっ!」

「──ッ!」

 

 が、即座に距離を詰めた二人の攻撃が彼らに襲い掛かる。

 卓越した雪菜の槍捌きは構えた盾をするりと躱し、盾を持つ腕ごと切り落とすと、変身(トランス)によって髪をも刃へと変えたヤミの剣閃が猛然と斬り刻む。

 勿論、リザードマンとて木偶の坊ではない。

 仲間をやられたことに動揺することなく即座に反撃に移り、各々剣を振るい、槍を伸ばし、盾で防ぐ。

 だが、彼らは人と同じ武器を使っているだけで、そこに武器を使いこなすための技術がない。要は、ただ力が強く頑丈な素人でしかないのだ。

 その程度の相手に、達人ともいえる雪菜と宇宙最強の殺し屋とまで評された金色の闇が、数を揃えた程度で後れを取るはずもない。

 更に──

 

「《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》──《穿て》ッ! 《穿て》ッ!」

「《凍てつく氷弾よ》ッ」

 

 雪菜とヤミが処理できず、逃した相手は後方から容赦なく撃ち込まれるシスティーナとルミアの魔術の餌食となり、雷閃に貫かれ、足元を凍らされて動きを止められてしまう。

 その取りこぼしを、遅れてきた純太が対処する。

 イクサカリバーの大きく伸びたマガジンの底に手を添え、そのまま一気に押し込む。するとマガジン部が上へスライドし、格納されていた刀身が迫り出してくる。

 カリバーの名が示す通り、この武器は遠近両用。

 ガンモードとカリバーモードを使い分けられる万能武器なのだ。

 

「ふんっ──おらっ!」

 

 中途半端な長さのイクサカリバーを力強く一振り。

 収納されていた血の如く紅い真紅の刃を引き出して、ルミアの魔術【フリーズ・ショット】によって動きを止められたリザードマンへと一閃。

 純太に気付いたリザードマンが攻撃を防ぐために掲げた盾諸共に切断するほどの切れ味に、生半可な装甲は無意味である。

 

「──《その剣に光在れ》!」

「──《その剣に光在れ》!」

 

 二人が発動した【ウェポン・エンチャント】が純太とヤミにそれぞれ付与される。

 強化された剣戟は溶けたバターを切り分けるかのようにリザードマンたちを切り裂き、屍を積み上げて行く。

 数の有利などまるで意味を成しておらず、ただ一方的な蹂躙がそこにあった。

 

「ああもう、数が多いっ!」

 

 イクサの白い装甲を鮮血に染め上げながら、純太は思わず吐き捨てる。

 リザードマンの大多数はヤミと雪菜、そしてシスティーナが殲滅し、純太が相手にしているのは彼女らの討ち漏らしでしかないのだが、それでも倒した数は十を超え、二十も後半へと差し掛かろうかと言ったほどだ。

 

「ふっ──! 確かに、流石に多すぎますね」

「弱い相手ですが、キリがありません」

 

 ザンッ、とまとめて数体の首を地面に転がした雪菜とヤミが純太のぼやきに同意する。

 

「此処まで数が多いのは異常です。はぐれが自然に住み着いたとは考えられませんね」

「装備もどれも整っている上、統一されています。少なくとも普通のリザードマンではないでしょう」

「くそう……面倒事の予感がしやがるぜ」

 

 言いつつ、殲滅の手は止めない。

 着実に数は減って行っているが、それでもまだまだ数は多い。

 一体何処に隠れていたのかと疑問に思うほどだ。

 

「みんなっ! 私が一気に片付けるから、リザードマンたちをなるべく集めて引き寄せてっ!」

 

 システィーナの言葉に、三人は頷き合う。

 そして、再度リザードマンたちへと突っ込んだ。

 

「シャァッ!」

 

 剣を振るう度、リザードマンの体が切り裂かれ、鮮血を飛び散らせる。

 先程と変わらない殲滅戦のように見せかけ、じりじりと押されるように後退。攻撃を控えめに、より攻めやすくなるよう軽傷に留め、可能な限りリザードマンたちを集中させる。

 前衛三人がリザードマンたちを引き付けている間に、システィーナは隣に立つルミアへと手を伸ばす。

 

「お願い、ルミア。力を貸して!」

「うん。私の力、受け取って!」

 

 伸ばされた手を取ったルミアから、眩い黄金の光が放たれる。

 ルミアはシスティーナと比べて、戦闘力は低い。

 同じ魔術師であっても、システィーナは彼女とは隔絶した天才であり、魔術師として挑んだ場合、万に一つもルミアはシスティーナには勝てない。

 だが、ルミアには魔術とは異なる特異な力が身に宿っている。

 それが異能、〈王者の法(アルス・マグナ)〉。

 魔術師としての能力を何倍にも引き上げる支援の力。

 

「《荒れよ風神・千の刃を振るいて・──》」

「──先輩、ヤミさんっ!」

「よし来た!」

「はい」

 

 雪菜の呼びかけに応え、純太とヤミが群がるリザードマンを強引に薙ぎ払い、彼女の下へ飛び込むように移動する。

 二人が近付いたことを気配で感じつつ、雪菜は槍を頭上に掲げ、高らかに祝詞を唱える。

 

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る!」

 

 彼女の祝詞に応えるように、槍が眩く輝く。

 

「雪霞の神狼、千剣破の響きをもて楯と成し、凶変災禍を祓い給え!」

 

 瞬間、彼女を中心に三人を囲む半球状の空間が出現する。

 彼女の持つ槍、雪霞狼は魔力を無効化する機能を持つ、云わば魔術師の天敵とも言うべき武装。

 その力で雪菜はシスティーナの魔術に巻き込まれないよう防護結界を張ったのだ。

 

「《──・烈しく踊れ》ッ!」

 

 雪菜の結界が、彼女たち三人を囲んだ直後、システィーナの魔術が発動する。

 指定した地点に嵐を起こす【シュレッド・テンペスト】は真空の刃で嵐内部のものを切り刻む魔術。

 中心に近ければ近いほど威力は増すその魔術を、ルミアの異能で超強化し、範囲を拡大。

 吹き荒れる暴風は中心から離れた地点にいたリザードマンすら巻き込んで大きく渦を巻き、容赦なく彼らを切り刻んでいく。

 この魔術の威力自体は低い方なのだが、異能により強化されたシスティーナの【シュレッド・テンペスト】はそんなことはお構いなしに惨劇を巻き起こしている。

 

「──エッグいなぁ……」

 

 思わず、といった風に純太は微妙に頬を引き攣らせながら呟いた。

 既に魔術は収まり、周囲には死屍累々と斬り刻まれたリザードマンの死体が無惨に積み上げられている。

 無造作に集められた死体は自然にそうなったわけではなく、【シュレッド・テンペスト】の効果が終わった後でシスティーナが風の魔術で一か所に集めたのだ。

 集めた死体は炎の魔術で焼き払い、焼却する。

 ギルドに死体を持って行けば換金できるのだが、数が多すぎる上に別段金には困っていない。わざわざ持って行くのにも手間がかかるとなればさっさと処分してしまう方がいい。

 ナックルを外し変身を解除した純太は轟々と燃え盛る死体を横目に、錬環勁氣功によって周囲を索敵。

 相手の詳細が分かるほどに極まってはいないが、それでも大体のことは分かる。

 それによって既にこの場には自分たち以外の生命体が存在しないことが分かると、気配を消してシスティーナの背後に忍び寄る。

 

「ええと、これからテントを張るのよね。こっちも片付いたし、私も手伝って──にゃあっ!?」

 

 がばぁっ! 

 背後から華奢な少女の体を力一杯に抱き締める。

 驚きに身を竦めたのも一瞬、彼の存在を感じて反応する体から力を抜いた。

 

「ちょっと! こ、こんなところで何をするんですか!」

 

 もっとも、だからと言って彼女が素直にそれを表に出すかは別問題だ。

 システィーナの抗議の声を無視して彼女の髪に鼻を埋め、思い切り息を吸う。

 

「ひゃぁ、っ~~~~!」

 

 首筋をくすぐられるかのようなぞわぞわとした不思議な感覚に妙な声を上げそうになり、反射的に両手で口塞ぐ。

 そんな彼女の動作には頓着せず、ほんのり香る汗と何処か甘い彼女の体臭が混じった匂いを吸い込んで、体に血が巡って行くのを感じる。

 散々我慢を強いられていたせいか、あるいは戦闘を行ったことで気が昂っているからか。

 興奮は収まるどころか更に勢いを増して、ズボンを突き破りかねない程に激しく主張している。このまま放置してしまえば破裂してしまうんじゃないかと思えてしまう程パンパンに膨れ上がった一物はズキズキと鈍い痛みを訴えている。

 最早我慢など僅かにも出来そうになかった。

 

「やっ、んっ、んんっ! 駄目ッ、駄目だってばぁっ! こんなっ、んんっ、ところでぇっ!」

 

 大胆に腹や太腿を露出した制服(なんと原作準拠である)に無遠慮に手を突っ込んで彼女の肢体をまさぐって行く。

 システィーナが甘い吐息を吐きながら制止するが、純太の耳には届かない。

 少女の柔らかな肉体を思う存分に堪能している。

 

「ひうっ! やぁぁぁ……胸の先、んんっ、んっ、ん~~~~っ!」

 

 口では何とでも言おうとも、体はチョロい彼女らだ。

 純太に触れられれば自然と体は彼を受け入れるようになっているため、止めようとする割には口だけで実際に手で止めようともしなければ、彼の腕から逃げようともしない。

 それをいいことに手は彼女の程よく実った膨らみを揉みしだき、ツンと尖った先端部を指先でこねくり回す。

 朝に触れたイラストリアスらの巨を超えて爆乳の域に達したそれには遠く及ばないが、手の平に程よく収まる触り心地のいいシスティーナの乳房は触っていて飽きない。何より感度がいいのもたまらない。

 

「あふっ、駄目っ、だめぇ、純太さん、テントっ! テント張らない、と、んぁぁぁ……っ」

 

 台詞こそ真面目で節操なしの純太の淫行を制止しようとしているように見えるシスティーナだが、その実臀部を自ら彼に押し付け、ぐりぐりと左右に揺らしているのだから如何にその言葉が無力か分かろうというものだ。

 そして、自分が誘うように尻を動かしていることに彼女は気付いていない。完全に無意識だ。

 あざといにも程がある行動だが、性欲が我慢の限界に達している純太にとっては火に油。

 乳房を揉みしだく手をそのままにもう片方の手をミニスカートの中に滑り込ませ秘部を守るショーツに触れる、と。

 

「……お?」

「あっ、やっ、うぅっ、~~~~!」

 

 くちゅ、と指が濡れる感覚。

 体を愛撫され、すっかり準備万端となったシスティーナの秘部はこんこんと愛液を溢れさせ、ショーツをぐっしょりと濡らしていた。

 薄布一枚では到底堰き止められず、太腿にまで垂れているほどだ。

 多少は解しておくか、と思っていた純太はいやらしく唇を歪め、システィーナは恥ずかしそうに顔を赤くして口をつぐむ。

 目の前に据え膳を用意され、飢えた男が耐えられるはずもない。

 辛うじて残っていた最後の理性も焼き尽くされ、息を荒げながら慌ただしくズボンのベルトを外し、パンツごとズボンをずり下す。

 外気に晒されたペニスは腹に腹に着くかのように反り返り、血管を浮き上がらせるほどに大きく勃起している。

 

「やぁっ! 待ってっ! 待って純太さんっ! するのはいいけど今は待ってっ! 今純太さんの入れられたら──」

「無理」

 

 危険なほどに勃起した剛直の気配を察知したシスティーナが上体を捻って慌てて純太を制止しようとするが、もう遅い。

 既に切先を彼女の秘部に合わせていた純太は、彼女の声を言葉少なに拒絶して一気に膣内へと突き入れた。

 

「おっ、ひぐぅぅぅっ!」

 

 その途端、システィーナは背中を仰け反らせながら嬌声を嚙み殺す。

 ショーツをずらして挿入されたペニスは膣奥まで一気に侵入し、ただ快楽を感じるだけの機関と成り果てた子宮を亀頭で殴りつけられ、ガクガクと全身を震わせる。

 

「はっぁぁぁぁ……」

 

 破裂しそうな程に硬く張り詰めた怒張を力強く揉み解すかのような膣内の感触に、口の端から涎が零れる。

 だらしなく快楽に耽る彼は、欲望のまま腰を動かし始めた。

 

「んんんっ! あっ、待って、んんっ! あひっ、あっ、あんっ、んんっ! んっ、んっ、んっ、んくっ、くひっ、あひっ、ひっ、ひっ、ああぁぁぁっ!」

 

 人並外れたペニスに膣内を容赦なく抉られるシスティーナは、暴力的な快感に立っていられず、カクン、と膝から力が抜けた。

 

「んくぅぅぅっ! 胸、強、いぃぃ……っ! ひゃあんっ!」

 

 立っていられなくなったシスティーナを支え、挿入したまま四つん這いに。

 荒々しくスカートをめくり上げ、キュッと引き締まった白い臀部をあらわにさせると、両の指が食い込む程の力で鷲掴み、勢いよくピストンを開始した。

 

「んぉぉおっ!? おっ、おっ、おひっ、おくっ、おぉぉっ! いきなりっ、んぃぃぃっ! はげっ、激し、いひぃぃぃっ!」

 

 肉を打つ、乾いた音が周囲に響く。

 相手のことを一切考えていない性欲処理のためだけの肉の交尾。

 力任せに巨大な肉棒を突き入れられるシスティーナは、それすら快感に変換して喘がされる。

 

「はひっ、はひっ、おっ、おぉぉっ、おひっ、ひっ、くふっ、ふきゅぅぅぅっ! あっ、あっ、あっ、ああっ! おっ、おっ、おっ、んぉぉぉっ! 奥ぅ、ずりずりされってぇっ! んっ、んっ、んあああああっ! あっ、あんっ、あんっ、あぁっ! だめっ! これすぐっ! んあああっ! イっちゃうからぁっ! あぐっ、うっ、ほっ、はっ、はっ、おほぉっ!?」

 

 華奢なシスティーナの体に伸し掛かり、張り詰めたペニスを肉穴に打ち込み続ける。

 粘ついた愛液が掻き出され、ピストンの度に攪拌されて結合部で白く泡立つ。

 

「ああっ! あっ、あああっ! んぉぉぉっ! イクっ! 純太さっ、んぁああああっ! イクっ! 私っ、もうっ! んいぃぃぃぃっ! イクっ! イっちゃうからぁっ! おねがっ、あひぃぃぃぃっ! もう少しぃっ、んあっ、ゆっく、りぃぃぃぃっ! んぉおおおおおおっ」

 

 勿論、それを純太が聞き入れるはずもない。

 切羽詰まったシスティーナの嬌声交じりの懇願は性欲に支配された彼の耳には届かず、それどころか余裕のない女の声に気を良くしてますます欲望を漲らせる。

 女の媚肉を好き勝手に貪られる彼女の方は休みなく叩き込まれる暴力的な快楽にひたすらに翻弄される。

 

「イクっ! イグッ、純太さんっ! 私もうっ、イっちゃうっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、イクっ、イクっ、イクイクイクイクイ、クぅぅぅぅぅぅぅっ! ──っはぁっ、はっ、はっ、ああっ! やだっ! イった! イったからぁっ! んあああああっ! あっ、あっ、あっ、あっ、んおおおおおっ!? 少しっ、おっ、おっ、おおっ、おっ、おっ、やしゅませてぇぇぇぇっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 激しいピストンに瞬く間に絶頂させられたシスティーナは息を整える間もなく再び暴力的な快楽の波に晒される。

 一突き毎にあふれた愛液がペニスに掻き出され、飛び散った飛沫が乾いた地面を濡らしていく。

 

「いぎゅっ、はっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あっ、ああぁっ! あんっ、あんっ、あぁんっ! イったぁっ! もうイったからぁっ! はひっ、あひっ、あひぃぃぃぃっ! んぁぁぁああああああああああっ! おぐぅっ、奥だめぇぇぇ……っ! 子宮の入り口虐められたらぁぁぁ……またすぐきちゃうからぁぁぁああああっ!」

 

 華奢な彼女の背中に伸し掛かるように抱き締めて、いよいよ限界間近となった純太はピストンにスパートをかけて行く。

 

「あんっ、あんっ、あんっ、ああっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あぁぁぁああああああああっ! 今ッ、ビクッてぇぇぇえええええええっ! あっ、あっ、あっ、おっ、おっ、おっ、おひぃいいいいいいっ! あっ、あっ、あっ、イクっ、またイクっ! さっきイったばっかなのにまたすぐきちゃうぅぅぅっ! いぎゅっ、純太さっ、ああっ! 純太さぁんっ! イって! 純太さんっ、あなたも、おぉぉぉっ、一緒にぃっ! あっ、あっ、あっ、あっ、イクっ! もうっ、もうもうもう──っ! んぁあああああああああああっ!」

「──っ、出る……っ」

 

 水音に交じり肉と肉がぶつかり合う音が響く中、一際強く奥へとペニスが突き込まれると同時、精巣内でぐつぐつと煮詰められた欲望が放出される。

 液体というには粘度が高く、細かくぐちゃぐちゃに砕かれたゼリーのような精液が噴水のような勢いでシスティーナの膣内を穢す。

 

「あっ……あっ……あっ……せーえき……どろどろ……私の中、注がれてるぅ……んぁぁぁ……っ」

 

 法悦に浸った表情でうわ言のように呟きながら、絶頂の余韻に体を震わせる。

 ビクン、ビクン、と陸に上がった魚のように体を跳ねさせる彼女を抱きすくめて押さえつけながら、互いの性器をぴったりとくっ付けたまま純太は腰をくねらせる。

 ゼリー状の精液が尿道を通る感覚を感じながら最後の一滴まで少女の膣へと注ぎ込む。

 射精の心地よい疲労感に吐息を吐きながら彼女のさらさらと手触りのいい銀髪に顔を埋める。

 香水とは違う甘い少女の体臭に交じる、発情した雌の香り。

 賢者タイムもそこそこに、ふつふつと欲望が沸き上がってくるのを感じた。

 

「あー……駄目だな。ぜんっぜん、治まらねぇ」

「んぁぁぁ……っ」

 

 ずるりとシスティーナの秘部からペニスを引き抜く。

 精液と愛液でコーティングされた肉棒は日の下にあってぬらぬらと淫靡な光を放っており、未だ治まらない興奮を示すように硬く反り返るほどに雄々しく勃起状態を維持したままだ。

 

「はぁ……はぁ……い、いくら何でもいきなりすぎよ、馬鹿ぁ……私のおまんこ壊れちゃうじゃないぃ……んぁっ……お腹の中、熱い……」

 

 吐息交じりの言葉。

 首を捻り顔を向けたシスティーナは頬を紅潮させ瞳を潤ませながら弱々しく睨んでいる。

 責めるような口調だが、声音はとろりと蕩け迫力に乏しいばかりか甘えているようですらある。

 目も覚める美少女の淫靡な姿に、万年発情期の純太が反応しないわけがない。

 びくりとペニスが跳ねたかと思えば慌ただしくコートを脱ぐや地面に広げ、その上にシスティーナの体を横に転がすように寝そべらせる。

 

「んあっ? ま、待って、まだイったばかりだからぁ……んんっ! やだ、擦り付けないでよぉ……」

 

 純太の巨大な逸物を入れていたシスティーナの膣口はぽっかりと口を開いたまま閉じず、とろりと蜜を溢れさせている。

 誘われるように切先を口に添え、再度奥まで突き入れた。

 

「んぁあああああああっ! あ、あ、あぁ……また奥までぇ……大きいの入って来たぁ……んくぅっ」

 

 先刻出したばかりの精液が潤滑油となり、僅かな抵抗もなく長大なペニスが最奥にまで突き進み、亀頭が子宮口をぶちゅりと潰す。

 ぶるり、とこれから起こるであろう快楽を想像したシスティーナは怯えるように体を震わせ、左右に小さく首を振った。

 

「待って、まって、お願い……今は駄目なの、今そんなことされたら、私壊れちゃうか、らぁっ!?」

 

 弱々しい少女の姿に嗜虐心を大いに刺激された純太は猛然と腰を振る。

 テクニックも何もない、力任せにただ自分が気持ちよくなるためだけの腰振り。

 もはやオナニーと大差がない自分本位な性行為であっても、一部の隙間もなく膣内を埋め尽くす勃起ペニスであれば、弱点も何もかも余すことなく刺激できてしまう。

 結果、システィーナは暴力的な快楽に襲われる。

 

「んぉおおおおおおっ!? お、ほっ、ほっ、ふっ、ふっ、はっ、あっ、んきゅぅぅぅぅぅっ! うっ、うくっ、はぁっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あんっ、あんっ、あっ、あぁああああああああっ」

 

 容赦なく叩き付けられる快楽に翻弄される哀れな少女は逃げることも出来ず、喉を震わせて男を喜ばせるために嬌声を上げる。

 整った顔が快楽に歪み、喘ぐ様は男の支配欲を大いに満たしてくれる。

 ぶちぶちと乱暴にシスティーナのシャツを開き、胸元を露出させる。

 

「……うわ、エッロ」

 

 あらわになったブラジャーに、思わず純太はそう口にした。

 白いレース地のブラは肌が透けるほど薄く、薄ピンクの乳首がまるで隠れていない。

 明らかに男を誘うという用途で用意された煽情的なブラジャーだった。

 かぁ、とシスティーナの顔が興奮とは違う理由で赤く染まる。

 

「だ、だって、こういうのの方が、貴方が喜んでくれると思って……駄目、だった……?」

「なわけあるかっ」

 

 理性が遥か彼方へと旅立つのを感じながらもそれを手繰り寄せようとはしないまま、一段とペニスを膨らませ、白く泡立つ彼女の恥部を責め立てる。

 

「んぁんっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あんっ! あんっ! あぁんっ、あっ、あぁっ! あひっ、あふっ、あぁっ、あっ、あっ、あっ、んっ、んんっ! やぁんっ! 胸っ、強く揉んじゃぁぁぁ……っ、あぁああああああっ! んくぅ、乳首ぃ、くにくにしないでぇぇぇ……んぁあああああああっ! あっ、あっ、あっ、ああっ! あぁああああああああっ! 胸とおまんこ両方はダメェっ! あっ、あっ、あっ、私壊れちゃうっ! 気持ちよすぎて壊れちゃうのぉっ!」

 

 システィーナの小振りな乳房を形が歪むほどに強く揉みしだき、ツンと尖った乳首を指で摘まんでぐにぐにとこねくり回してやる。

 勿論、そうしている間も彼女の最奥を亀頭で押し潰して躾けるのも忘れない。

 男を誘い挑発する雌への躾け。

 徒に欲望を刺激する彼女への教育。愛する主人の苛立ちを感じ取った雌穴が許しを乞うように甘えてくるが、構うことなく肉棒を突き立てる。

 

「あんっ、あんっ、ああっ! やっ、ふぐっ、深いぃぃぃ……っ! あっ、あっ、あっ、おっ、おっ、んぉぉぉっ! おふっ、あひっ、ひっ、んくぁああああああああっ!」

 

 休みなくシスティーナを責め立てている純太だったが、先刻射精したばかりということもあってすぐにまた射精感が高まるのを感じた。

 敏感なままのペニスをぐずぐずになった媚肉が懸命に抱き締めてくるのでさもありなん。

 純太の射精の兆候を敏感に感じ取ったのか、システィーナは潤んだ眼差しで両腕を彼の首に回す。

 

「おっ、おっ、おっ、んくっ、うっ、あっ、あああっ! 純太さっ、んくぅっ、純太さぁんっ! キスっ、キスしてぇぇぇ……っ! あっ、あっ、あっ、あんっ、あんっ、あぁあああっ! さっきから気持ちいいの止らなくてっ! んっ、んっ、んっ、んんっ! んぁぁぁあああああっ! ずっとイってるのぉっ! んぁぁぁぁ……あっ、あっ、あっ! キスしてっ、ちゅー、んぁぁぁっ、おかしくなっちゃうからぁぁぁ……私を繋ぎ止めてぇぇぇ……んむっ!? んっ、んむぅぅぅ、はっ、はぁ、んちゅ、ちゅっ、あぷっ、んれぇ……あぁ……くちゅっ、んちゅ、れちゅっ、んふぅぅぅぅっ」

 

 獣のような声でイキ狂い、支離滅裂ながらも可愛らしく懇願されれば断る理由もない。

 互いが溶け合うような肉と肉とが絡み付く口付けは純太も好物だ。

 システィーナの膣肉を隙間なく抉り、凌辱しながら唇を重ね合わせて美少女の体液を啜り取る。

 恋人や夫婦の愛のあるセックスではなく、発情した雄と雌の、理性を飛ばしたケダモノの交尾だった。

 

「んむぅぅぅっ、ちゅるっ、ちゅぅ、ちゅっ、んれぇぇぇ……あふっ、おぐっ!? おっ、んきゅぃっ、おひぃぃぃぃぃっ!? 激しっ、んぶっ、あぁむぅぅぅぅぅっ! んじゅっ、じゅるるるっ、あふっ、あぶっ、んべっ、んちゅぅぅぅぅぅっ! はっ、んむっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んんむぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ!」

 

 いよいよ切羽詰まってきた純太は衝動のまま小刻みに腰を打ち付け、亀頭を甘噛みする子宮口にぴたりと押し当て競り上がってくる欲望を制止することなく開放する。

 堰を切ったように子宮に流れ込む白いマグマにシスティーナは激しく体を震わせ一際大きな絶頂に嬌声を上げ──ることなく、重ね合った純太の口に唾液ごと飲み込まれた。

 激しい絶頂の波にシスティーナも疲弊したようにぐったりと体を弛緩させる。

 それでも首に回した腕は解くことなく、重ねた唇の中でチロチロと互いに舌と舌とを舐め合い、唾液を交換。

 

 びゅくびゅくと未だ注がれる白濁液の熱と絶頂の余韻に彼女はうっとりと目を細めた。

 

 




【キャラクター紹介】
・システィーナ=フィーベル
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」に登場するキャラクター。魔術に関する天賦の才を持つ。
周囲が絶品料理の値引きをする中、一人だけ食べ放題チケットを渡したため散々に犯されるはめになった。が、本人は口ではなんと言おうと幸せそのものである。

・ルミア=ティンジェル
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」に登場するキャラクター。システィーナとは原作同様仲が良く、親友同士。巨乳。

雪菜、ヤミ、ルミアのエロは次回になります
明日には投稿しますので、年単位で待つことはありません

後書きに解説や紹介を乗せるべきか

  • 設定集として一話にまとめてほしい
  • 後書きに全て書き込む
  • キャラ紹介だけで設定などは別にまとめる
  • 俺は本文だけでいいんだよ!
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