※この作品はR-18です。

恥丘征服   作:トラロック

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04 素材集めは基本

 

 ナーベと別れた後、宿は早々に引き払い荷物をまとめて南方に移動する。

 ナコトが居ない間も工事は続けられているのだが、風景に変化は殆ど無い。

 たくさんの足場を用意しても規模が大きすぎるので作業は見た目には進んでいないように見える。

 自然の地層を利用するのが一番安全で、強固に作れるものを最初の段階ですべて除去したので階層の床製作に難儀しているようだった。

 相当な重みが床にかかるわけだし、一部を吹き抜けにするとしても色々と問題が残っている。

 吹き抜けは対角に配置し、残った部分の壁は出来るだけ厚くする。

 物資の搬入くらいは手伝うが、石材などは何処から調達してくるのか。

 石切り場と呼ばれる鉱山のような場所があり、せっせと切り取っているとしても相当量が必要だ。

 それらの職人にも充分な食料や休息は与えなければならない。

 人を使う大変さは何処も同じだが、時間を早めることは出来ない。

 せめて一階層、という焦りは禁物だ。

 運ばれてきた分厚い石材をナコトは短時間で下ろして行き、下で待っている職人の指導の元に壁に積み上げていく。

 これは本来ならば十人以上かけて行(おこな)う作業だがいとも簡単に運ぶナコトの姿に誰もが驚く。

 とはいえ、ナコトひとりでやってしまうと給金が出なくなる。

 

「石を積み上げると下の石に相当な圧力がかかるのでは?」

「だから多めに設置して色々と重量分散を行(おこな)うんです」

 

 王国の首都にある城も石材で出来ている。それとエ・ランテルの周りを囲む高い塀も。

 多くの人間が行き交う建築物とて土台がしっかりしていなければ瓦解してしまう。

 積層構造にすることによって意外と重さが分散し、人の重みはナコトが思っているよりも影響が実は少ないという。もちろん石材ばかりではなく、木材も使用される。

 既に設置されている床に降り立ち、感覚を確かめる。数ヶ月かけて目標の四分の一ほど。時間がかかるのは仕方が無い。

 出来上がった床に太い柱を乗せていくのだが地震対策はどうすればいいのか、という問題が浮かぶ。

 街並みを見る限り、地震被害は無く、魔法でもない限り比較的安全だと思われる。それと土砂崩れも殆ど確認されていない。

 様々な疑問を抱きつつ職人達が作り上げるさまを見学していたら一日が終わってしまった。

 規模が大きいから普通の邸宅を作るより大変なのはよく理解した。だが、これくらい思い切ったものでなければ地上で目立ってしまう。

 重量級以外は任せておいてナコトは王都に向かう事にした。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 今回の目的は魔術師ギルドだ。

 色々と情報を集めて注文出来るアイテムを調べておく。

 容器に関して丈夫であれば文句は無いが専用のものの方が安心感はある。

 保存液も同様に。

 特殊技術(スキル)があればナコト一人でも作れると思うが、万能の能力を持っているわけではない。

 施設が完成しない限り活動は思うように進まないけれど、待っているしかない。

 十字に走る仕切り壁が積み上がれば足場も増やせて、一つ分の完成ならば数週間で終わるという。既に仕上げに使うタイルも充分に用意できている。

 大勢でかかれば作業は早いものだ。

 完成を楽しみにしつつ街中を散策する。

 急ぎの案件は無く、一通りのやりたいことは済ませた。次の段階にはしばらくかかる。

 ということで実質、暇になってしまった。

 冒険者家業もいいが、変わり映えしない日常を楽しく過ごす事は意外と難しい。

 元の世界はもっと退屈だが。

 宿に泊まり、平凡な一日を過ごしてみる。

 ただ部屋でぼ~っとするわけではなく、魔術師ギルドから得た情報をまとめたり、勉強したりする。珍しく精神支配せずに。

 楽ばかりしては飽きるから、と思っただけだが。

 努力を怠ると精神的に駄目になりそうだ。ただでさえ駄目人間なのだから。

 しかし、大いなる目的がとても不純だとは笑えてくる。自分の事だけど。

 そうして何日か過ぎた頃に冒険者の仕事を請けつつ得た資金で容器の注文をしてみる。

 

「大型容器。保存液。培養液でございますね」

 

 普通に対応されると逆に怖い。ナコトですら恐怖を感じるとは思わなかった。

 確かに注文書に色々書いてあったけれど、魔法文化といい、この世界は意外と凄い。

 さすがに第三位階以上の魔法は取り扱っていなかった。

 それは単純に第三位階までの魔法しか扱えないからだ。

 一般人の限界と言われているし、それ以上は英雄級、伝説級と呼ばれている。

 最低でも第五位階の魔法まであれば良かったのに、と。

 無いものは仕方が無い。

 一通りの注文を終えて惰眠を貪る。そして、数日も経てば宿屋に大型の荷物が届く。

 それらは人知れずしまうので一気に片付くが人前で見せると大騒ぎになる。

 隠れ家に持ち込んで往復すると一週間はすぐに経ってしまう。時間の経過が早くてのんびり出来ない。

 せっかく王都リ・エスティーゼに来たのだから色々と探検でもしようかと思った。

 昼間は仕事で資金を稼ぎ、夜間は城に忍び込む。

 お宝は無理して欲しいわけではないので、色々と侵入経路を確保していく。

 そんな生活を続けていると冒険者ギルドで犯罪組織の噂が聞こえるようになり、城に忍び込んでいるのがバレたかな、と罪悪感が襲う。

 忍び込んでいるだけで卑猥なことも殺人も行(おこな)っていない。

 ただ、やっている事が暗殺者(アサシン)のようで自分の職業(クラス)にそんなものがあったかな、と疑問に思う。

 取得している魔法の影響で似てしまうのは仕方が無い。

 とにかく、犯罪組織関連の仕事は請け負っていないのでそっこりと調査はしないが自分が対象にならないように警戒はしておく。

 数日間の潜伏により、玉座の間までたどり着く事が出来た。一人ひとりの兵士を操れば王の暗殺も自在に出来そうだが、それはそれで大混乱に陥るので控えておく。

 寝静まった深夜に不可視化した状態で玉座の間に降り立つ。

 明るい時間帯なら荘厳な部屋の様子などを見学できるところだが今は『闇視(ダークヴィジョン)』頼りだ。

 壁に銅板を仕込むことにより魔法による探知を軽減させる事はすでに把握しているが意外な弱点があるとは驚きだ。

 特定の場所では魔法が使用出来ないことはあったけれど、この世界にも適用されるとは侮れない。

 もちろん、外部からの探知は防げても物理的な侵入までは限度があるようだが。

 一部の兵士にマジックアイテムを所持させたり、使用による警戒態勢の有無はすでに把握しているとはいえ、不法侵入は意外と重労働だ。

 城の構造をある程度把握することで拠点製作の足しにも出来るのだが、本当に自重(じじゅう)で潰れない強固な城というものは凄いなと感心する。

 

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 無駄に時間をかけていると見回りが来てしまうのでさっさと目的を果たす。

 王様が普段いる『玉座の間』または『謁見の間』と呼ばれる広い部屋は様々な人間と面会する以外は簡易的な会議室としても使われる。

 青い絨毯が敷かれていて、さまざまな調度品が置かれている。

 暗いので見づらいが天井画も描かれている。

 中世の城はそれ自体が芸術の塊だ。それはナコトとて安易に壊そうとは思わない。

 

「本物の玉座……」

 

 他人が座ると罠が発動する、という話しは聞いた事が無い。

 手足が拘束されて穴に落ちる場合は笑うかもしれない。

 仮にそうであっても振り切る自信はある。

 一流の職人が作った玉座というものは真っ暗闇の中で観賞するものではない、というのは理解した。

 ナコトは徐(おもむろ)に玉座に腰を下ろす。尻に当たる部分がとても柔軟で柔らかい。

 ここから臣下を睥睨するのが王様というものだが、ずっと座ったまま毎日の挨拶を続ける作業は楽しいのか。

 目新しいものが好きな自分としては一週後には飽きてしまう自信がある。

 支配欲が人より少ないと何に対しても熱心になれない。

 醒めやすい体質ともいえる。

 平和が嫌いなのか、と言われれば違うと答える。

 それはそれとして物思いに耽っていられる無駄な時間は無い。

 王様の目線から見る風景というのは今はただの闇だ。そして、とても静かだった。

 誰も居ない玉座は虚しい。

 

「……統治者にはなれそうにないな……」

 

 王様になって何を命令するのか。

 野望を抱くものなら何と答えるのか。

 実際に統治者か統治者になりたいものから聞くしかないけれど。

 ナコトの目的はただ玉座に座ることではない。

 かつてギルドに所属していた時にギルドマスターが行(おこな)っていた事を実践するためだ。

 多人数プレイで遊ぶのだからギルドなどの経験もあるけれど、それぞれ現実の予定などで長続きしないものだ。

 それでも長続きするものはゲームに比重が傾いているか、ただの意地っ張りか、だ。

 

「マスターソース・オープン」

 

 手を左から右に払うように動かしつつ命令を下す。

 ギルドの拠点には玉座のような中心点があり、ギルドマスターが呼び出す特別なコンソールが存在する。

 主に拠点管理画面だ。あと、メンバーのステータスも一覧表として出てくる。

 他にも色々と項目があり、罠の設置状況。資産。NPCの状態。魔法的加護の有無。

 それでもログアウトボタンは無い。あれば王様もプレイヤーとなるけれど。

 コンソールの存在を王様が知っていれば兵士達の強化も割りと自在に扱える気がしたのだが、どうやらそういう事は知らないようだ。

 原住民がゲームキャラであればナコトに警告が来る筈だ。

 18禁サーバに飛ばされた、というオチなのか。

 海外サーバへの転移というわりにユグドラシルとは似ても似つかない世界だが。

 モンスターと魔法を許容する新世界。

 

「………」

 

 世界の謎は後回しにしてナコトは命令によって現われた半透明の画面を見つめる。

 暗闇の中に突如として浮かぶ光源は紛(まが)うことなきマスターソース画面だ。

 書かれている文字は王国語のようだ。それでも今は読み解けるナコトにとって何の支障もない。

 仮に王様がコンソールの存在を知らないのであれば、これはどういう原理で存在している事になるのか。

 不思議だが時間も差し迫っている。

 すばやく一通り眺めていく。

 メンバーと思われるキャラクターの数が膨大だ。ここまで登録できただろうか。

 さすがにNPCは居ないようだ。

 

「………」

 

 画面には項目の他に現在位置が表示されている。

 色の違う点。巡回している者や就寝している者はだいたい同じ色。

 ナコトは外部の人間だからか他とは違っていた。

 この表示はプレイヤーに反応するものならば現地の人間に出せない可能性がある。

 それはどう見極めればいいのか、現段階では何とも言えない。

 確認は出来た。後は安全なところで改めて調査すれば良い。

 

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 城から抜け出た後、そのまま宿に戻り一夜を明かし、一日かけて建設中の拠点に戻る。

 作業員達の宿泊施設を横目に地下に降りていく。

 この施設で最も重要な部屋となりそうな場所はおそらく無い。四分割なので、それぞれ重要といえばそうなるけれど。

 だとすれば地上に自分用の家を用意する方が早い。

 本来なら施設が完成した後の中心部分にでも作ろうかな、と思っていたが落盤とか怖いので安全を考慮し、作業員用の宿泊施設に程近い位置に一軒家を増設する事にした。

 ほぼ一人暮らしだし、豪邸は必要ないけれど謁見の間のような部屋はあった方が良いと思った。

 椅子は少し豪華な方が効果的かもしれない。

 『思い立ったら吉日』という格言に倣(なら)い、早速建設してもらう。

 地下空間よりは制限が無いから作りやすい筈だ。

 無難に風呂とトイレ付きの二階建て。

 執務室も質素で良い。

 

「せっかく作る施設に名前を付けた方がいいな」

 

 拠点名があった方が何かと都合が良い場合もある。しかしながら、秘密基地に相応しい名称というのはすぐには思いつかない。

 名前を考えている合間に土台作りが始められた。

 どんな建築物も基礎工事はとても大事だ。

 ナコトは職人に催促せずに黙って様子を窺う。

 今までも彼らに工期を早めろとか仕事が雑だとか文句を言った事は無い。細かい部分は自分でやってしまう事はあるけれど。

 頭ごなしの命令が嫌いなのかな、とぼんやり思った。

 一般的な者なら金の力に任せて色々と態度が大きくなるところかもしれないけれど、飽き易い性格のおかげで諍(いさか)いは今のところ起きていない。

 これは元々の性格なのか、それともアバターの本来の仕様なのか。と選択肢を増やしたところで前者だろうな、と思う自分が居る。

 願望が少し足りない人間だと自覚している。

 楽しみは人並みにある筈だが、希望の無い世界に生まれたのが運のつき。

 若い時代も過ぎたし、後は社会の歯車として死ぬまで変わらぬ生活を送って終わるだけだ。

 恋愛感情も乏しい。それゆえに結婚についても淡白だ。子供も育てる気が無い。

 では、今の自分はこれから何をしようとしているのか。

 

 そんな事は分からない。

 

 慌てふためく『冴えない主人公』の方が実は活動的ではないのか、と今は少し思っている。

 元の世界に帰る為に。またはこの世界で有名になる為に。

 あるいは万能の力で世界征服をする事もあるかもしれない。

 倒すべき魔王のような存在が居れば勇者なのだが、現時点では魔族とやらの存在は確認されていないし、モンスターが居るけれど化け物との戦争も起きていない。

 あくまで人間対人間だ。

 

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 自宅が完成するまで一ヶ月ほどはかかるかもしれないので一旦、隠れ家に行き容器類と資金の確認をしておく。

 賃金の支払いだけでも一気に目減りするので増やしておかなければならない。

 悪人なら払った資金を後で回収するところだが、不審がられてしまう確率が高くなる。

 本来収められるべき税金が何(・)故(・)か(・)増えない、として。

 経済をまわすのは基本であり、当たり前の事だ。

 と言いつつも何処かで回収するのが賢いやり方だ。

 集めた部位も魔法の加護があるとはいえ野晒(のざら)しのままでは可哀相だ。

 今のままでは限界がある。専門家を得なければ不安ばかり増える。

 候補となるのはンフィーレア・バレアレ。祖母は要らないが若返りでもしてくれれば考えないことも無いか。

 人間は老化する生き物だ。

 

「……後は何だろうな……」

 

 施設の完成以外では保管容器の収集と資金稼ぎ。後は経験値集めかもしれない。

 弱いモンスターでは困るし、他人のモンスターは色々と厄介だ。

 丁度いいモンスターは都合よく、と思ったところで一体は確実に居た事を思い出す。

 ただ、経験値になるかは不明。

 他にも色々と手に入れておくべきだと判断する。それにはやはり容器類が必要だ。

 野晒しのまま持っていたくない。

 汚い亜人は除外するとして他にどんなモンスターがこの世界には居るのか。

 今のところアンデッド以外は見かけていない。

 海に行ったり、山に登ったり、森の奥に行ったりしなければならない、というのは思い至るが自分で手に入れる事になるとは思わなかった。

 すぐに動くより作業員の姿を眺めてから行動する事にする。時間はたくさんある。

 それと数日経ったがモモンから何か連絡は来ないし、ナーベや他のシモベの気配もないところをみると魔法の効果は実証されたと見ていいと判断する。

 分かったところで元に戻しているし、失ったアイテムも無い。体力すら戻っている。

 相手が冴えない主人公系なら深く探る事もしない。というか出来ない。

 する度胸が無いからだ。

 もし、仮に自分と同じ部類のクズなら女性NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)と日がな一日性交三昧だ。

 種族によっては出来ないかもしれないけれど、鑑賞会とかはしそうだ。

 アバターの性質次第では何の興味も持たないか、孕みプレイ三昧か。

 何であろうとギルド内の事に口出しする権利はナコトには無いけれど。

 他の『ユグドラシル』プレイヤーはどういう冒険をしているのか、興味がある。

 

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 土台の準備が出来たところで資金稼ぎの為に各都市を回る。

 それを繰り返せば夏が終わってしまった。

 何の興味も湧かないと時間は驚くほど早く過ぎ去ってしまうものだと少し恐怖を感じる。

 下火月(九月)の下旬。階層部分の工事がある程度済んだし、自宅も完成した。

 さっそく調度品を搬入し、少し奮発して用意した豪華な椅子を家で一番重要そうな位置に置く。

 執務室より二階の応接間が相応しいと家具職人のアドバイスによって決めた。

 ナコト以外に人は居ないけれど椅子に座って壁を睥睨すれば王様気分に、なれるわけはないけれど一家の主(あるじ)という雰囲気は多少感じる。

 

「マスターソース・オープン」

 

 魔法の呪文のように唱えれば不思議な半透明の画面がいとも簡単に出てくる。

 ギルド名は無いし、拠点名も無いが一通りの選択画面が現れた。

 夥(おびただ)しい職人達が光りの点となって乱雑に動いている。これらは全て侵入者扱いなのか、と疑問に思うが今は無視する。

 大掛かりな拠点だがポイントがあるのか疑問だ。

 自分のステータスを開けばいくつかの経験値の数値が見受けられる。

 

「……拠点であればいいわけだ……」

 

 どんな建物だろうと人が集まる拠点であればいい。そういう考えならば洞窟内でも同じ事が出来る。

 次の問題は動き回る人間の点を意図的に操作できるか、だ。

 個人ステータスが出るようであれば神様気分だが、それは逆に自分も操作される、ということだ。

 何でも思い通りになると楽しみが激減するので、必要な事にだけ使う事にする。

 そうしないと自爆しそうだ。

 楽しみがあってこそ人生だ。少なくともナコトはそう思う。

 

「商人を配置、と言って急にポンっと出てきたら怖いな」

 

 一部のゲームでは出来なくはない事も現実で起きると多分気持ち悪いと思う。

 お前は何処から出て来た、と。

 当然、仕様です、という答えが返ってきそうだ。

 それから念のために執務室で同じ要領で試したが画面は出てこなかった。

 特定の場所でしか顕現出来ない仕様。

 少し不便だが無いよりマシだ。

 仲間についてどういう扱いになっているのか、それを調べる必要がある。

 暇そうな人間を一人連れて来てステータスを確認する。

 現地の人間は生まれながらに取得して居る者がある。

 ユグドラシルでは人間種は種族レベルを持たない。森妖精(エルフ)なども同じく。

 何らかのレベルを得ていないと何も出来ないものだ。

 最初は一定量の経験値が与えられ、それを自分の好きな職業(クラス)。異形種は種族レベルなどに割り振る。

 では、転移先の世界の人間はどうしているのか。少なくとも個人のコンソールは出せない。

 答えは生まれながらに何らかの職業(クラス)を持ち、条件次第で新たな職業(クラス)を得たりする。それも自然に。

 自分で操作できない代わりに何が起きるのか分からないし、才能として行き詰る要素が多分にある玄人仕様になっていた。

 特殊技術(スキル)も同様に。

 彼らは自然と自分達の能力を扱っている。だからこそ正しい道は彼らには分からないけれど、信じて突き進む傾向にある。

 自分が目指す指針によって新たな職業(クラス)を得たり、強くなっていく。

 

「……余計な職業(クラス)が人生を左右することもあるわけだ……」

 

 まして蘇生魔法は高い位階魔法だ。

 やり直しを考えてレベルダウンなどおいそれと出来ない。

 現実の身体であるナコトの人生とさして変わらないけれど、アバターゆえの優位性は卑怯であるとも言える。

 だからこそ彼らが哀れだとか、弱者として苛めたいとかは思わない。

 滑稽ではあるけれど、逆の立場なら抗いたい気持ちは少なくとも抱く。または人生を諦めるか、だ。

 性格的には後者側を選びそうだ、とナコトは苦笑する。

 元の世界に戻れば自分は社会の歯車として生きて死んでいく。

 それはとても退屈で面白みのない人生だ。

 なればこそ楽しい時間を大切にするべきだ。

 

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 呼び寄せた人間の職業(クラス)は『大工(カーペンター)』の1レベルのみ。

 その前にも職業(クラス)が無ければおかしいのだが、上書きされるのかもしれない。

 基本職業(クラス)から枝分かれと特殊技術(スキル)の為の専用職業(クラス)。

 それらを合計していけばナコト達プレイヤーと変わらない職業(クラス)構成になるかもしれないし、途中で打ち止めを食らうかもしれない。

 運営が居ない状態で誰が人々のレベルを調整しているのか。とても気になるけれど、特定するのにまた時間がかかるだろうな、と思った。

 辟易はしない。楽しみが出来て良かったと思う。

 念のために目隠しした状態で尚且つ後ろ向きに置いているが、普通なら暴れて大変なところだ。

 

「第三者に急に経験値を注がれた場合、彼らはどういう行動を取るのか」

 

 普通に考えれば急にレベルアップしたなど自覚できる筈がない。

 プレイヤーは大体はわかる。それは知識で色々と持っているからだ。

 それが無い彼ら現地の人間はどういう反応を見せるのか、興味がある。

 まずは本当に経験値を割り振れるのか試し、元に戻せるのかも確認しなければならない。

 マスターソースなら個人ステータスの発展型の機能があるはずなので。

 仲間が居ない一人だけの王様といったところだ。

 先ほど『コンソール・オープン』と言ったら個人コンソールが出て来た。つまり出せる場所が重要だという事だ。

 それ以外では無反応なところから安易に探られる心配は無い、と同時に不便でもある。

 それがこの世界の摂理ならば仕方が無い。

 過去に転移したプレイヤーが世界改変の世界級(ワールド)アイテムでも使ったのかもしれない。そうでなければユグドラシル由来のものが使用できるわけがない。

 全200個と言われている世界級(ワールド)アイテムの内判明している数は50個ほど。残りは未発見のままか、それともこちらの世界に隠されている可能性もある。

 仮にそうだとしてもどんなアイテムなら可能なのか。

 答えはきっと『二十』だけだ。

 世界級(ワールド)アイテムの中の世界級(ワールド)アイテムにして消費型ばかりと噂されるアイテム。

 しかし、どんなアイテムが使われようがナコトの行動を阻害するものでなければ問題は無い。

 個人的に欲しいものは自由な魔法と必要な触媒など。

 要望を並べればきりがないと思って思考をコンソールに戻す。

 

「………」

 

 経験値はモンスターを倒すのが早道だ。後は魔法を使ったり、日々の行動に対する何か、としか言えないけれど。

 彼らのレベルアップは自然界ではとても起き難い気がする。

 自分の意思で自在に出来ないのだから。

 技術や魔法もどうやって身につけるのか謎だ。おそらく自分達でも分からないと思う。

 練習すればいい。学べばいい。そういう認識しか持っていない筈だ。

 それと個人設定は書き加えたとしても洗脳とは違う気がするし、性格に影響を及ぼせる気がしない。だが、気持ち的な部分は多少は影響するかもしれない。

 

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 取得している経験値は微々たるものだが、もう少し増やせる人材にすべきかと思い、人間を解放する。

 値の移動は確認出来た。それと物体を操作する『物体操作(アニメイト・オブジェクト)』などの新たな魔法の取得など。

 経験値稼ぎに必要な部屋の製作は必要だと分かり、安心する。

 折角なので錬金術師(アルケミスト)のンフィーレア・バレアレを招いてみるのもいいかもしれない、と。

 後は王様を強くするとどうなるか、とか。

 色々と楽しい事が起きるかもしれない。出来れば犯罪者以外の方が世界はそれほど悪に偏らない気がする。

 元の世界のような退廃的な世界は好きではないので。

 もう少し争いごとが好きなら戦乱溢れる国にも出来そうだが、他の国に亜人種と異形種が居るなら自分でやることもなく、自動的に発生する気がする。

 あまり思い通りになっても困る。面白くないので。

 少しずつ決まってきても肝心の施設の完成が遅い。おそらく今年は無理だ。

 変に妥協して後々、大規模な改造になっては徒労だ。今は忍耐の時間と思って諦めるしかない。

 次の日は大雨になった。久しぶりの雨季の到来だが足場が滑りやすくなる時期は更に工期が遅くなるものだ。

 下水の逆流の確認が出来るので多少の延期も前向きに取らなければ、と思うことにする。

 近隣の村の収穫物にも影響が出ては困る。

 彼らの収入源によって王国での不信感は随分と軽減されているのだから。

 ある程度、天気が回復した日に適度に仕事をこなし、資金を溜めていく。

 それと施設の完成が思っていたよりも遅くなるので、簡易的な建物を急遽増設する事にした。少しでも目的を達成するには自分があまり暇でいない方がいい。色んな事を忘れそうなので。

 施設とは少し離れた位置に大き目の倉庫などをいくつか製作してもらう。

 水道なども同時に。

 それから容器の追加を申請しておく。

 その間に南方に向かい、モンスターをいくつか見つけようと思って入ったがロクなものが居ない。

 北方のエ・アセナルまで赴いてアーグランド評議国附近を探索。亜人などは見かけるがレベルの高そうなモンスターが見当たらない。

 妖巨人(トロール)などが良く現れるようだが、目的とするモンスターはそんな雑魚ではない。あと、あまり醜くないのが望ましい。

 かといってアーグランド評議国に乗り込んで竜王(ドラゴン・ロード)をしばき倒すわけにもいかない。

 強そうなモンスターだろうけれど、後々大問題になりそうな予感がする。

 あと、巨大モンスターをどう持ち帰るか、だ。

 手ごろで強いモンスターが都合よく居るわけも無く。

 あちこち飛び回って自宅に帰ったら倉庫が出来ていた。

 移動だけで随分と時間が潰れてしまった事になる。

 

「……気分的に疲れた……」

 

 しかも、何の収穫も無い。

 注文の品は無事に届いていたので早速、片付けておく。

 

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 あれこれ悶えて上風月(十月)中旬。肌寒くなってきた、と思うのは王国附近でのこと。南方に近いこの地域はまだ薄着でも大丈夫だった。

 エ・アセナルとスレイン法国付近の気温差が激しい。

 雨は降るが雪は北上しないと見る事が出来ない。

 風呂場とトイレさえあれば容器を並べても大丈夫ではないかと思う。もちろん、中身が入っていないものは。

 それとトブの大森林の元(・)拠点の様子を見てこようかと思った。

 本拠地という程、大それたものではないけれど移動できない規模でなくて良かったと思う。

 一部のギルドは城より巨大な施設を所有している。それごととなるととても目立つだろうな、と相手方の苦労が偲(しの)ばれる。

 一日かけて夕方頃にカルネ村にたどり着くと木で作られた塀(へい)が見えた。見える範囲では村を大きく取り囲んでいるようだった。

 村人に尋ねれば亜人種である小鬼(ゴブリン)と人食い大鬼(オーガ)が食料などを求めて出没するので、その対策だとか。

 どこかを壊せば音で分かるようになっている。

 村娘のエンリ・エモット達は今も元気なようだが、今回はただ宿泊する為だ。

 念のためにモンスターが居ないか探知魔法をこっそりと展開すると村人以外の何者かの反応があった。

 肉眼では分からない事から不可視化したモンスターか高位の魔法詠唱者(マジック・キャスター)か、暗殺者(アサシン)関係だと予測する。

 敵意を感知する魔法を使ってみたが、こちらは無反応。つまり敵意は無い、という事だ。

 不可視化を看破するアイテムを使うべきか迷うが、少しだけ泳がせておく。どの道、魔法に少なからず気づいた筈だから。

 大抵の感知魔法は相手方に違和感を与えるので使えば双方が気付いてしまうリスクがある。

 そういう魔法的な特殊なオーラのようなものを放っているからかもしれないけれど。

 完璧な魔法があればどんなプレイヤーも太刀打ちできないし、無敵であればどうしようもなくなる。

 もちろん、それらはゲームの中での事で、この世界には探(・)せ(・)ば(・)どこかに完璧なものがあるのかもしれない。

 ナコトからすれば究極の魔法ともいえるけれど。

 あまりにも万能すぎるものは制御が難しい筈だし、失敗した時のリスクは計り知れない。

 危険な魔法はあまり存在してほしくない。

 物騒な思考を早めに追い出し、客人用の宿舎に泊まる。

 この宿舎は多人数が雑魚寝できるくらいの広さがあり、ベッドは無いが寝袋を貸してもらえる。もちろん、床に直に寝かせるようなことはない。

 床には藁が敷き詰められていて、その上にシーツを乗せた簡単なものだ。

 見ようによっては馬小屋のような感じだが、村で用意出来るものには限界がある。あと、枕は人数分用意出来るという。

 冬場はさすがに掛布団が必要だが、暖房設備は薪のみ。もちろん、火の手が上がらないように季節ごとに配置換えをする。

 各農村には冒険者が立ち寄る場合も考慮されていて、金を払えばある程度の食事も出してもらえる。

 宿泊費を払い、早めに休む。

 特段、村が目的という訳ではないので、出(・)来(・)れ(・)ば(・)明日にはトブの大森林に向かいたい。

 

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 夜になり、村人たちが寝静まる頃、足音は無いが気配を感じた。

 ある程度まで近くに来たなと思ったところで魅了の魔法を展開する。

 すると少し動きがあった。

 とはいえ、効果があるとは思えない。だが、それは本命の隠れ蓑だ。

 寝転がったままのナコトは寝た振りしながら規定の時間を待った。

 

「………」

 

 そして、発動される魔法により命令が書き加えられる。

 ナコトの脳裏に相手の記憶の風景などが浮かべば、ほぼ完了を意味する。

 相手は僅かな違和感を感じるだけで何が行(おこな)われたのか把握することは出来ない。

 寝床から這い出たナコトは移動拠点『グリーンシークレットハウス』を室内に出現させる。

 見た目は小さいが中は驚くほど広い。

 亜空間のような代物なのだが、これが現実に存在することもナコトには信じられない事だ。

 無言で中に入り、複数ある部屋の扉の一つを開ける。

 どの部屋も同じだが。

 マジックアイテムは重量が許す限り、異空間に保管できるのが強みだ。

 それでも無制限というわけではないけれど。

 明るい室内でナコトは様々な仕草をすると、新たな人影が現われる。

 扉を閉めれば完璧な密室の出来上がりだ。

 翌朝、室内に現われたマジックアイテムの姿は無く、特に異(・)常(・)な(・)事(・)は見当たらない。

 村人に挨拶し、ナコトはトブの大森林に向かう。そして、彼(ナコト)の後ろ姿を不可視化した何(・)者(・)か(・)が見送る。

 追っ手が無い事を確認したナコトは一息つく。

 今のところは問題が起きていないが、いずれ何者かと戦う事態になるかもしれない。その為には布石を早く打たなければならない。

 そうは思っても拠点はまだまだ完成しそうに無いし、内装も残っている。

 足りないものが多い。

 一人で活動しているから、ともいえる。

 自分がやっていることに協力してくれそうな人物に心当たりは無い。むしろ、嫌がる確率が高い。

 同じ趣味の人間を見つけるのはとても難しい。

 

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 朝早くから移動したお陰か、昼ごろには広大な大森林にたどり着く。

 かなり奥に行けば蜥蜴人(リザードマン)の集落があるらしい。

 森の外に出る彼らは外界と接触し、様々な知識を得る。

 見た目は強面(こわもて)だが勉強熱心で人間を食べる事はほぼ無い。

 森の中では様々な獲物を狩ったり、木の実や独自に作る野菜類などを食べる。

 湖に生息する生き物を巡って争いがあったりするとか。それらの情報はもちろん蜥蜴人(リザードマン)自身からもたらされたものだ。

 だいたいの容貌から欲しくないな、という事にしたナコト。

 必要に駆られるほどの魅力は合ってみないと分からないけれど、王国が脅威と捉えていないのであれば別段、無視してもいいかなと思った。

 それより他に凶悪そうなモンスターが居ないものか。

 居れば王国が壊滅しそうだが。

 そんな事を考えつつ転移した場所に向かう。

 かなり奥まった場所で今は多少の痕跡があるだけ。

 そこに少し目立つ程度の建物を置く。念のために外観に枯れ木と草などを多用し、内装も偽装しておく。風呂とベッドとトイレは葉を貼り付けるだけにしておいた。

 あまり徹底的すぎると重量が嵩(かさ)みそうなので。

 今までの仕事の経験から住んでいるモンスターはだいたい把握している。

 新鮮な森の空気は元の世界よりも格段に澄んでいる。しばし、静かな時を過ごすことにする。

 自然豊かな世界で見る星空は格別だ。そもそも向こう(日本)は厚い雲に覆われていて満足な空が見えない。

 小一時間ほど風景を楽しんだ後で周りに探知魔法を展開する。それと念入りに装備アイテムを新調する。

 後は何がかかるか分からないが、ひたすら待つだけだ。

 移動に時間がかかるので一日の消費が激しい。

 時間で動く物語の主人公であれば色々と手遅れになっているし、事件も未解決のまま終わる可能性がある。

 時限式の爆弾なら確実に爆発している頃だ。

 一見無駄な思考だが、減ったMP(マジックポイント)の回復にとっては有意義だ。

 常に思考することで発想を吟味できる。

 部屋の確認の後は暇なので一休みしたら完全に熟睡してしまったようで、気が付いたら深夜帯になっていた。

 

「……時間ではそうなっているな……」

 

 起きて顔を洗いつつ忘れない内に偽装していく。とはいえ仮面を被(かぶ)る程度だ。

 あまりにも静かだからか、特に夢は見なかったが良く寝たと気分的にすっきりしていた。

 

 アバターなのに。

 

 いずれアバターではなく自分の身体だ、と思い込むようになるかもしれない。

 異形種ならさすがにそんな境地には陥らないと思うが、色んな能力がある身体と元の身体りどちらがいいと言えば、どちらもメリット、デメリットがある。

 自分ひとりだけならば楽しい毎日だと思うかもしれない。しかしながら全員が万能の能力を持てば自然と元の世界のような社会の歯車と化すのではないか、と。

 そんな事を考えていると扉を叩く音が聞こえる。

 不審な建物に対する調査だと思われる。

 丁度起きた時にタイミングよく誰かが来る。普通に考えれば怪しいのだが現実の場合、そういう遭遇率が高くなる事は別に珍しくない。

 本屋に行けばトイレに行きたくなる現象とさして変わらず、何か理由があるのかもしれないけれど説明できない現象というものは色々とあるものだ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 移動できる拠点なので邪魔だといわれればすぐ退(ど)くけれど野盗とかは嫌だな、と思う。

 森の中でまだ出会った事が無いけれど。

 後は蜥蜴人(リザードマン)の縄張りに入っていた、とか。

 色々と考えても仕方が無いが、つい想像してしまう。

 扉には外の様子を見る物は無く、また覗きの魔法は持っていない。知ってはいる。

 少し深呼吸をし、魔法をいくつか唱えておく。少しの時間差の後に扉を開ける。

 

「こんばんは」

 

 と、元気の良い子供の声が飛び込んできた。

 視線を少し提げれば褐色肌の見慣れない姿。元気いっぱいの笑顔以外には整った服装に少し驚く。

 森の中で迷った農民の子供というよりは王国の専門機関から派遣された正式な査察団の一人と言われても差し支えない正装のような感じだ。

 少し答えに窮しているうちに全(・)て(・)は(・)終(・)わ(・)る(・)。

 

「こんな深夜にお客とは珍しい。どうぞ」

 

 と、身振り手振りを交えて応答すると子供は笑顔で中に入ってきた。

 立派な服装は軽装のように見えるが正式な防具だ。

 鑑定すればかなりランクが上だと分かる筈だ。とはいえ相手の防具はどうでもいい。

 問題は入ってきた子供だ。

 ピンと横に伸びた長い耳。見た目は十二歳くらいの子供だが種族は見た目どおりなら闇妖精(ダークエルフ)。実年齢はナコトより上に行く可能性が高い。

 長命の種族で人間の数倍もの寿命がある。

 成人で百二十歳を超える事を考えれば五十歳を超えてても不思議ではない。

 瞳の色が左右で違うのは珍しいが綺麗だと思った。

 

「こんなところに建物があったから調査に来たんだ」

 

 と言いながら部屋の一つに入り、中にあったベッドに無造作に飛び乗る。

 この辺りで闇妖精(ダークエルフ)の目撃情報は無く、近隣の冒険者ギルドでも見かけたことは無い。あと、首から提げられているのは冒険者プレートではなくドングリ型の首飾りのようだ。

 ナコトは沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)の魔法を唱える。それに対し相手は笑顔のまま。

 

「……まずは調査前に守ってほしいことがあるんだ。お互いが敵(・)対(・)し(・)な(・)い(・)為にね」

 

 と、下手(したて)に出ながら相手に説明をすれば不可解だと思いつつも納得してくれた。

 一部の魔法は効果を出すのに相(・)手(・)の(・)同(・)意(・)が必要な場合がある。無くても強引に事を進める場合もあるが成功率を高めるには素直に頼むのが安全策だ。それ以外は大抵が敵対行為と見なされる。

 別に書面で契約などしなくていい。ただ、言(・)葉(・)や(・)態(・)度(・)で同意を示すだけでいい。

 沈黙地帯(ゾーン・オブ・サイレンス)を解除すれば闇妖精(ダークエルフ)は無言で立ち去り、数分後には大型の獣を二体引き連れてきた。

 

「あたしの信頼する魔獣よ」

 

 と、一体は体長が五メートルはある巨大な黒狼『大地の狼(フェンリル)』と二体目はカメレオンと蜥蜴の中間のような生物で、こちらも数メートルもの巨体である『イグアナの家(イツァムナー)』だ。

 それぞれ小さな闇妖精(ダークエルフ)の命令に従い、他の部屋に移動していく。

 毎回のようにエロい展開にするのは芸が無い。それと気分的にも体感的にも乗り気になれない。もう少し現実に近い感覚があれば、と思いつつも同時に痛みもそれ相応に感じる筈なので悩みどころではあった。

 あと、あまり調子に乗りすぎてはいけない相手という予感もあるので、ここは慎重に事を進めたいと思っていた。だが、時には冒険心も必要だ。

 夜が明けて闇妖精(ダークエルフ)達が出て行った後、ナコトは拠点を森の中に置いたまま王都に向かった。

 魔術師ギルドに追加注文するためだ。それと冒険者ギルドで色々と情報や噂を集めていく。

 特に高レベルモンスターの出没地点などを。

 拠点生活が中心となってからエロい事をしていない、という事に気付くナコト。

 相当飽きた、というよりは新しい楽しみに目覚めてきた、というところがある気がする。

 思い返しつつ自分でも驚いている。

 だが、下準備というものは時間がかかる。なんでもすぐ出来る状態では面白くない。それにこのアバターは平均的過ぎて感じる感情さえ平坦にしてくる。

 痛みも悲しみも楽しみも。

 無効化まではしないとしても物足りなさは如何(いかん)ともしがたい。

 興味まで減らされたくない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 情報集めと食料の買い出しを済ませ、一日置いて拠点に戻った夜に闇妖精(ダークエルフ)が遊びに来た。もちろん、自由時間に来る事を約束していたので何(・)の(・)不(・)思(・)議(・)も(・)な(・)い(・)。

 敵対行動以外は融通が利く。

 やろうと思えば他にも色々と出来るらしいが後が怖いのでお願いだけにしている。

 簡易的な魅了(チャーム)や支配(ドミネイト)に近い。

 

「ほらマーレ。中は綺麗でしょう」

「……き、綺麗だけど……。何だか怪しいよ」

 

 森の中に不自然に小奇麗な拠点があれば怪しむのも当然だ。

 だが、現地のアイテムという説明ならば大抵は許容される。それに拠点用のアイテムはテントなどがある。

 

「あたし達の秘密基地ってことで内緒だよ」

「……う、うん」

 

 先日会った闇妖精(ダークエルフ)が元気な子供(アウラ)なら連れて来た方は大人しめ(マーレ)だ。

 黒い杖を持ち、身なりは魔法詠唱者(マジック・キャスター)風の人物はマーレというもう一人の闇妖精(ダークエルフ)。

 服装から女性だと思われるが男性で、元気な方は男装している女の子でアウラという名前だ。

 二人は双子の姉弟という間柄だという。

 瞳の色は姉とは逆の色合いになっている。

 

「……何か出て来そうな気配がするよ……」

「あたしのお(・)友(・)達(・)が色々と使っているからね」

 

 マーレは辺りを見回すがモンスターの姿は見えない。

 不可視化したモンスターが居るのかも知れない、と思いつつ姉に手を引かれて部屋の一つに入る。

 小奇麗な部屋に置かれたベッドにマーレを乗せる。

 

「ここにはお風呂とか完備されているから入ってきなさい」

「う、うん」

 

 先ほどから何かに怯(おび)えるような答え方をしているが、それがマーレの個性であり、本当に怖がっているわけではない、という事になっていた。

 姉が去り、辺りを気にしつつ装備品を外して丁寧に折り畳む。それだけ見れば育ちの良い子供だ。

 気配を色々と感じるが姉が配置したモンスターだと思い、風呂場に入る。

 翌朝になるころにはアウラ達は拠点から離れて仕事に戻っていく。

 ナコトはアウラ達が居ない間に物体操作(アニメイト・オブジェクト)の練習をしたり、容器の確認や情報を整理していく。

 日が暮れる頃に仕事を終えて自由時間となったアウラとマーレが訪れる。

 先にアウラが連れて来た魔獣と共に部屋で一休みし、別室のマーレは風呂場で待機する。

 連絡用の僅かな装備品以外を外した状態になった褐色肌の闇妖精(ダークエルフ)は華奢な体型にも関わらず、整った姿の男の子だった。

 一般的な人間とは違い、小さな子供でも年齢は高めで七十代は超えているという。それでも股間部分が剛毛だったりはしない。

 肉体的な成長が遅いから、ともいえるのだがゲームの仕様という言葉で片付けられてしまうと面白みが激減する。

 ナコトは不可視化しているが既に仕込みは済んでおり、数十人の治癒担当が控えているにもかかわらず、マーレの視界には誰一人映っていない。

 あと、予備の部屋にもたくさん控えていたりする。

 生物の脳というのは思い込みによって様々な現象を引き起こす。そしてそれはモンスターであろうとNPCであろうと差別無く効果を発揮するようだ。もちろん、それらは実験の結果ではあるが、理屈はもちろん分からない。

 例えば痛みを快感に変換する。肉体的な変化はさすがに起こせないし、起こらないようだが。ここで大事なのは敵対行為になるか、ならないかだ。

 美姫ナーベとアウラの検証により、本人が認(・)め(・)な(・)い(・)限(・)り(・)は平気そうだ。それともう一つ大事な事があり、それが一番重要な事柄だと思われる。そ(・)れ(・)に関してはまだまだ検証していく必要がある。

 いくつかの条件を満たせば相手を意のままに操れるが、過度の期待はしてはならないし、強引な方法はとても危険だ。

 当たり前だがゲーム時代はここまで万能じみた事は不可能に近い。特にプレイヤー相手には絶対に触れられない部分があり、仕様の他に法律的にも守られている。もちろん、傭兵やNPCにも制限のようなものがある。いわゆる、補正というものだ。

 転移後の世界だからこそ無茶な事が出来ているだけだ。

 元に戻す時も注意が要る。もちろん完全に元には戻せないが大幅な誤差が出ないように気をつける。あまり違和感を抱かせない方法で。

 現在、ナコトの拠点はアウラが暇つぶしに作った簡易拠点という事になっているし、近々取り壊すことも決定している、という設定だ。アウラも使い古した亜人などの隠れ家という印象しか抱いていない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 草が生い茂っているのに温かな湯が満たされた浴槽がある事に何の疑いも見せず、当たり前のように身体を温めるマーレ。

 石鹸類も完備されているので、彼の頭の中では自然の風景に溶け込んだ露天風呂とでも認識されているのかもしれない。そうであるならもう少し綺麗にしておくんだったな、と風呂場に実は居るナコトは申し訳ない気持ちになってきた。

 その割りにマーレというアウラと同じ年恰好で男の子の頭に放尿したり、顔に射精したりする悪い大人なので。

 絵面(えづら)的には何の反省点も見受けられない。どうせ洗い流すんだし、という気持ちがあるからかもしれない。

 そんな風景を彼らの雇い主や主人、親などに見つかれば殺される事態に発展しそうだ。だが、意外と命知らずなアバターの性格のおかげで平然としていられる。命に関しても頓着していないから、とも思われるが正確な事は分からない。

 完全ではないから慎重に事を進めているのだけれど、自分でも結構驚いてはいる。

 それから、相手が男性だからとて自分(ナコト)は同性愛者ではなく、女性が好きなのは変わらない。幼い子供で可愛いから、という事があり、少し少女趣味(ロリコン)の気(け)があるのかもしれない。少なくとも熟女好きではないと思う。

 見る分には充分にエロいシチュエーションだが気持ちがいいかと聞かれれば、別に何ともない。

 気持ち的というか性的に激しく興奮しないのが残念かもしれない。

 自分が知っているエロい分野は狂戦士(バーサーカー)並みに貪(むさぼ)るシーンが多かった。

 今の自分は実に淡白なもので味気ない。とはいえ、今更な話しだが。

 物思いに耽りつつマーレの身体を洗いつつ平坦な胸を触ったり、森妖精(エルフ)特有の尖った耳を軽く握ってみたり、柔らかい性器を睾丸ごと捏ねるように弄ったりする。さすがに接吻はしない。

 様々な作品において接吻の安売りが目立つので安易な事はしない。

 

「……うぁ……」

 

 見た目は子供だが高レベルの肉体を持っている。それでも声は出るようだ。

 言える範囲で聞き出した程度だが、レベル100でもナコトにとって驚きは無い。

 表情がとても豊かで感覚器官が生物的なところには驚いている。

 潮吹きや射精出来るところなどが特に。

 排泄も出来るのだから単なるゲームデータから生物に進化でもしたかのようで、とても興味深い。と、思いつつマーレの肛門を拡張してみようとする悪い大人(ナコト)。

 小さな身体であっても優遇されたステータスだと多少の無茶でも平気というのが凄い。

 実際にある程度広げた肛門にナコトは自分の男根を深く差し込んでも肉体が裂けたりしなかった。

 代わりにマーレの嬌声は大きかったが。

 激しく出し入れするたびにマーレが射精する。一応、触ったり臭いなどで確認はした。ただ、後ろからだと噴き出る様子が良く見えないのが難点だ。

 男性も肛門を刺激されれば気持ちがいい時がある。ただ、本当に射精するとは思わなかったけれど。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 多少は洗ったとしても肛門内は大腸菌などの雑菌にまみれた部分だ。そこに入れた男根に未練は無いので去勢して治癒魔法をかける。すると離れた男根はたちどころに光りの粒子となって消滅した。それが本来の光景ではあるけれど、どういう原理なのかは全く分からない。

 ついでにマーレの性器も綺麗に切り落とし、低位の治癒魔法をかければ女の子のような穴だけが残る。

 後は普通に男根を入れるだけだ。

 性転換などの手術のあと数週間は安静にしなければならないところを魔法なら数分ほどで済む。

 穴とはいえ肉体的に他の者と大差があるわけではないので、感覚的には新しい発見は無い。

 あまり悪乗りするのは良くないし、遊んでいる無駄な時間も無いので治癒した後は身体を丁寧に洗っておいた。その後でアウラが部屋に訪れる。

 既に部屋は真っ暗闇だが特殊技術(スキル)によって昼間のように彼らにもナコトの目にも映っているので問題は無い。

 

「まだお風呂に入ってるの?」

「も、もうすぐ出るよ」

 

 と、激しい痴態があったにもかかわらず、何(・)も(・)起(・)き(・)て(・)い(・)な(・)い(・)かのように振舞うマーレ。

 実際、彼の認識では何だか気持ちいいな程度にしか思っていない。

 

「あたしも入ろっかな」

 

 素早く服を脱いでアウラが風呂場に乱入するまで一分ほど。

 様々な装備品は少し乱雑ではあるが大事なものはちゃんと丁寧に置かれていた。

 それからしばし、互いの身体を洗い、ナコトが用意したタオルで水気を取る。

 その後、二人は裸のままそれぞれに与えられたベッドの上に乗る。

 緑色のシーツが使われているが、ベッドは大の字に寝る彼らの為に用意したもので、頭や腕と足などを乗せる部分が独立して分かれている。

 乗り方が悪いと隙間に落ちてしまう。

 アウラとマーレの間には仕切り壁が立てられており、寝そべると互いの顔や身体は見えなくなる。だが、魔法的な明かりが無いのではた目には闇夜の中で視認は困難となっている。

 

「お休みマーレ」

「お、お休み、お姉ちゃん」

 

 その後、数分で寝息を立て始めるアウラ達。もちろん、そうなるように指示したからだ。素直というか効果が発揮されると安心する。

 まずは改めて二人の記憶を修正していく。短期間の作業を予定しているので労力は然程もかからない。

 次に寝ているマーレの男性器を触る。

 無防備にさらけ出している姿が滑稽だ。そうなるように仕向けている事を忘れてはいけない。

 歳若い闇妖精(ダークエルフ)の成長速度は分からないけれど一般的な子供のものと見た目は変わらないし感触も軟らかいものだった。

 小さな陰脳の中には本来ならば限られた量しか入っていないはずなのに魔法の力を行使するだけで無限に湧いて出るという不思議な現象を引き起こす。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 それぞれに目隠しを施して部屋を明るくする。

 健康的な褐色の裸体がより鮮明に映った。

 マーレの性器は既に勃起状態だが、特別奇怪な姿ではなく標準的な形だ。軽く刺激を続ければ勢いの良い射精が拝める。

 アウラも陰核を刺激すれば絶頂を迎えて潮吹きする。特別大量に吹き出るような事はなかった。

 浅い眠りから覚めたマーレに飲み物を与える。その間に治癒魔法をかけると再度、勃起し始めた。これは性的興奮がまだ収まっていない為で魔法の効果とは関係ないものだ。

 覚醒してくると硬く屹立する自分の性器に気づくマーレ。それを思わず掴む。

 

「……ど、どうしよう……」

 

 側にナコトが居るのだがマーレの認識では居ても居なくても気にならない存在として映っている。だから、裸を見られても恥ずかしいとは思わない。

 ただ、横に顔を向けると大股開きのまま裸で眠るアウラが居て、そちらに気付いた途端に頬を赤く染める。

 先ほど一緒にお風呂に入ったばかりだが、視線は彼女の股間部分に向いていた。

 それから自然と自分の性器を擦り始める。

 誰かに教わったわけでもないのに性器を握った手を先端から根元へ、それを繰り返し始めた。

 そうする事が正しくて、この手の動きが気持ちよくなる方法だと。だが、自分の手で動かすよりもアウラの性器がとても気になって仕方が無い。それと同時に手の動きが早くなる。

 妙な形のベッドから降りてアウラの元に向かう。

 寝ているアウラの性器に興味が行ったマーレは徐(おもむろ)に触ってみた。

 軟らかい大陰唇や小陰唇を。

 陰核に触れるとアウラは呻く。

 自分の性器とは違う形に何故だか興奮を覚える。

 ふと、自分の性器に視線を向ける。立った状態だと丁度いい位置に居る事に気付く。

 ナコトとしては色々と言葉をかけた方がいいのか迷うところだ。

 官能小説などで色々と怪しくも卑猥な言葉をかけていくのがお約束のように。

 この世界に来て最初の頃は色々と喋っていたが、言うのが恥ずかしくなったりレパートリーの貧弱さに諦めたりと色々と思うところがあって今は黙っている事が多くなった。

 これはこれで性的興奮を覚えるものでもあるけれど。

 何故だか、その他大勢のように喋るのが面白くないと思ってしまった。

 後は記憶の改竄に必要事項を与えてしまって喋る手間が省けているのも原因の一つだ、ともいえる。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 正直に言えばいちいち喋るのは変態だけでいいと思っている。

 ありふれた喘ぎ声を聞いたところで聞き慣れてしまっているし、新しい言葉を聞きたいとも思わない。

 現地の言葉で性行為してごらん、と言うのも恥ずかしい。いや、意外と直接的な言葉を言うのは恥ずかしいものだ。それはそれで結構勇気が要る。

 後は言葉を言う事で相手に余計な強(・)い(・)印(・)象(・)を残してしまう可能性があるので、その予防も兼ねている、というのは言い訳かもしれない。

 言葉でなければならない必要性は無い。ただマーレの尻を軽く押すだけでも充分だ。あるいは肛門に中指か棒の様な物を深く差し入れる。

 先ほどのように肛門からでも彼は充分に快感を得る事が出来る。

 右手は自分の性器を。左手はアウラの陰核をそれぞれ刺激する。そして、それを今はどうしても止めたくない気持ちが強かった。

 性器を触られているアウラは腰を多少を動かす程度で眠りから覚めない。また、その動きがマーレの目にはとても扇動的に見えて仕方が無い。

 溜息のような吐息が彼の口から漏れる。

 それから自然と相手の性器に自分の性器を近づけさせていく。

 指で器用に小陰唇を広げると更に興奮するマーレ。そして、その広げた部分に自分の性器を押し当てる。

 丁度いい部分に思えた。

 軟らかい肉体を感じつつ、縦方向に擦り付ける。

 

「……あぁ」

 

 亀頭に直に感じる女性器の感触。

 手で擦るよりももっと包み込めそうな部分に気づくが少年の男根はまだ硬いとは言いがたい。しかし、長寿の種族闇妖精(ダークエルフ)のものであれば既に成熟した大人と大差が無い。

 見た目だけは幼い。それでも一人前に射精する事は出来た。

 先ほどから陰核や小陰唇を触られて呻き続けるアウラの頬は紅潮していた。

 艶かしい呻き声とも喘ぎ声とも取れる声を聞いているマーレは更に性的に興奮してきた。それと同時に自分の性器を擦る速度も上がる。

 あまり急ぐとすぐに射精しそうになる事に気付き、手を止めるも息遣いは一層荒いまま。

 彼の代わりにナコトが背後からマーレの性器を掴んで、というか大きさ的には摘んだようなものだが、それをアウラの小陰唇に擦り付ける。

 ある程度、亀頭部分を刺激した後、手を離してみるとマーレは急に止められたことで驚いたようだ。

 自分でやるのは恥ずかしいけれど、折角気持ちよくなってきたのでやめてほしくない、というような雰囲気を身体で表現する。

 小刻みに震えた後は自分で続きを行(おこな)い始める。しかし、ただ擦るだけでは満足しない。では、どうすればいいのか、とマーレの中で葛藤のような気持ちの鬩ぎ合いが始まる。

 小陰唇に埋る亀頭を眺め、もっと奥まで入れればいいという結論をすぐに導き出す。

 小さな子供に過ぎないのに既にある程度の性の知識が備わっているかのように。

 実際の子供は性行為の知識が無いので想像も本当は難しい。その筈だが、ナコトが見て来た範囲ではある程度の補助を与えれば人間、モンスター問わずに自ずと行為を覚えていく傾向にある。ただし、性的興奮を覚えないと教えたところで自主的に行(おこな)おうとはしない。

 つまり性行為に及ぶ為にはある程度、身体が成熟しているか、無理矢理性行為の経験を覚えさせる必要がある。

 無理矢理より自主的の方に今は興味が移っている。精神支配の都合では仕方が無い、という面もあるかもしれない。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 一通り動作と感覚を覚えたマーレは屹立する男性器をアウラの女性器に押し込もうとする。しかし、まだ身体が未成熟のためか、性器が軟らかくてうまく行かないようだ。

 息遣いの荒い彼は少し苛立ち始める。既に性を貪る立派な肉欲獣だ。

 開いた太腿をしっかりと掴み、半ば強引に性器を押し付ける。

 形として定まったのを確認したナコトが補佐をする事にした。

 捻じ曲がるマーレの性器を掴んで優しく、ゆっくりと押し入れる。

 

「あっ。ううん……」

 

 呻きつつ熱い吐息を漏らすアウラ。

 何度か下半身を浮かせつつ快感に抵抗しているようだ。

 そのまま根元まで突き入れるとアウラの目が半開きになり、大きく呻いた。

 接合部に水をかけてより滑りやすくすると、後はマーレ自身が動き始める。

 

「……ん。……う」

 

 と、マーレも呻きつつゆっくりと腰を動かす。

 一度始めたら後は惰性で行(おこな)う。そして、その速度は自然と速くなっていく。

 腰を突き入れるたびに漏れ出る喘ぎ声はアウラ、マーレ双方から。

 可愛い子供の声は聞いていて微笑ましくなるが、行為はとんでもないものだ。

 ただ、あまくでも自主性に任せている。ナコトが命令したわけではない。

 こういう動きをする事が正しく、とても気持ちがいいと本能で理解し始める。

 さすがに事前に知識として持っていた、というのは怪しい。ゲーム的にもありえない筈だ。だが、現実として起こっているのが不思議でたまらない。

 行為の途中で男根が外れても自分でちゃんと入れ直せるのだから。

 一度覚えた事は学習してしまうようだ。ただ、それは一時的なものに過ぎない。

 

「んんっ!」

 

 最後の一突き、という感じで腰を突き出したマーレは微妙に痙攣した。

 快感の絶頂に達して射精が始まったようだ。

 今まで溜めたものを一気に放出する感覚に溺れただらしない顔を晒しながら。

 我慢しきった後の放尿に似た恍惚に溺れる童顔が今はとても色っぽく見える。

 終わった後で男根を引き抜くと元の小さな男性器に変わり、そのままへたり込むマーレ。それと同時期にアウラがアーチを描く潮を吹く。それはそのまま座っている弟の頭に降りかかる。

 アウラは少しの間、痙攣するように腰を動かしていた。その動きがまた可愛いものだった。

 潮吹きの後は膣から精液が漏れ出てくる。

 それをじっくりと眺める時間的余裕は無いけれど、この風景を保存する方法が無いのがとても残念だとナコトは思った。

 その後、息も絶え絶えに疲れ果てているマーレに治癒魔法を掛ける。すると萎えていた男性器が再度、勃起し始める。

 彼の精力は一般の人間よりも多いようだ。しかし、射精後の疲労まで感じるところは本当にゲームのキャラクターなのか疑問に思う。

 極端にステータスが高い存在はそこら辺にありふれている筈がないので、自分と同じく転移して来たものと思って間違いがない筈だ。仮に違っていた場合は自分の無能さに嘆くだけだ。

 そんな考えが過ぎっている間、復活したマーレは精液が垂れているアウラの膣に再度、自分の性器をねじ込んで行為に及びだした。

 彼にあるのは生物としての本能のみ。姉との近親相姦という背徳にもかかわらず、知識に無い為か躊躇いが無い状態だ。

 鼻息を荒くして射精した後はまたへたり込んだ。

 

「……あ、はあ……、はぁ……」

 

 小さな子供の体力が著しく消耗するほど性行為は肉体的負担が大きいのか、実際のところは不明。ただ、そういうものだと判断されているのかもしれない。

 満足するまで行(おこな)った後、新たな指令を与える。この場合の指令とは洗脳による命令であっては駄目だ。あくまで自主的に留める。

 一連の行動は全ては自分の願望によるものであり、他人から強制されたものではないこと。そして、そこに一切の疑問を抱かない程度のものである、というような感じだ。

 小さな子供が性行為を進んで行(おこな)う事に異論が出そうだが、生物として基本的な行動の中に子孫繁栄がある以上は別段不思議なことではない。そこに大人による情操教育を施さない限り、基本的に性行為は異常なことと判断されないものだ。そしてそれは実際に実証されている。

 性器がある以上はそれを使わなければならない。ただそれだけの事だ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 ナコトはアウラの枕を高く設置し直した。快感による思考の混乱や疲労などで抵抗する素振りは無く、頭に触れられても文句は出なかった。

 実際、このまま耳と目を抉っても苦痛ではなく快感しか感じないようにはなっている。ただし、当人ではないので本当に快感なのかは保証できない。

 何人かの実験では激痛にのた打ち回るような結果にはならず、感想でも特に苦しい意見などは聞かれなかった。

 ベッドの位置を調整している間、マーレはアウラの上半身を覆うような形のところまで移動する。その時、彼女の腕を押しつぶさないように自分の脛(すね)の裏に移動させた。

 アウラのすぐ目の前に屹立した弟の小柄な男根が近付く。

 何度も射精したあとにもかかわらず太く元気なそれ(男根)を姉の口元に押し付ける。すると彼女は自然と口を開き、弟の男根を咥えた。あとは自然と喉の奥へと突き入れられる。

 成人男性のものとは違い、幼さの残る子供の男根はそれほど硬さがあるわけではない。

 アウラの唇の力だけで簡単に歪むほどの軟らかさがあった。

 ナコトはベッドの調整を終えたあと、全裸になりアウラ達の様子を眺める。

 行動の一つ一つに言葉による命令を行(おこな)わなくなって久しいが、それでも黙って眺めていると言葉が無粋に感じてしまう。

 指令などを与える時はきちんと喋らないと行動してくれないので完全な沈黙は出来ない。

 

「腕を上げて彼の股座(またぐら)に通して……」

 

 全てを魔法に頼るのはMP(マジックポイント)の無駄遣いになる。節約できるところには労力を惜しまない。そうしないと大きな失敗に繋がるので。

 この命令において苦労するのは特殊な名称を伝える事だ。

 相手側の知識に無い場合は首を傾げられる。特にアウラ達の場合は知らなくて当たり前の事が多い。

 それを解決する方法は動き方を漠然とでも教える事だ。別に無理に単語を教える必要は無い。

 男根を擦り続けると精液が吹き出るのは結果でしかない。

 行為に意味が無い方が記憶に残りにくい。むしろ、知識がある方が強く残る気がした。

 そうしてマーレは姉の頭をしっかりと掴み、闇妖精(ダークエルフ)特有の褐色で先が尖った長い耳も撫でていく。

 男根を咥えたアウラは舌を器用に動かし、亀頭部分を舌先で刺激を与える。

 先ほど膣に挿入したように腰を動かし始めるマーレ。

 舌が這い回るたびに唸りだす。自分の手ではない他人からの刺激に悶え始める。

 空いている右手の人差し指と中指をマーレの肛門に深く突き入れるアウラ。それによって弟は艶かしい声を上げる。更に左手で彼の小さな睾丸を優しく揉みしだく。

 アウラの指が肛門内で何度か曲げられたり、前後に動かされると彼は口をだらしなく開き、小さく喘ぎつつ涎を垂らす。

 

「……ううっ!」

 

 裸で長い時間、過ごしていたので急な尿意に襲われるマーレはアウラの頭を思わず強めに股間に押し付けた。

 彼は自分が今、どんな行為に及んでいるのか理解していない。

 アウラの口に男根を突き入れて快楽を貪っているとは露とも思っていない。むしろ、何故か分からないけれど気持ちがいい、という程度の認識だ。

 自分の男根を膣に入れて精液を出す、という詳細を把握していない彼は無心で気持ちのいい事をしているだけだった。

 小さな子供の知識では男と女、または姉と弟が抱き合って身体を擦り合っているだけ。男根をなめてもらっている、というよりは綺麗にしてもらっている意識の方が強い。

 尿意を感じている今は丁度穴に男根を入れているので漏れないようにしているだけ。

 そして、アウラの口の中で放尿する事に関して、そうする事が正しいという意識がある。やってはいけない、という抑止は働かない。それは彼女が今も自分(マーレ)の肛門に指を入れて刺激しているからだ。

 駄目なら突き放している。そうではないので、続けてもいい。

 

 相手が嫌がらない事はやってもいい事だ。

 

 だから、景気良く放尿する。

 急に喉元に温かい感触が襲われた場合、アウラとしては咳き込むところだ。だが、事前に察知していれば対処は難しくない。

 口元の力を抜き、舌を器用に使って喉の奥に誘導する。多少、苦しいけれど水を飲む感覚で取り込む。

 適度に動くアウラの喉。急な違和感にもかかわらずしっかりと飲尿する様は見事だとナコトは感心した。

 姉の口に放尿するマーレは頬を赤らめつつ気持ち良さそうな顔を覗かせている。それがまた色っぽい。

 裸になったナコトの男根が硬く屹立するほど。

 用意した台で高さを調節したあと、マーレの頭を引き寄せて亀頭を彼の唇に当てる。

 他人の男根にもかかわらず、マーレは舌を出してナコトの亀頭を嘗め始めた。

 そうする事が当然だ、という意識があるからだ。

 

 いわゆる裸の付き合いだ。

 

 それゆえに抵抗はされなかった。というよりは嫌がらないようにしているだけだが。

 他人との触れ合いではおかしなことはない、という意識の延長線上。

 まだあまり性的な知識が無いからこそ出来る命令ともいえる。

 これが知らない中年男性であれば頗る嫌な顔をされる。というか、ナコト自身としては知らない野郎と抱き合いたくないし、知りたいとも思わない。

 しかし、一部の大人は抵抗を見せる傾向にあるのは確かだ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 丸っこい金髪の頭部を見下ろす形でアウラとマーレを眺める。ナコトから見ても二人は可愛い部類だ。その姉弟(きょうだい)と卑猥な行為に及んでいる事に抵抗を感じつつ背徳感を味わう。

 便利な魔法が無ければ成立しない。または無理矢理の命令では快感よりはただただ泣き叫んで煩いだけで終わる可能性が高い。

 自ら進んで快感を得る事に意義がある。というのはナコトの勝手な思い込みだが。

 命令次第では弟の性器を食い千切る事もありえたりするが、辺りが血まみれになる事は控える。

 肛門を刺激されていたマーレは程なく呻きつつ姉の口の中に射精する。その後、治癒魔法ですぐに復活する。

 舌の上に出された精液を何のためらいも無く飲み込むアウラの顔は実に冷静沈着。薄く開かれた目元は慈愛に満ちて神々しくもある。

 ナコトの亀頭を嘗めていたマーレは自分がされている事と同じように彼の男根を咥え始める。多少の嘔吐感があるものの無理なく舌の上を滑らせる。その時、ナコトの感覚ではしっかりと感触があり、アバターとしての意義に疑問を感じる。

 本来ならばあってはいけない肉体感覚だ。それがあるのがもそもおかしい。まして射精感など。

 現実の肉体と違うと分かっていながら感じている感覚は一体誰のものなのか。

 元の世界に戻った途端に精液まみれの自分と対面するのはお断りしたいところだ。あるいは精根尽き果てて餓死している自分を自覚するとか。想像したくない結末だが、これは今更なのでどうしようもない。

 無理に抗うよりは現実を受け入れてやりたいようにする。そうでなくても元の世界に戻るすべが無いのだからどうしようもない。

 行為だけで男根の咥え方を覚えたマーレに放尿するナコト。

 勃起状態だと勢いが付いて喉に当たると嘔吐感に襲われる。マーレはここで懸命に耐えつつ飲み込んでいった。多少の漏れは仕方が無いと思いつつ。

 嫌悪感に襲われながら懸命に飲尿するマーレの姿もまた魅力的に見えた。

 闇妖精(ダークエルフ)特有の長い耳を触りつつナコトも彼の口の中に射精する。そして、出た精液を飲み込む姿に満足する。

 知らない他人の尿や精液を飲まされるマーレはただただわけも分からず当たり前の事として受け入れていた。どうしてこんなことしなきゃいけないんだろう、と多少は思っているかもしれない。しかし、ナコトには窺い知れない。

 出し終わった亀頭部分を綺麗にするように舌を動かすマーレ。そのすぐ後で肛門の刺激と姉の舌の感触により彼(マーレ)はまた射精感が襲う。それと同時にナコトの男根を嘗める事が自分の男根を嘗められる感覚に思えて、丁寧な仕草に変わる。

 姉の舌が這い回る仕草を真似るようにマーレもナコトに同じことをする。そうする事がとても気持ちいいと錯覚してきた。

 男子である筈のマーレは次第に艶っぽくなり、同性の男根に対して何の違和感も忌避感も抱かなくなる。むしろ、肛門の刺激により、ナコトの男根を入れてほしいとさえ思えてきた。

 太くて硬い棒状のナコトのものであればもっと気持ちがいいだろうな、と。

 先ほどからマーレに頭を掴まれたままのアウラも同様に嘗めるだけでは飽き足らず、そろそろまた膣に入れてほしいと思えてきた。

 弟の軟らかい男根にまた気持ちよくしてもらいたい、と。そう思いながら丁寧に嘗め回していく。そして、弟が強く頭を引き寄せる。また口の中に温かい粘液が出る合図だと察知し、上顎に亀頭を当て、舌先で尿道附近を前後左右に擦り付ける。

 程なく舌の表面を滑る様に噴射された。その感触が今はとても心地よかった。それと同じような感覚をマーレも味わっていた。

 姉の口腔内での射精と同姓からの射精を延々と繰り返したくなる欲求が湧く。

 もっと相手の男根をなめて精子の感触を味わいたい。下でももっと気持ちよくなってたくさん出したい。その事で頭の中がいっぱいになっていく。

 

 ただ、ナコトは時間的余裕は感じていなかった。

 

 便利な魔法のお陰で延々と続けられるところが実に恐ろしい、と。しかし、いつまでも続けるわけには行かない。彼らには与えられた仕事があり、いずれは拠点に戻らなくてはならないし、途中で誰かが心配になって呼び戻す可能性もある。

 今は自由時間の間だけの関係だ。時が来れば何ごとも無く去っていく。

 いちいち精液の味だの聞きたい訳ではないので黙って様子を窺っていた。分かっていることをあえて聞くのも野暮というもの。無音の攻防が多くなるのはその手のセリフを聞き飽きているのも一因だ。

 数年も経てばまた聞きたくなるかもしれないけれど今は無理して聞きたいとは思わなかった。

 一通りの行為が終われば風呂場にて身体を洗ってもらい、再度ベッドに寝転がってもらう。

 この後は解体作業に入る。それが終われば記憶の修正。この辺りは事務的で面白みは無い。

 都合よく二人同時に作業は出来ない。あと、作業の合間に彼らとまた性行為をする気は無く、それ(性行為)はその日の気分次第。雑念を振り払ったナコトはほぼ職人としての顔になる。

 今回は色々と容器を用意してあるので搾取する部位は少し多めだ。尚且つ、魔力の補充も今は充分なので限界まで行(おこな)える。更に他の部屋の浴槽も使える。運び出すのが大変だけれど。

 陽が上る少し前に作業を終えて、アウラ達には血の臭いが消えるまで互いに身体を洗ってもらう。動物の嗅覚を誤魔化す為に専用の魔獣を用意しておいた。

 念を入れて部屋のひとつは様々な動物の血が吹き付けられている。その後で便利な消臭の魔法を思い出して無駄な労力にがっかりする。

 外に出れば中での記憶は二人で仲良く水浴びしたり、洞窟探検などをしたようなものへと変化していく。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 数日後に指定された場所に向かうナコト。

 あまり深入りは出来ないが最大限の利用はさせてもらう、という考えで動く。

 それは一流の襲撃者のようだ。

 とある森の中でアウラと合流し、指定された位置までアイテムを運んでもらう。現場には急造された丘がいくつかあり、その一つに拠点『グリーンシークレットハウス』が置かれる。

 警戒は弟のマーレで自(・)由(・)時(・)間(・)に合わせて行(おこな)っている。

 後は待つだけだ。

 他人を信用しなければならない点は何が起きるか分からない不安要素ではあるけれど、魔法を信じるしかない。

 一時間後に扉が開き、アウラ達が入ってきた。

 今回は『針山の槍(スピアニードル)』という体長が二メートルほどの兎型モンスターと身体に付随している迷彩柄のマフラーを着用した『戦闘メイド』と呼ばれる者を連れて来た。

 その戦闘メイドは眼帯をつけ、赤金(ストロベリーブロンド)という色のまっすくで腰までの長さがある髪の毛に明るい緑色の瞳を持ち、無表情でモンスターの身体にしがみついていた。

 そして、彼女達の他に保護者という役割でもう一人連れ出されていた。

 頭部が犬。腰に届くほどの黒髪を持ち、縦中央で縫い合わされたような縫い目があり、それ以外の部分はメイド姿の人間の女性に酷似し、尻の部分から尻尾が覗いていた。

 彼女はメイド達を束ねるメイド長『ペストーニャ・S(ショートケーキ)・ワンコ』といい、高位の神官だという。

 アウラの言(げん)で、消費の激しい魔法にはMP(マジックポイント)を譲渡するスキルを持つ者が必要だ、という事で連れて来てもらった。

 針山の槍(スピアニードル)は敵に対して普段は柔らかい体毛を鋭い針状に変化させる。しかも、それは倒されても元の柔らかな体毛に戻らないので倒すのにコツが要る。

 今は背中に戦闘メイドを張り付かせているので敵対行動は取れない。

 シズとペストーニャに別々の部屋に入ってもらい、入り口から顔を覗かせたアウラが説明していく。

 

「じゃあさ(・)っ(・)き(・)説(・)明(・)し(・)た(・)通(・)り(・)にしてくれるだけでいいから」

 

 モンスターと二人きりにされたシズは邪魔者の気配は感じるが構わず、命(・)令(・)通(・)り(・)に針山の槍(スピアニードル)から降りた。

 眼帯を含めて装備品を外せば全裸となる。そして、素肌のままで針山の槍(スピアニードル)に飛びついた。

 普段から物静かで無表情の彼女『シズ・デルタ』は至福の時を味わう権利を得た。

 それから数分後には部屋の中から音が消える。

 作業は何日にも渡ると予想し、一日で全てを終えることを断念する。

 じっくりと取り組める上では何も問題は無い。あるとすれば相手側の予定くらいだ。その辺りはアウラも承知済みである。

 シズの情報は教えられる範囲で聞いた結果、肉体は機械である。それゆえに通常の方法が取り難い。無理なら諦めるだけ。魔法の効果が通用するならば続行。

 ナコトとしては全ての女性との性行為は義務ではないし、無理してやりたいとも思わない。なので早々に解体作業に入ることもある。

 シズと針山の槍(スピアニードル)を回収し終えたあとは犬頭のメイド。

 彼女は信仰系のキャラクターで頭の他に尻尾が生えている。しかし、それ以外は人間的な姿だ。仮に性行為するとしても気分的には獣姦だ。様々な種族とやりたい気持ちは少しはあるとしても危険な事はやりたくない。その割りに今までも充分に危険ではあったけれど。

 種族は異形種の人造人間(ホムンクルス)という話しだった。ここまでは公開してもいい情報のようでアウラはすんなりと教えてくれた。では、何が駄目なのか。

 

「持っている武具とか細かい能力かな? 系統程度は大丈夫だと思う」

 

 詳細なステータスの質問は厳禁であるが自分で特定する分には見逃されるらしい。

 その辺りは今すぐ解明しなければならない問題だとは思わない。大事な事は解体作業に支障が出るかどうか、と性行為ができそうな相手か、だ。

 このペストーニャは身体は人間とほぼ同等なので面白みは無い。なので早々に仕事に取り掛かる事にした。

 翌朝近くになる頃、楽しみを終えたシズ達は拠点からこっそりと出て行く。そのまま日が沈む頃にアウラは来客を連れて来た。

 客というかモンスターだが。

 服の中に隠れていたモンスターは粘体(スライム)の一種で透き通る青みがかった色をしていた。

 蒼玉の粘体(サファイア・スライム)と呼ばれているモンスターだ。

 基本的な粘体(スライム)は知性が乏しく、知性を持つ者は色々と恩恵を失うとされている。

 雌雄の区別は無く、分裂によって増える。

 核となる部分があり、そこを失うような攻撃を受けると溶けるように死ぬ。

 さすがに粘体(スライム)でエロい事は身体に這わせる以外は思いつかない。

 来客はもう一人居て、こちらは金髪の女性で頭だけ見れば貴族のお嬢様風だった。単に髪が巻き毛気味になっていただけの印象だ。

 目に光りは無く、陰鬱とした顔つきで年のころは二十歳ほど。

 服装は黒を基調とした下着に近い格好で、長い脚は網タイツに金属製のブーツ。黒いスカートはかなり短く、豊満な胸が強調されていた。

 見た目は人間だが彼女も粘体(スライム)の一種らしい。正確な事までは聞かない事にしていたので自分で確かめるしかない。

 アウラの命令を受けてあちこちを警戒していた金髪の女性は手近な部屋に入り、命令された通り、装備品を外してベッドに横たわる。

 正体が粘体(スライム)系なら各種部位の搾取は不毛。それはそれで残念だが、保管に関してどうすればいいのか、これも検討課題だ。

 それから十分後に部屋から出て来て別の部屋に待機を命じられた蒼玉の粘体(サファイア・スライム)を切り刻む。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 二時間ほどで作業を終えた金髪の女性は蒼玉の粘体(サファイア・スライム)と共に立ち去った。

 入れ替わるようにアウラが部屋の一室に入り、周りを見渡す。

 

「次は大物を連れて来ようと思う」

 

 不敵な笑みを浮かべる闇妖精(ダークエルフ)。

 素直な部分は子供らしいのだが、心はきっと闇に染まっている。それはナコトが与えた設定ではない。

 

「……君達にとって大切な仲間ではなかったのか?」

 

 不可視化したナコトが何処からか尋ねてみた。もちろん、自分で色々とお願いした部分はある。

 

「元の状態に戻しているし、大切なアイテムを奪っているわけじゃないからね。……あと、厄介な女共が酷い目に遭う分には全然平気」

「……こちらは出来る限り丁寧に対処させていただくよ」

 

 報酬は与えられそうにない。それと酷い目に遭わせてもいいが殺してはいけない、というのは厳命されている。それが例えアンデッドでも。

 ナコトとしてはアンデッドは連れてこないように命令はしている。

 後は彼らの組織について言及しない事と干渉は今のところする気は無いので不測の事態でもない限り迷惑をかけない事を約束している。それとこっそり仲良くなれれば幸いだという事も伝えてある。

 

「……しっかし、精神支配とは違うとしても……敵対したら凄そうなのにね」

 

 アウラの会話は予(あらかじ)め話題として出すようにしているので、記憶に違和感を起こさない為の緩衝材的なものに過ぎない。しかし、それでも彼女の声で尋ねられたかった。

 ナコトは特徴的な容貌を持たないので他の一般市民の顔と挿げ替えてしまうと後で思い出せなくなる。それもまた利点の一つだ。

 アウラは不可視化したナコトの顔はほぼ正確には思い出せないし、何人かの市民の顔しか浮かばないようになっている。

 相手の人材で軍団を作るようなものなので、敵対すれば脅威だと言える、かもしれない。

 では、それをすればいい。というのは安易な考えだ。確かに出来なくはない。だが、現実的に本(・)当(・)に(・)そんな事が可能かどうかが疑わしい。

 まず前提条件として敵対者の勢力の大きさなどの情報が欠落している。

 数で押す人海戦術ということも考えられるが、こちらは人材だけでありアイテム類は持ち合わせていない。

 ただただ大勢の的(まと)が走っていくだけだ。理想と現実は結構乖離している。そしてそれは『お約束』みたいなものだ。

 ナコト自身、争いごとは好きではないというところがある。

 特にPVP(プレイヤー対プレイヤー)みたいなものを苦手としている。

 相手の裏をかく戦術は確かに大事だが、やりこみする程賢くないので防衛程度に留めている。だが、それらはあくまでユグドラシルというゲーム時代のものだが。

 

「……戦闘民族じゃないからかな……。……はぐれ者は孤独との戦いなのさ……」

 

 仲間に加わる予定は無い。楽しみは割りと独り占めしたくなる性分かもしれない。

 あまり協調性があるとも思えない。

 情報交換相手くらいの間柄ならば許容できる、という程度だ。

 

「じゃあさ、仮にだけどどこかのギルドみたいなところを襲撃する予定はあったりするのかな?」

「……無いな……。……そもそも自分にとって敵対者というのは行動を邪魔する者くらいだ」

 

 小声にしなくてもアウラの耳にはちゃんと届いていると思う。それでも音漏れを少し気にして声量を抑えてしまうのは疚(やま)しいことをしている自覚があるからかもしれない。

 ギルドなどを襲わないなら、何の為に搾取などをしているのか。それは当然の疑問だ。

 試したら出来た。だから色々と何が出来るのか研究している、という答えが今のところ無難ではないのかと思う。

 別段、最初から計画していたわけではないし、アウラ達の存在もたまたま引っかかってくれたからだ。

 わざと敵の罠にかかって様子見をしている、という事もありえるけれど。

 仮にそうだとしても、やはり身体の採取をここまで許している時点でわ(・)ざ(・)と(・)は疑わしい。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 身体に関して頓着しない分、プレイヤーに近いがアイテム以外は気にしない、というのは疑問だ。だからこそゲームキャラクターになりきった、というかそのものであるNPCや傭兵だとするのが妥当だ。

 何にしてもエロい事をすんなり受け入れるプレイヤーなど本来は居ないに等しい。

 なら実際にプレイヤーならどう対処するのか。

 装備品は外さないし、相手の言葉に従った振りはしても信用はほぼしない。例外があるとすれば弱みを握られたようなことでもない限りは、となる。

 無理強いは魔法の効果に良い影響は与えないので、の線は薄い。完全に精神支配でもしない限りは、となるかもしれない。

 仮に強引に支配下に置けばNPCの管理データに何らかの表示が出るはずだ。

 それを知るからこそ面倒な手法をナコトは取っている。

 

「……逆に襲撃される気はするけどね」

「あははは。……うん。確かにそれはありえるかも……」

 

 抑止力としての軍勢も必要だが、国などを作るほどの欲はない。

 せいぜい『宇宙ステーション』でも作って遥か宇宙への冒険の旅でも夢想する方が楽しいかもしれない。

 少なくとも他のプレイヤーが居る限り、仲違(なかたが)いからは逃れられない、と思うから。

 アウラに鍛冶師の調達が可能か聞いてみたが難しいと答えられた。

 次に連れてくる相手に頼むしかないかもしれない、と言われた。

 

「あたしにも出来ることと出来ない事があるからね」

 

 無尽蔵に人材を呼び込めば当然の如く疑われる。外に出れば会話していた相手が森に住む動物の類(たぐい)という認識へと置き換わっていく。

 ただの愚痴や独り言なので、荒(・)れ(・)果(・)て(・)た(・)洞(・)窟(・)内(・)では別段、不思議な事はない。時間の経過とともに気にならなくなっていく。これはそういうやり取りに近い。という進(・)行(・)にしているわけだ。

 言えない事を無理に聞き出しているわけではない。

 短期間で用件が済むのはナコトとしてもありがたい。予想では名のあるギルドなのかもしれないが目下の目的は身体のみ。

 会話を終えてから日が暮れるまでナコトは仮眠を取る。もちろん、事前に物資は移動済みだ。

 そして、新たな来客が訪れる。

 

「こんなところに秘密基地なんか作って……」

 

 と、聞き覚えのない女性の声。

 

「ちょっとした仮眠室。中は汚いけれど雰囲気出てるでしょ?」

「どう見ても朽ちた建物にしか見えないわよ。もう少しなんとかならなかったの?」

 

 文句を言いつつ部屋に案内されるのは腰から大きな黒い翼と頭の側頭部からは牛の角(つの)のようなものが目線の先に向かって生えている人物。

 金色の縦割れした瞳が光りのない空間を照らすように輝いていた。

 白いドレスを身につけているが悪魔的な尻尾は今のところ確認出来ない。

 漆黒の空間でも足を取られないところを見ると闇視(ダークヴィジョン)の魔法か特殊技術(スキル)などを使っているのかもしれない。

 あるいは常時発動型特殊技術(パッシブスキル)ということも考えられる。

 ユグドラシルでも男性に人気のモンスター『女淫魔(サキュバス)』だと思われる。

 アウラの案内で指(・)定(・)さ(・)れ(・)た(・)場(・)所(・)に腰を下ろす女淫魔(サキュバス)。

 魔法を使わずとも鏡の反射で見られるようにしている。こういうところは覗き魔と変わらない気がする。

 風営法が無いからこそ、こんな変態的な手法が取れるわけだが。逆に相手も出来るということは忘れてはいけない。

 

「……それにしても良い夜ね……」

 

 その言葉の後でアウラは黙って部屋から出て行った。

 深夜までまだ数時間ほどの余裕があるので、女淫魔(サキュバス)は軽く仮眠しようと思いベッドの様子を確かめる。

 結構部屋を汚してはいるがベッドは比較的、綺麗にしてある。乗せている大きな葉っぱを落とせば洗い立ての掛布団が姿を現す。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 暗闇にもかかわらず女淫魔(サキュバス)は明かりがついた部屋のように佇み、服を脱ぎだす。

 胸元を飾る蜘蛛の巣のような意匠の金色のアクセサリーを外し、純白のドレスに手を掛けていく。

 転移後の世界ではどれだけのモンスターが生息しているのかは分からない。

 中にはプレイヤーが連れて来たモンスターも混じっている筈だ。

 それらが一つの生物として振舞う姿はユグドラシルとは違った魅力を感じる。

 ゲーム時代は割りと簡素な雰囲気があったので。

 それにしても油断しているのか、ここまで魔法にかかるのは従順なプレイヤーなのか、それともNPCだからなのか。

 少なくともプレイヤーで簡単に陥落する者に覚えはない。ならば従順なNPCなどしか考えられない。

 転移後に魔法の効果が上がった、とか。

 疑問点はあるが、それらは自分の拠点でゆっくりと研究する事にする。

 全裸になった女淫魔(サキュバス)は掛布団を投げ捨てて、ベッドの上に寝転がった。

 後は数分待ってからナコトは姿を現す。もちろん、不可視化し、顔は仮面で隠している。

 豊満な胸が重力の影響で左右に零(こぼ)れ落ちそうになっているのをプルプルと揺れつつ懸命に耐えていた。

 腰の翼は仰向けになっても潰れる事無く左右に展開されている。普通ならうつ伏せにならないといずれ骨ごと変形しそうだが、そこはどうなっているのか疑問だ。

 ゲームのキャラクターだから肉体的な変化は現地の人間などとは違うのかもしれないけれど。

 顔はとても美しく、白人系で耳は人間と大差ない。頭の角(つの)はとても硬そうだ。

 腰まで長い黒髪は一つにまとめてシーツで包み、返り血などで汚れないようにしておく。

 身長は成人女性程と思われる。胸以外は細めだがしっかりと筋肉が付いている。

 股間部分は悪魔だからとて造形が変わっている事はなく、尻尾が無いのは少し残念だった。

 腰の翼を除けば人間の女性と大差のない身体はあまり弄(いじ)り甲斐が無い。ならば作業をさっさと行(おこな)った方が時間も無駄にならない。

 部屋に待機している不可視化した助手達を動員して始める事にする。

 回数制限のある特殊技術(スキル)の一部は一日経つと回復する。作業中に次の日になって回数がまた減ってしまうと不審がられるおそれがある。

 事前に特殊技術(スキル)などは切る様に頼んでいるけれど、念のために警戒しておく。

 角(つの)は流石に取れない。いや、取れないことはないけれど、頭蓋に響くことは避けた方がいいと判断する。他にも骨に当たるところはたくさんあるが。

 作業風景は正しく外科手術のようだ。

 防御力が高いせいで切り難かったが、今のところ問題は発生していない。

 麻酔無しでも平気なのはゲームキャラクターだからなのか、それとも万能な魔法のお陰なのか。

 作業中だが会話は出来る筈だと思い、気がかりを伝えておく。

 

「……分かったわ」

 

 夥(おびただ)しいクズデータがあれば削除するように、というものだ。もちろん、事細かに頼まないと危ないので正確に条件などを伝えていく。何も無ければ依頼を気の迷いとして忘れていくように、というのも忘れずに。

 データを管理する立場ならそれくらいは出来る筈だ。特に大物だというのであれば。あと、消し方を間違えると大惨事になるので慎重に言葉を選ぶ。

 相手方の組織を潰す気は無い。異世界に来てまで殺し合う気は無いので。

 今の質問に対して権限が無ければ『出来ない』という返答になる。そうでないなら出来る権限を持っている事になる。

 せっかくの異世界なのに息の詰まる逃亡劇は勘弁願いたいものだ。

 

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 次々と別室に運ばれていく肉塊達。

 とても一人の人間というかモンスターから採取したとは思えない量だ。

 魔法の特性からオリジナルから採取するのが大事で、複製からはあまり意味が無さそう、という考えで手間がかかっている。

 楽に出来る場合は失敗も起きやすい。だからこそ手間は惜しむべきではない、と思う。

 無限に増やせば熱力学とかに影響が出るかもしれないので、代わりのものをどんどん処分しなければならない。

 とはいえ、人間が増加する事にたいして制限が無いなら別段、気にする程の事はないとも思えてしまうが、魔法という不可思議な力で行(おこな)うのだから何が起きるか分からない。

 

「………」

 

 しかし、手足をもがれた状態で放置したら可哀相だよな、と思う反面、少し面白そうという悪戯心が湧いて来る。

 これが現実の人間ならグロいところなのに自分はよく平気で人体解剖みたいな事が出来るなと驚いている。

 切り方が綺麗だからなのかな、と思わないでもない。

 顔を火であぶってケロイド状にした光景ならば、さすがに吐き気を催(もよお)す自信がある。

 分担作業のおかげで作業効率はとても高く、予定時間内に規定数を満たす事が出来た。

 後は復活した女淫魔(サキュバス)の身体を丁寧に洗い、栄養補給も忘れずに行(おこな)った後、見送れば完了だ。

 後は彼女がアウラとしばし夜空を観賞し、頼んだことを実行に移せば自然と記憶から薄れていく。

 新たに連れて来られそうな人材は居ないようだが、今回はここまでにする。

 少し深入りしすぎた面もあるので。いずれ何らかの形で御礼をしなければならない事をメモに記しておく。

 全ての作業を終えた後、日が昇る少し前に外で警戒していたマーレは作った丘を片付け、アウラは近くの森にゴ(・)ミ(・)を捨てに行った。

 現場に異常事態は起こらず、アウラ達は満面の笑みで去っていく。

 周りは昨日と変わらず平和である事が確認出来たので。

 

 

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