※この作品はR-18です。

恥丘征服   作:トラロック

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03 普通の性交渉

 

 季節は夏の入る前の下水月(六月)。

 ほぼ日本の四季と一緒で春夏秋冬があるのだが、地域によって差がある。

 気温の差はアバターだからか、よく分からなかったがそれほど違いは無さそうだ。

 下層の床や壁の作業の為の足場作りが終わり、柱の設置作業だが土台作りに手間取っている。

 職人には持てない重いものはナコトが手伝う。

 全てを任せっきりにはしない。土台が崩れれば全てが台無しになるので、仕事は真面目にやってもらう。

 近隣に出た新しい村では作物の収穫が始まったようだ。王国から遠い場所にも関わらず、人が来てくれるのは少しうれしい。けれども今作らせている施設は多くの人間を住まわせるものではない。

 特に決まった休日は無いが、気晴らしに南下して荒野となっている地帯を散策し、豚鬼(オーク)達を観察する。

 他にもモンスターが居るようだが、亜人達が独自の文化を持つのは少し興味がある。

 人間離れした顔。異形種のモンスターの存在。

 それが何の違和感も無く存在する世界は正しく不思議の塊だ。

 森の中を散策し、情報で得た『三日月湖』と呼ばれる場所を探り当て、隠された森妖精(エルフ)の国を見つけておく。

 一般的な伝承にある森妖精(エルフ)は見目麗しいが身体は細く、胸の大きな個体は少ないらしい。

 人間との間に生まれる半森妖精(ハーフエルフ)は更に華奢な体型だと言われている。

 長く尖った耳だけ、というのは少し残念な気もするけれど。

 狩猟民族で人間とのかかわりが少なく、敵対するスレイン法国と長きに渡り戦争状態。

 時々、捕獲されては同盟国のバハルス帝国に奴隷として売られるとか。

 宗教国家と聞いていたが酷い事をするものだと思いはするが、そこは政治として何か理由がある筈だが。

 ナコト個人は政治に介入する気は無いので貴重な情報として楽しむだけだ。

 森妖精(エルフ)をたくさん捕まえてハーレムを作る気は無い。

 女遊びは長持ちしないので、たまに裸が見られれば充分だ。

 現実の世界であっても結婚後は夫婦生活がマンネリ化し、浮気に離婚は当たり前のように起きる。

 一生一人の女性を愛する生活はなかなか出来るものではない。

 ゲームでも全部クリアしてしまえば次のゲームがやりたくなる。

 同じ生活を長く続けるのは意外と重労働であり、拷問に匹敵する。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ふと自分の冒険者としての名前を度忘れしたのでプレートを確認する。

 『モーデ』とどうして名付けたのか、今となっては全く思い出せない。それくらい適当につけてしまった。

 殺した女の名前とかもきっと覚えていない。

 特に愛着は無いし、前の拠点は綺麗に撤去している。

 知り合った三人のメイド達も二年経った今も何処かで働いていると思われる。

 気晴らしに地味な仕事に勤しんでいたら次の昇進試験の権利を得た。

 金級試験は複数の冒険者と共にトブの大森林の調査だった。これは下級冒険者へ伝える情報集めとなっていた。

 いくら複数とはいえ数十人程度で広大な森林地帯の全ては調べられない。それくらい広い森だ。

 この森には三大魔獣と呼ばれる主のようなモンスターが居て、彼らが森の秩序を維持していた。

 その魔獣達は規則で討伐はできないので出会ったら退散する事になっている。

 倒しては駄目だと明記されているので興味本位で戦う事は出(・)来(・)る(・)だ(・)け(・)禁(・)止(・)だが、自衛の為の最低限度の戦闘は許されていた。

 今回、チームを組むのはミスリル級冒険者『漆黒』と銀級の『漆黒の剣』と金級冒険者チームが三つ。

 初めての大所帯にナコトは驚く。

 銀級の『漆黒の剣』も試験対象となっていた。

 今回はミスリル級冒険者が同行してくれるので、とても心強い。彼らの噂は色々な街で聞いていた。

 単騎で千体以上の骸骨(スケルトン)や骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の討伐。

 低い階級にしては派手な活躍だとか。

 ナコトからすればユグドラシルプレイヤー候補だと思っているチームだが。

 別に全てのプレイヤーが自分の敵だとは思っていない。

 大したアイテムは持って無いし、元の世界に戻る方法も知らない。

 ソロプレイヤーでもあるので。

 仲間が居ると諍いが起き易い。仲良くなったとしても完全に信用することは基本的にしない。誰か彼か自分の欲に忠実なところがあるものだ。特にゲーマーでまともな人間は世界王者(ワールドチャンピオン)でも無い限りは居ないのではないか、と思う。

 漆黒がプレイヤーなら『美姫ナーベ』という女性冒険者は手が出せない。

 おそらく洗脳対策は取っている筈だ。

 少なくとも熟練のプレイヤーは間抜けが少ない。それに簡単に姿を現したりしない。

 リーダー格の『モモン』は聞き覚えがあるけれど、当人どうか探りを入れるのは危険だ。

 こういう背中に大きな剣を背負っている長身の全身鎧(フルプレート)タイプは信用ならない。

 もし、自分なら地味な軽装鎧に落ち着ける。

 顔を見せないのは見せられないからだ。というのは単に被害妄想だが。

 他のチームは平均的な冒険者として、セオリー通りの姿をしている。

 別の金級も同様だ。

 この世界の冒険者で奇抜な衣装はなかなか見かけない部類に入る。

 

「よろしくお願いします」

 

 普段は仮面を被る事が多いナコトだが、別に素顔を晒せないわけではない。

 アバターが素顔というのも滑稽だが。

 身を潜める時以外は露出が多い。

 自分の顔は平均的なデフォルトの中から選んだものに少し色をつけた程度。

 人ごみの中に入れば特定は難しい。それくらい普通の顔だ。

 性別が男だから、というのもある。

 

「よろしくお願いします」

 

 いちいち握手する文化が無いのは分かっていたが漆黒は手を出してきた。

 こういう手合いは逆に珍しい。日本の一般プレイヤーだとすぐ確信した。

 という事は臆面にも出さずに無骨な黒いガントレットの手と握手を交わす。

 それだけで何かが分かるような特技は無いけれど、力は強いな、という印象は受けた。

 横に控える美姫ナーベとやらは完全に無視してきた。

 自己紹介はあまりせず、早速移動を開始する。

 エ・ランテルからトブの大森林まで馬で移動するらしいが、乗馬スキルとか持っていたっけ、と首を傾げるナコトことモーデ。

 馬車移動ですっかり忘れていたし、馬に乗る仕事は今までやった事が無かった。

 

「荷馬車を調達しましょう」

 

 金級の冒険者の一人がいい、モーデはもちろん賛同した。

 移動手段についてはそれぞれの自己判断による。

 面白い話題は無いけれど、一人のソロプレイヤーであるモーデは黙って先輩冒険者の意見を聞く事にしていた。

 その中で話題はやはりミスリル級『漆黒』の黒騎士『モモン』の武勇伝が始まる。

 ナコトが飛びまわっている間のことなので詳細はまったく知らないが、人知れず伝説を作ってきたらしい。

 それはつまり目撃者が居ない活躍、というだけではないのか。

 自作自演にありがちな事件のでっち上げ、とも言える。

 自分なら疑うし、証拠を見せろと言うし、それを想定した証拠があっても疑う。

 何もかもが自作自演なのだから何もかも揃っていては疑ってください、と言っているようなものだ。

 特に偽装を心得ている熟練のプレイヤーならば看破は難しいけれど、信用する事は絶(・)対(・)にしない。

 話しに余計な口を挟まずに聞いていると苦笑しそうになる。

 この世界の住人はとても純粋であまり人を疑わない。それは日本人が失った優しさかもしれない。

 時々、心優しい対応を取られると人間のクズが服を着て歩いている事を自画自賛しているナコトでさえ心が浄化されて成仏するのではないかと思わせる。

 少なくとも古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)よりも黒くて汚い心が、だ。

 第十位階の浄化魔法並みの純粋さ。

 二年近く住んでいて理解した現地の人間の温かさ。

 涙が出そうになる。

 少なくとも元の世界に帰りたい、という希望が薄れるほどにはこの世界はとても居心地がいい。

 

「………」

 

 そんな事を思っていると美姫ナーベを見つめている自分に気が付く。

 目つきが鋭い美人冒険者。

 黒い髪の毛を後ろで一つにまとめ、簡素な軽装備。腰には剣が収まっていた。

 外套で身体を隠しているが珍しい装備というわけではなさそうだ。

 自分の装備も簡素で面白みに欠けるけれど。

 仮に彼女のプレイヤーならばこちらのたくらみは簡単に阻止される筈だ。それにギルド所属だと精神支配した時はあっさりとバレてしまう。

 ステータス画面で名前の色が変わる現象が起きてしまうので。

 それともし『NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)』ならば機械的な反応を示す筈だ。

 アバターの表情や口が柔軟に動くので見た目から特定することはおそらく出来ない。

 それでも人間とNPCには決定的に違うところがある、筈だ。

 自分にもNPCが居れば良かったのだが。居ないのでどうしようもない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 周りの話しに耳を傾けていると昼ごろに現場に到着する。

 大人数で森の中のモンスターを一掃するわけではなく、現場の実地調査が主(おも)な任務だ。

 その合間に薬草を取っても良いし、多少のモンスターを倒してもいい。

 問題は生態系に影響を与えるようなボスクラスモンスターとの戦闘は出来る限り、禁止という規則になっている。

 

「三チームほどに分けますか?」

「そうですね。バランス良く分けましょう」

 

 まず三チームの金級冒険者は順当に分かれる。その後で漆黒達が加わる。

 銀級の『漆黒の剣』は二チームに別れ、モーデは最後に一番少ないところに入る事になった。

 ミスリル級とは別チームになった事で勘ぐられる機会が無くなり、少し安心した。

 後でこっそりと接触があるかもしれないが、こちらは話す事は無いし、なんか関わってはいけない予感があった。

 美姫ナーベが一人で接触を図るなら考えないでもない。

 とはいえ、精神支配を使ったらすぐさま感知されてしまう筈だ。それにバカ正直に自分の正体を明かすわけが無いと思うけれど。

 班分けが終わり、三方向に森の中に侵入する。

 入り口附近から危険なモンスターが居るわけは無く、一時間ほど奥に行かなければならない。

 周りに注意しつつ進むこと一時間。

 目印らしいものは無く、逆に自分たちで木々に目印を付けていく。

 途中で高い位置に目印がある木を見つけた。それは十年以上も昔に冒険者チームが付けたもののようだ。

 時代を感じさせる。

 それと気が成長するならば転移した世界はゲームの世界とは違う、という証明の一つかもしれない。

 いちいちゲームと対比するのは思考の混乱に繋がりそうだが。

 

「植物に擬態したモンスターに気をつけて」

「了解」

 

 四方八方、生い茂る植物のどれかがモンスターだとしても特定するのは難しい。

 こういう場合に感知魔法の出番なのだが、魔法には弱点がある。

 感知魔法を使うと魔力反応を相手に感知されてしまうリスクがある。

 敵を感知する事は敵もこちら側に気付く事でもあり、襲われるリスクが高くなる。

 だからこそ滅多に使ってはいけないものだ。特に未知の領域などでは。

 もちろん相手よりレベルが高ければ低レベルに感知される事は少なくなる、という事もある。

 例えばここで『人間種魅了(チャームパーソン)』をかけて通じない場合は高レベル冒険者が居るか、対策アイテムを持っているか、だ。

 最強化の魔法は全員に通じた。そして、簡単な質問の後ですぐ解放する。

 他人を操っても仕事は真面目に行(おこな)う。

 不正してまで昇進する気持ちが湧かなかったので。

 調査を続けつつモンスターとも出会わないまま一時間が経過した。

 一応の目的地があり、全員がそこに向かっている。

 トブの大森林内部にはいくつかの水溜りのような湖があり、冒険者達の休憩施設となっている。

 更に奥には亜人種の蜥蜴人(リザードマン)達の集落があると言われている。

 見た目は凶悪だが性格は温厚で食糧不足以外では滅多に争いにならない。

 逆に掟には厳しく、仲間が外の世界に向かう場合は身体に刺青を入れなければならない、とか。

 森で生まれたものは物で死ぬのが宿命。という風潮でもあるのかもしれない。

 物陰から小鬼(ゴブリン)等が現れたりせず、調査は順調に進められた。

 地面の様子や穴の有無。上から襲撃があるのか、どうか。

 薬草類はいくつか見かけたが珍しいものは無かった。

 毎回、お約束的にモンスターが現れて戦闘に入るのはゲームでは普通だが、この世界では安全だと言われている場所で危険に遭遇する確率はとても低い。

 仮に大型モンスターが居れば何者かの意思でも介在しないとイベントが発生しないのではないかと思われる。

 怪しいのはやはり漆黒のモモンという冒険者だ。

 もしギルド関係者ならシモベなどをけしかけてくる可能性がある。

 カルネ村のように。

 とはいえ、そうそう都合よく敵が現れるのものではない。

 敵より今は仕事だ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 更に時間をかけて調査した後で開けた場所に出た。

 既に先客が居り、昼食や寝泊りするテントの設営などをしていた。

 モーデ達が昼食の用意をするころに漆黒の居るチームが合流する。

 三チーム共に安全に調査を終わらせてきた事をそれぞれ確認していく。

 

「今日はここで一晩を過ごし、明日はもう少し奥に行きます」

 

 最終目的地は蜥蜴人(リザードマン)の集落を少し超えた場所にある湖となっている。

 無理に蜥蜴人(リザードマン)の集落に行って、そこを突っ切ることはしない。

 

「この辺りは多くの冒険者達が来ていますから、大したモンスターは居ないかもしれません」

 

 後、木の実を求めてやってくる蜥蜴人(リザードマン)達に撃退されている事もある。

 温厚とはいえ戦闘部族も多く抱えているので大抵のモンスターに遅れは取らない、と言われている。

 少なくとも普通の人間より強いらしい。

 こういう休憩地に蜥蜴人(リザードマン)が現れても先客が例え人間でも無理に追い払ったりしないという。

 もちろん永住目的は叩きだすかもしれない。

 森の奥は電気的な証明や民家が近くにあるわけではないのですぐに薄暗くなる。

 夕方はほぼ夜間と大差なくなる。なので永続光(コンティニュアル・ライト)を設置していく。

 一般市民にとって高額な部類だが、夜間も活動する冒険者や専用の仕事関係には必須のマジックアイテムだ。

 それぞれの調査報告をつき合わせ、後半は他愛も無い会話へと変わり、日が暮れていく。

 体感時間だけで判断した冒険者は寝寝床の用意を整える。

 外部から虫やモンスターが近付かないように匂いのきつい臭い袋を少し離れた場所にいくつか設置していく。

 慣れた冒険者は比較的平気そうだがモーデはもちろん美姫ナーベも鼻をつまむ。

 他の冒険者の何人かも同じ事をしているのでプレイヤーだけ特別という事はないようだ。

 しかし、とても臭い。

 特別に調合された薬草かもしれない。腐った死体より酷いので。

 モンスター対策を終えた後は集めた情報の整理に数時間をかけ、色んな話し合いを行(おこな)う。

 安全な道順や薬草の量。沼地や穴の有無。大型モンスターの有無。

 完璧だと低級冒険者が何の苦労もしなくなるけれど、危険な地域に放り込む気は元より冒険者ギルドには無いらしい。

 安全な部分は薬草などを採取する業者用として残し、森の中で生活するものとはまた別に扱う事になっている。

 

「蜥蜴人(リザードマン)の集落があるから人食い大鬼(オーガ)達の大群が埋め尽くすのは考えにくいですよ」

 

 少なくとも蜥蜴人(リザードマン)は相当な数が居り、人食い大鬼(オーガ)よりも強く賢い存在だ。

 集団戦法も取れるので森を荒らすものは即座に退治する、と冒険者達は語る。

 一部の少数が森から抜けて近隣の村に向かう事がある。

 絶滅するほど追い詰めたりしない。それは生態系を維持するのに必要だと本能で理解している、という意見がありそれぞれ納得していく。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 深夜に襲撃される事も誰かに接触を図られる事も無く翌朝になり、三チームのまま更に奥に向かう事になった。

 ここまで来る冒険者は金級以上と言われていたが、王国全体で見れば絶対数は上の階級ほど少なくなる。

 最高位のアダマンタイト級は現時点では『蒼の薔薇』と『朱の雫』の二チームしか居ない。

 そこまでに至る道が険しい。というよりは責任を取りたがらず、あえて昇進しない者が大勢居るとも言える。

 ミスリル級以上は国からの要請に強制参加させられる義務が課せられるとか。

 それだけ貴重な戦力を防衛に使わないのは勿体ないと国は考えているのかもしれない。もちろん、戦争には参加させられないことは変わらないけれど。

 上位冒険者の全てが強者というわけではなく、仕事の達成率や国への貢献度だけで上に昇りつめることもある。

 事実、バハルス帝国のアダマンタイト級の実力は大した事が無い、と言われている。

 実力以外でも上に行く事は不可能ではない、のかも。

 それはそれとして知名度が上がれば目立つことこの上ない。だからこそ熟練のプレイヤーならば地味な仕事で身を潜めるかもしれない。

 名を上げて偉そうにする者も居るかも知れないが、ナコトは地味な方を選んでいる。

 ソロプレイヤーとしてギルドを持つチームと敵対したことは無く、襲撃を受けるような恨みは買った事が無い、筈だ。

 それでも仲間意識の強いギルドとは会いたくないし、敵対もしたくない。

 とても面倒臭くなるので。

 

「この先に蜥蜴人(リザードマン)の集落がありますが、少し遠回りになる道を進みます」

 

 地図上では蜥蜴人(リザードマン)が作った人工の生簀(いけす)を避けるのだが、仮に現場に出ても何もしなければ彼らも攻撃してこない、事になってるいる。

 淡水魚を育てて食料にしている。

 彼らとて狩猟ばかりでは餌が枯渇するかもしれないと危惧している。だからこそ自分たちで食べる分を生産する事にしている。

 当たり前のようだが、ある程度の知識が無ければ失敗した時のリスクが大きい。

 農業とて延々と同じ畑で作物は育てられない。

 それを一般的に『連作障害』などと言われる。

 土の栄養は無限ではない。細菌類によっては作物が育たなくなる事もある。

 

「この当たりは薄暗くモンスターの発生頻度が高くなりますので気をつけてください」

 

 人型や獣ばかりではなく植物そっくりのモンスターも居るし、木の中に隠れている森精霊(ドライアード)や木そのもののモンスターも居る。

 生い茂った森の中ではさすがに大型の鳥のモンスターなどは降りてこないけれど、油断は禁物だ。

 毒を持つ菌類モンスターも何処にいるか分からないので。

 出現頻度によって危険度も変わってくる。

 大勢のチームとて対応できないモンスターというものは存在する。

 その代表格が石化と猛毒を持つ巨大石化の魔眼の毒蜥蜴(ギガント・バジリスク)という大型モンスターだ。

 頭に鶏冠(とさか)がある蜥蜴モンスターで難度は83。

 アダマンタイト級でも単独撃破は難しく体液が猛毒。

 相手にするのがとても難しいと言われている。

 

「蜥蜴人(リザードマン)の集落が無事なら近場は割りと安全だと思いますが、いざとなれば犠牲を出してでも撃破するか退却です」

「了解しました」

 

 今回武器を持っていないモーデは真っ先に逃げてよい事になっている。銀級でもあるので。

 ミスリル級の漆黒のモモンが何らかの活躍をすれば生き残る確率が高まるのでは、という声はあるが楽観視は誰もしていない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 そうして規定の距離まで厄介なモンスターの姿は無く、三チームが無事にたどり着けた。

 この森の支配者と言われている三大魔獣の数は少なく、部下も少数と言われていた。

 それぞれ縄張りがあるらしいが、正確な位置は冒険者ギルドも把握していない。

 広範囲の森で特定のモンスターを探すのは物理的に難しい。

 

「ここまで安全に来られましたが……。この先は白金級以上の領分となっています」

「では、この辺りで一泊した後は帰還するんですか?」

「はい」

 

 珍しい薬草は無く、山菜類をいくつか見つけた程度だ。

 全てのモンスターが危険と言うわけではなく、手を出さなければ大人しい植物モンスターをいくつか見つけた、という報告がある。

 無闇にモンスターを狩るのが冒険者の仕事ではなく、あくまで人の世に危険を及ぼす分だけ倒す事になっている。

 王国ではそういう事になっているがスレイン法国の秘密部隊は亜人狩りと称して森の中のモンスターを積極的に討伐している噂がある。しかし、蜥蜴人(リザードマン)達は無事なので何か基準があるのかもしれないし、今はまだ手は出していないだけ、ということもある。

 

「怪しい洞窟の探検をするわけではないし、森の中の調査だけですから」

「しっかし、モンスターが居ないのは三大魔獣のお陰なんですかね?」

「居ない事はないと思いますが……。安全に森に入れるのはありがたい事です」

 

 それぞれ言葉を交わしつつテントの設営を始める。

 

「この先は蛙型の亜人の縄張りがあるらしいですよ」

 

 その亜人『蛙人(トードマン)』と蜥蜴人(リザードマン)とは昔から争ってきた歴史があり、仲はよくないらしい。

 というより双方の集落に溶け込んだわけではない人間は噂程度しか情報を知りえていない。

 たまに出奔する彼らとの交流で知りえる事もあるけれど、リアルタイムな情報はほぼ手に入らない。

 近代国家でもないし、文明も原始的。

 ボタン一つで情報が集まるナコト達の世界とは違う。

 

「王国側からの道順も決まってきたけれど……。帝国側も誰か来ているのかな?」

「薬草やら珍しい植物などを求める人は居る筈ですから。調査団くらいは来るでしょう」

 

 自分たちが居る場所は全体的に見れば大した距離は来ていない。

 奥に進めばいずれは抜ける。その先は海となっているはずだ。

 最北の都市の一つ『リ・ウロヴァール』にたどりつくかも知れない。しかし、森の中を移動するより素直に街道を使った方が地図上では早い。

 テントの設営が終わり、時間がまだあるので周りの探索を少しだけ行(おこな)う。

 かなり奥に来ると薬草の質も上がり、高額で取引できる、かもしれない。

 乱獲して二度と採れなくなる事態は誰もが思っている。もちろん闇取引として採られてしまうこともあるらしいけれど、それは冒険者だけではどうにも出来ない

 

「モンスターの巣のような洞窟もありませんし、このまま無事に帰れるといいですね」

「そうですね」

 

 森の中にはいくつか洞窟があり、そこにたくさんの小鬼(ゴブリン)達が居て王国を築き上げている、と昔から言われていた。

 数百年の歴史の過程で生まれた創作や伝説がたくさんある。

 

「モーデさんはこのままソロで活動するんですか?」

 

 一部の和製英語のようなものは現地でも普及しているようだが、どれだけの言葉があるのかは分からない。

 ソロはイタリア語だったかな。

 ゲームで使われる単語は和洋折衷。色んな言語が混ざりこんでいる。特にモンスターの名前とか。

 都合のいい翻訳があるとしても日本語のままだったりする事があるので。

 魔法はほぼ全て英語。それ以外は現地の言語だとは思うけれど、実際の発音は違うんだろうな、と。

 

「チームを組むような友達が居なくて」

「一番人数が少ない『漆黒』は二人ですが、ミスリル級ですもんね」

 

 昇進しても金級だ。ランクが二つほど足りない。

 話している内に冒険者達が集まって食事の支度や荷物の整理を始めていく。

 互いの声が聞こえる位置に居ることで急な行方不明者を出さない措置なのかもしれない。

 

「モモンさんは誰か面倒を見る仲間とか入れたりしないのですか?」

「仲間ですか?」

 

 と、急に名前を呼ばれて黒い鎧姿のモモンは驚いたようだ。

 声や喋り方だけ聞けば普通の男性のように聞こえる。

 もしプレイヤーであれば特段、珍しい特徴は意外としないものだ。

 

「モモンさんは孤高の戦士だから、ナーベちゃんのような美人さんでもないと無理じゃないかな?」

 

 と、言ったのは似た名前のチーム『漆黒の剣』の一人だった。

 金髪で茶色っぽい瞳の男性で野伏(レンジャー)。名前は覚えていないが性格的にはお調子者という印象を受ける。

 気さくな性格とも言える。

 

「漆黒はずっと二人ですよね。新たな仲間はやはり要らない、という事ですか?」

「要らないわけではないのですが……。自分が我侭なだけですよ」

 

 低姿勢で対応する姿は対人交渉に少し長けた人物だと思う。

 ゲームプレイヤーとしては仲間を持った経験者に多い。そうでないとすぐに諍(いさか)いが起きるし、仲間をまとめる事など出来ない。

 もしギルドなら比較的、地位が高い人物だ。

 変わりに側にいる美姫ナーベはずっと大人しくしているし、周りへの視線がきつい。

 近付くな、殺すぞ。というオーラを感じる。

 一般プレイヤーでは敵視政策はPK(プレイヤーキラー)っぽいが、キャラ付けはゲームが終わればやめるものだ。それでも続けているという事はNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)かもしれない。

 傭兵モンスターで彼女のようなモンスターは見た事が無い。

 外装を与えられたのであればプレイヤーに創造されたキャラクターだけだったと記憶する。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 モモン達が自分と同じ境遇なら元の世界に戻ろうと調査している最中かもしれない。けれどもナコトは帰る方法を持ち合わせていない。

 後、中身が人間種である保証もなく、もし亜人などであれば顔を隠すのは理解出来る。

 カンストプレイヤーのナコトにはPKして新しい職業(クラス)を手に入れる予定は無いし、今後の活動に必要とも思えない。

 欲しいのは創作系だ。

 厄介なモンスターは今は考えられないが、大規模破壊を有する上級職では暮らし難くなる気がする。

 それらはその時になって考えることにする。

 

「……モモンさんは……、ここに居る人達と仲良くする気が無い気がします」

 

 と、余計な一言を言ってみた。

 案の定、彼、だと思うが唸った。そして、横に居るナーベが表情を鋭くし、腰に下げている剣に手をかけた。

 それはつまり敵だと認識したからだ。

 間違いなく、彼女はプレイヤーではなく、従僕するキャラクターだ。

 主に逆らう者は全て敵。それを臆面も無く発揮したのだから。

 

「い、いや、俺とて皆さんと仲良くしたいと思っていますよ」

 

 モモンはナーベの肩に手を置きつつ弁明する。

 少なくとも彼は諍いを起こす気持ちは無い、ように見えた。

 もう少し傲慢な人間なら声を荒げて否定する気がしたが、意外と落ち着いた対応にナコトは驚き感心する。

 周りがちゃんと見えている、という意味で。

 

「冒険者としてお金を稼いでいますが……。自分が望む仲間は……、創作系かなと」

 

 ナコトは自分から言ってみた。

 

「戦士とか魔法詠唱者(マジック・キャスター)ではなく?」

 

 その疑問にナコトことモーデは頷く。

 

「一つところに篭(こも)って研究……とまでは無理かもしれませんが……。旅と研究を繰り返すような日々を送ってみたいですね」

「……それは意外ですね」

 

 と、モモンが会話に参加してきた。

 

「戦士として強くなりたいとか、名声を上げたいとか思ってないです。……下世話で申し訳ありませんが……。女遊びが大好きなんです」

 

 そう言うと話しを聞いていた冒険者達が声を上げて笑い出す。ただし、モモンは呻いた。

 つまり彼は童貞で紳士、かもしれない。

 同じように漆黒の剣の魔法詠唱者(マジック・キャスター)『ニニャ』という人物は表情を険しくした。

 男なら女好きは珍しくない。それを否定するのは童貞か女くらいだ。

 大半の男性冒険者が実際に笑っているので理解者が多くて助かる。

 

「この仕事が終わったら早速どこかに行くんですか?」

「いえいえ。独り身なので……。店から出れば孤独感が襲ってきます。ここしばらくは妄想だけです」

「あらら」

 

 一緒に居た女は子供を生ませたあげく死なせた。

 実際には女の扱いはかなり下手なのかもしれない。あと、一人の女を愛して平和な生活を過ごす事もきっと出来ない。

 飽きやすい性格だからなのか。このアバターだからなのかは分からないけれど。

 現実の身体であれば普通の生活を望む。

 ゲームだから。異世界だからこそ無茶な事をしている。

 そうでなければ平々凡々で終わっている。

 だからこそ、つまらないのかもしれない。

 

「モモンさんは女遊びはしない方ですか?」

 

 ナコトはモモンに戦いを挑んでみた。

 一応、言葉を選ばないと童貞はすぐ激高するので。

 

「し、しませんよ」

「ミスリルなのに? 英雄色を好むって格言をご存知ありませんか?」

「た、多少は……知っている」

 

 兜で表情は分からないがうろたえているのは分かった。

 真面目な性格の人間だとナコトは思った。

 それは別に悪い事ではない。

 

「そうですよね。『蒼の薔薇』ならいざ知らず、男性のモモンさんが女遊びをしないのは……、誰か一途な想い人でも居るんですか?」

「一途!? ……そ、それは急には……」

 

 好きな女性が居るなら浮気とか考えて女遊びは確かにしない、と思う。

 それでも英雄の趣味趣向には誰もが興味を抱く事だ。

 特に今回の冒険者の中で漆黒が一番上の位(くらい)だから。

 

「モモンさんには好きな人が居るらしいですよ。アルなんとかさんって人が」

 

 と、またも漆黒の剣のお調子者が言った。

 ナコトにとってモモンが何者か知らないし、アルなんとかと言われてもピンとこない。

 どこかのギルドだとしても内部陣営について詳しいわけではないので。

 

「アルベド……と言いましたか?」

 

 聞き覚えのある単語だとナコトは思った。

 確かそれは人名ではなく、何かの名称だった筈だ。

 とはいえ、その単語から女の顔は浮かばない。

 

「……ちなみにその人……、人間ですか?」

 

 ナコトの言葉にモモンは唸った。

 聞かれては不味い単語に対し、すぐ唸るのは意外と図星の時が多い。

 つまり人間じゃない事をバレたくない言い訳が咄嗟に思いつかなかった、またはまさかそういう質問が来るとは、という驚きか。

 

「に、人間ですとも」

 

 無理に言い張られると逆に怪しいのはテンプレートですよ、モモンさん。と、ナコトは胸のうちで言った。

 そんな事は相手には聞こえないと思うけれど。

 横に控えるナーベはいつ飛び出してきてもいい準備をしているようで、物凄い怒りの形相になっていた。

 

「人間の女ばかりで飽きてしまいましたので。森妖精(エルフ)とか可愛いモンスターとか愛でてみたいものです」

「……ははは。それだけ聞くと酷い人間に聞こえますよ」

「そうかもしれませんが……。……いえ、そうですね。きっと愛とか分からないんですよ」

 

 臭いセリフだが、それはそれで間違っていない気もする。

 このアバターに合う人間の女は居ない気もするし、亜人や異形でも居るのかどうか怪しい。

 そもそも職が安定していない。

 あと、異世界だし、と。

 言い訳を考えればきりがない。

 

「隣の国では結婚は知りませんが亜人とか異形種の女性と付き合っても問題ない話しになっていたと思います。特にアーグランド評議国は異議など出ないでしょう」

「ま、まあ、そうですね。竜(ドラゴン)が国を治めていますから」

「王国は人間中心ですから暮らす場合は難しいでしょうね。罰則があるわけではないけれど……」

 

 冒険者達も可愛いモンスターに殺意は抱かないどころか可愛がる自信がある、とそれぞれ頷いていく。

 結婚までは行かないけれど。と、胸の内で言った者は多い筈だ。

 

「女性の話しが多いですが、私はモモンさんと結婚したいとかの話しではありませんよ」

 

 ナコトはちゃんと間違いを正しておく。

 気がつけば話題が変わることは良くあるし、変な誤解は伝言ゲームと大差ない。

 

「モモンさんの仲間になるには条件が厳しそうですね」

「……ええ、それなりには……」

「チームとして結成することに条件があるんですか?」

 

 と別の冒険者がモモンに言った。

 チームだけなら別段、声かけだけで充分な事がたくさんある。それゆえに厳しい条件などある筈が無い、というのは各冒険者たちの常識のようだ。

 確かにその通りだが、そこは個人の裁量なので口出しするべきかは疑問だが。

 

「ギルドの命令なら従いますが……。永続的な事となると……考えてしまいます」

「モモンさんは裏切られるのが嫌いな人かもしれませんね」

「……ん」

 

 何気ない言葉に反応したので図星のようだ。

 絶対に裏切らない仲間など常識的に考えて存在しない。それは全ての人間が自分ではないからだ。

 それぞれに家庭があり、事情がある。それを一人の人間が全て管理したり、牛耳るような真似はゲームプレイヤーならやってはいけない事の一つだ。

 ゲームは必ず終わる。そして、仲間は解散するものだ。

 永遠の仲間など居るわけがない。

 もちろんナコトはそんな事でソロプレイヤーになっていたわけではない。

 縛られるのが苦手で一人で遊ぶのが好きだっただけだ。

 今は必要にかられて仲間を見つけようとしているだけ。別に永続的に冒険しようとかは思って居ないので、いずれは別れもあると思っている。

 自分の趣味に合う外道な人間がもし居るならば、それは逆に仲間にしたくない人間だ。

 矛盾があるけれど、割りと無関心でいられる研究者タイプが好ましい。

 特に物事を割り切れる非人間的な性格の持ち主とか。

 都合のいい人間が居るとは思えないけれど。

 

「モモンさんの場合は……、依頼や契約で期限付きなら仲間になってくれるんじゃないですか」

「……そ、そうかもしれません」

 

 でしょうね、と苦笑するナコト。

 それが一番無難な方法だ。自分でもそう思う。

 

「試しにナーベさんを三日ほど貸してくれ、と言ったら仲間として貸してもらえたりするとか?」

 

 モモンはナーベを見ると彼女は軽く頷いた。しかし、その様子にモモンは少し唸ったようだ。

 思っていた反応とは違う。ここは否定しろよ、とか。

 

「ま、前金で金貨百枚……なら払えますか?」

 

 無茶な要望だと思ったモモンが提示した金額に誰もが驚く。

 もし金があれば絶対に払っているところだ。しかし、残念ながらそこまで高額な資金は持ち合わせていない。というかみんなで金を集めようか考えている者が居たようだ。

 ちなみに金貨百枚あれば五年は暮らせるかもしれない。もちろん贅沢しない限りおいて。

 

「ええ、即金で払えますよ」

「ええっ!?」

 

 今まで唸るだけだったモモンが声を荒げた。

 これにはナコトも驚き、苦笑する。

 相当、純情な人物のようだ。

 精神年齢は見た目よりも低いのかもしれない。まさか学生さんか、と疑いたくなる。

 身長は二メートル近くあり、身体つきも全身鎧(フルプレート)で隠されているので分からないが。

 そういうアバターという線もあるし、ここは判断がしにくい。

 

「……えー、ごほん。今のは言ってみただけですよ」

「私は割りと本気ですが……。それとも愛人だから渡せないとか? モモンさんの仲間とはいえナーベさんは優秀な人材であり、金づるだと思いますが……」

 

 少し嫌らしい言葉を投げかけてみる。

 多少は自分でも酷い言葉だな、と思わないでもない。

 もし、仲間を大切にする人間ならば激高しても仕方が無い。

 

「大切な仲間です」

 

 と、声を少し張り上げて言い切るモモン。

 ナコトとしては仲間意識の高いプレイヤーだとは思っていたが、NPCも大事にするような病気じみた廃人かな、と疑問に思う。

 ここがゲームなら笑われているところだ。

 転移後に表情が豊かになり、身体の感覚もしっかり感じ、生理現象さえ起こるようになった。当然、同じ事がNPCに起こっても不思議は無い。

 だからこそモモンが激高するのは異世界の仕組みをしっかり体験したからだと思われる。

 

「か、金づるは言い過ぎではありませんか」

 

 モモンの言葉にナーベも驚いたのか、怒りの形相からモモンを宥めようとあたふたしている。

 自分は酷い事を言われてもいい、庇(かば)わないで下さい、とでも言うのか。

 見ていて楽しいチームなのは分かった。

 

「そうですか? 可愛い女性を冒険者として使う方が酷いと思いますけどね」

「うっ」

 

 どストレートな正論にはっきりと呻くモモン。

 その事に思い至らなかった、と言わんばかりだ。

 口撃(こうげき)では童貞に勝てても実力ではおそらく負ける気がする。

 廃人プレイヤーの戦闘能力は化け物じみているのがお(・)約(・)束(・)だ。

 特に慎重派は輪をかけて厄介であり、粘着質なところがある。

 正直、敵対したくないし、相手にするだけ面倒臭い事この上ないので。

 でなければ二人だけでミスリルになれるものか。

 なれるか、プレイヤーなら。と、ナコトは納得する。

 自分も一人でここまで来たし、何事も無ければ昇進する。

 特に苦労するほどのモンスターに遭遇していないので。

 

「も、モモンさん。ここは受けて立ってはいかがです? 私とチームを組む事で後悔するかもしれません」

「ナーベ……」

 

 意外な展開。しかし、主を守る為の言葉であるならば別段、不思議な事はない。

 そういう風に振舞う事も想定内だ。

 現地民が既にプログラム以上の柔軟性を見せている。それはおそらくNPC達であっても同じだと予想していた。この推測は間違っていないようだ。

 カマをかけたつもりは無いがモモンとナーベは作戦会議の為に一時、席をはずした。

 金貨百枚に目でも眩(くら)んだのか。それは分からないけれど。

 自分ならばどうするのか。可愛い女性が側に居ないので分からない。

 居たとしたら連れて来ないかもしれない。

 今までがそうだったから。

 戦力としてならば勝手知ったる同じプレイヤーを選ぶ。

 

「意外と言うんですね、モーデさんも」

「……少し後悔してますよ。私……、それほど口が上手いとは思ってなかったので……」

 

 それは間違っていない。

 寡黙な生活が続いたから、つい必要以上に舌が滑ってしまった。

 モモンというキャラクターに対して別段、思うことは無い。

 童貞でも結構。

 反応してくれたことに対するささやかな対応をしたまでだ。

 

「この調子だとモモンさんと戦う事になるかもよ」

「私に勝てたらナーベをくれてやる、という流れですか? それは無いんじゃないかな」

 

 意外とありそうだとは少し思ったけれど。

 だが、ミスリル級が下級に戦いを挑むのは大人気ない。だからこそ、それは無いと思う。

 仮にあるならばモモンの程度が皆に知れて居づらくなる。それくらいは慎重な人間なら気付く。

 

「モモンさんは強いですよ」

「そうでしょうね」

 

 背中の剣は飾りだとしても高レベルプレイヤーが奮う武器は少なくとも現地の人間より遥かに強烈だ。

 それは魔法詠唱者(マジック・キャスター)であっても。

 レベル差の問題を解決しない限り、相手に勝つのは難しい。そういうゲームだった。

 

「モーデさんは見た目は戦士っぽいんですが……。そういえば剣と魔法でいえばどちらが得意なんですか?」

「ルクルット。そういう事は秘匿事項じゃないのか?」

 

 冒険者でチームを組んでいるとはいえ相手の素性を探るのはマナー違反だ。

 それはこの世界でも同じ事で、ナコトは今まで組んだ相手から質問を受けた事は無いし、自分で尋ねた事も無い。

 

「でも、俺たちの事は言ってるじゃねーか」

「それは自分たちで言っているからだよ」

 

 とはいえ、ナコトにとって彼らの事は別段、興味ない。特に野郎(男)の情報は。

 だが、今は少し事情が違うのでもどかしい。

 どうしても知りたいわけではないけれど、最低限の情報は必要としている。

 先ほども言った創作系の事だ。

 必要な物資を調達したいので。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 作戦が決まったのか、モモン達が戻ってきた。

 しかし、改めて見ると背中に長いグレートソードを二本も背負ってどうやって引き抜くんだろうか。

 前を向いたまま肩から抜き出すのは物理的に無理がある。

 あと、こいつ剣を背負ったまま椅子に座ってなかったか。地面に刺さったりしてうまく座れない気がするのだが。その辺りはどうなっているのか。

 魔法の武具だから色々と不都合な部分は誤魔化せる仕様とかなのかな、と次々と疑問点が浮かぶ。

 様子を窺うと椅子に座る前に剣はナーベが外して木などに立てかけていた。

 

「………」

 

 なるほど、と納得し、いくつか疑問が解決した。

 ちゃんとしているんだ、と。

 

「? どうかしましたか?」

「グレートソードを背負ったまま座っていたんじゃないかと……」

「背負ったまだと地面に刺さったり、座りにくいですからね」

「魔法の武具は使用者の身体に合わせると言いますから、グニャリと曲がったりするのかな、と……」

「……そんな非常識な事は起きませんよ」

 

 魔法が存在する時点で非常識だと思いますけど、と言い返してやろうかと思ったがやめた。

 それはそれで楽しい会話劇だが。

 モモンとしては最初こそ自分も確かにおかしいなと思って、今はナーベに剣を外させている、と声には出さなかったが安心の吐息を吐く。

 剣の様子を知るモーデとかいう冒険者は意外と侮れない、という心の中の危険人物リストに記入しておくモモン。

 

「話しを戻しますが……。先ほどの金貨百枚……。本当に払えるんですか?」

「もちろんですよ。急に千枚にする、とか言わないで下さいよ」

 

 証拠として見せても良いのだが、こんな森の中で金貨を入れた袋を取り出すのはバカだけではないのか、と思った。

 

「お恥ずかしい話しだが……。我々は資金調達の為に働いている。下世話な話しで申し訳ないが、貰えるものは貰いたい所存だ」

 

 モモンは臆面も無く言った。

 裏がありそうだが冒険者達の前で金が欲しいと告白する姿勢は意外だとナコトは思った。

 ミスリル級が金に困っている。普通に考えて怪しいと思いそうだが、本当に金に困っているのか。

 少なくとも銀級よりも高収入の筈だ。それとも金貨百枚より少ない収入だから、ということもあるのかと。

 

「その前にモモンさん。ちょっと質問を思い出したので先に訪ねていいですか?」

 

 と、漆黒の件の一人ニニャが身を乗り出してきた。

 迫力に押されたのか、手で促すモモン。

 

「女好き、という事ですが……。娼館に通っていたりするんですか?」

「しょうかん? それは何ですか?」

「娼館は娼婦達が居る店さ」

 

 と、別の冒険者が言った。

 それで納得するナコト。しかし、そういう店は実は行った事が無い。

 確かに存在は知っている。だが、行かないので娼館という名称に心当たりが本当に無かった。

 なにせ、女は精神支配して取り寄せていたので。

 実質タダだ。

 

「そういう専門店は……詳しくなくて……」

 

 女好きなら行ってて当たり前かもしれない。けれども利用した事が無いから仕方が無い。

 話しに整合性が無いのは自覚しているけれど。

 

「その娼館に知り合いでも居るのか、と?」

「……もしかしたら、と思いまして……」

「……ものは試しとして、名前とか聞かせてもらえますか?」

 

 ニニャが他の人間に聞かせたくないことだったらしく、耳打ちでナコトに情報を伝える。

 名前は『ツアレニーニャ』と言い、ニニャの姉で貴族にさらわれて行方不明。

 酷い目に遭わされて娼婦の店に売られたかもしれない、という予感がするという。

 ナコトとしては全く聞き覚えが無い。というか王国にどれだけの店があるのか分からないが、その中で特定の個人を探す事は難しい。

 娼館はどの街にもあり、王国中を探すとなると数ヶ月はかかる。あと、殺してきた女の中にそんな名前は無かったと思う。

 仮に居たとしてもお気の毒様という程度だ。

 

「……調査費として金貨百枚くらいかかりそうですね」

「そうですね。都市部を全て周るとすれば……」

 

 街だけでも特定出来れば随分と楽なのだが。

 売られた貴族が何処に住んでいるのか分からない。

 ノーヒントで探せ、というのは難しい。偽名を名乗らせられていたら余計に分からない。

 これが昇進試験なら白金級になれるのではないかと思える程だ。

 何年も前の事だから外見的特徴も不明。余計に難易度が高い。

 

「ああ、言っておきますけど……。全ての店を制覇する夢とかは持ってないですよ。女遊びといっても……。人数的に二十人は超えていないと思います……」

 

 超えていなくても主身としては最低かもしれないな、と思わないでもない。あと、恥ずかしい話題だという自覚はある。

 確か二十人は超えていない、と改めて数えてみる。

 いや、超えているかもしれない。いや、と女遊びの定義に触れない人も居た気がする。だから、ちょっと自信がなくなってきた。

 確実に五十人以下なのは間違いない。同じ人間が複数居るだけだ。

 

「そうですか。あまり趣味がいいとは思えませんけど」

 

 と、敵意のこもった目で睨んでくるニニャ。

 姉を奪われたとかさらわれたなら仕方が無いけれど。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 本当に下世話な話しが続き、他の冒険者達が苦笑いしていた。

 これはこれで恥ずかしい。

 女が好きで悪いか、と激高しても仕方が無い。

 

「……で、俺の番でいいのかな?」

 

 怒涛のやり取りで存在を忘れそうになったモモンがニニャに言うと手で促された。

 

「どうも。それで……、えーと……」

 

 話しの目的を忘れるのは仕方が無い。ナコトもモモンと何を話していたのか、一瞬で忘却したところだ。

 金貨がどうのこうのだったと思い出す。

 

「あなたの言う金額でナーベとチームを組むことを了承しようと思う。こちらは今、資金を必要としている。君にとって今回の報酬が消し飛ぶ額だが……」

 

 女好きなら多少の散在は気にしないかもしれないけれど、と思わないでもない。

 

「チームを組みたいほどの予定は無いですけどね」

 

 しかもミスリル級だ。

 強大な敵を討伐するイベントでもあればありがたいと思うけれど。

 この厳つい顔で睨む彼女と仲良く出来るとは到底思えない。

 身ぐるみを剥ぐ算段をしている方が納得する。

 

「あと、恋人募集とかはしてませんので」

「う、うむ」

「ナーベちゃんは厳しい人だけど他人とのチーム結成はいいのかい?」

 

 と、お調子者のルクルットという冒険者は尋ねてきた。それに舌打ちで返答するナーベ。

 相当、性格が悪いようだ。すぐにモモンが彼女を窘(たしな)める。

 

「モモンさんの為なら溶岩の中でさえ泳ぎきって見せよう」

「……そこまでやれ、とは言っていないぞナーベ。相手はこれから金級になるかもしれない。それでもまだ危険な仕事は無理な筈だから、という事なんだが……」

 

 ソロプレイヤーの行動範囲はよく分からないけれど、金級は複数の冒険者と合同で下級冒険者の為の調査をする事が多い。

 それだけ危険ナモンスターが現われるような場所に行く機会が多くなるわけだ。

 この上になるとアゼルリシア山脈などの険しい場所にも行かされる。

 モモン達のミスリル級は王都周辺の犯罪調査などが出てくる。

 難度が五十から百近くのモンスターの調査、またはそれの討伐など。

 オリハルコン級からは貴族が後ろ盾となってくれるようになり、知名度が上がるけれど国の要請に強制参加させられるような義務が一部課せられて自由度が低くなってくる。

 アダマンタイト級に至っては王国全ての憧れであり、全ての冒険者に対して模範的でなければならない。

 束縛を嫌うタイプには荷が重くなる。

 よくある支配欲に駆られた輩(やから)は命令は一人前だが仕事は殆ど部下とかに丸投げしてしまう。

 モモンはどういうタイプだろうか。

 名声を上げて何をしたいのか、それはさすがにナコトにも分からない。

 ゲームであれば資産を増やす理由に良いアイテムを生産したり、特別な魔法を使う時に必要になる。特に高い位階魔法は膨大な金貨を消費する。

 殆どの魔法を扱うプレイヤーは恒久的に資金を調達し、戦闘を続ける。

 戦闘よりは復活資金の方が分かりやすいか。

 転移後の世界ではナコトは拠点製作に今は使っているし、今後はアイテム生産で使う予定もある。

 モモンも何かアイテム生産に使う為なのか、と疑問に思った。

 それ自体は隠すことでもない、ような気がするけれど。

 

「ミスリル級で資金を必要とするのは……、犯罪組織に上納するためとか?」

「はぁ!? あぁ……、いや、違いますよ」

 

 あまりに意外な言葉で驚いたのか、大きな声だったのでナコトはさすがに驚いた。

 今の反応は何言ってんだこいつ、という少し小バカにしたもののように聞こえた。

 

「……部下……あっと……。仲間に給料を払うためですよ。今まで世話になっているので少しでも恩返ししたいなと……」

 

 それはつまりプレゼントという事か。

 機器用にとっては普通だが女関連だと隠しておきたい大切な計画とも言える。そこはあえて詳しく聞く気は無かった。

 

「私は先ほども言ったと思いますが創作系に金をかける予定です。マジックアイテムとかは高額ですからね。モモンさんは……、そういうものにもかけているのかと……」

「確かにそれもありますね。………」

 

 聞いている途中で自分でも気付いたのかモモンは小さく呻く。

 ユグドラシルプレイヤーであれば資金を必要とする用途は限られてくる。特に転移後の世界で出来る事となると更に狭まっている気がする。

 ましてユグドラシル金貨はこの国で通用しない。そもそも価値基準や硬貨が違うのだから。

 現地の物価はとても安い。それゆえに収入も少ない。けれどもマジックアイテムは高額だ。並大抵の収入では一年分などあっさりと消えるほどに。

 

「女に金はかけないんですか?」

「かけている最中です。それにはいくつか必要なものがありまして。今は女遊びですが……。将来的にはもっと大きな事に金をかけていくと思います。例えば巨大な建築物とか。物作りが好きなので何か作るかもしれません」

 

 もちろん、これは本心だ。

 一人でコツコツと作業するのは嫌いではない。けれども誰かに手伝ってもらいたい時がある。

 現地の職人を完全に信用するのは難しいかもしれないけれど、頼らないと困るのが専門知識だ。

 自分ひとりでは限界がある。それは自覚しているので。

 

「壮大な夢ですね」

「男としては一国一城の主は立派な夢だよ」

「王様になりたいか、という支配欲とかは無いので。……政治とか国の運営とか面倒臭そうなので」

 

 放っておけば治安は悪化する。それらに対処できる自信はカンストプレイヤーであろうとも無い。

 その手のゲームで大抵、地域を炎上させてきた。とても無理だ。

 恒久的に平和な国づくりは一人の妄想で成し遂げられるほど簡単ではない。なにせ、大勢の言う事を聞かない他人が住むのだから。

 全員がNPCなら疑問を差し挟む事はないかもしれないけれど、それはそれで人形を配置しただけのハリボテの国だ。

 というより自分は何故、ここまで喋っているのか。

 何だか罠にはまったな気分だ。

 現地勢の言葉にアバターが反応してイベントが強制的に進行している、とかかと不安になる。

 

「俺は個人で忙しい時がある。その時、ナーベに他人とのチーム結成でも大丈夫か知りたいので」

 

 モモンとしては他人に預けたくは無い、という気持ちがある。だが、ナーベと共にする以外にも仕事があるので扱いに困っていた。

 

「急に話しが進んで驚いているけれど……。ずっと独り身だったから……、どう扱えばいいのか……」

 

 もちろんそれは戦闘に関してだ。

 ユグドラシル時代は自由気のまま。

 平々凡々なプレイヤーだったのではないかと思う。取り立てて目立つ事はしていない。

 多くのプレイヤーは死に物狂いで遊んでいたわけではない。そういうのは一部の上位者とかレアアイテム持ちくらいかも知れない。

 それにレベルをカンストにするのは時間はかかるが珍しくない。だからといって最強という訳でもない。

 仲間を得たからといって飛びぬけたイベントが発生するとは思えない。

 長く続けた割に暇つぶし程度にしか思ってなかったのは勿体なかったかな。とはいえ、そのまま異世界に転移するとは誰も思っていない。

 それが分かればもう少し魔法を選定した。

 常識はずれな現象だから狙ってできるわけもない。

 

「地味な仕事であれば連れ歩くだけで終わる筈だ」

「……仲間の意味が無いと思うけどね」

 

 ナコトの指摘に唸るモモン。

 危険な仕事でも無い限り、確かに連れ歩くだけだ。それならミスリルとか関係が無くなる。

 ナーベにとっては時間つぶし程度にはなるかもしれないし、宿屋などで一人ポツンと残さなくていい。

 それで金貨百枚なら美味しい話しだ。

 

「それで、女遊びのところだが……。ナーベはやらんぞ」

「借りるだけです。そこは守りますよ。毎日遊んでいるわけでもないですから。好きなだけで」

 

 それはそれで最低だが、はっきり言い切る様は他の冒険者も感心するところだったようだ。

 潔い性格は男社会では割りと好かれる部分だ。

 それでこそ男だ、という小さな呟きが聞こえた。

 

「それはそれとしてモーデだったな。冒険者以外に仲間は居るのか?」

 

 普通であれば正直に答えるところだ。これがユグドラシルプレイヤーならぼかす可能性は高くなる。という事をナコトは予想する。

 

「募集中というところかな。女遊びに共感する友達が居ればいいんですけどね」

 

 これは前の世界であっても友達にしたくない部類ではないのか、とナコト自身ですら思う。

 同じく転移したプレイヤーが居たとして、自分と同じく鬼畜プレイしている所はまだ見た事が無い。

 隠れているのか、それとも既に犯罪組織の一員になっているのか。

 そもそも同じ時間軸に来ている保証はない。

 多人数プレイで不純な行動はしにくいし、運営が許さない。

 悪のロールプレイはある程度許容していたようだ。それはルールに則(のっと)っていたからだと思われる。

 

「そういうモモンさんはたくさん仲間が居そうですね。ミスリルの収入でも足りないところから見て……」

「……う、それは……。色々とあるんだ、俺にも」

 

 正直者なのか、素直な性格なのか分からないけれど。真面目な人間はナコトにとって立派な敵だ。

 水と油ともいえる。おそらく仲良くなれない気がする。特にモモン側はエロい行動を許さないタイプだ。

 それは実につまらない男だと思う。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ナコトとモモンの会話ばかりでは怪しい雰囲気に陥りそうだと判断した他の冒険者がミスリル級の話しを聞く為に身を乗り出してきた。

 ナーベとの商談は昇進試験中なので終わってから再開する事にした。

 手持ちの資金は多少、豊富なので金貨百枚はすぐに出せる。

 そのまま持ち逃げするとモモンの評判気ガタ落ちしそうだ。

 仲間についてはギルド所属なら別段、不思議は無い。彼らの為に金を稼ぐのはこき使われる方なのか、それとも責任者か。

 ナーベの様子からは判断できないが苦労人かもしれない。

 話す素振りから見ても悪い人間ではないのは分かった。

 そうして気が付けば夜も更(ふ)けていき、テントの外は漆黒の闇となった。

 二人の漆黒チームがあるけれど、流行っているのかなと疑問に思う。

 チーム名は色々とあり、色関連はそれ程豊富ではないのかもしれない。

 いきなり今からナーベがやってきて添い寝するわけでもなく、ナコトは一人でテントの天井を見上げる。

 一応、モンスターの感知魔法はそれぞれの冒険者チームの魔法詠唱者(マジック・キャスター)が行(おこな)った。

 大木の上にいくつか何者かが潜んでいるようだが、大型種や物凄い勢いで迫る危険性は無かった。

 森の中に居る植物モンスターはそれほど敏捷性に優れてはいないらしい。

 金級冒険者達でも太刀打ちできないようなモンスターは今まで調べた範囲では見つかっていない。

 そうして次の日の朝になると様々な音が聞こえてくる。

 上から降りてきた植物モンスターと戦って居る者。荷物整理して居る者。

 身体をほぐしている者など。

 

「おはようございます」

 

 と、言っている横で何体かの植物モンスターが切り刻まれていた。

 蔦状のモンスターで得物を絞め殺して栄養を奪うとか。

 人型だと森精霊(ドライアード)が居るのだが、こちらは比較的、大人しい。あと、言葉が通じるそうだ。

 

「荷物をまとめたら帰還しましょう。帰り道はまた三チームに分かれて外で合流しましょう」

 

 金級の取りまとめ役の言葉にモモンと他の冒険者達が頷いて行く。

 方向性が決まると決断も早い。

 ナコトの目には熟練の冒険者に見えた。

 返り際に一礼するのだが、それは自然への敬意の表れだと思い、ナコトは見よう見真似で一礼した。

 それから半日ほどかけてトブの大森林を無事に抜ける。

 安全な冒険が出来るのはありがたいがスリル好きなら物足りないと文句を言う場面だ。

 けれども、この世界ではこれが常識だ。

 好きで危険に飛び込むのは請負人(ワーカー)くらいだと言われている。

 命と金を天秤にかけて、どちらを取るのかで将来が簡単に決まってしまう。

 ナコトとしては安全策で進みたい。せっかくの異世界ライフをあっさり終えたくないので。

 順調に調査任務を終えた銀級は金級へと昇進した。

 随分と簡単そうだが凶悪なモンスターと出会わなければ冒険者の仕事はだいたい平和的に終わるものだと言われている。だから別段、異常な事は起きないのが一般的だ。

 常に危険を隣り合わせの方が異常だともいえる。

 報酬を得てさっそく女遊びに興じる予定はなく、チームを組んだ相手と簡単な食事会を夕方の時間帯から始める。それにナコトは参加したが漆黒はナーベだけ残った。

 

「あの人は冒険者以外にも仕事をしているのか?」

「モモンさんはいつもお忙しい。……仕事内容は教えられない」

 

 真面目な性格が偽装だとしても何の仕事かは少しだけ気になるナコト。

 様々な仕事を兼任した異世界ライフは息苦しくないのか。それとも呼吸不要とかで平気だとか言うのかな、と下らない事が浮かんだ。

 仮に事実だったりしても問題ではないけれど。

 

「ナーベさんは何を飲まれますか?」

「水で結構だ」

 

 様々な要望に対し、一貫してぶっきらぼうに応える。それは自分の役目を全うするNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)なら不思議は無い。

 仮にプレイヤーであればキャラ付けかもしれないが、ゲームは終了したのでいつまでもキャラ付けするのは少し疑問に思う。

 それとも表情が崩れる種族だとか。

 食事や飲み物が飲めないわけではないようだ。

 これで骸骨(スケルトン)系のアンデッドなら顎下から漏れ出る。

 肉体のあるアンデッドだとどうなるのかな。転移後ではあまりアンデッド系でも実験はあまり出来なかったので。

 特に吸血鬼(ヴァンパイア)はお目にかかった事が無い。

 亜人は人間と大差ないので、そもそも除外だ。

 

「皆さんとは明日からバラバラですが、ご健闘を祈ります。乾杯」

「かんぱ~い」

 

 と、それぞれ叫ぶように言いながら酒やお茶などを飲んでいく。

 庶民的な飲食店なので出される料理はほぼ格安のもの。

 仕事が終わったからとて、豪遊できるほどの資金は無い。

 ナコトは出せるかもしれないけれど、無駄遣いは控えている。

 

「金級冒険者となった人は王都に行くといいです。あそこは金級の仕事が多いですから」

 

 各都市全てに各階級用の仕事は無く、偏りがあるものだ。

 王都から遠ざかっている城塞都市エ・ランテルはバハルス帝国との戦争の為の重要な施設だが、冒険者にはあまり関係が無い。

 精々多くの兵士達の為に資材を搬入するくらいだ。

 真面目な仕事の話しを切り上げて小さな宴会がしばらく続いた。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 解散した後、ナコトの側にナーベが寄り添い、帰ろうとしても着いて来る。

 腕を組むことはないが明らかに仇(かたき)を見つけた相手を追い詰めようとする襲撃者にしか見えない。

 一定距離を保ち、いつでも剣を抜けるように待機するような。

 

「……もしかして、貸し借りはもう確定事項なのかな?」

「んっ? そうだと思っていたが?」

 

 疑問を疑問で返された。

 どうやら後先考えないバカだと分かった。

 そんなに資金が逼迫(ひっぱく)していたのかモモンは、と呆れてくる。

 通常の冒険者であれば回復アイテムの購入に多大な資金がかかる話しはよく聞く。だが、同じプレイヤーだと思われるモモンはアイテム類をそれなりに持っていると思っていた。

 それともアイテム無しで転移した可哀想なタイプなのか。

 仲間がどういう種族かで運営などが変わってくるから、仕方が無いところはあるかもしれない。

 そうでない場合は何が考えられるのか。

 すぐに理解出来るほどナコトは賢くないが、身の安全を考慮する上で思考はとても大事だ。

 

「……三日間でいいのか、一週間でいいのかは決めていないけれど……」

 

 三日間のお試し期間を強引に押し付けられた気がする。

 もう少し話し合うと思っていたので。

 別に急ぐ用は無かったが、相手の事を少しは考えてほしいものだ。

 宿のこともどうしようかと困惑するナコト。一人部屋を取っていたので。しかも格安の宿だからミスリル級で女性のナーベを連れて相部屋というわけにはいかない。特にモモンが許すか分からないので。

 一先(ひとま)ず宿を引き払い、少しランクを上げた宿にしてみる。

 それなりに綺麗なところなら大丈夫の筈だ。

 

「そういえば荷物は持っていないのですか?」

 

 そう言うとナーベは驚いて自分の身体をさすり始めた。それは荷物を落とした、という感じに似ているが、まさかとは思った。

 もしプレイヤーかNPCであれば異空間のアイテムボックスを持ち合わせている筈なので、手ぶらで活動しても問題は無い。

 アイテムは持っていない。貴様が買い揃えろ、とか言われるかもしれないが何て言い訳するのか少し興味がある。

 

「れ、連絡をしてもいいか?」

「どうぞ」

 

 新しい宿屋に二人部屋の料金を払った後でナーベは外に出て行った。

 このまま逃げても仕方ないな、という程度で諦められる。

 おそらく『伝言(メッセージ)』を使う為だと思うけれど、聞き耳を立てられたくなければ沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)を併用すべきだ。それ(魔法)を覚えていないのであれば仕方が無い。

 音声を必要とする魔法というものは時に迷惑だったり不便だったりする。だが、そうだとしても魔法を使える事に感謝しなければならない。

 元の身体であれば何も出来ないし、冒険者として働くことも出来ないから。

 ステータスの恩恵はアバターだからこそ得られる。

 普通は腕を切り落としたり、去勢など出来はしない。いくら魔法が使えるからとて、簡単に死ぬことも出来ない。

 そこら辺の感じ方はアバターの影響が多分にあるためだと思うけれど、よく理解は出来ていない。

 恐怖の感じ方とか、人間の身体とは何かが違う事だけは分かった。

 例えばアンデッドモンスターのアバターを持つプレイヤーはどういう感覚になっているのか。

 キャラクターの特性が生きているなら恐怖とか冷気とかは平気になっている筈だし、飲食、睡眠、疲労などはアイテム無しで無効化する。

 ただし、それを本当に生かすと延々と眠らなくていい事になる。とはいえ眠りたい気持ちにならないのか、という疑問が残る。

 いくらアバターとはいえゲームキャラクターだ。プレイヤーは必ず睡眠を必要とする人間だ。

 その整合性はどうなっているのか。

 ナコトは人間種だから食事をし、眠るし、疲労も感じる。おそらく餓死もするかもしれない。

 それが普通だが、その常識を覆す種族の場合はどうなるのか。

 それは直接当人に聞くしかないし、それが早道だ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 連絡を終えたのか、ナーベが荷(・)物(・)を(・)入(・)れ(・)た(・)大(・)き(・)な(・)袋(・)を(・)抱(・)え(・)て(・)戻ってきた。

 手ぶらでは不味い、という結果になったとしか思えない。

 近くに仲間でも控えているのか、探知の魔法をこっそり使えば宿の周りに得体の知れない影がいくつか居るようだ。

 仲間を追い払え、とは言わないが払う資金を踏み倒すことは出来ない。それが分かって苦笑した。

 滞在する部屋に入り、荷物の整理をする。

 中堅とはいえ最低限度の掃除がされた程度で部屋数も少ない。

 これで大部屋だと雑魚寝になったりする。

 高級宿は部屋が広く、個室に風呂が完備されていて食事も上手いと評判だ。

 もちろん、それなりに宿泊費は高いけれど。

 

「………」

 

 外套を外したナーベの服装は最低限度のもの。

 これで森の中を散策した筈だが、汚れが殆ど無い。

 一般冒険者は虫等の対策で結構着込むのだが、これでは冒険者を舐めているとしか思えない。

 ただし、それは一般人に言えることでナーベはこの格好でも何の問題も無い存在だと思われる。

 

「……演技はここまでにしようか」

「ん……」

 

 素早く周りに感知妨害の魔法を展開する。

 控えているのがモンスターなら慌てるかもしれないが街中で目立つ行動を控えろ、と言われているシモベ連中ならまず主(あるじ)に連絡する筈だ。

 そうでなければ強引な突破が考えられる。

 

「私には特段、敵対する存在は居ないと思うのだが……。君達には敵となる存在は居るのか? あまり物騒な話題はしたくないけれど、一応尋ねるよ」

「それを下等生物(ノコギリクワガタ)に答えなければ……。仲間となったのだから当たり前か……」

 

 耳慣れない単語が聞こえたがナコトは無視する。

 

「居る、かもしれないとだけ言っておく」

 

 ナコトは身振りでナーベにベッドに座るように合図する。

 いきなり武器を持って戦う意志は無い、と示したいがどう表せばいいのか分からなかった。

 とりあえず、互いに距離を取っておく。

 

「先にも言ったが……。私は一人だ。仲間らしいのは居ない」

「了解した」

 

 表情をきつくしたまま答える様は機械的で人間味がない。

 

「じゃあまず……。〈人間種魅了(チャームパーソン)〉」

 

 魔法を声に出して唱えたがナーベは涼しい顔で佇んでいた。これは素直に無効化されたと見るべきだ。

 相手のレベルは意外と高いのかもしれない。

 

「〈全種族魅了(チャームスピーシーズ)〉」

「……む」

 

 カンストプレイヤーの魔法を浴びて平気でいられるのは対策アイテムを所持しているか、完全耐性を持つ種族くらいだ。

 世界級(ワールド)アイテムならば完全耐性を突破する事ができる物もあるかもしれない。そこまでは考えていないけれど。

 ナーベに魅了は通じない。それが確認出来た。

 

「……毒や石化が通じては困るな」

 

 攻撃魔法はそもそも使わない。

 しかしながら精神操作系でも通じるものはある。その前に色々と聞いておくべきなのだが、外ではどういう事になっているのかも気になってきた。

 

「端的に聞くけど、言えないことは多い?」

「言えないこと……。……ああ、多いと思う」

 

 質問に対して柔軟に返答している。

 これがNPCであれば自分も何か作ればよかったかな、と思わないでもない。

 それには大きな拠点を確保している必要があるし、色々と面倒臭い。管理とか、防衛とか。

 そんな拠点を今は作っている最中だった。

 ふと物思いに耽っているとナーベの頭に機械的な形の兎耳が生えた。

 それは周りを警戒する時に使う『兎の耳(ラビッツ・イヤー)』というそのままの名前の魔法だ。

 

「……はい。ご心配には及びません。仲間としての確認作業のようです」

 

 声に出して何者かに報告するナーベ。

 音声を必要とする魔法は出来る限り、一人の状況を作り上げた方が良い。

 

「こちらとしても敵に警戒はする。それとも君達は相手に無防備になれ、という暴論で事を進めたいとかあるのか?」

 

 というナコトの言葉をナーベは伝言(メッセージ)の相手に伝えた。

 今の声はナーベを解さなくても通じたのではないか、と思うのだが気にしても仕方が無いか、と諦める。

 

「手の込んだ暗殺者だと思われても困るけれど……。割りと本音は語ったよ」

 

 最初の手の込んだ部分はあながち間違っていない気がしたので自分の発言に苦笑する。

 今は無闇に殺生は割けている。

 最初のうちでやりたい事は確認した。後は継続方法を模索するだけだ。

 仲間を知らない他人に預けるのだから心配する気持ちは分からないでもない。

 その後、しばらく話し込んでいたようだがナコトは会話の邪魔はせず寝床の確認や風呂場の確認を行(おこな)う。

 部屋に閉じ込めるようなまほうではないので、放っておけば自然と魔法の効果は消える。

 一応、確認としてナーベは三日間同行する事になった。

 こちらは報酬の金貨を見せるのだが、額が百枚というのは大雑把だが、それでいいのか尋ねる。

 

「……出来れば前金で欲しい、との事だ」

 

 そうなると持ち逃げして一日で終わる可能性がある。

 一時金にしても同様だ。

 姑息な相手なら色々と企んでいる気がする。

 

「まず答えてもらおうか。何に金を使うのか。仲間と聞いたけれど……、それほど多く必要とするのか?」

 

 もちろんナーベに尋ねても無駄である事は分かっている。

 姿無き主(あるじ)に尋ねろ、という意味だ。

 こちらとてもいきなり増額はされたくないので多少は慎重さを見せないと後々困る事態になる。

 

「部下への報酬に使う予定……、とのことだ」

「家を買うとかじゃなくて?」

「……同じ回答しか答えられない……」

 

 という事はすでに持ち家がある、ということか。

 この質問の厄介なところはユグドラシル金貨が豊富にあっても現地に通用しない事だ。

 現地通貨を必要とする場合はモモンが言うように働いて稼ぐしか無い。

 それゆえに現地通貨でなければならない理由が無ければならない。

 現地通貨で金貨百枚はちょっとした大金だ。銅貨一枚が百円だったとしても四百万円。

 二百五十円という相場なら一千万円に膨れ上がる。

 ユグドラシル金貨は一枚一円換算なので百枚は百円だ。

 だが、双方の価値に開きがあるが魔法の触媒として使用する場合はまた勝手が変わる。

 その実験はまだしていないけれど、現地通貨がどこまで通じるのか、勿体ないけれど一度は試す必要がある。

 量産できる金貨でもあるユグドラシル金貨の方が扱いやすいけれど。

 

「おお、そうだ。前金の代わりにアイテムを貰いたい」

「んっ?」

「少し前にも言ったけれど創作系が必要でね。色々と集めたいものがある。そちらは鉱物資源とか集めていたりするのか?」

「……いや、その話しは分からない」

 

 一応、ナーベは連絡を入れる。

 

「回復ポーションか。……と尋ねられている」

「……シュレッダーだ」

 

 この単語にナーベは小首を傾げた。

 連絡すると大声でも飛んできたのか、耳を押さえる仕草をするナーベ。もちろん、頭ではない方の耳だ。

 相当怒ったのか、それとも驚いたのか。

 

「そ、それをどうするのかと……」

 

 と、主(あるじ)の声に恐れを抱いたのか、ナーベが少し声を震わせながら尋ねてきた。

 予想外の反応だったので身体が対応出来ていないようだ。

 

「その名の通り……。ゴミを処分するにしても捨てる場所に困るから。三つは多いかな……。二つほど欲しい。こちらは別件としてちゃんと代金は渡すよ」

「……お前は『プレイヤー』なのかと」

 

 どストレートな質問でようやく相手は悟ったようだ。

 ここは素直に答えるべきか、ぼかすか悩むところだ。

 それはアイテムと引き換えでいいかな、と。

 

「知らない他人の言葉をどこまで信用するのか知らないけれど……。こちらとしても身の安全を確保する手段は欲しいんでね。……出来れば質問内容を変えてほしいな」

「……ん。……ならば『クラン』や『ギルド』に所属しているのか。または所属していたとしたら、その組織名を教えろ」

 

 それはもはや命令であり、脅迫だ。

 相手方が悪のロールプレイや他人と抗争して恨みを抱く輩(やから)なら気にしても仕方が無い、かもしれない。

 けれどもユグドラシルのゲーム運営は終わった。恨みとかは終わってまで引きずらないでほしいものだ。

 

「……敵対者が居ると答えにくいな……」

 

 どうしても知りたいという事はそれだけ後ろめたい連中だという事だ。

 NPCに質問させているから遠慮しない事もある。

 自分ではもちろん言いにくい。だから代弁させている。

 結構卑怯者かもしれない。自分にとっては戦い難い気がする。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ゲーム時代のナコトは仲間とつるんで遊んでいた時期があるにはあった。

 仕事や家庭の事情とかで次第に離れ離れになったが。

 それぞれ自分の都合があるので強引な参加は出来ない。それが多人数プレイのオンラインゲームでは珍しくない。

 その中で大規模ギルドともなれば仲間の統率などは真面目な人間なら大変な作業になる。

 上位ギルドに至っては少人数の合同チームとかで管理をやりやすくするものだ。それ以外は無秩序に陥り易い。

 そんな事で一人で遊ぶ事が多かったナコトとしては仲間が居ても居なくてもいい状態で最後まで残った。

 十二年も続いたゲームならば最後はだいたい閑散としてくるものだ。

 新しいゲームに移行したり、殆ど攻略された後で初参加する初心者が居たりする。

 

「……ギ(・)ル(・)ド(・)名とか……。もう随分前に解散したものだから答えられないな……。チーム名なんて膨大だろうに……」

 

 ナコトが正確に覚えているギルド名は十にも満たない。その中で自分が所属していたギルドというものはそれぞれが忙しくなった途端にあっさりと解散した。それだけ愛着は無かった、という事かも知れない。

 下位ギルドの名前など言ったところで虚しいだけではないかと思う。

 ユグドラシルの中で作られたギルドの数はだいたい千チームほどあったと記憶している。

 それを指摘すればナーベが困った、という眉根を寄せる仕草をする。

 

「友達十五人くらい居たと思うけれど……、みんな仕事とかで離れちゃったし……」

 

 当たり前だがユグドラシルでこの世界でやってきたような鬼畜な事はしていない。というか出来ないし、出来ていたらとっくに摘発されている。

 それでも何か気になるのか、主が気にしているのか分からないけれど、陰湿すぎるぞ、と言いたい。

 完全粉砕でもしない限り地の果てまで追いかけるつもりか、と。

 逆の立場ならそもそも妥協案を提示する筈だ。

 

「シュレッダーは一個金貨二十枚。それを二つお願いしたい。用意出来る気がするけれど、金貨は上乗せで……」

 

 というナコトの言葉をナーベは一言一句間違えないように主に伝える。

 魔法の効果が切れても繋ぎ直せば良い。

 

「こっちも色々と作っている最中で物入りだ。言い値で払える余裕はあ(・)ま(・)り(・)無い」

 

 言い値にして金貨千枚とか言われては困るので。

 ミスリル級が下位のランクに金を無心するのは滑稽にも程がある。

 金貨はもちろん王国金貨だ。実はユグドラシル金貨だ、となれば正体を露呈したも同然。そんな間抜けな事は出来ない。

 それとシュレッダーこと『エクスチェンジ・ボックス』は創作系に頼めば作れるアイテムだ。

 冒険の後半で色々と邪魔なアイテムが出てくるので、それを処分する為にも必要だ。

 返還率が悪いのが欠点だが、後半になると気にならなくなる。

 一メートル四方もある大きなゴミ箱のようなものだが、拠点に設置する事を想定したアイテムだ。

 このアイテム自体を処分することも当然出来る。出来なければ困ることもあるので。

 例えば、うっかり大事なアイテムを落としたりすると、もう取り戻せない。

 管理は大切だ。

 

「そちらとは良いお付き合いが出来るといいのだが……」

「……シュレッダーの件は了承した、とのことだ」

 

 一つ頷き、ナコトは懐から金貨の入った袋を取り出して、ナーベの目の前で二十枚ずつの金貨を出した。

 

「前金代わりだ。……落とすなよ。袋をやるか?」

「そうしてくれると助かる」

 

 素直なところは可愛く見える。

 顔の造形が整っているので腕の良い職人が作り上げたのかと感心した。

 顔色がいいけれどアンデッドなのかな。それとも人造人間(ホムンクルス)かなと想像してみる。

 元の種族の大きさから逸脱した造形は物理的にできない筈なので、全体的なイメージでは人型だと思う。

 実は大型の竜(ドラゴン)でした、というのは荒唐無稽だ。

 その場合は変身能力を付与しなければならない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 金貨四十枚を懐(ふところ)にしまうナーベ。その後で急にアイテムが降って来たりはしない。

 いつ届くのかは分からないけれど、届けば計画が少し順調になる。

 まだ何か聞きたい事でもあるのか、ナコトの事ばかり聞いて自分達は何も答えないのであれば、こちらにも考えがある。

 

「明日から早速新しい仕事、という事はせず街の散策からだが問題は無いか?」

「問題は無い」

 

 端的に答えるナーベ。

 与えられた仕事は忠実にやり遂げる、という意思を感じた。

 急ぐ冒険はしていないので自由気ままに過ごすつもりでいた。

 ナーベの方が何か目的があるならば優先する用意はある。

 

「改めて言うが……。冒険者としての仲間というのは居ない。これから増えるのかは分からない、というところだ。拠点は地元の職人さんたちが鋭意製作中だ」

「分かった」

 

 その後、質問が無くなったのかナーベが大人しくなった。

 ならば後は寝るだけか。

 三日もあるし、一日で逃げられることは無いと思うけれど。

 手持ちの金貨を確認しておく。

 生活費として入(い)り用とかを想定していたが、この都市ではあまり期待はできない。

 ナーベに渡した分はほぼ報酬以上の損失に当たる。

 創作系を貸せ、と言った場合は断られそうだったので言わなかった。

 おそらく彼らの拠点は秘密の場所にあり、絶対防衛でも敷かれていると見るべきだ。

 敵に対して警戒が厚く、他人は全て敵だ、という廃人プレイヤーかもしれない。

 間違いなく友達を無くすタイプだ。

 これで他人の生活を覗き見る変態ならば友達になれそう、と少しだけ思ったりしないでもないけれど、気分的には嫌だなと思った。というか同族嫌悪とか言われそうだ。

 今ならそうかもしれないけれど、前の世界なら無理な話しだ。

 改めていくつかの魔法を使う。部屋を明るくしたり、感知魔法を扉にかけてみたり、ベッドの下を覗いてみたりする。

 それらに対してナーベは少し驚きつつも指摘してこなかった。

 主(あるじ)とやらも連絡を寄越さない。

 それと天井に不可視化したモンスターが実は居たり、とか思ったが、それも無し。

 外部から覗き見る魔法が無い事を確認してから沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)のスクロールを使う。

 効果範囲の外では音は一切漏れなくなる。

 黙ってメモ用紙とペンをナーベが居るベッドに乗せておく。そして、自分のベッドに向かい、ナーベから姿が見えないように屈みこみ、不可視化し、素早く彼女の近くに寄ってみる。

 熟練のプレイヤーや感知を看破する相手なら多少は気配などで読んでくると思っていたが振り向かれることは無かった。

 その後で記憶操作(コントロール・アムネジア)を使い、必要な情報を覗き見る。

 見るより先に必要な命令を与える。

 迂闊な命令だと敵対行動を取られるが無難なものであれば何も問題はない。

 そうでなければ毎回のように敵対されて問題が起きてしまう。

 洗脳に似ているが扱いを間違えなければいい。

 この魔法は発動まで少し時間がかかるが効果は永続する。別の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が覗き見た時にバレる可能性はあるけれど、全員の記憶をチェックしている者は少ない気がする。

 発動後はナーベが紙に何かを書き込んでいく。

 重要な情報はどうでもいいし、抵抗されるおそれもあるので無視しておく。

 もうナーベはナコトの操り人形だ。紙を回収し、魔法を全て解除すれば何事も無かった空間に戻る。

 

「何か食べ物を買ってきましょうか?」

「必要ない」

 

 と、ナーベは端的に答える。

 飲食不要の指輪を持っているからだと思うけれど指摘しない。

 夜まで時間はあるけれどナコトは外出して色々と食料を買い込んでおく。飲み物は多めに。

 彼女は外食しないようだし、一人で飲み食いするのは少し寂しいが仕方が無い。

 というより同じ部屋で黙って過ごしていても大丈夫なのか、他人事(ひとごと)のように思った。

 彼女が持ってきた荷物は何なのか、と思って尋ねるとテントと答えた。

 急に三日間連れ回せる事になったわけだが、こちらの予定を考えて行動してほしい。

 誰が即日、仲間になってほしいって言ったよ、と憤慨するナコト。

 大人しい性格だと思っていた自分も怒ることはあるようで、このアバターは変態仕様だけではなく人間味もちゃんと表現できるようで安心した。

 

「……とはいえ、予定を決めて仲間になってください、とも言いにくいか」

 

 どういうタイミングなら良かったのか。それはなかなか難しい。

 互いの予定や信用度。いくつかの議論を交わすのが基本だろうに。

 確かにモモンのようにいきなり押し付けるやり方もあ(・)り(・)ではある。

 

「今日はもう明日まで休む予定だけど……。美姫ナーベはどうします?」

「現場待機だ」

 

 黙って現場で待機する忍耐力。それは普通では考えられない。

 睡眠不要の場合はけっこう暇を感じる筈だ。しかも他人と一緒。

 

「……ナーベさんは眠れるんですか?」

「もちろんだ。今回は特命ゆえに飲食と睡眠不要のアイテムを貸与されている。別命あるまでは待機する事になっている」

 

 身振りによる指示が機能し、ペラペラと喋る。けれども重要な話しは控えさせている。

 小声で更に尋ねると定期連絡する事になっている事が分かったが、それがどのくらいの頻度なのか、という事には体感的、という返答が返ってきた。

 報告が出来るような事をナコトは考えてあげるべきか、少し考えてしまった。

 黙って滞在させるのは可哀相だ。しかも三日も。

 明日、何か仕事を請けてみようかな、と。

 

「仲間が居ない、というのを仮に証明する場合はどうすればいいと思う?」

「捕縛して自白させるか、洗脳する方法がある」

「最初の質問が無駄になるよね?」

「……む。か、確認出来ないところは致し方ない」

 

 賢さについては分からないが、自分なりに思考するところはプレイヤーだとしても頭が悪すぎる。

 中身の精神年齢が低いと言わざるを得ない。

 よって彼女はNPCだ。一般の傭兵モンスターは決まった定型分を持つ。

 自分が知る限りでの印象だが。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 彼女が仮に大きなギルドの一員だとすればナコトなど一瞬で蹴散らされる。

 大型ギルドは確かに存在するけれど、それらが丸ごと転移してきた話しは聞かない。

 当たり前かもしれないが、自分と同じく慎重に事(こと)を進めているのであれば見つけにくいのは当たり前だ。

 特に拠点ごとの相手は尚更。

 自分の例で言えば上位ギルドの転移だと仮定するともう少し派手な噂が聞こえてもいいと思う。それが無いのは時間差のある転移でナコトより後に来た場合が考えられる。

 百年前の転移だとすれば国くらい作っていそうだし、寿命制限の無い異形種の場合は既に世界を混沌と変えていても不思議ではない。

 王国や帝国の様子から何者かの支配下にある、という印象は受けないので平和なのかもしれない。またはここだけまだ未統治なだけ、ということもある。

 それらをひっくるめて実はナコトの思い込みでプレイヤーなど自分一人しか居なかった、という結末になると滑稽で悲しくなる。

 邪魔者が居なくて楽が出来るという発想も出来るけれど、仲間は将来的には欲しいと思う。

 一人で活動する事には限界がある。

 いずれ弟子でも育てる事にするのかな、と思うと老後の事が浮かんだ。

 病気になったり、殺されたり、ボケたりして老いて行くのかもしれない。

 無為に過ごせば避けては通れない。

 

「普段仕事が無い場合もずっとじっとしているの?」

「概(おおむ)ねそうだ」

 

 それは何か罰ゲームか拷問のようだ。

 娯楽があれば時間つぶしが出来るけれど、この世界にゲーム機は無いし、カードなどの原始的なものくらいか。

 探せばボードゲームとか出るかもしれない。

 賭け事は他に帝国に会った闘技場とかかな、と。

 異世界ファンタジーは近代化の人間が文明を捨てて楽しむところだから、また近代化を願うのは筋違いかもしれない。

 ずっと延々とモンスターを倒し続ける事など出来ない。

 暇の潰し方を考えるのも大事だと思った。

 部屋の四方と天井附近に魔法の明かりを設置する。

 電気文化の無い世界では魔法の明かりか蝋燭が基本で、高級宿なら部屋と廊下に常備されている筈だ。

 合言葉で点灯と消灯が出来るので便利。

 

「夜もふけてきましたし……。明日の天気はどうなることやら」

 

 今の季節だともうすぐ気温が上がり熱帯夜のようになるのかな、夏だし。

 雨の場合は土砂降りになる可能性があるけれど。

 そんな事を考えつつ風呂の支度を整える。

 各部屋には狭いながらも湯船があり、隣にはトイレが完備されていた。

 格安に比べて清潔でトイレも綺麗だった。掃除用具が揃っていて利用者が頑張ったから、かもしれないけれど。

 中級ほどの宿でも廊下は明るく、他の利用者と出会う事が多い。

 夜間は店の食事を取ったり、そのまま外食に出かけたりする。

 冒険者も居れば、よそから来た商人も居る。

 決して自分たちだけの世界ではない。

 宿の風呂に不満があれば大衆浴場を利用する。こちらは大勢が使うのでとても清潔だ。

 中には装備品を洗う者も居る。

 女性であるナーベが三日間放置されたままだと汚くなったり、臭くなったりしないものか。

 専用のアイテムとか魔法を使って解決できる事はあるけれど、常識的には身奇麗の方が良い。

 

「そういえば聞きそびれていた」

 

 と、物静かなナーベが尋ねてきた。

 

「お前は剣で戦うのか、それとも魔法か?」

「両方扱えるけれど……。戦闘に特化していない、と言っておくよ。冒険者は資金稼ぎだ。誰よりも強くなろうとかは思ってない」

「……そうか」

 

 ナーベは自分の手を握ったり開いたりしている。

 何気ない仕草も自我を得たNPCだとすれば驚くところなのだが、優秀なプログラマーにかかればNPCの行動パターンは驚くほど柔軟になる。

 やりようによっては歌やダンスを仕込めるとか。

 もちろん無表情だ。だが、こちらの世界なら柔軟に変化させられる。

 

「無理に言葉を探すなら補助系かな。回復役というのも違う気がするけれど……」

 

 何かに特化した戦闘を目指していたわけではないので本(・)当(・)に(・)ナコトには表現しにくかった。

 

「そうそう。飲食不要のようだけど、飲み食いできないことは無いよね?」

「出来なくはないな」

 

 出来ない場合は肉体を持たない種族が多い。

 見た目から非実体系ではないと思う。

 それはそれとして一芸に秀でているという部分では洗脳系だが、それ以外は普通かなと。

 珍しい武器を持っているわけではないし、他のプレイヤーから見れば特段、羨ましがられる事もない。

 一部のギルドが入手した世界級(ワールド)アイテムや神器級(ゴッズ)アイテムならいざ知らず、ナコト自身が持つ最強の装備は割りと地味。

 多少戦闘に有利なれる程度、といったところだ。

 これから作れば凄い武器とか出来るかもしれないけれど。現時点では大した物は持っていないと言える。

 無理にあるとすれば女体かな、と。

 この部屋には書斎があり、そこにた(・)く(・)さ(・)ん(・)の(・)飲(・)み(・)物(・)の(・)入(・)っ(・)た(・)瓶(・)を置いておく。

 

「明日は何をしようか」

 

 それは本当に未定だったからだ。

 気のままに行動するのでナーベの為に改めて予定を考えなければならない。

 事前に出会う事が分かれば良かったのだが、人生は思い通りにならないものだ。だが、それが面白いといえる。

 まだ拠点に戻る時期ではないけれど、と考えつつトイレを再点検。

 この世界の下水道は比較的、綺麗だったと思うがモンスターが居るので、便器から出る場合は無いのか疑問に思う。

 触手を持つ大型のモンスターの出現情報は無いけれど、利用するのは少し躊躇われる。

 自動的な水洗ではなく、直に落とすタイプ。形は和式便器に似たもので男女兼用。

 尻は手拭いなどで拭くらしく、紙などは無い。利用者は事前に持ち込む必要がある。あと、使用後は悪臭を防ぐ為に穴を蓋で塞ぐ。

 農家だと肥料に使うので土だけだったりする。

 高級宿はさすがに水洗が完備されている筈だ。

 中世の世界の衛生管理は現代より杜撰(ずさん)なので疫病が発生しやすかったりする。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 戻る頃には就寝時間となっていた。

 寝るのは個人の自由だがナーベが起きているので、光りはどうすればいいのか。

 

「ずっと立っているわけではない。ベッドで横になって朝を待つ」

 

 ナコトは書斎に顔を向けると何本かの飲み物が入(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)瓶(びん)の位置が僅かに変わっていた。

 黙って意識あるまま何時間も過ごすのは普通ならば苦痛だ。

 疲労しない。睡眠不要の種族の場合は気にならないと設定では書かれているけれど、それを実際に体験する場合は本当に気にならないものなのか、疑問に思う。

 NPCの場合はそういうものだと思っているから平気かもしれないが、一般プレイヤーの中身は全て人間だ。

 姿は変わっても感じ方は残っている、筈だ。

 そんな疑問を抱いているとナーベの頭にまた兎の耳が現われる。

 定時連絡だと思われる。

 伝言(メッセージ)のやりとりにいちいち警戒するのは危機管理が行き届いている証拠だ。

 相手の慎重さが窺える。

 

「これから就寝に入ります」

 

 誰と連絡をとってもいいが一時間置きでは困るな。

 報告の後、お休みなさいませ、という言葉で締めくくる。それはつまり朝まで連絡が来ない、という事かも知れない。

 外では彼女の為の護衛モンスターとかが警戒任務についているのかもしれないが、中は窺っていない筈だ。

 覗きを許すとは思えない。

 天井に誰もいない事は確認した。

 念のためにベッドに身代わりを忍ばせておくとしよう。そして、布団の中で下準備を整える。

 行使する姿だけ見えなければいいのだが、不可視化して維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)を確認する。

 後は待つだけ。

 雰囲気的には暗殺者(アサシン)にそっくりで笑える。あながち間違いでもない。

 明かりはナーベに任せているので点けっ放し。自分に近いところだけは消しておく。

 

「………」

 

 徐(おもむろ)にベッドから降りたナーベは風呂の入り口の隣にあるトイレの扉を開く。そこに不可視化したナコトが入り込むが、二人で利用するには狭い空間だ。

 建物の大きさから考えて必要最低限どの広さしか確保されていない筈なので、他の部屋も同様だと思われる。

 手拭いと水を入れた桶をこっそりと用意する。

 この空間なら流石に邪魔されることは無いと思われるが狭いのはどうしようもない。

 まず天井に避難し、ナーベが服を脱ぐのを眺める。

 脱いだものは虚空にしまうので床に置いて汚れたりはしない。さすがに全裸にはならないけれど、肌色の素肌が露になる。

 髪の毛は自(・)動(・)的(・)に巻き上げられ、床に付くのを防いだ。

 印象的には普通の人間の女性と大差が無く、お腹から複数の乳房が生えていたりはしなかった。

 歳相応に陰毛があり、性器類が備わっていた。

 当然の事ながらフィルタリングによるモザイク処理は起きない。というよりここまで繊細な表現を隠す事に意味があるのか疑問だ。

 元々のデータとして姿が設定されている、という事は外装に既に繊細なデザインが施(ほどこ)されている、という意味ではないのか、と。

 だが、自分のアバターは細かい性器類まで設定していない。

 それはつまりどういうことだ、と首を傾げたくなる。

 ゲームデータが転移後に生物的な補正で形が整えられた、ということか。

 いわゆる最適化や顕在化というものか。

 難しい理屈は分からないが、ゲーム運営会社にここまで器用な仕様は出来ないはずだが、現実として存在するのだから不思議だ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ナーベの背後に回り、肛門を眺める。

 ゲームデータとは思えないリアルさだ。

 水で濡らした指を入れてみる。

 

「ひゃっ!」

 

 当然の反応だが、ちゃんと感じたところは凄いと思った。

 全く無感動で無反応なら完全な人形だ。

 しばらく抜き差しすると身体を震わせた。

 指を引き抜いて眺めると肛門の形に変化が生まれ、穴が開き気味になり、山のように膨らみ始めた。

 それから数秒後には形の整った茶色い棒状の汚物がゆっくりと出て来た。

 さすがに持ち帰ったり、食べようとは思わないが、立派な一本糞は見ていて感心する。

 あとちゃんと臭(くさ)い臭いだった。

 無味無臭だと夢が無い。

 その汚物が真っ直ぐに便器の穴に吸い込まれるように落ちていく。

 横にこぼれるようでは困るけれど。

 

「……うぅ……」

 

 と、唸りつつも結構長く出てくる。

 今までどれだけ食べてきたのか。華奢な見た目とは裏腹によく食べる娘さんなのかな、と。

 たっぷり途切れず二分は出し続けただろうか。

 ナコトもここまで長く出せるだろうか、と疑問に思うほどだった。

 このまま切れ痔になったら次の排泄が困ると思い、終わったら治癒魔法をかけようと見守った。

 最後はポンッと小気味良い音を出して終了した。

 よく途切れさせずに出し続けられたと拍手したい気持ちを懸命に抑えた。

 終わったかと思ったがナーベはまだ力んでいたので待ってみた。

 声に出して急かすことはしないけれど。

 一分ほどで短い汚物が勢いよく飛び出し、少し放尿してナーベは一息ついた。

 生理現象が人間並みに起きる様は素直に凄いのだが、どういう原理になっているのか分からないけれど、実に興味深い。

 終わったようなので、ナコトが彼女の肛門周りを拭いて、指をまた入れてみる。

 

「……あっ、うぅ……」

 

 彼女の表情を確かめると頬を赤くしているように見えるが光りの加減による思い込みかもしれない。

 どちにせよ、尻から変な液体は出てこなかった。

 ひりだしている光景を貴族などに見せてオークションなどをすれば多額の資金が稼げそうだ。そういう趣味の人に切り分けて保存用。食用。家宝とかにしてもらうとか。

 そんな事を彼女の主(あるじ)がするようだったら、すごい変態だ。というか、そういう発想をする自分も大概だが。

 妄想は自由だ。少なくとも汚物を集める趣味は無い。飾っても臭いだけだ、と少し未練を感じないでもない自分に辟易する。

 次の段階に入り、ナーベは目を瞑りながら上着のボタンを外す。

 長時間トイレにこもるわけには行かないとしても一時間が限界だ。

 その間に勝負をつける。という何と戦っているのか分からないナコトはナーベを見守る。

 胸の部分だけ外し終えた後は胸当てたる下着を器用に外す。すると形の良い胸がこぼれ出る。

 巨乳というほどの大きさは無いが形の整った美乳だ。

 これも外装を与えた人間がデザインのか疑問だが。ある程度は描いているはずなのだが転移後に一気に生物として安定したとか、かなと。

 もし、ドットの粗い適当な造形のキャラクターが転移したらどうなるのか。それはそれでとても興味がある。

 鉱石系のモンスターに似たりするとか。

 今まで出会った人間で酷い顔はお目にかかった事が無い。バハルス帝国に向かうところにある『カッツェ平野』という戦場によく湧き出るアンデッドモンスターも造形はとても細かかった。

 転移した時に荒い部分がキュッと引き締まるとか。

 そんな事を考えつつナーベの胸を背後から揉んでいく。全く抵抗されないのは魔法の効果によるものだ。手も握ってみたがとても柔らかった。骨が無いのではないかという柔軟さがあった。

 胸の感触は人間と大差ない柔らかさ。先端の乳首も程よい硬さがある。

 しばらく確かめた後、ナーベはまたも身体を震わせる。

 ナコトが手を離すと自分で胸を揉み始めるナーベ。

 移動がしにくいが前に移動すると丁度放尿が始まった。ちゃんと出るところは生物的だ。

 いちいち小便するたびに女性は唸らないものだが、気持ちがいいのかは表情から窺い知れない。

 正体を見せろ、とは言えない。おそらく特定の条件に反応する筈なので。

 至上命令に従うNPCであればいくら魔法だろうと簡単ではない。特に慎重派は。

 では、こういう事は大丈夫なのか、という疑問が出る。ナコトはもちろん分かっている。

 転移後にNPCの裸を確かめる紳士はほぼ居ない。特に風営法に従っている者は。

 というより転移する事を想定できるわけがない。

 まさか女の裸がちゃんと見られるとは誰も思っていない筈だ。まして、アバターやゲームキャラクターが排泄行為ができるとは思わない。

 現実の身体があるのにアバターが飲食しても無駄だ。高性能のコンピュータだとしても仮想の出来事を現実に持ち込めはしない。

 

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 少し考え事をしていたら小便が終わったようだ。

 たくさん飲んでいたと思うので長く出たと思う。

 胸に手を当てたまま立ち上がるナーベ。

 一般的に長く屈んでいると立ち上がる時、足が痺れたりするものだ。それが起きないという事は身体をよく鍛えているか、そういう事は起きない身体か、だ。

 アバターやNPCだからある程度のことは平気、ということもある。

 半回転し、後ろを向くナーベ。

 狭い空間なので移動が大変だ。

 扉附近に移動し、股間部分を見ると残尿が垂れていたので丁寧に拭いておく。

 形は今まで見て来たものと大差なく、綺麗な女性器だった。

 陰毛部分を撫でるとふっくらした恥丘(ちきゅう)の感触があり、性器周りは驚くほど柔らかい。

 名称にあまり詳しくないナコトの脳裏では全部『膣』だった。他は確(・)か(・)小陰唇(しょういんしん)という名前だった気がする、という知(・)っ(・)た(・)か(・)ぶ(・)り(・)で名称を使っていた。多分間違ってはいない、と思う小陰唇を開いて尿道と思われる穴に指を入れてみると驚くほどあっさりと沈み込んだ。ここまで入るとは思わず驚いてしまった。相当、身体が柔らかいようだ。程なく人差し指が根元まで入った。

 

「……う」

 

 左右に動かしても平気そうだ。どんな種族なのか気になるところだ。

 髪の毛の様子から全身を偽装できるモンスターならいくつか知っているけれど、もし想像通りなら正体は見せずにいてほしいと思った。

 公式のデフォルトだとほぼ宇宙人と大差ないので。

 転移後は少しは可愛くなっているかもしれないけれど。

 仮にそう(変身生物)だとしても柔らかくて手触りが良い。

 あまり長く滞在は出来ないので短時間で確かめる事にする。その前に噴き出し時用に入れ物とタオルや手拭いの追加を用意する。

 大急ぎで自分のズボンを降ろすのは変態丸出しのバカみたいだ、と思った。

 とにかく女と性交したくてたまらない発情した動物と大差ない。

 否定できないので男根を取り出す。既に勃起していた。

 人間的な生理現象は今も変わらず起きるようで安心した。これで何も起きないようであれば治癒魔法の出番だ。

 自在に操れるとしても万能ではない。何もせずに射精できたら苦労はしないし、出来てしまうと面白くない。他人のは面白いと思うかもしれないけれど。

 虚しい事は分かっているが、やってみたくなるのは男の性(さが)なのかな、と。

 用意が整った後、意を決してナーベの腰を掴み、いざ尿道に男根を押し当てる。

 穴の大きさは人間であれば裂けてもおかしくないのだが、ナーベの場合は面白いようにどんどん広がって結構な空洞が出来た。

 先端部分が入ったところで低位の治癒魔法をかけておく。

 穴が収縮し始め、男根を締め付けてくる。

 

「ううっ。うっく……」

 

 呻きつつも自分の胸を揉み続けるナーベ。

 更に腰を押し込み、完全に男根が奥まで入ると口をあけて嬌声を漏らす。

 

「……あ~おぅ……。おぉ~お、おお……」

 

 鼻息荒く胸を捏(こ)ね繰り回す。その頬を快感の為に赤く染めるような表情はとても魅力的だ。

 それから少しずつ前後に腰を動かすナコト。

 一応沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)の魔法を使っておく。部屋の壁が薄いかもしれない事を失念していたので。

 それほど大きな声は出していないので大丈夫だとは思うけれど、念のための対策は施しておく。

 普通ならできない尿道での性交。

 長い時間をかけた拡張作業をしない限り、普通は無理だ。

 人間の女性では大抵が指で広げただけで裂けて血まみれになった。

 拡張しても指が入る程度で限界だ。それ以上はおそらく穴が元に戻らない状態になる。

 治癒魔法で治るとしても危険な行為に違いが無い。

 それがナーベの場合は多少乱暴に腰を振っても性器は無事だった。嬌声が凄いけれど。

 うっかり気を抜くと射精しそうになるが、場所が違うので諦める。

 別に出してもいいのかもしれないけれど、掃除が面倒臭くなる。それからアバターのせいなのか、快感は至って普通のような気がした。

 男根を締め付けるような感覚は目新しいのだが、やる事が変わらないせいか気持ち的には淡白なままだった。

 男性と女性の感じ方の違いもあるのかもしれないけれど、物足りなさは否(いな)めない。

 先ほどから唸っているのはナーベだ。腰を動かすナコトは相手の反応に面白みを感じ、快感は人並みを少し下回るような印象を受ける。極端に気持ちがいい、とか感じたり言葉として妙なセリフが出るほどの事は無かった。あと、出し入れが見づらいのが困る。

 エロゲーなら第三者的に見て楽しめるので、そこはどうにかしたい。

 自分でやってはじめて分かる盲点というものかも。

 一般的なエロいシチュエーションなら何か吼(ほ)えたり、精液まみれに喜びを感じたりするところかもしれない。だが、現実は汚らしい風景に嫌悪感を抱き、身奇麗であれば充分だった。

 元の世界がそもそも汚れすぎている。それが自分の感じ方や気持ちに影響を与えていたりするのかもしれない。

 獣になりきれない時点でエロゲーの主人公の資格は無さそうだ。それについて別に残念だとは思わないけれど。

 十分ほど乱暴に続けた後、勢いを付けて男根を引き抜き、容器を彼女の股間に当てると激しい放尿が始まった。

 

「……あはぅ……。おぅ……」

 

 胸を突き出し、痙攣しながら体内に残っていた尿を出し尽くす。

 結構激しく抜き差しした割に出血は確認できなかった。

 治癒魔法をかけると開ききった尿道が一気に収縮していく。それによりナーベの息も落ち着いてきた。

 涎などを拭いて、後始末をした後は何事もなかったようにナーベは服を着始める。

 気持ちよく所用を済ませた、という感じだ。とても数分前まで死にそうに声を荒げていた女とは思えない。

 割りと長めにトイレに入っていたが自然な立ち居振る舞いで部屋に戻る。

 掃除が終わったナコトはナーベが次に入ろうとしている風呂場に素早く入って待機する。

 脱衣所で裸となったナーベが浴槽に姿を見せる。

 狭い部屋に身体を洗うのに必要な道具は無い。ほぼ持ち込みだ。

 ナコトは血を浄化するアイテムを控えさせてナーベの様子をしばし観察する。濡れるかもしれないので自身も裸になっておく。

 戦士のように腹筋が割れていることは無く、引き締まっているけれど普通の女性の身体と大差ない。

 華奢な体型で胸の形は整っており、背筋も真っ直ぐ伸びて平均的というか健康的な印象を受けた。

 巨乳というほどはなく、美乳と呼んでも差し支えない見事な造形美。

 風呂に入る時、髪の毛はまとめて糸やタオルなどで結ぶものだがナーベの場合は自在に変形する。

 自身の意思によって自在に髪の毛を操作出来るようだ。

 トイレ同様に沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)をかけるとすぐにナーベは大人しくなり、目を瞑る。

 念のために彼女の目元をタオルで隠すように結んでおく。

 浴槽の端に腰掛けてもらい、両手は両脇の縁(へり)に置いてもらう。

 ちょっと押せば浴槽内に落ちてしまいそうだが、ここは頑張って抵抗してもらうように頼んでおく。

 蓋を被せると色々とうるさい音が鳴りそうだし、気が散るので何もしない事にする。

 命令を聞くといっても素直に従う様は本当に魔法のお陰としか言いようがない。この奇跡の能力を過信せず、ありがたく使わせてもらうことに深く感謝しておく。

 さっそくナーベの胸を揉んで感触を堪能する。この胸はさすがに命令で大きくする事は出来なかった。

 あまり自在だと奇形じみて気持ち悪くなる気がするので、早々に諦める。ただでさえ元となるモンスターの姿は気持ち悪いので美人のままでいるように、と無言で祈った。

 変身生物だとしても見た目は人間だ。感触は人間より柔らかい。

 その他で気になる事は今のところ無い。

 恥丘の触り心地もいい。

 自分の視点では近すぎると見えなくなる部分があるが、俯瞰した映像も捨てがたい。

 ある程度触った後は大股開きになってもらう。

 閉じていた大陰唇(だいいんしん)が自然と開き、小陰唇が姿を現す。

 肉の襞(ひだ)のようなものを軽くつまむ。

 上には尿道の穴。更に上に豆のような陰核がある。

 

「………」

 

 呼吸していないのではないかと思って息は止めなくていい、と一応は伝えた。心臓が動いている証拠として胸が少し動いていた。

 後はやる事は一緒なので容器を用意しておく。

 聞きそびれていた事を思い出し、ナーベにスクロールを扱えるか尋ねると頷いた。

 ならば魔法の節約の為に自分の部位に魔法をかけてもらう事にする。どの道、この後はゆっくりと休息するので。

 忘れないうちにナーベの栄養の補給を用意しておく。

 

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 女性の裸体を眺めているうちに勃起する自身の男根。しかし、本当の肉体ではないので軽く深呼吸すればあっさりと萎えてくる。ただ、練習しなければ自在には調整出来ない事だ。

 せっかく風呂を沸かしたので、温かい湯をナーベの頭にかけてみる。

 普通に濡れる黒髪は自在に動くことを除けば艶やかで色っぽい。

 肌を伝う湯によって全体的にも艶かしくなる。

 呼吸は今もしているうだし、熱さで喚くこともない。自分で触れても平気なのだから熱の感じ方には大差がないようだ。

 氷系のモンスターであれば熱さに文句を言う前に水を凍らせて来ると思う。

 適度に湯を掛け、眺めるナコト。残念なのは映像に残せない事だ。そういうアイテムが無い。記憶には残せるようだが。

 転写する術が無い。あったとしても自分で描く方法だから手間がかかる。

 濡れたおっぱいを色つきで描くのは大変だ。

 絵描きの用意は無い。それは今後の課題としよう。濡れた小陰唇を触りながらため息をつく。だが、絵に残せたとしても何度も見るものかは疑わしい。せいぜいコレクションとして死蔵され、いずれは忘れられていくのかもしれない。

 ナコトはナーベの身体を満遍なく濡らしていく。その後に放置すると冷える恐れがあるので何度も続ける必要がある。

 しかし、濡れた女の身体を好き放題に触れるのはありがたい事だ。

 感心した後は通常であればおっぱいを吸ったり、太腿を嘗め回すような行為に及ぶのが一般的かもしれないが、変態的だなと他人事のように思った。

 喘ぎ声が聞きたいわけではないが、無反応だと人形を相手にしている気にさせる。ただ、NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)だとすれば結局は同じ意味のようにも思えてしまうけれど。

 お湯をかけつつ陰核をつまんだり、小陰唇内部を洗ったりする。それで肉体的に何か変化するのか、といえば何も起きない。

 何も起きないというか、妙な形に隆起して目玉が出たりしないということ。

 陰核を刺激したりすれば人並みの反応を示す。それは本来なら実装されていない肉体的反応の筈なのだが、自分と同じアバターというわけでもないのに。

 考えれば考えるほど不思議だ。

 

「……ん」

 

 先ほどのように尿道に指を入れて広げようとすれば唸りだす。

 絶頂という感覚もあるようだが、肉体を裂いて覗き込んでもどうなっているのかは理解出来ないと思う。それに自分の身体で確認した限りでも現地の人間の肉体と大して違いが認められなかった。

 しかし、形のいい身体というのはなんとも魅力的だ。

 人間より幾分か軟らかいが完全な粘体(スライム)であればかえって気持ち悪い。というよりは酸が気になって仕方がない。

 そんな事を思いつつ陰核を刺激していると膣の内部が奇妙に動き出す。

 間近で見る機会の少ない女性器の動きだ。男性の勃起と似たようなものかもしれないが、どこかが隆起するような事は無い。

 人によって反応の違いはあるが潮を吹く時は尿道から。中には物凄い勢いがつくこともある。

 事前にトイレに行かせておけば性交時に水浸しにならない事もある。

 まるで専門家だな、とナコトは苦笑する。

 目の前で実際に潮を吹く光景を眺められるのだから仕方がない。

 

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 モンスターとの性行為は何かと不安要素が多い。特に一部の危険そうなものは。

 身体に悪影響が出るか、どうかなのだが。ゲームの中では当然出来ない。しかし、伝承や他のゲームでの設定では色々と書かれていたりするものだ。

 疫病を撒き散らすモンスターに自分の男根を差し入れられるか。

 毒を撒き散らす女性型の母乳が飲めるか。

 粘体(スライム)も然り。

 一見安全そうでもナコトとしては安全に人間同士の行為が望ましい。しかし、興味が無いわけではない。

 感じ方は一緒かもしれないけれど、見る分には興味がある。

 だから、自分でする度胸は意外と無いし、無くていいと思う事も。

 ナーベの身体が冷えないように湯をかけつつ胸を揉んだり、太腿の感触を確かめたり。

 しかし、それも長くやり続けていれば朝になってしまう。

 まず女性器は自分の意思で変形させられない。動かせられる範囲も狭い。陰核を巨大化させられない。

 それらを確かめた後で自身の男根を突き入れてみる。といっても亀頭部分が埋る程度だ。

 この状態で小陰唇が強く挟み込み、奥へと引っ張るような事は無かったし、出来ないようだ。ただ、微妙な肉の動きはあったけれど。

 ずっと同じ姿勢では辛いだろうから、湯船から離れて立ってもらった。

 すらりと立つ姿を改めて見るとまた一味違う魅力がある。しかも今は濡れている。

 行動に関する命令に関しては従順だが、彼女の本来の性格変更は簡単にはいかないと予想する。

 特定のキーワードには抵抗する筈なので。

 同意を求められる状況以外では何も成功はしない。

 相手に危害を加えるような目的でなければ膣に亀頭をこすりつけても大きな動きは見せない。というよりは、そもそもこんな事は想定されていない。

 だからこそ成功率が高い、という予想が立てられるし、実証もされている。

 

「………」

 

 余計な言葉を発すると相手に要らぬ記憶を植えつけられるおそれがあるとはいえ、無言のまま過ごすのも大変だなと思う。

 言葉責めが趣味であれば気持ち悪いセリフばかり言っているんだろうな、と。

 変態じみたセリフには嫌悪感を持っているのでナコトは淡々と事務的に行動する事が多い。

 初期は命令の確認作業だったから致し方ないが、充分気持ち悪い事は自覚していた。

 言葉による命令、または指令でなければ相手は自発的に動いたりしないのだから致し方ない。

 例えばナーベに本能のままに行動せよ、と言えばどうなるか。

 言葉を間違えればナコトをすぐさま敵と判断して襲ってくる。

 では、陰核を弄られつつ膣に亀頭をこすり付けられている状況の場合はどうか。

 一向に奥まで突き入れられない状態のまま絶頂を迎える事を良しとするのか。先ほど尿道に突き入れられた感覚はまだ残っている筈だ。であれば、雌としての本能が刺激されないのか。

 肉体を自在に動かしすぎて女性器だけ奇妙な挙動を始められても困るし、怖いけれど。

 人間に擬態している以上はその範囲内の行動しか取れない筈だ。

 形の良いおっぱいを揉んだり、乳首を擦ったり、陰核を摘みつつ亀頭を縦に動かしてみたりする。

 ナコトの目線では下方が見えにくく、第三者の目で眺めたくなる気持ちがある。

 魔法によって出来ない事はないけれど。

 

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 記憶操作(コントロール・アムネジア)によって与えられた指示に従って行動するナーベ。もちろん、抵抗する部分を除いた結果が目の前にある。

 何が良くて、何が駄目なのか。それはナコトには判断が付かない。

 それが出来るのはナーベだけ。そして、それを無理に聞きだす事は危険である。

 精神支配にかかっているか、いないかの境界が曖昧なのも原因だが、敵対したいとは思っていない。それは事実だ。

 あくまでナコトは性欲やそれに類する趣味として楽しんでいるに過ぎない。

 冷静沈着。しかし、本人は日を追うごとに淡白になる自身の感覚や気持ちなどが不安となって襲っていた。

 今のままでは何にも興味を抱かない無趣味で面白くない人間が出来上がる。そして、この世界に溶け込んで自身が消えていくような曖昧さのまま過し続けてしまう。

 それを防ぐには何かしらの目標が必要だ。

 折角魔法が使えるのだから、と。

 しかし、感情豊かな創作物の主人公のようにはいかない。

 現実は実に面白くない人間が端的に観察するのみ。

 喘ぎ声や言葉責めが主体の官能小説のようにはいかない。それはそれで悲しい事かもしれない、と思わないでもなかった。

 

「………」

 

 ある程度の刺激を受けたナーベは目隠しした状態で手探りのままナコトの腰を掴む。

 多少鼻息が荒く、目の前に迫る美女の頬は既に紅潮していた。

 ゲームのプログラムには無い動きと感覚の筈が、既に一個の生物として振舞う事は驚きに値する。

 自らナコトの男根を膣の奥に入れていく。その過程でだらしなく口を開けて喘ぐ。

 先ほどの快感を思い出したのか、誰にも教えられたわけではない筈なのに既に知識として持っているかのごとく、腰を突き出すように動かした。

 

「……あっ」

 

 一気に根元まで挿入された後は本能のままに腰を前後に動かし始める。

 最初はゆっくりと。すぐに速度を上げていく。

 これが正しい行為だと知っているように、決して抜き切らない。

 彼女が腰の動きに集中している間、ナコトは両胸を揉んだり、乳首を強く掴んだりする。

 女性の性感帯には詳しくないけれど。まして、モンスターのものともなれば尚更だが。

 ナーベは両手でしっかりとナコトの腰を掴んだままひたすらに快感に溺れていく。それは決して永遠に続きはしないが、終わりの見えない行為に疑問を差し挟む事無く続けていく。

 数十分後に動きが鈍くなり、最後の一突きでナーベの動きは止まった。それからナコトの男根を抜いた途端に勢いの付いた潮が吹き出る。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 女性として自分で動くのは大変かもしれないが、与えた指示に最後まで従った彼女は大したものだと感心する。

 浴槽の端に腰掛けて一息つくナーベ。その彼女に大股開きになってもらいお湯をかける。

 一度の性行為に満足したのかは分からないが、今度はナコトが動く番になる。

 縁(へり)をしっかり掴んでもらい、両足でナコトをがっちり挟み込む。これは拒否ではなく受け入れに値する。

 後は同じ行為の繰り返した。

 流石に延々と続けるわけには行かないので三度の射精分で終わらせた。その後は解体作業だ。

 これによって肉体的にリセットする。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 三時間ほどで作業は完了するが時間を少しかけすぎたかもしれないと思わないでもない。

 後は記憶を不都合なく修正すれば完了だ。これが何日もまたにかけるようなものならば記憶の操作は大変な労力となる。

 一日で出来る事に限りがあるので二日目は更に特定部位に限定した作業を行(おこな)わなければならない。

 最初に目的部位の大半が手に入ったので少し安心した。

 これは新しい職業(クラス)の特殊技術(スキル)のような気がしないでもない。

 労働を終えた次の日の朝に目覚めれば夜中の出来事が嘘のような雰囲気が出迎えてくれる。

 ナーベは役割の都合上、一日中起きていた。もちろん、事前に二日目の指示は与えている。

 朝が来たらどうするのか、何の疑問も抱かない場合はそ(・)れ(・)が(・)当(・)然(・)の(・)事(・)だと頭で判断された証拠だ。

 報告に関しては不都合が起きないように事前に済ませるべき事柄は終えるように。そして、何の問題も無い事を確認した彼女は下半身の着物を下着ごと脱いでからナコトのベッドに向かう。

 仲間としての挨拶として。

 下から頭の方に布団をめくり上げ、彼の下着を下ろす。そして、普段どおりの振る舞いのように性行為に勤しむ。

 下半身に相手からの射精を感じたり、自分が絶頂に達すれば終わり。

 淡々と作業のようにトイレに向かったり、濡らした手拭いで股間を拭いたりしながら身支度を整えていくナーベ。

 これらの行為はあ(・)く(・)ま(・)で(・)自(・)主(・)的(・)に行(おこな)う事になっている。だから拒否しても構わない。

 精神支配のように感じれるが、記憶そのものの改竄は魔法の解呪で元に戻るような生易しいものではない。その辺りが事態を複雑化している。

 

「……おはようございます」

 

 と、挨拶するとナーベは『ん』とだけ返答した。

 表情は少し敵意があるように睨んでいる程度。

 二日目から何をすべきだったかは決まっていない。目的は達成したので帰ってもらってもいいのでは、と思わないでもない。もちろん、後始末を忘れてはいけないけれど。

 昇進したばかりだし、まずはナーベと共に街の散策をする事にする。

 考え事は家の中より外の方が色々と発見できるかも、と思った。

 商店街を通る時、ナコトは顔(・)見(・)知(・)り(・)の(・)少(・)年(・)に言伝を頼み、それが終わったら路地裏へ向かいナーベは定時連絡をする。それが終わるとナコトを手招きし、彼が歩み寄るのを確認してから外套を外し、ズボンを降ろす。連絡した後、配下の者はしばらく遠ざけておいたと彼女は言った。

 ナーベの外出着は動き易いもので軽装鎧のような戦士風ではなく、身軽な野伏(レンジャー)か野盗(ローグ)のようなものだった。

 人目につかないことを何度か確認したナーベはナコトに丸出しになった尻を向けてくる。

 これは好意を持ったからの行動ではなく、性欲を感じたら何処でも構わず満たしたい欲求に駆られ、喫緊の用件でも入らない限りは数時間毎に性交渉を持ってこようとする。ただし、この行為に特別の感情も目的も終われば感じなくなる。

 あるのはただ生物としての性への欲求が湧いて、満たされれば平静に戻るだけの淡々としたものだ。

 ナコトとしても飽きれば止める。今はただ興味本位で続けているだけに過ぎない。

 ここに面白さは今のところ感じておらず、残念だなと淡白に思うのみだ。だから、というわけではないが、接吻はしない。

 相手の正体が醜悪なモンスターだと後々吐きそうになる。というより性行為する事も本当は危険ではある。

 とはいえ、いきなり正体を露見させては折角の楽しみが台無しになるし、夢は見続けるものとして続ける事にする。

 覚めたら諦めればいい。何事にも執着しない鉄の心のような精神構造が今はとても心強く思えた。

 

「……ナーベさんはこういう場所に第三者が現れたらどうします? 特に子供とか」

 

 尻を丸出しにしたまましばし熟考するナーベ。

 人目につかないようにしているとはいえ、目撃者が現れたらどうするのか。特に今の自分は性交渉を目的としている。そこに無粋な大人が現れればすぐに戦闘態勢に移行する。しかし、単なる子供であればどうか、と。

 ナコトに自身の正体さえ見抜かれなければ単なる男女の交合に過ぎない。そこに虫程度の女子供が居た程度で気にするほどのものか。

 名声に瑕(きず)がつかない条件であれば無視しても構わない。などなどの結果を端的に伝える。

 

「風呂場で女性器くらい見る事があるだろう。それが外になろうと些細な事だ。……ここが大広間の真ん中でもない限り、一人二人の子供は無視出来る」

「了解しました。……チームだと複数人での行為も可能ですが……」

「チームであるならば問題は無い。敵でさえなければいいのだから」

 

 それとナーベに他人に裸を見せるのに抵抗はあるか、と尋ねてみた。すると彼女は端的に特段の恥じらいは感じないと心強い返答をした。

 興味があるので理由を尋ねた。すると即座に任務上必要な行為は容認する、答えた。歴戦の戦士の言葉の様な返事に感動を覚えた。

 鼻息荒く自身満々な態度を誉めつつ椅子などの小物を配置していく。

 地面に敷布団。台の上にタオル。着替え一式。

 簡易トイレは無いが路地裏の隅に蓋があり、下水へと繋がる通路がある。

 路地裏の殆どはナコトが自分用に改良を加えている。例えば入り組んだ通路など。別の場所には現地の子供の為の秘密基地の様な隠れ家が作られている。冬場は冷えるから暖を取れる場所が孤児達には必要だが、絶対数が足りない。

 ナコトの趣味に付き合わされる彼らに恩くらいは返さないとこの先、行き詰まる気がした。それらは今考えるべきことではないが。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 椅子の背もたれに掴まりつつナコトに尻を向けるナーベ。背もたれが低いので尻がナコトに向かって突き出すような形になった。

 水で濡らしたタオルでまず下方に垂れる胸、外気に触れている女性器や肛門を拭いていく。拭く、というよりは微かに濡らす。

 それが終わると膣から陰核へと指を這わす。それと垂れている、というか下に向かって張り出している胸を揉む。

 人間の女性とは違い、ナーベは我慢強いのか喘ぐことが無い。しかし、快感は感じているらしい。

 本人の感想では表現が難しいが気持ちが昂(たかぶ)ると声に出てしまう。それが快感かもしれない、と。

 彼女が言い終わる頃に路地裏の隅にある蓋が空き、見すぼらしい服装の少年が這い出してきた。

 下水道は地下通路になっており、点検や近道に使われる事がある。だが、特定の路地裏はナコトが指定した相手以外は通行止めとなっている。基本的に蓋の上に物を乗せて開けさせないだけの簡単なものだ。

 

「ここの利用者のようです」

「……そうか」

 

 膣を触られた状態で侵入者に顔を向けようとしたが少年が先に挨拶してきた。

 思わず社交辞令で簡単に返答したものの今の自分の姿を考えると身なりを整えなくていいのか疑問に思った。しかし、ナコトが大丈夫と言った。

 

「……ナーベさんが顔を隠していれば問題はありません」

「……分かった」

 

 小声での助言に納得したナーベは少年から見えないように自身の髪の毛で目元を覆い隠した。この手の隠蔽方法は魔法と言い張れば通用する、とナコトから教わった。

 現に身を植物で隠す魔法が実在する。

 本当ならフードを被ればいいのだが、長い髪の毛を使った方が遠目からも目立ちにくいし、顔が陰になるので誤魔化しには丁度いい。

 ナーベの準備が整った頃合いにナコトは少年を招き寄せた。以前の記憶は殆ど無くなっているが女性に対する興味はある程度残っている。

 

「……手伝ってくれたら給金を弾む」

 

 そう言いながら適切な魔法を近寄ってきた少年にかける。

 完全に支配するよりかは良い方向へと転がるように、という効果の魔法だ。これは魔法をかけられている事を自覚しない。内容によって無理だと判断された事柄は拒否してくる。

 ナコトが頼んだ事柄は拒否されず、僕で良ければ、と笑顔で応じられた。

 ここに来るまで色々と経験を積ませたのでこ(・)の(・)程(・)度(・)は許容できると判断された。

 あまり無駄口を叩かない事を言い含められた少年はナーベの乳房を揉みしだく。

 見た目は童顔で可愛らしい要望を持つ十代中盤。性に関して興味を持ち始めた年頃だが、彼はそこらの大人よりも経験豊富である。しかし、本人にはその自覚が薄い。

 ナコトの知らないとこで既に自発的に自慰行為くらいはしているかもしれないが、確認の為と言ってそれ(自慰行為)を確かめようとは思わない。そこまで神経質に気にしてもいない。

 少年は女性の下方に突き出した胸が軟らかくて関心と驚きを味をっている。

 次に陰核を触らせてもらい、擦りながら感心する。

 

「女性を喜ばせる為に手伝ってくれるか?」

「僕に出来る事でしたら……。頑張ります」

 

 目の前に胸と下半身を丸出しにした女性が居る。それだけで興味が湧いて興奮してきた。股間が盛り上がってズボンに当たって痛くなる。だからといって人前で脱ぐのには抵抗を覚えた。

 そんな彼に構わずナコトは上半身は服を着たままでズボンと下着を脱ぎ、椅子に掴まっていたナーベの手を離し、少年に繋いでもらった。その間に椅子に座る。

 少年はブラブラと揺れたり、椅子から零(こぼ)れそうになる大人の男根に驚きつつ膣と交互に見比べる。

 記憶は無くとも男根を膣の穴に入れるのだなと予想する。排泄物が出る肛門に入れる場合も考えられるが大人のする事なので黙って見守る事にした。

 ナーベは唸る以外は黙っていて、乳房や膣を触れられても抵抗を見せなかった。

 

「このままこちらへ……」

「………」

 

 ナコトの指示にナーベは言われるまま従う。

 性交渉に詳しくないので面倒ごとは彼に一任している。敵対行動にならないかぎり仲間として振舞う。そう信じている。それと性に関する知識は大して持っていないので彼女の中では些事だと判断されていた。事実、事が終われば興味も失せる。

 色白で艶やかな黒髪の美人が少年の目の前で痴態を晒している。けれども、それを美しいと少年は思った。

 全裸ではないにせよ、彼女の素肌は見惚れるほどに白くて美しいのは理解できた。その彼女の形の良い乳房と桃色の陰核に触れられることが幸運だと少年は胸の内で叫ぶように興奮を高めていた。

 椅子に座ったナコトの上に腰掛けるようにナーベの腰を下ろさせる。この椅子に手摺(てすり)は無い。

 柔らかいナーベの尻が弾力をもってナコトの臀部に乗る。

 このままだとナーベがずり落ちるので彼女を背後から抱き締める。低い背もたれの椅子の前方に尻を移動させると背骨が痛む。それを防止する為に予(あらかじ)めクッションを仕込んでおいた。それでも下になる男性にとっては割合、体勢を維持するのが難しい。

 身体(しんたい)的なステータスが高いナコトにはあまり関係ないけれど。もし、少年であれば無理な体勢で座れば背骨を傷めてしまう。

 後ろに倒れ込むような形になった為、ナーベも同じように倒れ込む。その際、無理に態勢を維持しようとせず、上半身はナコトに任せるように預け、下半身は出来るだけ足を開く。地に足がつかないので少年に小さな台を用意させて彼女の負担を軽減してもらった。

 最後に男根だが、多少勃起しているとはいえ自在に動かす子が出来ないので少年に優しく握ってもらい、膣に挿入してもらう。

 

「……ん」

 

 他人であるナコトの男根を少し嫌そうに触りながら支持された通りに膣穴に男根を押し込んだ。すると早速ナーベが軽く呻く。

 挿入は滞りなく済んだが、ここから腰を動かすのは大変そうに見えた。完全にナーベは全体重をナコトに乗せているので。

 次に少年は接合状態の男女を見据えた。大人の性行為に股間は完全に硬く勃起している。そのままだと痛いのでズボンと下着を脱ぐ。

 大人と違って陰毛に包まれていない奇麗な陰茎が顔を覗かせた。しかも皮被(かわかむ)りしていない立派な形である。

 童顔に似合わず亀頭は脈打つように上下に動いていた。

 そんな様子をナーベは見ることは出来なかったがナコトは感心した。

 

「立派なものをお持ちで。まずは彼女の股間の突起を君が思いつくまま触ってごらん」

「分かりました」

 

 給金の為、と自分に言い聞かせ相手の股座(またぐら)に顔を埋める。

 顔のすぐ近くに男性の陰嚢と太い男根。膣に深く入り込んだ様子を間近で見る事になった。

 まずはナーベの陰核を撫でる。次に素早く擦る。その度に相手の呻く声が聞こえるが無視する。やめろと抗議されていないので。

 次に舌で舐める。ここで男性の男根に触れないように気を付けた。気持ち的に嫌悪感を覚えたからだ。ついで陰嚢の迫力に少したじろいだ。

 最後に軽く噛んで感触を確かめる。

 

「ナーベさん、出来るだけ尿道を広げてみてください。それと少年は指を入れて手伝う様に」

 

 ナーベからの返答は無かったが少年は恐る恐る返事した。

 いきなり人差し指を突き入れることなく、最初は近くにあった水筒で手を濡らす。どうしてか路地裏にあるものを利用した方がいいと思ってしまった。

 次に陰核の下にある小さな穴を舌で丹念に舐めて、次いで潜り込ませようとした。

 感触を確かめた後で人差し指をゆっくりと沈めていくと尿道の穴は何の抵抗も無くどんどんと広がり、指をくわえ込んでいく。

 気を付けつつ力を籠めていくと根元まで入った。その状態でゆっくりと抜き差しするように指示され、実行するとナーベが喘いだ。

 

「そこは多少時間がかかってもいいよ。大体、下の膣の穴くらいまで広げてごらん。彼女の身体はか(・)な(・)り(・)柔らかいから」

「痛がっていないですか?」

「もしそうなら拒否しているさ。血が出ないように気を付けて」

 

 多少怖がりつつ指示された通りに外壁を解(ほぐ)す様に指を抜き差ししつつ時計回りに穴を広げていく。すると尿道もそれに合わせて広くなっていった。まるで粘土質の土のように。

 ある程度の広さになった所で両手の指を二本ずつ使う。指を抜くとすぐに穴が萎(しぼ)みだす。

 

「……こんなに広がるんですね」

「他の女性はそこまで柔軟ではない。彼女だからこそ、だ。……誰でも出来ると思わないように」

「……はい」

 

 広げた尿道に少年は舌を入れ、外壁を舐めた。ナコトに言われたわけでもないのに舐めた方がいいと思ってしまった。それと行動は今のところ間違っていない確信めいたものがあった。

 本来は小便を出す場所だが、ここまで広げたら黙っていても垂れ流すのではないかと危惧した。しかし、今のところ自分の唾液以外は何も出てこない。

 こんなに広げてどうするのか、と疑問を覚えた時、自分の勃起した男根に気が付いた。

 おそらく、彼女の尿道に入れる事になる。そうとしか思えない。大人と違い、自分の男根はまだ小さい。そう感じた時、つまり自分も性行為に参加する。そう思った。

 その事に思い至ると顔が恥ずかしさで赤くなる。ただでさえ人前で下半身を露出しているのに更に性行為まですることになるとは思っても見なかった。

 今まではナコトの手伝い程度の意識しかなかった。恥ずかしいけれど給金がもらえる仕事だ、と。

 

「……広げた穴に僕のちんちんを入れるんですね?」

「よく分かっているじゃないか。入れやすいように濡らしておくといいよ。後は……、言わなくても分かるかな?」

「……なんとなく」

 

 水筒の水で自分の勃起した男根を根元まで濡らし、清めておく。それが済んだのち、ナーベ達の前に近寄る。

 彼らの腰の高さが丁度いい位置になっていた。少年が立ったまま出来るように配慮されたかのようだ。

 早速、亀頭を広げた尿道に当てる。それだけで少年の胸は激しく弾んだ。

 初めて会う女性の股間に自分の男根を接触させた。それだけでえも言われる羞恥心が襲ってくる。そのまま腰を前に突き出すべきか迷う。けれども、これは仕事である。やらなければ生活できない。その考えが少年の脳内を埋めていく。

 余計な考えに囚われていると尿道がどんどん小さくなっていく。慌てて指で広げるとナーベが唸った。敏感な部分なので指を這わせるだけで彼女は苦悶の吐息を漏らす。

 事前に濡らした亀頭に力を込めて押し込むと外壁は柔軟に彼を受け入れた。

 元々が小さな穴なので亀頭が埋まった途端に締まってくる。更に腰に力を籠めるとすぐに壁に当たる。位置的にナコトの挿入していた男根だと思われる。

 穴の中は互いに繋がってはいない筈だか、当たった事で意識が現実に戻る。

 指示されたとはいえ女性の体内に男根を入れる事になった少年は恥ずかしさでいっぱいだった。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ナーベの体内でそれぞれの男根がかち合った感触をナコトは感じ、感心した。しかし、今のところ自分で腰は動かせない。挿入部分を覗き込むこともおそらく難しい。それがとても残念だった。

 二人で性行為を楽しもうとしても想定と違ってがっかりした。だが、今更そんな文句を言っても仕方がない。

 視線を飛ばす魔法でも使ってみるかと思いはしたが、それだと身体を動かすのが難しくなる。その手の訓練をしてきていないので。あと、とても面倒くさそうに思えた。

 快感はさほどでもないから第三者目線で鑑賞するのが一番いいのかもしれない。それだと自分が気持ちよさを感じられないので残念ではある。

 少年は埋まった亀頭を引き抜こうとしてみた。あまりの吸い付きに驚いたために。

 腰を引きと張り付いたように尿道が引っ張られる。それからゆっくりと亀頭の赤みを帯びた肉が見えてきた。その様子に感心しつつ腰を押し込む。

 少年の腰使いにナーベは喘ぎつつ胸を軽く上下させる。

 聞きなれた女性の喘ぎとは違い、苦悶に近い事が予想される。ナコトは異空間の倉庫(インベントリ)から周りの音を遮断する魔法(マジック)アイテムを展開する。

 そうすることで範囲内で響く嬌声を外部に漏らさない。しかし、近くに居る少年にまで聞かせないような器用な真似は出来ない。やろうと思えば出来なくはないが無音のままだと単なる腰使いの作業で終わってしまう。

 

「彼女の胸を揉みつつ力の限り腰を振って。手加減はいらない」

 

 力の限り、という文言に驚きつつも少年は形の良いナーベの乳房を鷲掴みにする。手ごろな大きさで揉み心地が良く、柔軟な動きに対応できるほど肉厚でもあった。それと同時に腰もゆっくりと押し込みと引き抜きを繰り返す。

 一回の作業を終えるごとにナーベは口を開けて苦悶に似た吐息を漏らす。聞いている分には大丈夫なのか心配になった。だが、動かし始めた以上は途中でやめるわけにはいかない。これが少年の仕事だからだ。

 少しずつ速度を上げていくと自身の亀頭とナコトの亀頭がぶつかり合う。しかし、彼は構わず続けろと言った。

 そうしているうちに互いの亀頭がナーベの中で擦り合わされるようになり、少年も気持ちよさに熱い吐息を漏らす。

 気持ちよくなるごとにナーベの胸を揉んだり、こねくり回す動きが大胆になっていく。

 そうして、動きに慣れてきた頃、ナコトは片方の腕を解き、少年が腰を浮かせたタイミングを見計らいナーベの陰核を擦ったり引っ掻いたりする。それだけで更に彼女は身体を仰け反らせるように喘いだ。

 

「うぐぅ……、うぉお……」

「はっ……、はぁっ」

 

 少年とナーベの嬌声が続くがナコトは不動の姿勢のまま声を楽しんだ。彼の亀頭がぶつかるのが少し煩わしいが動けないので仕方がない。

 自分で楽しむにはアバターという身体は些(いささ)か不都合であった。

 尿道が少年の男根の動きに慣れる頃、ナーベは快感の為に腰を激しく痙攣させ、身体を支えるように自身の太腿を押さえる手に力が入る。

 潮吹きしようにも尿道は塞がれている。

 実際のところ少年の亀頭に体液が吹き付けられているが彼は構わず腰を動かし続けていた。

 堰(せ)き止め切れなくなった分は漏れ出す様に出てくるが大部分は封じられたまま。

 一般の人間であれば膀胱破裂や尿道が裂けてもおかしくない。ナーベが強靭な肉体を持っているからこそ可能となっている現象ともいえる。

 少年と変わった場合、彼は膣に入れたまま動かないわけだから気持ちよさはあまり感じないかもしれない。ナーベの体重に押し潰されて苦労する姿は浮かんだ。

 更に時間が経ち、少年が腰を動かすたびに股間部分から液体が吹き出て、ナコトの股座を濡らす。今のところ出血は認められない。

 潮吹きの勢いに押される少年の男根。それを押し戻される事で苦悶の吐息をつくナーベ。

 

「一旦引き抜いて彼女に水を飲ませてやってくれ」

「……は、はい。分かり……うわっ……」

「……ふぅうっ」

 

 男根を引き抜くと小気味よい音と共に景気よく液体が吹き出た。あまりの勢いに少年は驚くも用意させたタオルで自身の身体とナーベ達を拭いていく。

 その間もナコトは陰核を刺激し続けた。

 水を飲ませた後、少年はもう一度ナーベの広がった尿道に男根をねじ込んで腰を動かした。その後は無我夢中で速度を上げる。

 これ以上は早く出来なくなるころ、ナーベの呻きが悲鳴へと変わる。

 凛々しい顔立ちだった彼女がか弱い少女のように。今にも泣きだしそうな気配すら感じた。だが、途中で腰振りは止められない。既に少年も快感に溺れていたので。

 申し訳ない気持ちを抱きつつ湧き上がる射精感と戦う。

 少年の喘ぎ声の変化でそろそろ限界が近い事を悟ったナコトは最後まで続けるように非情な命令を下した。

 

「何かが出そうに、というか出しても続けること。……その感覚が一〇回を超えるまでやったら金貨だ」

「……はっ、はあ……。でも、この人、物凄い悲鳴を上げてますよっ」

「君のお陰で気持ちがいい証拠だよ」

 

 声だけではとても快感を感じて喜んでいるようには聞こえない。顔は上気し切っているのか色白だったのがかなり赤く染まっている。しかし、汗は不思議とかいていない。

 代わりに少年は汗だくになっていた。

 腰の運動しかしていないのに。

 男根を根元で押し込み、抜けきらないギリギリの位置まで引き戻し、再度押し込む。合間にナコトの男根を擦っていく。その作業を可能な限り早く続けていただけだ。

 耳にたまに液体を撹拌するような音が聞こえ、合間に彼女の痙攣と空気の抜ける音が聞こえてくる。大半は悲鳴にかき消されるが。

 それと今更だが自分のしている事が性行為だと気づき、とても恥ずかしい思いを感じていた。

 一度、男根を引き抜き膀胱にたまった液体を噴出させ、改めて蓋をする。次は抜かずに続けるようにナコトから言われた。

 それに返事する間もなく射精感が襲ってきた。

 

「出す時は根元まで押し込んでから。それが終わったらすぐに動きを再開すること。それを一〇回ほど続けてみようか」

「……じゅ、一〇回……。そんなに出来るものですか?」

「君は気にしないように」

「……はい」

 

 言葉は優しいが内容は酷いと思いつつ生活費の為に覚悟を決めた。そのすぐ後に限界が来た。

 腰を突きだし、男根を根元まで押し込んだ後に一気に解放感がやってきた。

 思わず少年は喘いだ。みっともない嬌声に自分で羞恥心を感じてしまう。

 何回出したのか分からないが、一段落着いた後で腰の動きを再開する。

 射精の知識はごく最近になって理解したが出した直後にまた動くことになり、先ほどと違った感触が男根から伝わる。

 おそらく精液のぬめりが関係している。それでも言われた通りに運動を続ける。その間、ナーベはずっと悲鳴を上げ続けていた。それを聞いているだけで股間がまた元気になってきた。

 

「……良い調子だよ」

 

 このまま眠りたくなってしまうほどナーベと少年の嬌声が耳に心地よかった。本来なら自分も腰を動かしたいところだ。先程から内部で少年の亀頭が擦りつけられている。それだけでも多(・)少(・)は(・)気持ちいい。

 男色の気(け)は無いが童顔の少年だからこそ興奮を覚える。これが小太りの中年であれば殺していてもおかしくない。

 彼が不満を覚えている間、少年は一心不乱にナーベの胸を揉みしだきながら腰を動かした。そのうちに彼女の腰を掴む事に移行し、腰の動きのみに専念する。

 それを数十分ほど続けると彼女の痙攣と連動するように射精感が襲ってきた。今度は動きを止めないように、と言われているので頑張って腰を動かした。

 狭い尿道の中を通っている為か、程よい締め付け具合がとても気持ちいい。

 胸から手を離した事で彼女の胸が上下左右に揺れ始める。気が付けば結構な速度で腰を動かしていた。

 ナコトが敏捷を上げる魔法をかけているからだが。はたから見れば尋常ではない腰の動きだ。ついでに少年の息遣いも速まってしまった。

 激しく尿道を擦られ、中を抉られるように男根が動くことにナーベは絶叫に近い声を発していた。

 自然に出る声として放置していたが些か叫び過ぎではないかと疑問に思った。しかし、感じる感覚は本物でどうしようもない。これを自分の意志で制御しようと先ほどから試みていたが全く通用しなかった。

 程なく少年は二度目の呻きと共に射精を開始するが出しながら惰性を利用して腰を動かし続けた。

 解放時に無理に男根を力まないように、とナコトが小声でアドバイスする。一つの事に集中していた少年は射精に抵抗する事をやめて腰にだけ意識を向けた。すると途端に気持ちよさがやってくる。

 精液を出しながらでも痛みを感じず腰が触れる。まるで亀頭部分が射精の度に閉じていたものを開けっ放しにした感じになった。この感覚を忘れないようにひたすら単純作業を続ける。

 

「この長丁場をどれくらい続けられるか楽しみだね」

「うっうっう……」

「あぐぅ……」

 

 ナコトの明るい声にナーベと少年は返事も出来ない状態だった。

 陰核を擦られながら尿道に異物が噴射され、それを棒状のもので撹拌される。妙な排尿感に耐えつつも下腹部は痒みに似た痙攣を起こし続ける。

 三度目の射精から腰が痙攣したまま元に戻らない。ずっと排尿しっぱなしになっているような感覚だ。無理に力(りき)むと痙攣が強くなり、余計に気持ち良さに襲われる。

 そうして少年の男根が抜かれないまま四度目、五度目の射精が続いた。

 一向に快楽から解放されないナーベは意識を保ったまま声を出し続けた。止めたくても今はできない。

 少年も疲れこそ憶えているがナコトから中止の勧告はまだ来ない。

 通常であれば長時間も性行為すれば男根のみならず女性器も肉が伸びて来るところだ。それなのにナーベの尿道は未だに狭さを維持し続けている。

 汗を振り乱しながら何度目かの射精が起きる。勢いも量も全然衰えない。

 

「あと一回かな。ここまでよく頑張ったね」

「へぁ?」

 

 あまりに長時間腰を動かし続け、何度も喘いできた為、口が上手く回らない。気が付けばナーベの悲鳴も時間が経つごとに歯の抜けた様な妙な音に変化していた。

 二人共口が弛緩したかのようだった。

 少年は最後の一回と聞き、ナーベの腰をしっかりと掴んで腰を激しく動かした。既に射精したまま動いている気がするので気持ち良さが分からない。ずっと気持ちいいままのようにさえ思えた。それでも段々と下腹部の奥からもっと強い感覚が来ているのが分かる。

 接合部は乱暴な動きで不気味な様相になっていた。お互いの肉体が完全に溶け合い、ただ肉が蠢いているだけに見える。

 無心で動かす接合部は白い粘液で覆われ、酷く汚らしいものに変わり果てていた。

 間断な少年の呻き声は次第に大きくなっていく。今までの人生でこれほど夢中になって腰を動かしたことがあっただろうか、と。

 終わってしまうのは勿体ないが酷く疲れを感じていた。正直、気持ち良すぎて良く分からない。そんな少年の気持ちに関係なく急激に吹きあがる快感が襲ってきた。

 正確な文脈にならない雄叫びを上げる少年。

 もはや悲鳴にしか聞こえないナーベの大きな嬌声が重なる。更に一段と強く腰を痙攣させ覗ける。

 

「ああっ!」

 

 最後の力を振り絞って振り続けた腰を叩きつけるように押し込んだ。その拍子にナーベは絶叫を。少年は怒号に似た雄叫びを上げた。

 一〇回以上の射精にも拘わらず、今まで一番の噴射を感じた。

 呻きつつ身を任せ、ナーベの上半身に倒れ込む。丁度顔の近くに震える乳房があったので咥えてしゃぶってみる。今は無き柔らかい母の面影を思い出しながら。

 息も絶え絶えの体(てい)でやり切った少年。行為が終わた事で胸を上下させることをやめるナーベ。

 お互いの行為が終わった事をなんとなく感じ取ったナコトは双方を励ましておいた。

 本気の性行為は自分には出来そうもない。他人だからこそ迫力が分かる。

 少し勿体ないと思いつつも少年に接合部を見るように促す。そこに丁度、通りかかった町人風の歳若い娘が大慌てで近寄ってきた。

 近道として使っていたのか、薄暗い場所で行われていることにひどく驚いている様子だった。ただ、ナーベの絶叫などは魔法によって遮られているので近所迷惑にはなっていない。

 その女性は魔法の効果範囲の内側に入り、叫ぶように言った。

 

「こ、こんなところで何をやっているんですか!」

 

 栗色の髪に薄汚れた衣服から平民であることは明白だ。少年は未だにナーベと繋がっており、急に聞こえた怒声に驚いた。

 激しい運動のせいですぐに動けず、顔だけ女性に向ける。

 

「……いこ……す……」

 

 荒い呼吸の為にうまく言えなかったが少年は震える口で『性行為です』と正直に言ったようだ。他の単語を知っていれば青姦だの射精だの言えたかもしれない。あるいは事細かな説明だ。

 代わりにナコトは代弁しておいた。すると娘は顔を真っ赤にしながら己の顔を隠して恥じらい、その場にうずくまる。

 見た目の年齢的にも言葉の意味は理解しているようで、小さく性行為と呟き始めた。言えば言うほど恥ずかしい言葉に対して羞恥心が膨れ上がる。

 

「……はぁ……」

 

 蹲る女性気になるのか、気持ちが落ち着かないのか。少年は何かを喋ろうとしているようだが聞き取りにくい。顎が上手く動かないようだ。

 それでも見るだけ指示しておいた。

 ずっと精子が出っぱなしになっていたようなものだから射精の終わりが分からなかった。それでも接合部を見ると白い粘液にまみれている事に漸(ようや)く気づいた。

 引き抜こうとした時、ナコトから男根を抜いたら指を突っ込んですぐに蓋をするように言われた。

 

「君達がやっていたのに私は全く動けなかったからね。選手交代だ」

 

 確かに彼の言う通りだった。しかし、ちゃんと男根が抜けるのか心配になった。

 下方を見れば完全に融合しているような有様になっていたので。それに男根が萎むのに合わせて尿道がきつく締まってくる。

 一息で引き抜いて、すぐに人差し指を入れればいいと指示が来る。

 胸の内で掛け声を出しながら腰を引くと間の抜けた音が鳴り、勢いに任せて白い粘液が吹き出た。それを強引に人差し指をねじ込む形で封じる。

 指が攣(つ)らないように態勢を変えるように、と。

 抜き切った自身の陰茎は完全に小さく萎(しぼ)んでいた。溶け落ちたのではないか、と思うほど。

 蹲る女性は丁度、彼の萎んだ陰茎を見て驚いた。白い粘液にまみれていてナーベの女性器から引き抜いたと思われる糸が引いている様子に。

 自分よりも年下に見える少年がどうして大人の女の人と性行為をしているのか。全く理解できず、また身体が火照ったように熱くなってきた。

 ナコトはナーベの脇を持って持ち上げ、体勢を変える。少年の邪魔にならないように気を付けながら椅子に座らせた。腰の位置は少し前に出るように。

 少年はナーベの背後に移動させる。

 

「そのまま尿道の中で指を適当に動かしておいて」

「……う」

 

 口が半開きのまま返事を返す。しばらく閉じそうにない。それと涎が出てきた。

 指を入れてすぐに様々な粘液を感じた。その中で指を動かすのか、と呆れつつ指示に従う。すぐに指の間から白い精液が漏れてきた。

 離れた場所に居た女性も興味が出たのか、少しずつ近づいてきて少年の様子を覗き見る。彼が女性気に指を深く入れている様子に恥ずかしながらも目が離せない。

 他人の性器を見る事はあるが大陰唇や小陰唇が開いた様子を見る事は殆どない。まして、それをいじる少年など初めてだ。

 漏れるのは仕方が無いから気にしないようにとナコトは言った。

 ナコトは少年の背中に回復ポーションを振りかける。

 すぐに口が回るようにはならないとしても疲労はだいぶん回復できるはずだ、と

 思い付きでやらせたとはいえ、長時間頑張ってくれた少年に感心した。

 ナーベの両手をだらりと下げさせ、両足はナコトの肩に乗せる。少年の余った手は彼女の胸を揉んでおくように言っておく。

 後は単純作業だから言葉は無い。あるのはナーベの嬌声だけだ。

 

「……あ、うそ……」

 

 側に見学することになった娘はナコトも性行為に参加する殊に驚いた。こぼれ出ている彼の男根の大きさにも。

 何の躊躇いもなく太い男根をナーベの膣に入れた。それと同時に少年の指に異質な感触が伝わってくる。あと、本当に女性器に突き入れられる様子を見た娘は顔を赤くしたまま荒い息遣いで凝視してきた。

 最初から物凄い速度の腰の動きが披露され、瞬く間にナーベが喚きだす。それに負けじと少年は指を動かし続けた。

 娘は目の前で行われている性行為に心臓が激しく鼓動するのを感じ、思わず自身の大きくなり始めた胸を掴む。身体が熱い為か、顔から汗も流れ始めた。

 ナコトが腰を動かすと自分の頭もそれに連動して動いてしまう。どうしても目が離せない。

 次第に自身の股間に血が集まるような感覚に気付く。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 人通りの少ない路地裏にやってきた娘もまたナコトの仕込みである。

 この通路は現在、誰も通れないように細工が施されている。ナーベくらいの余程の術者でも無い限り、進入は困難である。原則としてナコトが許可した者以外。

 少年にとっては初対面となる彼女は一般人で、ごく普通の町民にすぎない。ここで起きている事を吹聴する事もない。

 お互い知らない者同士であれば性的興奮も普段より高まるというもの。実際、少年は先ほどから慌てふためく娘が気になって仕方がなく、萎んでいた陰茎が少しずつ元気を取り戻していた。

 また、すぐに隠そうとしないのは歳若い為で、彼のように人前で陰茎をさらすことに躊躇いを持たない子供は意外と多く、それは少女でも同様である。

 少年にとっての性行為は確かに恥ずかしい行為だが大人ほどではない。精子を出すことと小便をする事が彼の中では似たような感覚だった。ただ、陰茎を擦って出す事には多少の抵抗を感じているようだ。

 明らかに違うと思っているのは女性器に陰茎を差し入れる事だ。それは流石に恥ずかしいと感じている。

 住んでいる地域の常識というものも関係していると思われるし、ナコトの常識と彼らのものは同一ではない。

 そうしている間にも娘は腰ひもを解き始める。

 町民の一般的な服装はだいたい膝下まで隠れる長いスカートが多い。満足な下着も無く、男性であれば褌(ふんどし)の様のものばかり。靴下の様な上等のものも履けない。

 ナコトの常識にあるものの多くは貴族階級が身に着けている。

 娘の洋服の下にあるのは薄手の内着と簡単な下着類がある筈だ。幼年であれば胸を隠すようなものが無い場合がある。

 

「……はぁ、はぁ」

 

 身体が熱くて耐えられない。それほどの気持ちの高ぶりに娘は混乱してきたようだ。

 目の前で見知らぬ男女が性行為している。それから目が離せない為に何故か身体が火照ってきた。

 側に居る少年は下半身を露出し、陰茎が固くなって起き上がる。しかも白い粘液を滴らせて。更に現場には精液の独特の匂いが漂っていた。それを嗅ぐだけでどうにも落ち着かない。

 熱い、熱いと思いつつ人前で服を脱いでいく。

 胸元を隠すものと腰回りの短パン。それと靴は履いたまま。最低限の薄着だけとなった。

 脱いだ服はきちんと畳む。それはそ(・)う(・)し(・)た(・)方(・)が(・)い(・)い(・)と思ったからだ。

 

「……お姉さん、急に服を脱いでどうしたの?」

 

 ナーベの尿道に指を深く差し入れたまま勃起している少年が尋ねる。ちゃんと声が出たことに安堵した。

 当然、熱いからと彼女は答える。今も頭から汗が噴き出すように溢れていた。相当興奮しているのはナコトにも分かった。

 精神支配は人間の新陳代謝をも狂わせてしまう。

 娘が見ている前でナコトとナーベの激しい性行為が続いている。そして、彼女の耳に嬌声が届いている。そのせいで性的興奮状態にあり、身体が熱くなってたまらない。

 膣に突き入れられる男根から目が離せない娘は汗をぬぐいつつ薄着から大きくなってきた胸を外気に晒し、強く揉みしだく。

 荒い息遣いで片方の手を股間に当てればより気持ちが昂(たかぶ)る。すぐに下の薄着の中に手を入れて直に自分の女性器を触り出す。

 誰に教えられたわけでもないのに目の前で繰り広げられる性行為を習うように小陰唇を擦る。すると途端に気持ちがよくなり、胸を揉む手と女性器を擦る速度は速まっていく。

 そんな娘の痴態を見る事になった少年の陰茎はより硬く痙攣するように跳ねた。もう一度、女性の膣に入れたい気持ちが高まっていく。

 それから一時間は経過しただろうか。無心で指を動かす作業に熱中していて今が何時か全く分からない。

 一〇回以上はナーベの腰が痙攣するのを少年は感じた。身体を跳ねさせるたびに股間から何かが噴き出すような異音が聞こえてきた。

 果ての無い快感に翻弄されているかのようだ。

 惰性の動きで意識が朦朧としてきた頃、ナコトの動きが終わった。

 

「……いやー、やりすぎちゃったね。……では、結果を見てみようか」

 

 ナコトは少年の手を掴んだ。膣に挿入した男根と同時に引き抜くとどうなるか見るためだ。既に少年の手は震えていてタイミングを合わせる自信が無い。

 椅子に深く座り込んだナーベの様子を気にしつつ、少年はその瞬間を待ち望んだ。

 掛け声は無く、淡々と指と男根が引き抜かれた。その途端に尿道と膣から白い粘液とも液体とも知れないものが何メートルか噴出した。

 吹き出しながらナーベは腰を痙攣させて呻く。自分の意志と関係なく体内に残っているもの全てを吐きだそうとしているかのようだった。

 

「君と私の精液がこんなにたまってたんだね」

「……うわぁ……。あと、匂いが凄い……」

 

 それにしても確かに凄い量の粘液が出た。足し終わったかなと思ったら、黄色い尿が放物線を描くように吹き出す。

 それが終わると尿道と膣の穴が小さく萎(しぼ)んでいく。

 一緒に見ていた娘も驚きつつ自身の股間から感じていた気持ちが高ぶり、思わず何かが出るような気持になった。

 

「……あはん」

 

 思わず出た声に驚き、ついで股間を擦っていた手が湿る感覚にも。そして、荒い息遣いをしている自分自身に。

 何か取り返しのつかないことをしたような気がした娘は下の薄着を脱いで確かめる。側に少年とナコトが居るのも忘れて。

 

「あっ……。なんか出ちゃった」

 

 薄着なのですぐに濡れた後が目立ってくる。

 照り出した手には水気とは違うねっとりとした粘液の様な透明なものに覆われていた。

 拭く物がないので嘗めとることにした。いやに塩辛く、自分のものだと思うと気持ち悪いのだが。

 それと大量に放出した影響で普通の女性なら失神しているところだが、ナーベは多少痙攣した後、意識を保ったまま呼吸を整え始めた。

 大股開きのナーベの股から夥しい白い粘液が出る光景に少年と娘は再度、股間が硬くなったり熱くなる。

 匂いもさることながら胸の内で勿体ないな、という思いが彼にはあった。どうしてそう思うのかは分からない。折角入れたものだから、ともいえなくもないけれど。

 散々擦られた陰核はかなり腫れあがっていたようだが、みるみる元の大きさに戻っていった。

 ナコトは少年に娘に手ぬぐいを渡すように指示した。この路地裏にはいろいろなものが揃っている。

 手を拭き終わると娘は下半身を丸出しにしていたことに気付き、急いで履こうと思ったが結構濡れていて躊躇うことになった。

 洗わなければならないと思い、履くのを断念する。

 少年は未だに勃起したまま娘の下半身に釘付けとなった。新しい女性器がそこにあったので、つい入れたいと思ってしまった。

 散々ナーベと性行為した後なのに股間は未だに元気だった。

 胸と女性器を露出させたまま残念がる娘は少年の視線に気づいて思わず下半身を隠す。

 

「……お姉さんも性行為する?」

「せっ、……するわけないでしょ。それより貴方、というか貴方達はなんてことしてるのよ」

 

 先ほど絶頂した為か、疲れを覚えて声に力が入らない。

 少年の精子まみれの勃起も気になるし、自身が自慰行為した事にも驚き、慌てる。

 ナーベの女性器から今持たれ続ける精子も気になって仕方がない。

 大人が性行為した後に漏れ出る精子はなんか勿体ない、と娘は思った。

 少年には乱暴なことを言ってしまったが未だに股間はむず痒い。収まったはずなのに身体の火照りが再燃してしまったようだ。

 ナコトがナーベの尿道や膣から出ているものを嘗めていいよと告げると娘は大急ぎで近づき、間近で他人の女性器を凝視した。

 綺麗な形の小陰唇と膣。既に小さくなった尿道に標準的な大きさの陰核が目の前にあった。

 精液の独特の匂いに釣られて娘は思わずナーベの膣を下から上へ舌で嘗めてしまった。それだけで塩気のある独特な味を感じ、綺麗にしなければ、と強く思った。

 その後は子猫のように女性器を嘗め続け、膣口に下を入れたり、尿道に口をつけて粘液を吸い出すようにした。それこそ武者ぶるように。

 嘗めとったものは吐き捨てず飲み込んだ。そしてすぐに気付く、他人の精子を飲んでしまった事に。

 どうしてか、そうしなければならないと思い、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。

 

「彼の男根も綺麗にしてあげて」

「……し、仕方がないわね。ずっと汚いままじゃあズボンも履けないでしょう。ほら、こっちに来なさい」

「うん」

 

 意気揚々と近づく少年。

 彼の勃起した陰茎をみると確かに咥えたくなる。その気持ちに逆らわず、布巾で拭くという考えよりも嘗めて綺麗にすることを選択した。

 他人の陰茎を口に含んで下で丁寧に嘗めている時に自分がしていることがおかしいと気づく。しかし、すでに手遅れだった。

 恥ずかしさと戦いつつ少年の陰茎を嘗め、喉の奥にまで含んで手前まで移動させる運動を繰り返す。まるで先ほどの性行為を口でしているような気持になった。

 それから少しして少年は娘の頭を両腕で押さえる。それを合図に娘も自身の胸を揉みしだき、小陰唇を擦り始めた。

 少年は彼女の口を膣に見立てて陰茎を突き入れたり、引いたりを繰り返した。その動きは決して激しいものではなく、女性の舌の上を滑らせるように気を付けた。

 彼女も舌を少しだけ横に往復させる。

 精液にまみれていたために塩辛い男根の味を感じつつ股間からの刺激が脳天に伝わってきた。

 

「……あ、お姉さん。……出そう、もう出る」

 

 陰茎を彼女の口の奥まで突き入れ、景気よく射精した。その感覚は娘も感じた。

 何度かの痙攣の後、男根を加えたまま彼の精子を飲み込む。そのすぐ後に自身の絶頂が始まり、地面に粘度の低い粘液が漏れ出た。

 改めて少年の陰茎を嘗め、亀頭の隅々まで舌を這わせて粘液を吸い取る。その時、ジュルルと嫌らしい音を立てながら口から陰茎を引き抜く。ちゃんと綺麗になったか尿道の穴の奥などをのぞき込みつつ。

 今度は反対に少年に綺麗にしてもらったらいい、とナコトが言うと娘は立ち上がり、少年は屈んだ。

 ナーベより見た目が歳若い娘の女性器を丁寧に嘗めて綺麗にした。

 彼の舌の感触が気持ちよくて思わずおしっこが出てしまったが少年が気を利かせて尿道に口をつけ、可能な限り飲んでくれた。その様子がまたいじらしく興奮するきっかけとなった。

 ただ、さすがにおしっこは美味しくなかったようで激しく咳き込まれた。

 ナコトは少年に一休みを命じ、娘に近くに寄るように言った。

 未だ目隠したナーベが大股開きのまま待機している所へ。

 お互いの性器を合わせてみるように言うと素直に従いだした。

 ナーベは太ももを広げているので小陰唇が開いた状態だが娘はしっかりと閉じたまま。

 とりあえず、性器同士を合わせてみる。陰茎と違い、差し入れる物がない。だが、こすりつけることは出来る。

 お互いの陰核を擦ると気持ちが良かった。娘は再度荒い息遣いで誰に教わったわけでもないのに気持ちがよくなるように腰を動かした。

 ナーベの陰核と自身の陰核が擦れ合うと自然と声が漏れ出てしまう。そんな娘の背後に移動したナコトは形の良い両胸を揉みしだく。時折、乳首も擦る。

 娘は代わりとしてナーベの両胸を思うがまま揉み始める。すると他人の乳房はまた格別なものがある事を知った。

 ある程度気持ちよくなった頃合いにナーベと娘の身体を引き離す。

 まずナコトはナーベの尿道を指で広げ、その穴に陰核を入れるように指示する。途中までナコトは補佐した。

 制定興奮によって娘の陰核はある程度膨張しているので陰茎のように差し入れる事が出来た。

 ナコトが指を離せば即座に収縮し、娘の陰核を強く締め付ける。

 

「軽く引いて見なさい」

 

 そう言われた娘が身体を引こうとすると陰核を離すまいとナーベの尿道に引っ張られる。

 一体化した様な様子に驚き、興味深げに眺めた。その後、気分が高揚していた娘は互いの性器を擦り合わせた。陰核が抜けないように気を付けながら。

 互いの小陰唇のねっとりとした湿り気を感じつつ擦り合わせる感触に熱い吐息が漏れる。

 腰を動かしている内にナーベの胸を嘗めたり乳首を吸ったりした。

 形の良い乳房。色白のお腹。汚れのない女性器。それらを娘は堪能した。

 一度、陰核を引き抜き、改めてナーベの女性器を間近で観察する。

 先ほどまで膣口に二人の男性の陰茎が出たり入ったりしたところとは思えないほど形が整っていた。そこに指を入れて中を覗き込む。

 桃色の膣壁と奥に丸い突起。その中心に男性の亀頭の先端と似たような穴のようなものがあった。

 あそこに向かって精液を出すのか、とうっすら思うと恥ずかしさを感じた。自分も将来的には同じことをするのだと想像してしまったので。

 将来ではなく今すぐに行(おこな)うことかもしれない。

 先ほどまで自分の手で刺激を与えていた女性器に今度は男性の陰茎を入れればもっと気持ちよくなるのではないかと思ってしまった。

 知らず知らずのうちに自分の膣を擦り、指で小陰唇を開いたりする。しかし、視線はナーベの膣口の奥だ。

 片方は自分の膣。もう片方の手はナーベの膣に出たり入ったりする。その柔らかい感触に思わずのめり込む。

 

「……ああ、これが男女の性行為……。この穴に男の人のあれが出たり入ったり……」

 

 そんなことを呟く彼女の胸を揉み続けていたナコトは性行為をしてみるかい、と尋ねた。すると気持ちよくなりたいです、と答えた。

 ナーベの女性器を凝視しながら。自然と口から出てしまった言葉に娘は更に顔が赤くなる。

 太ももを開いた状態のナーベの女性器に娘は顔を埋め、舌を膣穴に入れて味を確かめる。

 そうしている間、娘に尻を突き上げる格好になってもらった。

 ナコトから見て尻穴と下方に垂れ気味の小陰唇の襞(ひだ)がはっきりと見える形だ。

 そこにナコトは自身の男根を小陰唇にくっつけると娘の尻が軽く跳ねた。

 何度も自慰行為したので充分に湿り気を帯びていた。後は力を込めて突き入れるだけ。

 始めて膣に突き入れられると処女膜が破れ、出血する。しかし、痛いのは最初だけ。

 娘はすでに何度も絶頂しているので激痛は一瞬だ。それに治癒魔法も念のためにかけられる。

 

「あはう! ああっ! はっ! うんっ!」

 

 痛みのすぐ後に今まで感じたことがないくらいの快感が襲ってきて、あらん限りに嬌声を上げた。

 我慢するという事がうまくできなかった為だ。それにナコトは最初から容赦なく性行為を敢行した。

 ある程度、時間が過ぎたころに娘も快感に逆らうことをやめてナーベの膣を嘗め続けた。

 途中、身体の奥に何かが吹き付けられる感触があった。喉の奥に感じたではないかと思ったがあまりにも気持ちよくて、もっと続けてと言ってしまった。

 そして、少年が側に居るのに性行為と気持ちいいという言葉を大きな声で連呼し始めた。

 嬌声と卑猥な単語を言うたびにより一層気持ちよくなってしまった。

 おしっこ出る、と言っても行為は止まらず、その後快感と共に失禁し、足元に液体が落ちる音がいやらしく聞こえてきた。

 強く男根を突き入れられるたびに身体が跳ねるような感覚になっていき嬌声も止められない。

 しかし、それも永遠に続くわけではない。

 一時間もかからない間で行為は終わった。娘にとっては充分すぎるほどの時間であった。

 男根を引き抜かれる感触もまた気持ちよく、その感覚が無くならないうちに自身の手で膣口を広げた。その穴から今まで射精した分の精液が大量に流れ落ちてきた。

 思わず広げてしまったが思いのほか柔らかい自分の女性器に驚き、とんでもないことを口走ってしまった事に恥ずかしさを感じた。しかし、そうして驚いている間にも広げた膣の柔らかさを堪能し続けた。

 

「や、やめないで。まだ私の穴に入れて、ください」

 

 荒い息遣いで下向きに垂れる胸が大きく揺れる。それでも娘は性行為を望んだ。こんなに気持ちがいいとは思いもよらず、欲望のままに顔が淫靡に歪む。

 そこで休んでいた少年を呼ぶ。

 彼はナコトとの性行為を眺めていた為に勃起したままだった。なので来て早々に娘の膣に男根を突き入れる。大人より細身の陰茎で膣口を広げていた事もあり、すんなりと奥へ沈み込んだ。

 ナコトの精液を陰茎に感じつつ性行為を始める。ほどなく娘から嬌声が漏れてきた。

 散々性行為を続け、かなりの回数射精したのに未だに気持ちよさが持続する事に少年は驚きつつも本能に従い腰を動かした。それらはもちろん、治癒魔法による恩恵だ。

 普通なら陰茎に激しい痛みを覚えて、歳若い少年といえども一〇回以上も続けていられない。精子どころか出血してもおかしくない。

 

「お姉さん、出すよ」

「……ええ」

 

 何度か腰を動かした後、最後の一突きを敢行し、娘の膣の中に射精する。

 今日一日でどれくらい性行為したのか、分からないけれどもう限界だと少年は判断し、その場に座り込んだ。

 陰茎が引き抜かれた後で自分が射精した精子が地面に向かって垂れ落ちる様子が見えた。

 

「後片付けを済ませたら君達は風呂場に行くといい。今日はありがとう」

「……いいえ。お役に立てたのか分からなかったです」

「私はまだ……、少し物足りませんでした。……こんなに性行為が気持ちいいなんて……。ねえ、帰り際にもう一回しよう? あと、銭湯でもやりたいな」

「いいですよ。……するだけなら」

 

 膣から大量の精子を垂らしながら言った娘の言葉に少年は快く返事をした。心なしか、彼の男根が元気よく跳ねたように見えた。

 しかし、銭湯で性行為となると大勢に見られることになる。そのあたりのことを忘れている辺り、判断力がかなり低下しているとみられる。実際には銭湯で大勢に見られることはないけれど。

 性的興奮は今日だけ。明日になればここであった事は綺麗に忘れる。というか忘れさせるので何の問題もない。

 金貨を渡すと言ったが銀貨と銅貨で支払う事にした。孤児である彼が大金を持っていると知られれば狙われるかもしれないので。

 貨幣の量が多いので他の人にバレないように運ぶよう言い含めておく。

 少年と娘の役目が終わったので現場から退散させた。後は掃除の時間だ。ただ、娘の方は腰砕けになっていたので少年に手を貸してもらう形で立ち去ることになった。二人とも下半身丸出しのまま。

 少年は器用に彼女の胸を揉みつつ膣に指を入れ、娘は勃起している彼の陰茎を軽く掴む形でお互いに刺激し合いながら歩いて行った。

 そして、曲がり角を通過してほどなく嬌声が聞こえてきた。そんな声を聞きつつ残ったナコトは現場を片づける。

 ナコトにとって性交渉は単なる趣味の一つだ。終われば気持ちも萎(な)えてしまう。というよりは萎えるほど一気にやり過ぎた、とも言える。

 ナーベもまた人間の交尾に無駄な時間を費やした、という程度にしか認識していなかった。それと先ほどの少年に対して特に興味を覚える事は無かった。

 いちいち性行為の度に射精する必要は無いけれど、今回は少年に見せるためにあえて貯めに貯めてみた。

 本来は相手が絶頂すれば行為は終わりでいい。ただそれだけの事でしかない。

 性交渉が終わった途端にナーベは無表情に戻って後始末を手伝い、身支度を整える。そして、何事も無かったかのように振舞う。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 通りを歩いているとナーベの首にかけられているミスリル級を示す冒険者プレートが人々の注目を浴びているようで、彼女の横を歩くナコトはほぼ無視されている。

 それでも金級という新しいプレートは少しだけ気分が良い。

 国民にとって憧れはアダマンタイト級。下位の冒険者はならず者扱いが多い。

 地味な仕事が多いし、国の為に働いているわけではない。だが、実際は縁の下の力持ち的に働いてはいる。

 美姫ナーベとデートだと思う者は彼女の相方(パートナー)のモモンと自分だけかもしれない。

 無表情に近い彼女は殆ど喋らない。正確には物静かなだけともいえる。

 寡黙というほど喋らないわけではない。

 食事に関して味覚はあるようで、黙々と食べはするが感想は述べない。あと食べ方は綺麗だった。

 嫌いな物は無いらしい。

 設定で指定でもされない限り、それはありえないと思っているが苦手なものがあった時の反応は少し興味がある。

 不味い物を食べさせて嘔吐させてみるとか。

 ギャグ要素の反応に対してどういう対応をするのか、とか思い浮かんだが却下していく。

 特殊な趣味の者なら殴り続けて顔を痣(あざ)だらけにする。裸のまま市中を歩かせる。地面に食べ物を置いて手を使わずに口だけで食えと命令する。

 などというよ(・)く(・)あ(・)る(・)シチュエーションが浮かんだ。

 残念ながら興味は湧かなかった。

 底辺の生活をしていればしないこともない、という設定は知っている。これでも大抵のエロゲーはプレイしてきた。

 だからこそ、というわけではないが自分でやるほどの事は最初の内に済ませた気がするので、今更だ。

 転移して二年以上も経っている。日(・)本(・)人(・)は新しいものが大好きだ。

 

「………」

 

 食事を終えたナーベが黙って自分を見つめてくるナコトを見据えたまま表情をきつくしていく。こちらを見るな、下等生物と言わんばかりだ。

 建築中の施設に気持ちを切り替えるべきか、それとも新たな交渉をふっかけるべきか。

 人質にするのは簡単だ。

 もう少し自分が歳若い青年であれば冴えない主人公として振舞っているところだ。

 だが、残念な事に青春時代は当の昔に過ぎてしまった。

 アバターは割りと歳若くなってはいるけれど、中身は中年になりかけたおっさんだ。

 少女から『おじさん』と言われて喜ぶ年齢でもある。

 その割りにやる事はえげつなく、ほぼ犯罪者だが。

 急に苦笑したナコトを奇病にかかった汚物だと思ったナーベは汚らしいものを見るような目をしながら少し身体を後ろに引いた。

 精神的な感情は本来は表現されないものだ。今はアバターに細かい所作すら表に出てしまうありさま。

 いわゆる『ポーカー・フェイス』というものを今後、練習する必要がある。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 腹ごしらえが終わった後で街の外への移動について尋ねると許可されていないから期限までエ・ランテルに滞在する、というか滞在しなければならない、という返答だった。

 今の自分達は外での活動ができる。それはどうなのか、と改めて尋ねるとナーベは唸った。

 意地悪をするつもりはないが自分でも確かにその通りだ、と思ったらしい。

 それはつまり命令として守っているが冒険者としての行動に矛盾が生じると認識した。

 機械的なNPCというより自分で思考できる生命体と変わらない。

 ここまで柔軟な『行動アルゴリズム』というのは感心した。

 もし、百年ほど経過することによって無機物や人形に魂が宿るのであれば、まさに魂が宿ったNPCだ。

 それでも疑問に残る。

 その身体はゲームデータであるはず。どうして柔軟に変化させられるのか。

 各プレイヤーの認識に合わせて動いているように見せているだけ、というオチも考えられる。

 本当の世界はとてもゲーム的でユグドラシルと変わらない世界。だったとしてもエロい風景は自分の妄想なのか。いやにはっきりと細かく見えるのだが。

 感触はいかようにも誤魔化せるとして。

 妄想を具現できるならナーベに光りのエフェクトを散りばめられる筈だ。

 魔法では出来そうだが、結局のところ思うだけでは何も起きなかった。

 

「……モモンの予定もあるか……」

 

 早めに帰したところで忙しいモモンにとっては不都合があるかもしれない。

 ナコトに部下が居たとして他人と三日間、どういう行動をするのか気になるかもしれない。

 NPCが自主的に人間と関わる。

 会話に柔軟性を持たせれば難しくは無いかもしれない。それだけの命令を受け入れる身体であれば不可能ではない。

 最初から何でも上手く行くのはご都合主義に満たされた世界くらいだ。

 ナコト達は冒険者組合に行き、街中で出来る仕事を探す。

 金級で街中の仕事は貴族の護衛くらいだが、最前線の都市に住んでいる物好きはな貴族は多くない。

 『都市長』という存在は居るけれど、急務を擁するような案件は見当たらない。

 地味に清掃の仕事でも請けようかな、と思った。ナーベも異論は無い様だった。

 本来は低位の冒険者が受ける案件だが嫌われ仕事というのはいくつか存在する。

 それでも生活の為に受ける者は居るけれど。

 行方不明者の捜索に関して仮に犯人であるナコトに行き着く場合、確認後に依頼主を消す。するとまた別の依頼が出されるおそれがある。そういう考えから安易に受けられない。

 下水道の掃除はネズミ型モンスターと戦える以外は匂いとの戦いが中心だ。しかしながら、適度に清掃されているので意外と清潔だったりする。

 他の大都市に行けばもっと汚い場面に出くわすと思うけれど、今は移動できない。

 美姫ナーベと共に地味な仕事を請ける事にした。

 指定された場所に向かい、顔を隠しておく。

 

「やることは掃除ですが、今日いっぱいは時間を潰せますよ」

「了解した」

 

 剣も魔法も使わない安全な仕事。もちろん、モンスターが居なければ、の話しだが。

 掃除用具や水の確保をした後で地下空間を散策。

 様々な生活用水が流れ込む場所だけあって特有の臭いが立ち込めている。

 地下を通る秘密の通路は意外と広いものだ。その中で地面に落ちているゴミを集めておく。

 燃やせるものは焼却炉送り。安易に水に落としてはいけない。詰まるおそれがあるから。

 たまに死体が落ちているのは浮浪者が餓死したか、潜伏していて疫病でももらった秘密工作員が病死したかだ。

 それらもゴミなので墓地に捨ててくる。

 それを繰り返し、歩く部分を適度に清掃する。

 大規模な殺し合いでもない限り、至って平和だ。

 そうして淡々と作業を続ければ良い時間つぶしとなり、街も少し住み易く感じられる。

 報酬は少ないが仕事は仕事だ。

 宿に戻って風呂に入り、就寝すれば次の日になっている。それだけ見れば地味なものだ。もちろん、就寝する前に最(・)大(・)の(・)目(・)的(・)は済ませた。

 

「夜間の内に注文の品が届いた」

 

 と、ナーベが懐から取り出したのは大きな木箱のようなアイテムだった。

 物理的に収納できるような大きさではないが、なんだか微笑ましい。

 まるでマンガやアニメのようだ、と。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 シュレッダーことエクスチェンジ・ボックス。

 これは物質的な価値で様々な物を査定し、金貨にしていく。

 木箱の中は黒い靄(もや)になっている。それを触らなければ安全だが査定は容赦が無い。

 ゲームのシステムでは罠として使えない。そんな事が出来れば『レイドボス』とかも簡単に倒せてしまったりする、気がする。

 正しい使い方はアイテムを放り、査定するかの選択をコンソールでやりとりする。

 やめればアイテムは下に落ちるだけ。

 では、転移したこの世界に選択肢は出るのか。

 おそらくは出ない。ゆえにより危険なアイテムへと変化しているおそれがある。

 罠として使えないアイテムが罠として使えるアイテムへと。

 人間を放り込んでも死亡扱いになるだけで復活は出来る筈だ。そうでなければとても恐ろしい事この上ない。

 一応、鑑定の魔法で仕様書を確認しておく。

 空気と水は換金されない。それは海に投げ込んでも安全という事だ。

 空気まで査定対象ならこの世界はすぐに大気を失っている。

 後は実際にアイテムを投げ込んで確認だ。

 ナーベが飲んで空にした容器を入れる。

 床には落ちずに消え去った。金貨が出る程の価値は無かったようだ。

 査定したからと言って絶対に何かが出るわけではない。

 金貨としての価値が溜まるまでは積み立てたまま、ということだ。

 魔法は物質的なものを生み出すものでもない限り、換金対象にならない。それは水を生み出す魔法などが該当する。

 尤(もっと)も魔法による資金稼ぎは効率が悪い。殆ど無価値に等しい。

 それでも熱力学第二法則の抜け道とでもいうのか。処分できるだけでも今はとてもありがたい。

 箱より巨大なものは小さくしない限り、吸い込まれるように入ったりはしない。

 巨大な竜(ドラゴン)を直に入れる事は出来ない、という理解で良い筈だ。

 このアイテムは普通の武器で普通に壊せる。

 ゲーム時代の処分方法というのは売ったり、捨てたり、燃やしたりすれば良かったと思う。そんなに大層なものではなかった。

 今は何故だがマイクロブラックホール並みに恐ろしく感じるけれど。

 まずは部屋の片隅に置いておく。

 

「……しかし、大きいな」

 

 拠点に設置する為とはいえ、いやに大きく見える。

 ゲームとは感じ方が変わったから、とかかな、と。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 せっかくなので注文できる品があれば取り寄せてもらえるのか検討してもらう。

 あと、料金表をもらいたい旨を紙に書いて渡しておく。

 

「そちらの事情は分からないが、良い返答があると嬉しい」

「うむ」

 

 仕事の時のナーベは刺々しい印象はなく、しっかりと仕事をやり遂げようとする真面目さがあり、人付き合いを除けば可愛らしい娘に見えなくもない。

 それはそれてとして冒険者としての活動はいつまで続けるのか、休日はあるのかなどを尋ねる。

 もちろんモモンの都合次第で変わるのかもしれないが、言える範囲を教えてもらう。

 相手の都合が分からないとナコトも頼る時に困るので。

 聞き終えた後はまた仕事探しだ。

 常に女を求めるのはエロい作品の中だけだ。もし、元の身体であれば早い段階で衰弱死しそうだし、確実に禿(は)げそう。

 あと、色んな病気にかかったりするかもしれない。

 現代人は身体が弱いので。

 そんな事を考えつつ依頼書を眺める。今日は墓地の警備を受けてみようと思った。

 開始は夜間からとなっていたので、朝から出来る仕事を追加。

 大衆浴場の清掃を受ける。

 荷物運びや警備などの仕事もあり、金の為ならなんでもするような職種がこの世界の冒険者ということになっているらしい。

 それでも依頼を出してくれる人達が居る、というのはありがたいことだ。

 低級の仕事とはいえ消費していけば信用度が増す。無いよりはあった方が良い。

 そうして夕方までお互い仕事に明け暮れる。

 報酬は少ないがナーベは自分で仕事が出来て、少し鼻息が荒くなったとナコトはそんな風に思った。

 仮眠を交えて広大な墓地へと赴けば日はすっかりと落ち、魔法の光りがなければ闇が支配する空間となる。

 アンデッドモンスターは大抵、夜間から活動を始めると言われている。

 

「せいぜい骸骨(スケルトン)程度。時には少し強いモンスターが現われるけれど、無闇に戦わず逃げる事を勧める」

 

 と、警備している兵士から説明を受けて、墓地内部に入り込む。

 夜間とはいえ果てが見えないほど広く、たくさんの樹木が植えられて視界が意外と狭まっている。

 中心地には霊廟と思われる建物がある。

 モンスターが現われるようになったのは昔からだと言われているけれど、元々はただの墓地がえらく物騒なところとなったものだとナコトは呆れる。

 これでは参拝客は来れない。

 埋葬してすぐモンスター化はしないかもしれないけれど。

 指定された地点を回っていくと骸骨(スケルトン)を何体か見かけた。既に徘徊が始まっていたようだ。

 難度は1から3ほどの雑魚モンスターだが種類が豊富だ。

 問題は埋葬した死体がモンスター化したのか、それ以外で出てくるタイプなのかだ。

 どの骸骨(スケルトン)も同じように見える。個性というものがあるならば埋葬された人間とも言えるけれど、モンスターとしての凶悪な面構えはどうも何かが違うような気がする。

 モンスターとしてデザインされた骸骨(スケルトン)という感じだ。

 それらを破壊した後で生ものも出て来たが、こちらは埋葬されたものとは到底思えない凶悪さがある。

 

「誰かに作られたっていう認識でいいのか」

 

 ナコトが悩んでいる間、無言のままナーベは近付くモンスターを打ち倒していた。

 鮮やかな手並みと兵士達は言うかも知れない。しかしながらナコトからすれば普通に打倒しているだけで面白みに欠ける、ようにしか見えなかった。

 弱いモンスター相手に全力を出すのは徒労以外の何ものでもない。

 一時間で打ち倒した数は二人で二十体ほど。

 それほど大群というわけではなく、物静かな時間の方が多かった。

 野盗などに囲まれることなく霊廟にたどり着く。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 人気(ひとけ)の無い霊廟は大型モンスターが現れそうな雰囲気があった。

 何かのイベントであれば何者かが出て来てご大層なセリフを言っているところだ。

 一回りした結果としては何も無く、とにかく満天の星空がとても綺麗だった。

 

「帰りましょうか」

 

 その言葉にナーベは剣を抜いたりせず無言で頷いた。

 ここなら口封じするにはもってこいの場所だ、みたいな言葉でも出るかと思っていたが、何も起きなかった。

 変なことに期待しては後々困る事態が起きる可能性が高まる、かもしれない。

 例えば大きな剣を持った黒い全身鎧(フルプレート)をまとった謎の敵とか。

 巨大な竜(ドラゴン)の襲来とか。

 規定の時間まで出てくるモンスターを倒し、不審者が居ないか一応は確認した。

 夜間だから不気味に感じられるのか、というより誰も来ない墓地はそれだけで何かが起きそうな雰囲気がある。

 最初の頃は置くの参拝客が居た筈だ。

 どんな世界にも最初に誰かが何かを作り上げた。その当時の事は知る事が出来ないけれど考古学という観点からは興味深い事だ。

 ナコトはそれでも女体の神秘に惹かれるけれど。

 ただ、あまりにも同じようなもの、似たようなものを見ていると飽きが来る。それは『ゲシュタルト崩壊』というものかもしれない。

 常に新鮮味が欲しくなる。

 数年も経てばまた新しい興味が生まれる。

 施設が完成した後のことも考えなければならない。それとここに捨てた死体などの残骸を回収して処分することなどを思い出す。

 何らかの特殊技術(スキル)で死者の声とか拾われては困る。あと、適度に場の浄化もしておかなければ、と普段はあまり回らない頭が仕事を始めた。

 物思いに耽っているうちに出入り口に到着した。

 

「……ご苦労様でした」

 

 取り立てて異常な事は無く、仕事は終わった。

 イベントが無い仕事はサラリーマンと大差がない。しかし、警備に当たるものや管理する者達は明日もまた同じ仕事に就く。

 それを退屈と言えばまともな生活など送れはしない。

 ゲームの延長という考えが残っているから飽きやすいのかな、と疑問に思う。

 閑散としたゲームと大差は無いし、元の世界に戻れても楽しいことは待っていない。

 だが、平々凡々な日常よりはマシかもしれない。

 ここには少なくともモンスターが居て、魔法文化がある。

 時が経てば宇宙にだって行けるかもしれない。

 そんな事を夢想しつつ冒険者ギルドにて報告を済ませた後は真っ直ぐに宿に戻った。

 ナーベが定期報告を済ませた後は風呂に入るなどの時間的余裕が生まれる。

 それはおよそ数時間ほど。残り時間を逆算し、最後の楽しみに突入する事にした。ただ、快感自体はかなり抑制されているので楽しみというほどの期待が出来ない事を思い出してがっかりする。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 部屋の戸締りを確認し、永続光(コンティニュアル・ライト)によって室内が照らされている中、衣服を脱ぎだすナーベ。

 彼女には羞恥心が存在しないのではないのでは、と思ってしまうほど当たり前のように行(おこな)われる。その間、ナコトはベッドに乗っている枕や布団などを取り払い、汚れてもいいものに挿げ替えた。もちろん、自分も服を脱いでおく。

 全ての服を脱いだ後は綺麗に折り畳み、ベッドに横たわる。

 一つ息をついてから全身の力を抜き、天井を見上げる。以降は朝まで大きな動きを取らない。

 大人しくなったナーベの身体を改めて観察する。

 引き締まった細身の身体。適度に大きな胸。

 見た目は人間種なので獣耳や尻尾、牙に角も無く、背中に翼も無い。

 黒髪の東洋系美人という以外に面白みが無いのが残念だ。これでアンデッドならば裸になってもらう事無く終わりを告げているところ。

 性交渉を持ったとしても恋愛感情が湧く訳ではないので、単なる人形と性行為しているような気分にさせられる。ただ、その表現もあながち間違っていないのも残念な点だ。

 相手の用意が整ったようなので早速、ナーベのベッドに乗り込み、形の良い胸をこねくり回す。

 適度な弾力があり、形が一向に崩れる気配を感じさせない。

 下方の陰核も同様に。

 日中、何度か性行為をしてきたにもかかわらず女性器は綺麗なまま。数日で黒ずむようでは困る。

 

「……ん、……んんっ」

 

 不感症というわけではなく、適度に唸る。

 これは快感から漏れ出る声なのか、それとも痛がっているのかは分からない。自分の身体ではないので感じ方は人それぞれなのは頭では分かっているけれど。

 されるがままのナーベは冒険をする上で、これくらいの事は仲間として当たり前の行為だと受け取っている。そこに疑問点を挟まないのは普通ではありえない。

 魔法の神秘は素晴らしいくらい効果を発揮してくれる。実際には魔法だ(・)け(・)ではないけれど。

 膣内の粘液で周りを適度に湿らせておく。

 後は男根を入れるだけだが、宿の床とかギシギシと音が鳴るかもしれない。であればどう対処すべきか。

 今更なのであまり床に負担のかからない動きを取る。

 具体的には相手を浮かせる。ただ、自分も浮かなければ結局床に振動が加わる。そこが難点だ。

 浮いた事によって踏ん張りが利かないのであれば無駄に時間が経過してしまう。

 色々と考えた結果、激しい動作はやめておくのが無難である、という結果に落ち着いた。

 

「……ん。ん~……」

 

 口を閉じて何かに耐えるナーベ。

 様々な喘ぎ声を発するパターンに覚えがあるが一様な反応だといまいち面白みに欠ける。けれども、バラエティーに富んだところでうるさいだけだ。

 何度も性行為をしてきたお陰か、膣内にすんなりと納まる男根。

 淡白な反応しか出来ないとはいえ娯楽の少ない世界に来て性行為しかしないのは本当にバカだなと思う。

 余計な事を考えず、ただひたすら快感に溺れる人間はバカではあるけれど羨ましいとも思える。飽きずに続ける自信がナコトには無い。多少はあるとしても希薄であることには変わらないし、いずれ全くやらなくなれば生きている事自体に意味を見出すことも無くなってしまう恐ろしさがある。

 そんな事を考えつつ腰を動かしている自分は滑稽だ。

 相手も同じ行為に飽きて声を出すのも面倒臭い、と思ってくるのも時間の問題かもしれない。

 そうして体位を変えつつ壁際に向かい、最後は風呂場まで移動した。

 いつまでも射精せずにいるのはアバターとしては便利かもしれないが生物としてはどこかおかしい。その辺りを調節できるわけはないのだが。

 二時間も続けて飽きを感じたので思いっきり射精すればナーベは盛大に艶かしい吐息を漏らした。

 男根を抜けば勢いの付いた潮吹きを披露し、痙攣したように身体を小刻みに動かす。これは一般の女性でも同じ反応なので彼女だけ特別だ、ということはないようだ。

 息の絶え絶えのナーベを労う時間的余裕は無いので次の目的に移行する。

 まずは身体を洗いつつ治癒魔法をかける。

 そして、特定部位の回収と改竄した記憶の修正を行(おこな)えば終了だ。

 数日程度であれば修正は容易だが、これが一週間以上であれば結構な手間となる。

 早いうちに終わらせられたのは本当に良かったと思う。それと時間を無駄にしなくて。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 翌朝に用意しておいた金貨百枚と色付けとして百五十枚ほど追加し、ナーベに渡す。二倍以上なのは口止めというよりは信頼の証しや今後の付き合いなどの未(・)来(・)へ(・)の(・)投(・)資(・)というものだ。

 少なくとも相手がギルドであれば敵対したいとは思わない。その意思表示は少なからず、すべきだと思ったからだ。もちろん、モモンがどう受け取るかは確認出来ないけれど。

 目的が済めば別れも淡白なものだ。

 報酬以上に減る事が多いのは良くないので、新たにナーベを借用するような事案は当分、控えた方がいいと判断する。もう少し金銭的に余裕が出来てから改めて考える事にする。というか仲間についてはまだ保留だ。

 街から出られる状態でなければエ・ランテルだけでは不満が溜まる。

 

 

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