二日目は施設の設備に時間を費やそうと考え、二人には自由時間を与えた。
その間、立ち入り禁止区域を設けて起く。そうしないと
今は戦闘に集中してもらいたかった。
ナコトは近くの都市で職人に声をかけ、日用品の買い出しを始める。それとイミーナの為に酒類も追加する。
集合時間まで時間が出来たので一旦施設に戻る。
だだっ広い『チャタル・ヒュユク』に娯楽施設は無く、過ごすには覚悟が居る。
閉鎖空間はナコトでも精神を病むレベルだ。ヘッケラン達も長期間過ごせば外に出たがる筈だ。
施設の外は鬱蒼とした雑木林に包まれており、外部からの発見を阻害している。
森の中を探索する種族でも来ない限り、一般人は基本的に来ない。その代わり山岳地帯から流れてくる自然豊かな天然水も豊富にある。
ヘッケラン達には外には凶悪な亜人達が潜伏している可能性がある事を伝えておく。それと荷物整理や部屋の間取りを考えていてもらうことにして、ナコトは他の部屋を見回る。
大事なところは隠しているけれど、無計画による失敗は他人に見られると恥ずかしいものだ。
それと捕らえた
動いているのが自分一人だけ、というのは健康的ではないな、と深くため息をつく。
その後、約束の時間になったので街に向かい、集まった職人数名を途中まで移動させ、後は眠ってもらって施設に強制的に転移させる。
買った品物もヘッケランに任せてみた。酒類は一気に飲まないように言いつけて。
顔見知りの職人たちによって住みよい小屋が作られていくが、大雑把な部分はやはり個人で使うには色々と難点があった。
三日目は職人たちの作業を眺め、暇になっているヘッケラン達を街に預けた方がいいのか迷う。今更逃げることは無いとしても。不意の襲撃で殺されてはたまらない。
約束の刻限まで眠ってもらうのも味気ない。けれども最終的にはそれが一番気が楽だ。
ならば自分からアルシェ達を迎えに行けばいいのか、というと職人の都合で結局は時間が無駄になる。
あれをすればこれが駄目に。これをすればあれが駄目に。
考えれば考えるほど良い答えにたどり着かない。
手際のいい職人は多ければ多いほど仕事がはかどる。その代わり、やる事が無いナコトは怠惰な生活に入っていた。一応、彼らの寝床と食事の用意に働いた。
良い案が思いつかないので酒の購入に終始する。元より収入のない身である。
働きに出た方が気分的にも良いのかもしれない。
そして、五日目に突入する。
大勢の職人たちのお陰で短期間で無数の小屋が完成し、給金を与えて速やかに帰ってもらった。のんびりと祝賀会などはしない。
退屈な日常を送らせてしまったヘッケラン達は朝昼晩を鍛練に費やし、健康的な食事と風呂、睡眠によって身体を鍛えていた。もちろん、退屈を感じないのは魔法のお陰だ。
うっかり外の見回りを依頼して進軍してきた亜人やスレイン法国の
ステータスの振り分けはしていないが自然と強くなった彼らは見た目には分からないが増強は成功している。
「……んー、立派な部屋が出来たな」
「中身はそれぞれ好きにしてください」
必要な物資は全てナコトが用意した。それらを各々自由に部屋に配置する。アルシェ達の分は最低限のものだけ運び込んでいる。
広すぎる空間より手に届く範囲が落ち着くとヘッケランのみならず、ナコトも思った。
チャタル・ヒュユクは倉庫の側面があり、どうしても巨大なものになってしまう。先の予定では充分な広さだと確信していた。しかし、使う側が少人数だと想像以上に広すぎて困った。
部屋の片づけが終わり、遅めの昼食を済ませて後は滞っていた増強の続きだ。
この方法は短期間と言えども早くて数日はどうしてもかかる。その主な原因はクリーチャーの用意に時間がかかること。
ナコトにしか出来ないので。
単純作業に苦痛を感じれば自ずと作業時間も遅くなる。それが怠惰な気持ちで鬱屈する原因となっていた。
気晴らしをしようにも娯楽に対して興味が無く、ここ最近は何をやっても飽きっぽくなる。
一人で広い世界に君臨するということは途方もない孤独感と戦うことを意味していたようだ。その事に色々と改善策を講じようとすることが今の数少ない楽しみなのかもしれない。
何にしても楽しみが無いよりはあった方がいい。
ヘッケラン達が身に着けている武具は長年愛用してきた為、動きやすいがいい加減に
戦闘形態を変更する予定が無いのであれば出来るだけ彼らの要望に叶い、強度のある良いものを揃える事を約束する。もちろん、四人分だ。
半分くらいは意図的である。しかし、そうではないことも楽しみである。
予定が崩れる事も人生の中では必要だと思っているから激高しない。ただ、少し苛つくことはある。嫌な事は嫌だと思う気持ちがあるから。
「あっ、言い忘れていたけれど……。肉体改造とか言ったかもしれないけれど、それは種族を変えたり、化け物にするってことじゃないから。鍛練による筋肉増強系だ」
「それはありがたい」
「……私は胸が大きくなるなら……」
イミーナは種族的にスタイルが変わりにくい。今のまま強くなっても巨乳にはならない。
しかし、ほっそりとした身体にもかかわらず結構な食べ物が入る事に驚いた。
それぞれ自分の部屋にこもり着替え始める。部屋数は今後も追加する予定で、現在は十個ほど。
彼らは二人部屋でも良かったような気がしたが仲間が来ると色々と言われるという事で個室となった。鍵については任意である。今のところお互いの部屋を行き来する事に支障はない。
彼らが着替えている間、ナコトは風呂場様子を見に行った。実質、彼の仕事は来客の世話だ。もし、これが世界を駆け巡る主人公のような存在ならば冒険者ギルドにて数々の依頼を受けて活躍しようと躍起になっているところ。あの黒い戦士モモンのように。
しかしながら、まっとうな道は面白くないと早々に退場したナコトは興味一辺倒だ。無理に目的をあげれば地球への帰還となる。その為には様子するものが多すぎる。
現在は趣味と実益を兼ねた実験の繰り返しだ。
先に着替え終わったヘッケランが部屋から出てきた。以前の装備と大差はなく、急な変更を良しとしなかった。けれども真新しい武具に嬉しそうな顔をしていた。
後は使い込んで身体に馴染ませるだけ。
「前に着ていた奴は……捨てるか……。念のために残しておくか」
後々返せと言われては困るので洗濯だけしておくことにした。
色々な動きを取り身体に馴染ませていく。そうしているうちにイミーナが出てきた。
こちらも軽装備主体で前のとそれほど変わっていない。しかし、彼女の姿を見たヘッケランは違和感を覚えた。
何かがおかしい。
大事なものが足りていない。それでいて新装備だからそう思うのか、と。
不意に受けるかもしれない前面の防御も厚くしていた。これは平坦な胸だからこそ違和感を覚えない。そこは
「なんか奇麗になったね」
ヘッケランの姿を見て微笑む。
未使用特有の小奇麗な佇まいだ。対するイミーナも同様だが。
「イミーナは……なんか足りてないというか……。そんな装備だったか?」
「前とそんなに変わらないと思うけれど……。なんか変? 一応、全部取り換えたんだけど……」
肉体的に変化したわけではないし、肌の色は今日も奇麗だと自信を持って言えるくらい顔色がいい。でも、何かがおかしい。
華奢な体型の為、細く長い手足が装備品に来るまれると
耳が短くなっているわけでもないし、全体的にもスタイルは良いと言える。
新しい装備を身に着けたイミーナ本人も薄っすらとは思っていた。何かを忘れていると。
けれども姿鏡を見ても理由が分からない。今回の装備はとにかく以前よりも柔軟で動きやすいということ。
強度も上がっている。おまけに武器は豊富だ。こちらはどれにするか決めかねている。
腰に短剣を差し、最低限の武装は整えた。
軽く一回転してみると以前よりも通気性が上がったように感じた。しかし、
丈の長いブーツと膝当てにも問題無いし、腕周りの防護も。
頭部以外は肌の露出を押さえていた前回よりは開放的かもしれない。あくまで害虫対策だが。対するヘッケランもそこは同じだ。
「なーに? 何か着るのを忘れているっていうの?」
「……うーん。いつもの奇麗なイミーナというのは間違いないんだが……。いや、より魅力的というか魅惑……蠱惑的か……。色っぽいって感じだ」
「なんか恥ずかしいわね。別に色はお互い地味目じゃない」
ド派手な色合いにはしていない。せいぜい白っぽいという事くらい。
内着が透けているわけでもない。まして胸は防具で完全に隠れている。
隠れていないのは下半身くらいだ。
大部分は装備で隠されているイミーナの姿だが、股間部分だけは露出していて髪の毛と同じ色の陰毛が見えている。もちろん、脚を開けば自動的に小陰唇も開く。背後からは尻が丸見えだ。肛門もしっかりと見える。けれども、それがどうしたのだ、とイミーナは言わんばかりの顔だ。
施設の主であるナコトを除けばヘッケランしか居ない。しかも、裸を見せあった仲だ。別段、おかしなことはない。
下半身の通気性が良くなったので気持ち的には悪くなかった。
脚を真上に上げると放屁しそうになるが。
腰を落とした移動方法も問題ない。そんな彼女が納得しているのであればヘッケランは何も言わずに見守る事にした。
それから風呂場から戻ってきたナコトが二人をクリーチャー溢れる部屋に連れていく。装備品は色々と帰る予定であることを伝える。
「ねえねえ。私の装備ってなんか変?」
「とても魅力的ですよ。お気に召さないのであれば変更すればいいわけですし」
「そうかい? 俺には戦闘には向かない気がして仕方が無いんだが……」
「実戦はまた別のものを用意します。今回はそれで……」
「へー。そいつは楽しみだ」
そんなことを話しながら向かったのは『
前回は倒しやすいモンスターだったが、今回は手強い物を配置。動かないところは一緒だが、大型種が居るため、倒しにくくなっている。
部屋の出入り口にタオルや水筒、武器の予備がたくさん置かれていた。他部屋も出入り口は小部屋のようになっていて色々な小物が置かれている。
部屋に入ったヘッケラン達はまずモンスターの多さに驚き、種類に驚き、恐怖を覚える。
だが、それらも次第に治まっていく。
危険な仕事を請け負ってきた自分達はいつも命の危機にさらされてきた。楽な仕事は報酬が安いからだ。
それでもモンスターを目にするのは怖い。
本来、仕事ではモンスターとの遭遇は極力避ける。必要に駆られない限り。
「今回は時間がかかりますがやる事は同じです。死ぬと倒れていきますから。それまで頑張ってください。扉には鍵はかけませんので、疲れたら戻って結構です」
「おう」
「……じゃあ、お仕事を始めましょうか」
二人が部屋の中に突入した後、扉を閉める。
ナコトは主に彼らの状況確認が仕事で直接手伝うことは無い。ただ、黙って画面を見つめるのが退屈だが仕方がない。
元の世界では適当に遊んだ後は止める事が出来た。しかし、ここはそう簡単にはいかない。
新しい目的や壮大な野望でも出来ない限りは退屈さと戦い続けなければならない。
ナコトが去って二時間が経過した。大型種は三体まで倒せたが時間がかかり過ぎた。
「一人で倒すのは酷だ。やっぱり魔法の補助があるのと無いのとでは……」
「私達は軽装備だから重い攻撃が出来ないよね。小型モンスターが関の山……。奥にいっぱいいるのは……亜人かしら?」
「ああ。この辺りに居るっていう
「……不思議ねー。それも魔法なのかしら? 幻影系ってわけでもなさそうだけど……」
不可解な現象に驚きつつそれぞれ目の前にいるモンスターを倒していく。
無駄に打撃や斬撃を与えるのではなく、首を断つような労力の少ない方法で倒す様になってきた。それは単に疲れると理解したからだ。
お陰で戦うたびに身体から無駄な力が抜けていく。
しかし、戦いながらでも疑問に思うことはある。この施設の主の目的だ。
単なる増強だけなのか、と。軍備を増強しているようには感じないが、モンスターを使役する存在だ。あまり信用しない方がいいのでは、と。
もしそうならもっと多くの
「……前より強くなっているのかな、俺達……」
「体力はついているわよ。健康的な生活のお陰かしら? ああっ、おしっこしたくなってきちゃった」
「随分と長く仕事しているからな。俺もトイレが近くなってきた」
食べて飲んだら出るものだ。これは今までの仕事でも変わらない。
建物に侵入したり、森の中に潜伏する場合は出来る限り事前に済ませる。季節柄どうしようも無い時はその場で垂れ流しだ。
贅沢は言っていられない。それはアルシェも同様に。
彼女は貴族の人間だが、汚い仕事を諦めずに続けてきた。家族の為、ではない。妹達の為に金を稼ぐ。
そして、もうすぐ自分達は彼女を出迎えに行かなければならない。
ヘッケランは大型種。恐竜に似たモンスターの討伐だ。
対するイミーナは亜人種を倒していく。先の
部屋が広いからこそ大群が映える。おそらく、千体を越えていたとしても驚かない。
初日に人間が居たが今回はほぼ見当たらない。
とにかく倒しているのだが、これで増強がはかどっているのかは実感が湧かない。
「……あー、もう駄目。……ほんと地下施設で良かったわよ」
そう言いながら手近な場所を探す。
壁まで我慢していられる自信は無く、むせ返る死臭と股間を撫でるような冷たい空気が尿意を強くする。
陽の光りで温められた大地は無く、地下特有の肌寒さがあった。
仕方なくイミーナは山になった死体に放尿する事にした。どの道、トイレまで間に合いそうにない。
一息付ける意味も込めて。
場所決めた後、真っすぐ背筋を伸ばしたイミーナは足を少し広げ気味にし、指で小陰唇を広げる。
すらりと長い脚を持つ麗人の
「……もう、限界……、んっ……」
やはり我慢は出来そうになかった。すぐにおしっこが出てしまった。
女性器は男性と同じく前方にあるわけではない。ほぼ真下だ。前屈みになるとよりはっきり見える位置になる。
この場合、出てくる尿は真下に落ちそうだが、僅かに前方に傾きがあるので放物線を描くことは可能である。人によっては分厚い小陰唇が邪魔をして辺りに飛び散るようなものになったりする。
イミーナの場合は奇麗な形の女性器を維持しているので汚い放尿にはならない。
冷えた大気に出る小便は不思議と温かさを伝えてきた。
頬を紅潮させ、満足気味に出すのだが嫌に長い。
ここに来る前、夜通し酒を飲んだのがいけなかったのか、と。
下半身用の内着と下着を付けてこなかったお陰で脱ぐ手間が省けて助かった。
どうして付けなかったのか、付ける意味を失っていたからだ。
こういう格好でも別にいいと思ってしまった。もちろん、大勢の前では下着は身に着ける意識はある。
「……はぁ~。気持ちいい……。なにこの背徳感……。あぁ……」
まだ出る放尿に気分が良くなり、頬が更に上気し、口元がだらしなく歪む。
気温が低めだからか、尿道を通る温かなおしっこがまた気持ちがいい。いつまでも出していたい気分にさせる。しかし、さすがに無限に出せない事は理解している。
最後は少し名残惜しかったがきちんと全部出し切った。
「……ふぅ。あまり長居するとお腹も冷えて大きい方が出るかも」
ため息をつきつつ尿を出し終わったにもかかわらす、まだ小陰唇を開いたまま。いや、片手の指で開いたり閉じたりして遊びだした。
指に当たる肉壁が軟らかかったから。
もしここが鍛練の場所でなければ絶対にしない事だ。なにより殺気がここには無い。
同じく別の場所で小便を済ませたヘッケランはイミーナを探した。
動いているのが自分達だけなので探すのは難しくない。それに発色のいい紫の髪の毛は充分に目印になる。
視線を彷徨わせていると亜人達の死体の山の近くに居るのを発見する。
仁王立ちしたまま動かないイミーナ。まだおしっこを出しているのか、と疑問に思う。
「まだ終わらないのか?」
声をかけると一瞬、ビクッと身体を動かした。
女性の下事情には詳しくないが、人に見られて困るのはお互い様だ。いや、そうじゃない、と。
何故、立ったまま佇んでいるのか。
手の位置から立ち小便していたようだが、そんなことをする娘だったか、と疑問が湧く。
確かに尻が丸出しだから小便しやすそうな装備なのは理解している。だが、それがそもそもおかしい。けれども、立ち姿が見事であり奇麗で疑問はすぐにどうでもよくなってきた。
スラリとした細くて長い脚は真っすぐに伸ばされ、背筋も奇麗に伸びている。空いた方の細身の腕は腰をしっかりと掴んでいた。横に長く伸びた耳が付いた頭は真っすぐ前方を向いていた。そして、とても美しい、と。
自然と股間が反応してしまう。先ほどおしっこを済ませたばかりなのに。
「終わったけど……、終わりたくないっていうか……。へへっ……。もっと気持ちよくなりたいなと思って……。あんたは私に構わず続けなさいよ」
「そうするけど。……なにをする気だ? 死体で遊ぶなよ」
「死体と
前を見たまま答えるイミーナに呆れつつ大型モンスターの討伐を再開する。しかし、股間が気になって集中できない。
討伐数に条件は無く、疲れたらやめてもいいと言われている。
二体目をなんとか仕留めたヘッケランは一向に動かないイミーナがやはり気になった。
今度は声をかけずに姿が見える位置に移動する。
丁度真後ろになる場所を確保し、眺める。もちろん、近場に居たモンスターは倒してどかした。
「……後ろだと手の動きが見えないか……」
そう判断し、移動を再開。その間も彼女は微動だにしない。まさか、立ったまま寝ているのでは、と危惧した。
イミーナはある程度のモンスターを倒していたので見晴らしは良かった。そして、死体で身を隠すことも容易だ。
足音を立てずに前の方が見える位置に移動したヘッケランは驚いた。
にやけ面のイミーナが股間をいじって遊んでいる。
普段はベッドの中で性行為こそしたことはあるが一人で快感を得ているところは見たことが無い。
おそらく自慰行為だと思うが、それにしては不自然な動きだ。それと奇麗な立ち姿による痴態を見てしまったので股間がすぐに反応した。
モンスターの死体が散らばる凄惨な現場でイミーナが自慰をしている。それはとても凄い事だ。
良い悪い関係なく、沈着冷静で酒好きでお人好しの
顔だけ見れば邪悪な儀式の最中にも思える。しかし、返り血で染まっているわけではない。そこは安心した。
「……あ、また……」
軽く驚きを見せた後、ヘッケランの目の前で放尿が始まった。
現場が冷えているので出るのは仕方が無い。自分もさっき出したばかりなのに少し尿意を感じた。
おしっこが終わると軽く息をつき、また股間を
前方を見ているようで実は見ていない。おそらく手の動きが関係している。
手のひらの部分が軽く動き始めると顔がにやける。おそらく、その動きが気持ちいい為だ。そして、指は遠目では分かりにくいが開いたり閉じたりしている。
まるで冷たい風を取り込んでいるように。
上気した身体というか性器には気持ちの良い温度なのかもしれない。
それにしてはこんな姿のイミーナは初めて見る。
性器をいじりながら快感に喜ぶ姿は蠱惑的な魅力があった。
冷たい微風を感じ、全身に悪寒のような震えが伝わる。けれども嫌な感じてはない。
新たな尿意が蘇り、すぐに湯気が湧きたつ尿が出た。それがまた気持ちいい。
ただ、すぐに治まってしまったので実に物足りない。
最初の段階でかなり出してしまったから、そんなに期待はしていなかった。
「……でも、この盛り上がりを押しながらおしっこをするのは気持ちがいいわ。まあ、今日の分は……終わりかしら。後でたくさんお酒を飲んでみるのも……」
というより自分達はモンスターを倒すために来ている。いつまでもこんなところで立ち小便をしているわけにはいかない。
そう思うのだが快感が今は
間断なく気持ちよくなりたい。場の雰囲気も相まって性的快楽が急上昇していた。
モンスターを殺すことに関しては特に何も感じなかった。そこまでになればヘッケランが悲しい顔をしそうだと思い、そこにだけは至ってはいけないと強く感じた。
それにしても股間の肉壁は軟らかい。ついついいまでも触っていたくなる。こんなにやら若い感触だったかな、と疑問も感じた。
武具と同じで使い込まれて柔軟になったのかもしれない、と。
「あまり柔らかすぎると入れても感じなくなるのは嫌よね。狭すぎると相手が痛がるだろうし、ねっ?」
小陰唇を開いて友達に語り掛けるように声をかけた。
膣口が丁度唇のようなものなので返事をしそうに思えてしまう。
中指の代わりに薬指で肉壁を支え、恥丘を押したりしながら陰核を刺激する。すると心臓が強く反応し、身体全体が熱くなっていくのを感じた。
姿勢を正しているので通常よりも気持ちよさが伝わってきた。
待っすく伸ばされた脚に快感による震えが来ているが必死に耐えた。しかしすぐに指が釣りそうになったので小陰唇を広げるのは止めた。
あまり器用に指を使う事は出来ないようだ。
「……ふん、ふふ……」
人差し指と中指で交互に陰核を引っ掻くように刺激していく。するとすぐに顔に痙攣が伝わってきた。
絶頂が近い証拠だ。しかし、体勢は維持した。
辛いけれど我慢する事がより多くの快楽を得られそうな気がした。そして、放尿に似た潮吹きが始まる。だが、指というか手の動きは止めない。
最初の潮吹きが終わる頃、次の快感が来た。二回目はすぐに始まり、すぐに終わる。
立ったまま自慰行為しただけなのにモンスター退治よりも激しく体力を失った気になった。正直、脚が震えて立っていられない。それと体温が急激に低下したように寒さを強く感じてきた。
「……でも、最初にしてはまずまず、だったわ……」
深く息をついて、タオルで股座を拭く。
濡れた股間に冷たい空気が撫でていく。すると背筋に新たな快感が走った。
もう一度できそうな気がしたが、次は完全に血まみれの床に尻もちをしそうだったので諦めた。
ただの自慰行為の筈なのに歩行がいやに難しい。
ぎこちない歩き方がかっこ悪く、人に見られるのが恥ずかしい。
それも数分ほど頑張れった後はなんとか震えは収まった。しかし、たった数歩の移動なのに息切れするくらい疲れた。それと眠くなってきた。
「はぁ、はぁ……。どしてこんなに……疲れるのかしら……」
心臓が先ほどから触らなくても激しく鼓動しているのが分かる。
何度か深呼吸すると少しずつ楽になっていくがモンスター退治が出来るかは分からない。
武器を持って構えるも手に力が思ったほど入らない。
「もう疲れたのか?」
聞きなれた男性の声に身体が過敏に反応した。思わず、僅かに尿が吹き出た。
声の主はヘッケランだが、どうしてか恥ずかしい気持ちになった。別に
男女間の付き合いもある相手だ。さっき自慰行為をした事くらい気になる筈が無い。
「……え、ええ。なんか急にどっと疲れて……」
タオルで股間を拭きつつ笑顔を見せるイミーナ。そこには先ほど快楽に溺れた女の顔は無かった。
対するヘッケランは全て見ていたので股間が服からはち切れそうなほど盛り上がっていた。当然、歩き方もぎこちない。
「……俺の勘違いかもしれないんだが……。下着を履き忘れていないか?」
「えっ? なに言ってんのよ。
「そうか。上は着ているのか……。そうじゃなくて、下はどうした? 透明な素材なのか?」
「そんなわけないでしょ」
と、苦笑しながらイミーナは言った。
ヘッケランは何を言っているのかしら、と言わんばかりだ。どう見ても着忘れている部分などないのに。
「ほら、下着を履いているように見える? 最初から着てないのよ、邪魔になるし……」
「……そうか。自覚はあるのか。……てっきり……魔法か何かで洗脳されているのかと思った」
良かった良かった、と安心するヘッケラン。
愛する彼女は正常だ。しかし、どうして下の下着を着ていないのか。邪魔なのは何に対してだ、と新たな疑問が湧く。
この疑問もおかしいのだが、どこがどうおかしいのか理解できない。
「じゃあ、ちゃんと確認してよ。ほら、しっかり丸出しになっているでしょう? 奥まで見える?」
中腰になって膣口にそれぞれ指を二本入れて出来るだけ限界まで広げ、ヘッケランに中の様子まで良く見えるようにした。
その光景で彼の股間が更に硬くなる。そして、視線は膣口に釘付けとなる。
「あ、ああ。奇麗な桃色の中身が見えたよ」
「そ? ここはヘッケランの為に入念に奇麗にしているから。いつでも使ってくれていいのよ」
指を引き抜くと穴は一気に小さくなる。その様子もまた性的興奮を呼び起こす。
いや、その前にイミーナの行動と発言の一つ一つが驚きだった。
周りに人が居たから遠慮していたのか、と気を使わせていたことを恥じた。いや、そうじゃない。どうしてわざわざ彼女は性器を広げるような真似をしたのか。
イミーナ当人は至って普通である。
聞かれた質問に答えただけ。そういう意識しかない。
下着を履かなかったのは急な尿意の時にいちいち脱ぐのが面倒くさいと思ったから。それと急な性的快楽が来た時、自慰やヘッケランとの性行為を容易にするためだ。
それ以外に異常な事などあったのかと首を傾げる
さすがに大きい排泄行為は見せたくないし、恥ずかしい。匂いもきつい。せいぜい肛門だけで我慢してほしい、と。
「……イミーナ。お前、人前でそういう事をする女だったか?」
「あんたの前だからに決まっているでしょう。いくら私でも天下の往来で裸にはならないわよ」
嬉しいやら気恥ずかしいやら。しかし、それでもやはりおかしい。とにかく、何もかもがおかしい。
股間以外は正常なのに、と。
股間と尻が丸出しの女をこんな場所に連れてきて何も言わなかった自分も悪い。いや、いや、と何度も思考が混乱する。
「恥ずかしいこと言ってたら股間がむず痒くなってきたじゃない」
俺が言わせているのか、と抗議したいところだが答えているイミーナがおかしい筈だ。次の質問をしようと言葉を探していると彼女は目の前で自慰を始めた。
驚いている間に瞬く間に絶頂し、短く唸った後で地面に向かって潮吹きする。その後は満足したのか、股座をタオルで拭く。
「……ふぅ」
「……イミーナ」
「なに?」
「そんなに欲求不満だったのか?」
「そういうわけじゃないけれど……。満足してもすぐにむず痒くなるの。女だからなのかしら? 疲労はあるわけだから延々とは……」
女の身体については詳しくない。
もし、気持ちよくなりたいと思ったら自分はそれを止めるべきか、それとも男として満足させるべきか。
大勢の観衆の中で痴態を晒すわけにはいかない。それにアルシェ達に見せるのには抵抗がある。本人が平気だとしても。
であればどうする。やめさせるべきか。自分の股間が硬く屹立しているのに。
性欲は止められない。だから発散している彼女は正しい。正しい事をしている筈だ。
それに見ているのは恋人である自分だけだ。と、ヘッケランは頭の中で思考を巡らせる。
散々考えたところで難しい事は分からない。ただ、目の前の女を見て悲しいと思うのか。
だが、その考えも間違っている気がする。とにかく、イミーナの様子がおかしい。
これほど性的な態度を見せる女ではなかった筈だ。
腕組んで周りの様子を窺う凛々しい顔つきのイミーナが下半身丸出しなんてありえない。
片足をモンスターの死体に乗せるだけで大と小の陰唇が少し開く。それと何度か自慰行為で刺激を与えたせいか陰核の突起が目立つ。
陰核は男性の陰茎に似た性質があり、刺激を加えると勃起する。小さくて目立たないけれど。
しばらく動き回っていたイミーナは足の震えと疲労を理由に戦闘を中止する事にした。
「こんなところで何度も自慰をすれば……、疲れるよな」
それでどうして足腰が震えるのかはヘッケランにも分からない。
昔からそういうものだと思っていた。正確な事は分からないし、勉強もしてこなかった。というより詳しい人間に覚えが無い。
ケガをすれば各町にある神殿に行けばいい。そこで高い位階魔法による治癒を施される。
「……それにしても」
下半身を露出しているのに平然と歩きまわるイミーナの姿が実に魅力的に見えた。
腰に手を当てる仕草。顔を凛々しく引き締めつつ細く長い脚を自在に動かす。
姿勢が奇麗なので絵画に残しておきたい気持ちにかられる。
「俺の彼女はどうしてここまで
「淫らは余計よ。こういう身体にしたのはあんたじゃない」
「……そうでした。でも、ここまで酷くはなかった筈だ」
特に下半身を丸出しにするほどとは思ってもみない。
急に性欲に目覚めてしまったのか、と危惧する。
「酷く……。そうねー、なんか……色々と吹っ切れてしまったからかしら? 例えば……」
口には出せないが自分のうんちを食べたり、他人の精液を飲んで嬉しがったり。
おしっこも頑張って飲んだっけ、と思い出せば顔に火が付くほど赤くなる。
横に長く伸びた
「……ん。それとずっと陰核が疼くのよ」
そう言いながらヘッケランが見ている前で赤く膨れている小さな豆のような陰核を人差し指でこねくり回す。
ふとした拍子に擦れると快感が呼び起こされる。それくらい敏感になっていた。現に今も回すたびに身体が痺れるような感覚が
気持ちよくてやめられず、どんどん回す速度が上がり、そして、小さな呻きと共に潮吹きが始まる。それが終わると気持ちはいったん収まる。だが、程なく再燃してしまう。
今は丁度クセになっている時期だと思っている。
指に透明な液体がついて、またやったとがっかりしながらタオルで股を拭く。
「ほらね」
「……俺に出来る事はあるのか? 多分、激しい性行為しかなさそうだが……」
「分かっているなら言わなきゃいいのに」
手を口元に当てて微笑むイミーナ。
何度も痴態を繰り返したのに全く怯まない。それはヘッケランの前だから平静を装っているのか。
彼女の性欲を押さえるには気が済むまで性行為するしかない。けれどもヘッケラン側は一度に出来る回数というか、力が限られている。無理を通せば自分の股間が駄目になる、ような気がする。
何事も限度があると思っている。
それにモンスターに囲まれた状況でやる事ではない。ここは自分達の増強を目的としている場だ。
まずは出来る限り立っているモンスターを倒していく。
ここに居る殆どのモンスターは死なない限り立ち上がる。完全な張りぼてではない。それと頭部のあるもんはほぼ全てヘッケラン達を見据えて鼻息を荒くしていた。
そんな中でイミーナが自分の欲望を優先するのはある意味、驚きと戸惑いがあった。
状況が違えば傑物だと言えるけれど。実際はそんな高尚なものではない。
「今日はもう疲れたから、一旦一休みして……、それから再開しようかしらね」
絶頂する度に足腰が震えていては戦うどころではない。しかし、こういう命を懸けるような場所は不思議と気持ちが高揚する。
死ぬ前ならなんだって出来そう、と。
もちろん、イミーナとて何となく分かっている。この痴態は一過性でいつかは解消させなければ仲間が危機にさらされる。尚且つ、確かに下半身を露出したまま戦いに出るのは恥ずかしい。
しかし、下着を身に着けると勃起した陰核が擦れて気持ちよくなってしまう。なら、外気に晒しておく方が都合がいいと判断した。どうせ、見られるならヘッケランがいい。
アルシェ達が居たらたぶん戦いは辞退する。冷水か何かで冷やそうとする。
しかし、ここまで性的快楽に溺れるとは予想していなかった。おそらく施設の主であるナコトの仕業ではないかと。
未知の魔法ならば自分達には抗えない。
とはいえ、それらは推測に過ぎないけれど。
そうじゃない。
つい先ごろまで忘れていたことを今は鮮明に思い出せる。どうして急に記憶が戻った、とイミーナは
うんちを食べたことは余計だが、そんな事をしたと改めて自覚すると口の中に嫌な感触が蘇る。
そういえば下着を履かない事に今まで疑問を抱かなかった。ヘッケランの指摘は正しい。
何かがおかしいのだが説明できない。
今日はモンスターをたくさん倒すためにここに来ている。それなのに自分は快楽に溺れている。記憶の混濁があるようには思えない。
やはりナコトの魔法によるものか、と。
では、
丸出しは今もだから幻ではない。うんちの方か。それも真実だと思う。
間の出来事が抜け落ちている事か。
「……ね、ねえ、私っていつからこんな格好だった?」
「その装備は今日が初めてだ。その前は……いつもの通りだったぞ。どうした?
「……まあ、ね……。えーと、私の恋人はあんたで間違いないのよね?」
改めて言われると恥ずかしい、とヘッケランは頬を紅潮させる。そして、一言そうだと伝える。
これが嘘だと今までの記憶が全て偽物になってしまう。それはとても恐ろしく感じる。
少なくとも敵同士でないだけマシだ。
記憶を消された、というよりは目が覚めたと言った方が正確かもしれない。イミーナは今更隠しても遅い下半身については放置した。ヘッケランが側に居ればそれでいい、と。
それにもまして性欲狂いはとてつもなく恥ずかしい。対するヘッケランの股間が浮き上がっているのに気が付いた。
それは自分の股間を見ての結果のようだからどうしようもないけれど。
仮に目が覚めたとしても今まで自然にふるまっていたようだから、これはこれで自分の姿なのかもしれない。
露出狂だとは思っていなかったが、随分と大胆な性格なのだなと他人事のような気持ちが湧く。
ただ、確実な事が一つあった。
もう手遅れである。
人前で性行為するわ。他人の精液を飲むわ。
こんなところで何度も自慰をして潮吹きして足腰がガタガタになっているわ。
そして今、それらを改めて自覚した。冷静だった自分が。
「真実に到達したイミーナさんは施設の主に文句でも言いに行くか?」
「……正直なところ。文句を言うべきなのでしょうけれど……。……気持ちよかったのは事実だし、あんたに見られる分には平気だし、男性経験のない
ヘッケラン側は有罪の方がいい気がした。愛する女を淫らにしやがって、と。
股間を硬くしている自分が言えた義理かは考えないし、考えたくなかった。
「……でも、さっき淫らって言ってたわよね? そんなに酷かった?」
「んっ? 酷くは無い。言葉の
誉め言葉と恥ずかしい真実を言われて顔が今度こそ爆発したかの如く。
顔が真っ赤に染まった彼女は目をグルグルを回し、言い訳を探そうにも混乱の境地で到底無理。
手持ち無沙汰も相まって自然と両手は股間へ。
両足で挟む形で縮こまる。
「淫らかは置いといて……。性欲に溺れていようが俺も男だ。お前は女で嫌らしいことが大好きだ。それは恥じなくていい。恥じていいのは他人の目がある時だけだ」
「……バカ……」
股間が大きい状態で腰に手を当て、仁王立ちで大笑いするヘッケラン。
何らかの魔法の影響下であることは何となく理解した。通常ではありえない姿に変わり果てているようだが、仲間意識は持っている。それが確認できただけで安心した。
ナコトは言葉によって相手を自在に手玉に取る魔法を扱える。そう思った。しかし、そんなことが果たして可能なのか。
それと攻撃を受ければ解呪されることもバハルス帝国に住んでいた時に学んでいた。
「……金は本物だし、半分逃げたような事も事実だし……。さて、どうする。イミーナさん?」
「急によそよそしくしないで。それと今は恥ずかしさでまともにあんたの顔が見られないから」
物凄い早口でまくし立てるイミーナ。
未だ目は回っていた。
言葉はちゃんと聞いていたようで冷静な部分はあると確信した。それゆえに余計に羞恥心から脱せられないようだが。
それと場所を変えたくても股間が未だにいきり立っているので動くのが困難なのとイミーナを担いでの移動も同様に難しい。それに彼女は触るだけで破裂しそうなほど顔が赤い。
しばらく冷静さが戻るまで大人しくしているしかなさそうだと判断する。
顔を下に向ければ紫色の陰毛が見える。
普段ならそれだけだが、今は赤みが差した陰核が大きく突き出しているのが良く見えた。
それと膣から糸を引く粘液が垂れている。これは潮吹き時に出る物とは違う。
それを確認した上でヘッケランに顔を向ける。しかし、どうしても彼の股間にすぐ視点が移動する。すると自分の股間が疼き始め、腰を少し屈めたくなる。
赤い顔で目を回しながら口をきつく結ぶイミーナ。
あまりの興奮に鼻血が垂れる。
「……ふー」
「鼻血、出て来たぞ」
そう声をかけるも泣きそうな顔のまま黙っている。何か言いたい気持ちがあるのかもしれないが恥ずかしさで言葉が出ない。そんな気がした。
それにしても男の真ん前で堂々と女性器を丸出しにする度胸は素直に凄いと思った。しかも粘液が垂れている。
腰に手を当てて身体を支えるようにしている。
佇まいは立派だ。下半身以外は。
よく見ると、というか見ていいのか迷うところだが、ヘッケランに身体を向けているので見てもいいという解釈に受け取る。
ならば男として恋人の挑戦を受けなければならない。
似たように仁王立ちし、しっかりと相手を見据える。その場に襲ってくるモンスターはおそらく居ない。もう少し早く分かっていれば邪魔なモンスターは追い払っているところだが、後の祭りである。
ヘッケランは彼女の下半身に顔を向ける。いくら勃起しているとはいえ陰核の大きさは豆程度に小さいまま。男性器には到底及ばない。けれども、少し離れている距離と陰毛があるとはいえはっきりと見える。
腰が僅かに前後に痙攣するように動いている。疼いているので擦りたくて
いや、陰核を擦るだけでは足りない。だから、腰が動いている。
前後に動くような快感が欲しい、と。
ここがもし過酷な森林地帯で凶暴なモンスターに取り囲まれた場所であれば彼女は果たして同じことをするのか。
今までの経験ではありえない、と答える。
「小刻みに腰を動かして……。そんなに我慢できないのか?」
「………」
イミーナは何も答えず、黙って立ち尽くす。
何かを察しろ、とでも思っているのかもしれない。しかし、言葉にしてくれないと分からない事がある。
その言葉がとても恥ずかしいから言えない、ということも。
それから少しだけ放尿を始めるイミーナ。
「……あっ、はんっ」
放尿が終わった後なのにまた放尿が始まった。今度はチョロチョロとしたものではなく、ブシャっと勢いのついたものだ。
腰が思い切り痙攣し、腰砕けのような格好になりそうになったが懸命に耐えた。
少しでも陰核が刺激されればものの数秒で快感が
「……聞きにくい事を言うから、頷きだけしてくれ」
「………」
「一回だけでいいか?」
この言葉にイミーナは泣き顔のまま軽く頷いた。
顔を赤くして口元が緩み、性欲に溺れる淫らな女の顔。だが、それを悪いとは思わない。
男を欲する女の顔だ。それのどこが悪い。しかも俺の女だ、とヘッケランは強く思う。しかし、現場はモンスター蔓延る危険地帯だ。
取り囲まれているのに性行為をしようとするのは英雄でも出来そうにない。だが、イミーナは構わないと答えた。
もし、襲ってくるモンスターが居た場合は、その時は二人で死ぬのも悪くない。仮に命を落とすようなことになったとしても施設の主が何とかするはずだ。そうでなかったとしてもイミーナと一緒なら文句はない。
ヘッケランは苦笑した。
いいように遊ばれている。それに抗えない自分達がいかに滑稽である事か、と。
「……だが」
相手がそこらのモンスターではなく、イミーナで良かった。
場合によれば戦闘ではなく性のはけ口して化け物との交合をさせられていたかもしれない。
今のところ自分の股間を勃起させられるのは目の前のイミーナだけのようだ。
イミーナに後ろを向いて屈めと命令する。
彼女は黙って言うとおりにする。ただ、上半身が浮く形になるので手を付ける場所を探す。その間、ヘッケランはズボンなどを脱いでいく。
比較的奇麗な床に武器も一緒に置く頃には彼女の方も用意が整ったようだ。
肉が少なめの尻は色白で奇麗だった。決して風呂に入らず過ごしてきたような汚さは無い。
屈んだことで肛門が上になり、次に穴が開きかけた膣口が見えた。
その下は大陰唇の盛り上がりだ。こちらは幼子の睾丸に似て、尻と太腿に挟まれた部分が玉の様な丸みを帯びていた。
真っすぐに伸ばされた足を少し開いた事で小陰唇が開き、桃色の割れ目がヘッケランを待っている。
真下に近い位置にある女性器は屈むことによって横からの挿入に適した位置へと変わる。
これが男性と同じ位置であったら立ったままの結合は難しい。
「………」
先程から屹立したままの男性器なので挿れた直後に射精しそうで怖い。長く快感を楽しむには男性側が我慢するしかないのだが、耐えられるかは不明。
事前に射精しておけば少なくとも女性側は助かる。けれど、それはそれで勿体ない気分になる。
下着を脱ぎ終わり、準備は済んだ。後は男を見せるだけだ。
「待たせたな」
そう言いながら自身の太く硬くなった男根の先端を開きかけている小陰唇に当て、軽く上下させて肉壁を撫でる。
肉と肉が触れ合った時、屈んでいたイミーナは背中に力を入れたようで、少しのけ反るような格好になる。
「……はぁ~ん」
防具の上からだが腰の僅かなくびれ。背筋の形の美しさを改めて感じる。
そして、細い
即座に入れず、しばらく触れ合いだけに留める。亀頭に受ける感触は悪くなかった。
それから膣口を感触で探り当ててゆっくりと押し込んでいく。すると肉壁が左右に広がるような感じで男根が入っていく。
亀頭が中ほどまで入った後は腰だけで充分になる。
下を向けば肛門が微妙に動いているのが分かった。
普段はあまり見ない部分だが、尻に力が入ると動くようだ。その尻を両手でしっかりと掴み、男根を奥まで突き入れた。
顔は見えないが遠慮のない嬌声が出たので相当気持ちが良いのが伝わってくる。顔はおそらく真っ赤だ。
「……はぁ、悪いんだけど……。出そうになったら教えて」
「分かった。じゃあ……始めるか」
最初はゆっくりと抜けきらないように腰を前後に動かす。往復する度にイミーナは野獣の遠吠えの様な体勢で喘ぐ。
ふざけているわけではなく、他にはけ口が見つからないような状態だ。
自分の感じるままを表現している。
長丁場を意識してゆっくりとした動作に努めていると男根を締めようとする力を感じた。
少しでも快感を味わおうと必死になっている。だが、そうすると楽しみが短くなってしまう。
彼女の喘ぎ声を聞いている内にうっかり膣から男根が抜けた。その拍子に床に向かって潮吹きする。
痙攣する足腰に構わず、ヘッケランは大急ぎで挿れ直す。
腰を動かしつつ尻を掴む手には未だ痙攣する動きが伝わっている。
女性の身体の仕組みは理解していないが、大丈夫なのか心配になってきた。
しばらく単調に続けていたものの嬌声に変化はない。危惧していると男根から力が抜けてしまうので勢いを強くしたりと忙しくなる。
気が緩むと膣から抜け、そのたびに絶頂のような現象が起きる。
「……も、もう……。ちゃんとやってよね」
「すまん」
薄く笑う彼女にとっては大きな問題ではないようだ。だが、足腰は既に限界まで震えていて、今にも膝が折れ曲がりそうだ。
自分が射精する時、腰砕けにはならないが大抵は倦怠感が襲う。しかし、イミーナは
一つ息をついて腰の動きを速める。もうかれこれ二〇分は経過したと思う。
一時間近くする場合は大抵ベッドの中だ。その方が姿勢的に楽だし、体勢を維持するのに余計な体力を使わなくていい。
こういう野外で、しかもお互い立ったままだと無駄に疲れて早く終わりたくなる。もちろん、気分的にはいつまでも続けたいが体力は無限ではないので。
程よい緊張と疲労感が射精を促すようだ。
速度を速めると喘ぎ声が継続的に聞こえてくる。
しかし、戦闘以上に疲れてくる行為だなと改めて思う。これはこれで増強の一助になっていたりするのか、と。
何にしても命の危険が無いだけありがたい。
更に勢いを付けたり、突くタイミングを伸ばしたりしながらイミーナが満足する事を願う。
それから少し経つ頃に快感が襲い、射精したくなってきた。
「……そろそろ、かな」
「じゃ、じゃあ……一旦止めて」
急な中止に驚きつつ言われるまま従う。
腰の動きをゆっくりと緩めるとイミーナは自分から男根を引き抜きにかかった。抜ききると軽い絶頂で潮吹きが始まる。本当に何度出すのか呆れるくらい驚いた。
疲れているのはヘッケランだけではなく彼女もだが、相当息切れ気味で立っているのもやっとの状態だ。
顔は鼻血と涙と鼻水で酷い有様となっていた。物凄い興奮状態で一目見て危険だとも思った。
よろよろと歩きながらヘッケランの腰に掴まり、何度も荒い呼吸を整えようとする。
「……へっ、へへ……」
「こんなになるまで……。大丈夫か?」
優しく声をかけると彼女は頷いた。
いまさら何を言っても無駄なのは理解しているが、性欲に負け過ぎだ、と。
本人は抗えないようだが、早く終わって深く眠れば少しはマシになるかもしれない。そうなってもらわないと心配で仕方がない。
性行為を中断し、何をするつもりなのと足腰が震える彼女を見やればまだ屹立する男根に目が向いていた。
碧い瞳に映すには醜いもののように思われるが、にやけ面の彼女は実に楽しそうであり、嬉しそうでもある。
「……ん」
一つ唸って舌なめずりするイミーナ。その瞬間に何をしよう企んでいるのか理解した。しかし、それを咎める間もなく次の行動に移る。
屹立する男根の亀頭の下側。そこに舌を這わせた。
舌の上に乗せられる男根。その様子にギョッと驚くも彼女の意思なのだから止めるわけにはいかない。そう思った。
先程まで自身の膣に入っていたものだ。内部の粘液にみまれて怪しく濡れた一物を愛おしそうに舐め始める。
恍惚とした彼女の顔を見ていると言葉を失う。
「………」
失望は僅かだ。
一人の女が愛する男に奉仕しようとしているだけだ。それも自ら進んで。
自分で命令したわけではない、というだけで感じ方がまるで変ってしまう。もし、命令した事であれば自分を嫌いになりそうだ。
少なくともイミーナを貶める気は持ち合わせていない。全ては彼女の望むままに。
その結果が目の前の光景というのは納得できないが、後の祭りではある。
思い悩んでいる間にも積極的に男根を舐めるイミーナ。
それと射精間近だったので続けらると危険だ。それを見越した行動であるならばやめさせるか、それともなすがままか。
当然、後者だ。悩むまでもない。
ヘッケランはイミーナの側頭部を挟むように掴み、横に伸びた耳を優しく愛撫する。
「………」
今の状況をとてもアルシェとロバーデイクには見せられないなと思いつつ。
誰も居ない今この時を楽しむことにした。精神衛生上的にも。既に舐められているし、何かが出そうな感じでもある。
彼氏の苦悩をよそにイミーナは亀頭を口の中に入れる。その状態で下方を舐めていく。
次に口の奥まで含み、ゆっくりと前後に頭を動かす。しかし、白人男性の陰茎は人種によって違いはあるもののかなり長い事がある。ヘッケランのも勃起時は喉の奥まで収められない程の長さになる。
陰茎を歯で傷つけないように気を付けながら。
舌のザラザラ感と唇の圧迫度合いから気持ちよさが伝わり、背筋に緊張が走るヘッケラン。
射精感が近くなった。このままだと彼女の口の中に出すことになる。それでいいのか、と迷いはしたが、それが目的なら望みを叶えてやらなければならない。
男根から出るものはイミーナも承知しているはずだから。
「……ヤベえな。いいのか、このまま出ちまうぞ」
一応、気遣いのつもりで尋ねると軽く頷くのが分かった。
いいのか、とがっかりするものの否定されたらされたで残念だとも思える。
ヘッケランに女性の征服欲は無い。同業者にそういう趣味の人間が居て嫌悪していたからだ。
だが、今の状況は正直に言えば戸惑っている。ならば余計な言葉をかけずに身を任せた方が思い悩むことが少なく済むはずだ。そう思って成り行きを見守る。
男根を口に含んだイミーナは一向にやめる気配を見せない。最後までやり切るつもりのようだ。
舌での刺激と頭の運動によってそろそろ限界が近く。身体をある程度鍛えてきたイミーナも慣れない動きに
根元まで入らなかった部分は指で輪を作り唇同様の動きで
一心不乱に舌と口と指を動かす彼女のお陰でだいぶん気持ちよくなってきた。特に舌の動きは程よく良かった。
イミーナからすれば喉に当てる行為は吐き気を覚えるほどだったが慣れてきた為、今はだいぶ楽になっていた。そして、それがヘッケラン側からすれば程よい締め付けに感じられていた。もう少し強めに押し込めば本当に喉の奥、食道に入りそうな感じだ。角度的に無茶ではあるが。骨が入っていない陰茎の力を少し抜けばおそらく。
ただ、抜けなくなると窒息するかもしれない、という恐れからイミーナは挑戦しようとは思わなかった。
しばらく静かな時間が流れた。
耳元に聞こえるのは呻き声。荒い鼻息。口から洩れる淫靡な粘液が奏でる音。
通常であれば男性の腰と女性の柔らかい尻が当たる音が聞こえるものだ。周りには伝わらないが男女の間では凄まじい応酬が繰り広げられていた。
射精間近の男性はギリギリまで射精を我慢し、女性は興奮によって高鳴る心臓の鼓動を感じつつ窒息しないように優しく丁寧に、そして、射精を促すために荒々しく舌を動かしていた。
舌の上を滑らせられる毎に気持ちよく、ヘッケランは無意識にイミーナの頭を掴んで腰を動かすようになる。
それは慣性の法則に抗えなくなったように。
イミーナがしていたことを代わりに代行する。それと同時に頭を動かす手間が省けた彼女は舌の動きだけに集中する。
「……もう出るぞ。いいんだな?」
改めて尋ねようにもイミーナは作業に集中していて答えられない。
舌の動きから諦めを覚え、覚悟を決める。ただ、口の中で出したことが無いので、どの辺りがいいのか分からなかった。
そして、限界を迎え、思わず彼女の頭を強く引き寄せた。
「……うぉ!」
「!?」
我慢に我慢を重ねた果てに尿道付近から吹き出る精子。勢いよく彼女の喉に何度か当たる。
それでもまだ足りないとばかりに腰を軽く動かし、射精を続ける。止まっているとすぐに萎えそうだった。
抜け落ちない程度の速度で腰を前後に動かし、彼女の舌の感触を確認しながら射精を続けた。
それが七回ほど続いた。
最初の発射で殆どの力を使い果たしたようなものだ。今は勢いを付け過ぎたことにより尿道が少し痛かった。
硬かった男根が急速に萎え初め、形を保てない
激しく息をつくヘッケラン。
イミーナはまだ少し陰茎を刺激し続け、最後の一滴まで搾り取ろうとしていた。
口から零れる頃には射精は完全に終わっていた。
「……んふふ~」
にやけ顔のまましばらく精子を舌の上で
喉が動くたびに幸せを感じる
それほどまでにイミーナは淫靡で蠱惑的な存在に見えた。
心臓が激しく鼓動しているのが分かった。
元々は新しい命を
それゆえに命を削るに等しい事ゆえ疲労感が凄まじいのだと。それはイミーナ側も同様に感じていた。
「少しは楽になったか?」
「……さあ? どうかしらね」
流石に二回目は勘弁願いたいところだった。
足腰がお互いガタガタになったのでモンスター討伐は出来そうにない。なにより二人とも下半身を露出して性行為に励んでいた。常識を疑うような現場だ。
イミーナが落ち着きを取り戻した途端に現場の冷たい空気が襲ってくる。
射精と絶頂による興奮の解消によって一気に体温が奪われ、身体が震えてきた。
「このまま風呂場に行くか?」
「……運んで」
「歩きなさい。イミーナの為に俺も体力が限界だ」
口を尖らせて不満を表すも仕方が無いとすぐに諦める。
ただ、足腰は本当に震えているので二人ともぎこちない。それがまた気持ち的におかしかった。
イミーナはそのままでいいが、改めてズボンを履くのが面倒になり、男根も萎えているから二人で丸出しのまま向かおうかと思った。
明日も同じような事態になっては困るので施設の主であるナコトに文句言おうと決めておく。しかし、同時に彼の仕業ではない場合、一方的な言いがかりに過ぎない事もありうる。
何らかの魔法だとしてもイミーナの態度は自分の願望そのまま。言葉が通じないわけではなく、単なる欲求不満の表れということも。
確認の為に何か言わなければならないのだが、何を言えばいいのか思いつかない。
下半身の露出は既に自覚しているし、痴態も同様。その上で何を聞けばいいのか。
「ごめんね、突然口に出せって感じにしちゃって」
「……お前がいいなら……」
「妊娠しない時の精液ってなんか勿体ないなって思って。……まあ、色々と興味が出ちゃって……」
他人のものよりヘッケランのものがいい、とは言えない。
内容的に違いがあるわけではないが、愛する者の体液というだけで充分自分には
「さすがに大きい方は断るけれど……。冷えたおかげでしたくなったら……」
「小便まで口で受ける気か?」
にこやかな笑顔を見るとそのようだと悟る。
本当に淫らになったようで悲しくなってきた。けれども、
性行為したのに。そう思っていたら下半身に冷気が撫でつけていき、急に尿意を
さすがに地面にしたものを舐めはしないと思うが、口で受けせる事が彼女の望みなら叶えてやるべきか、と。
本当に淫乱であればもはや目も当てられない筈だ。いや、そういう傾向に走らないように恋人として導いてやらなければならない。
「……お前を今以上に淫乱にさせないからな」
「ふふっ。じゃあ、頑張って。未来の旦那様」
今の言葉は愛の告白なのか、と思うくらい心に響いた。
元々その願望はあった。仕事柄、余裕が無かっただけで。
イミーナとて命を懸けた仕事を続けるつもりはなく、どこか落ち着いた場所で平和的に暮らしたい気持ちがあってもおかしくない。
ナコトから充分な資金を既に貰っている。その蓄えだけでも新たな道に進む軍資金には出来る。
「淫らって言ってたけど、あんたのだから飲みたいって思ったんだから。誰でもいいわけじゃないわよ。……誰でもってわけじゃあ……」
ナコトの場合はお願いされたからであって、誰でもいいわけではない。
自分から頼むのはヘッケランだけだ。そう決めておく。
そのヘッケランは苦笑気味に尿意を告げてみた。もちろん、興味本位で。するとイミーナの顔が明るくなったので本気だと理解し、後悔した。
たどたどしい足取りで近寄ってきて力なく萎んでいた男根を持ち上げる。
逃げるとまた自慰行為に耽りそうなので諦めて立ち尽くした。
早速、何のためらいもなく口に含む。舌先で先端を擦られるとこそばゆくなる。その拍子に背筋に悪寒が走るような痺れと共に尿意が強くなる。もう我慢していられない。
抵抗する機会を与えられないまま放尿が始まる。しかもイミーナの口に中で。
しばらく静かな世界に彼女の中に出る音が耳に届く。本当に出してしまった。そして、尿を懸命に飲む音が聞こえる。
時間にして一分もかからない。それなのに五分以上もの長く感じた。
出し終わると察したイミーナが舌で舐めてくるのが分かる。その仕草がとても優しくて少しずつ勃起が始まる。いや、女性の舌で舐められているのだから性的興奮しないわけがない。
全てが終わるとイミーナは立ち上がろうとした。何事も無かったかのように。
「……はっ、お風呂に行きましょうか。あー、ずっと屈んでいたから腰が痛い……」
「……俺はお前の行動にずっと驚かされっ放しだ。こんな調子で過ごすのは本当に……」
疲れる。そう言葉に出したいところだが全てに満足した様なイミーナの笑顔を見ると自分も何故だか嬉しくなる。
彼女にとって今までの行動が嫌なものではなかった、と感じたから。ただ、歩いている途中でイミーナが突然放尿した時は驚いた。急な事だったようで彼女も顔を赤くして苦笑していた。それがまた可愛らしいものだった。だが、さすがにヘッケランは飲尿しなかった。したいとも思わなかった。そこまでの趣味は無いとはっきり伝える。
風呂場は居る頃にはイミーナも落ち着きを取り戻したのか、ベッドに入るまで異常な行動は見せなかった。
気になる点はあるけれど、ヘッケランに出来る事は多くなかった。
仮眠の後で目覚めた後ナコトの姿を見かけ、早速詰め寄る。
「……イミーナにどんな魔法をかけた? 場合によれば……、撤退する」
歴戦の戦士の威圧に対し、ナコトは飄々と受け流す。
小首を傾げているが何もしないわけがない。
「己のやりたい事を好きなように、と……。特別な魔法はかけてませんよ」
「……それを信じろと?」
「それは君たち自身の判断だ。どう取ろうが構わない。少なくとも君達の命は保証する。それは間違いない。大きなケガもしないように気を付ける。衣食住の面倒も見る」
ヘッケランの反応は想定内だ。問題があるとすればナコトの感じ方だけ。
施設の中でどのようなことが起ころうが危険な行為以外は好きなように。ほぼ放任にしている。
魔法の効果を打ち破るような真実を突き止めようが、それはそれで問題はない。
彼らにも望みがあるようにナコトは己の興味さえ満たされればいい。そういう我がままな部分は彼らと大差はない。
「君と彼女が恋人同士でそれを壊す気があるのか、と言われれば否だ。むしろ祝福する立場だ。それが余計なお世話に映ろうが……、君の勝手な思い込みに過ぎない」
「どう見てもそういう感じじゃないんだが……」
「そうかい? なら、君が思うとおりの行動を取れば納得するのか?」
「……お前さんから信頼を受け取りたい気持ちはあるさ。だが、こういうのは……なんか卑怯というか……」
「別に好感度を高めようとか思ってないけれど……。鍛練の場で何があろうと君達の行動だ。自分の意に沿わない事を事細かに言われても困るけれど……」
それは確かに納得できる言い分だ。実際、そういう気持ちが無いわけではない。けれども、自分は納得していない。
このままではイミーナがどんどんおかしくなりそうで怖いから。
これは愛する者を守る戦いだ。
「……まあ、魔法も特別なものではない。命にかかわるような事や心の底から嫌がる事はしない。もし、君達の間で起きたことを言っているのであれば……、それは君達が望んだ結果だ。そうでなければ何も起きない」
「なんだと!?」
「もう一度、はっきりかけてやろう。二度かけようが三度かけようが意味は大して変わらないけれど……」
思わずヘッケランは腰に差してある二振りの剣に手をかけた。
速度に自信はあるもののナコトに通じとは限らない。相手は人智を超える
それに膨大なモンスターを用意してきた。いや、モンスターだけでは無かったけれど。
只者ではない。それははっきりと言い切れる。
魔法を使うと宣言してしまうと効果が薄くなる。警戒されるから。
これは単なる確認作業のようなものだ。
疑いを抱くヘッケランには無駄な気もするがナコト側としても信頼は無くせない。
「〈
精神に作用する心術系の魔法だが、視覚を持つクリーチャーであれば大抵効果を発揮する。
なにより
ナコトの術者レベルはヘッケランの想定を何倍も上回っている。そうそう対抗し切れるものではない。
現にあっさりと恍惚状態に陥った。
「……君達に信頼されないと困るのだが、出来るだけ私のお願いは聞いてほしい」
「それは……、すまなかった。俺も少し言い過ぎた」
先ほどの激高は既に無く、
どうして自分はナコトに対して怒ったのか。愛する恋人と仲睦まじい関係にしてくれた恩人ではないか。
それに好きなだけ気持ちいい時間を過ごさせてもらったのだから、と。
意気消沈するヘッケラン。
ナコトが使用した魔法は効果内容自体は特別なものは無く、脅威というほども無い。
なにより実現不可能な要望は受け付けないのだから。
「性欲の暴走についてはちゃんと面倒を見るよ。……それまでは君が支えてあげればいい。私がやってもいいんなら努力するけど……」
「いいや。イミーナは俺の女だ。俺が……、努力してみるよ」
「それがいい」
これは洗脳と言うわけではなく、実現可能な選択を提示し、行動しやすくしているだけだ。
命令というほどのことはなく、単なるお願いに過ぎない。
それを聞くかどうかは彼らに判断が委ねられる。強引に従わせているわけではない。
それとは別に彼らの記憶に関しては保留にしている。あまり色々と操作し過ぎると面白みが無くなるので。
イミーナに関しては昨日の事は忘れて新しい気持ちで始めよう、という事くらいしか言っていない。
下着に関しては面倒なら最初から着なければいい。恋人と二人だけで戦いに赴くなら、と。
肝心のイミーナはまだ寝ていた。念のために任せてくれるかと尋ねて了承を貰っておく。
無防備に寝ている
下半身は風呂場で洗ってきたのか、奇麗な形を見せている。下着は付けていなかったので性器が丸見えだったけれど。
自然体で眠るイミーナの陰核はまだ治まりがついておらず、大き目に見えた。
手っ取り早くナイフで切り取るわけにはいかない、が方法としてはありだと思った。とにかく、まずは起きないように眠りの魔法を使い、軽く陰核をこねくり回す。つい触りたくなっただけだ。
熟睡状態のイミーナは性器を触られた程度では起きないくらい深く眠りについていた。それだけ疲れた証拠だ。
肥大した陰核は水膨れの様な感触だった。
それにしても見下ろす格好になるが、色白で線の細い体形は奇麗だった。なにより薄く開いている小陰唇も使い込まれている筈なのに桃色を維持していた。
性交渉の多い女性の性器は紫色に変色し、形も
まずは良く冷やしたタオルを恥丘から陰核にかけて乗せる。更に小さな氷も追加する。
興奮による膨張はだいたい冷やせば治まるものだ。あまり極低温では身体に支障が出るので常識の範囲だ。
お腹周りが冷えては困るので厚手の毛布を掛けておく。あとはしばらく待つだけだ。
魔法に頼らず、原始的な手法も時には有効だ。
もし、三〇分経っても大きさが変わらないなら切り落とす。膨張した肉片はさっさと切除して治癒魔法で再生させた方が早いから。
我慢が足りないのは
もし、そんな存在に巡り合えたら楽しいかと言えば、分からないと答える。いや、きっと
時間になり、結果を見ると
切り取った陰核は治癒魔法の影響からか光りの粒子となって消えてしまった。未だにこの現象は理解できない。
見た感じでは筋肉が引き締まるようなものだ。
血流が引いていたお陰か、思いのほか出血しなかった事に安堵する。だが、男性器ではこうはいかない。
その後、仮眠から覚めたイミーナは何事も無かったように服装を整える。ただし、また下半身は露出したまま。
ヘッケランは彼女の姿を見て、そういうものだと諦めを見せモンスター退治に邁進する。今度は性欲に溺れることなく真面目に過ごしたようだ。というよりそうするようにお願いしたからだ。それとヘッケランと二人の時は立ったままおしっこをするのが基本となる。これはナコトの興味によるもので、それにイミーナが応えた。
彼女の様子を見る事になるヘッケランも眼福だと思う様にしてもらった。
そして、約束の期日になりアルシェとロバーデイクを出迎えに向かう。何事も無ければ待合場所に居る筈だ。それとこの日のイミーナはちゃんと下の
「では、行ってみましょうか」
「おおー」
「無事に来ているといいな」
ここ数日で友好度は少し上がったと思うがナコト当人は退屈の為、無気力となっていた。
元より自分一人で出来る事は少ない。
かといって他にやる事があるわけでもない。上昇志向が無いせいもある。
それでも彼らと共に暮らしてみて寂しかったことは少ない。逆に何もさせてやれなくて申し訳なく思った程だ。
こんな事なら無理にでもクレマンティーヌを連れてくればよかったかな、と。
そんなことを思いつつ戸締りをしっかりとかけ、三人で小都市に向かった。
正確な日時に来ている保証は無いので、遅れ気味に来たわけだが街の様子は特に変わっていない。モンスターの襲撃も。
まず宿屋を確保し、酒場に向かった。そこではヘッケラン達に情報収集を頼み、ナコトは日用品と食料の買い出しだ。
それと追加で頼んでいた酒樽の購入。それらはどんどん用意した馬車に積み込んでもらう。
大都市から離れた場所は冒険者ギルドのような大きな組織が駐在していない。それゆえに必要な情報などが手に入りにくい。
アルシェ達はまだ来ていないようだが、距離的にも直接来るには時間のかかる場所にある。なにせバハルス帝国の帝都からだ。
四日ほどのずれでも当たり前だとイミーナは言った。
待ちきれなくてこちらから向かおうとするのは入れ違いが起きやすいので却下。あと、便利な魔法は最終手段にしたかった。
ここしばらくナコトは地味で単調な事務仕事に努めていた。合間に女体観賞もしていたが。
充実していたかと言われると自信は無い。まだやり始めだからともいえる。
自分で全ての命令をしなくて済む分楽ではあるし、すぐ死ぬ恐れも無いので安心感もある。
気がかりがあるとすれば能力の監視をするために地上施設に行かなければならない事だ。これが結構面倒くさい。
常に自身の側でコンソールを開いて確認していた時代が懐かしい。それだけは今もって解決していない。まさかと思って椅子を持ち歩いてみたが無駄だったし。
楽ばかりしても困るのだろうけれど。
「まだ来ていないみたいね」
街を回っていたイミーナから報告を受ける。
装備品が新しいのにモンスター退治に行かせられない。ある意味、無駄な事をしている気がする。これはヘッケランも同様だ。
手近なところからモンスターでも現れてくれれば戦闘を確認できるが、この世界は常に何者かに襲われているわけではない。そうでなければ廃墟ばかり広がってしまう。
異世界というのは本当に文明の発達に謎が残る。どう考えても建設に何のある立地に誰が作ったのか分からない凄い建築があったり、とか。
たくさんの洞窟があっても多くの冒険者に調査されられている筈だから簡単に宝があるわけがないのに、とか。
「……しかし、住民が少ないな……」
リ・エスティーゼ王国の最南端ともいうべき位置にある。そこより先は亜人達の群れとスレイン法国国境だ。
法国は問題ないとしても亜人達の襲撃を危惧して永住を決める者は殆どいない。
ここは仮初の小都市だ。ナコトの秘密基地を作る為だけの。
食料生産の為の農村と一部の建築関係者を招くため、出張してもらった彼らが快適に過ごせる施設として用意したものに過ぎない。
宿屋なども同様に。
近くの大都市からかなりの距離が離れているので道中はモンスターなどの脅威によって不便になっている。それを解消する為にエ・ランテルからいくつか中継地点となる宿場町のような小都市を造らせ、冒険者の往来を増やすように手配した。その為、完全な無人にならなくて済んでいる。
人口増加はこれからだ。最近は金になりそうな樹木の生産も
と言っても大部分は様々な人間の意見を現実にさせているだけでナコト自身は積極的に参加していない。
成功しようが失敗しようが構わない。あくまでこういう都市が偽装効果を生めばいいだけなので。
住民は少なくとも冒険者の往来は意外と多い。これは索敵範囲を拡大しているからだと思われる。
未知のモンスターや発見を求めたり、外交や領地見学の為の貴族の護衛任務。その他もろもろの要因が関わっている。そうなるように手配したのはナコトだが。
それと領主を配置することで王都から税金を集めに専門の役職を持つ人間が来なければならない。それに特需も期待している。
殺戮ばかりでは飽きるし、狙われる確率が高まる。これもまた欺瞞行為の一環だ。ただし、この辺りだけだと怪しまれるので海沿いに向けても同様の現象を起こさせている。
王国にはまだ開発されていない土地が広大にある。
アルシェ達を待ちつつ一日が経過。その間、ナコトは酒場の物資補給の依頼を出したり、馬車の手配をしたりと働いた。
こんな寂れた都市が活気づくのはまだまだ先の話しだ。
待つだけでは暇なのでヘッケラン達に仕事を与えたいが増強以外はやることが無い。
「……暇です」
「……そうか。俺達も仕事が無い時は日がな一日酒場に入り浸って時間を潰すぜ」
ただ、もう少し人が居るところだったがな、と。
娯楽要素も取り入れなければ持続しそうにない。けれども、その手の手法に覚えが無いナコトにとっては難題でしかなかった。
洗脳で無理矢理集める事は可能だ。ただし、経済を回すほどの活気はそう簡単にはいかない。
ワインを作る葡萄も植えたばかりでは飲めたものではないし、加工場も必要だ。更に人材も。
それら全てを一人で考え出していくことは無謀である。
「……何もしない時は本当に……。何をしたらいいのか」
生きるのに忙しい世界の住民だったナコトにとって時間厳守は当たり前。
この世界に来て数年経つがのんびりとすることが苦手なのはよく理解した。もはや職業病の様な気さえする。
様々なイベントが存在するのであれは気持ち的にも楽だ。アップデートが待ちきれないゲーマー時代の方が良かったかといえば、そういうわけでもない。
他人の顔色を窺ったり、運営にビクビクしながらプレイしなければならないのだから。ゲームの世界でも息苦しい。
「………」
ついうっかり世界を滅ぼそうと思った。しかしそれでは本末転倒だ。ここも元の世界も何も変わらない。
なら、どうする。どうすればいい。
そんな問いを重ねたところで無意味だ。という問答を重ねて三日過ぎた。ヘッケラン達には買い物した物資を指定した倉庫に運んでもらった。
その倉庫には守衛が居て、人知れず荷物を拠点に運び込む。
原始的な暮らしをしている彼らにとって馬車移動は一大イベントに匹敵する。気軽に移動できるナコトと違って予定時間はいかようにも伸びる。
例えば途中で野盗やモンスターの襲撃に遭うかもしれない。移動に伴う資金は必然的に多くなる。と言っても資金程度はナコトが肩代わりするけれど。
来ない相手の事を心配するのは予定を決めている人間であれば何でもない事だが、この世界の住民にとっては心配性に映るのだろうか、と。
そんなことを考えつつ酒場に向かう。
冒険者ギルドが無い以上、多くの外来は飲食店に集中する。食材の輸出入はおそらく順調だ。施設が不十分なだけで。
暇なナコトが酒場に入ると人が
外来客を増やす方法が分からないので、いつか都市ごと処分しそうだ。
酒場に貯蔵されている
距離が一番のネックといえる。
ワインが殆どで日本酒の作り方は残念ながらナコトは知らなかった。米を発酵させるのはなんとなく分かるのだが。
「………」
店内を見回すと一人だけ豪快に酒をあおっている者が居た。こんな寂れたところで景気がいいな、と。
黒い外套で身体を隠しているが頭部は晒していた。
丸みを伸びた金髪は首元までの長さで少し酩酊状態なのか、頬に赤みが差していた。
顔つきから女性なのだがガントレットを付けたまま木製のコップを使っていた。
「……ああっ、もう一杯……」
「そんなに急いで飲むと身体を壊しますよ」
「うっさいっ! 身体はとっくにボロボロ……。酒で補修している所」
開けた酒瓶の数は十を超えている。それでもまだ意識があるのは酒豪だからか。
それだけ飲んでいればトイレも長そうだ。それと声に聞き覚えがあるし、顔にも。
酒場の店員が複数の酒を運んでくるとそれらを遠慮なしに飲み始める。実にいい飲みっぷりだ。
「ゲェェ……」
下品なゲップもお構いなし。
一気飲みに近い飲み方をすればどうしても出てしまう。
ナコトは気のよさそうな住民として彼女に近づく。顔見知りかどうか確認する事と新たな人員として迎えられるかどうか。
「いい飲みっぷりだね、お兄さん? お姉さん?」
「あっ? 女だけど……。あんた誰? ここの人?」
「まあ、そんなものだね。正直……、待ち人が来なくて暇なんだ。酒代を立て替えてあげるから、お話を聞かせてくれるかい?」
懐から王国金貨を数枚テーブルに乗せる。
この国の通貨でいえば彼女が飲んだ分は充分に支払える。それを見た金髪の女性は不審そうな顔で金貨とナコトを見比べる。払ってくれる分には助かるが、信用は別問題だった。
「……まあ、いいけど。ここへは旅の延長……。色々あってねー。これからどうしようか悩んでいるのさ。それで酒に逃げているってわけ」
「それにしては随分と飲んだね。細そうな身体なのに」
「……へへ。鍛え方が違うのさ。でも、駄目だよ。私は身体を売るような娼婦じゃないから。……酒まだー?」
「お酒より野菜とか肉とかも食べなよ。健康第一」
「じゃあ、チーズと羊肉ー」
注文を受けて店員たちが大忙しで料理を作る。
ずっと街に滞在したことは無いが、満員になる時期とかあるのか気になった。
経済を回すには客足を伸ばさなければならない。それらは地元の領主の采配次第だが、荒廃して犯罪者の拠点にされるわけにはいかない。
酒の勢いも相まって口が滑ったのかもしれないが、冒険者ではない。危険な仕事をしていた。仕事に失敗して終われている。
最近もっとひどい目に遭って酒で気を紛らわせている。そして、次の事を考え今に至る。
「専門の暗殺業務ってわけじゃなくて……。世の中に嫌気がさしただけ。私は楽しい事が大好きなのさ。人殺しもその一環。冒険者も人くらい殺したことあんだろ」
酔っているせいか、無茶な論理も出てくる。それを黙って眺めていると楽しくなってきた。
ナコト自身は話し上手というわけではない。こうして一方的に聞くことの方が好きな部類だ。それが会話を上手く運んでいるのかもしれない。
「私がその追っ手を引き受けましょう」
「はぁ? 相手は精鋭部隊だよー。それに……私は彼らを裏切る形で逃げてんだから……、大義は無いんだけど……」
「いいですよ。退屈しのぎになりそうですし」
「……おいおい。法国にケンカを売る事と同義だぞ。……私なら……逃げ続けるね。それが出来れば苦労しないんだけどさー」
新たに運ばれてきた酒を容赦なく一気飲み。本当に景気よく飲んでいく。それとよく食べる。
アスリートのような人種かもしれない。
戦闘の際に必要な栄養がそれだけ必要だから身体が欲している限り食べたり飲んだりができる、という。
「あんた……。どこかの犯罪組織か何か?」
鋭い眼光をぶつけてくるも酔っているせいで普段の半分以下に威力が下がっている。
さすがに飲み過ぎだ。ナコトから見ても。
「ただの趣味人です。それと女遊びでしょうか」
「かぁー。下種野郎ってわけかい。……いいねー。大好きだよ。殺し甲斐がある……。私は……えとなんだ、その……。飲み過ぎて忘れちゃった……。……本当に飲み過ぎたみたいだ。気持ち悪くなってきた」
そう言いながらうがいのつもりで酒を
飲み切ると清々しい顔に変化する。
「それより戦士、なんですか? それだけの酒を飲むところから身体を鍛えているように感じますが……」
「……んー。そんなようなものかなー。そりゃあ、汚い仕事をするのに貧弱じゃああっさり死んじゃうからねー。それなりに鍛えているよー。……はー……、最近そう思ってたのにもっと怖い奴に身体を壊されてねー」
と、後半急に涙ぐみ始めた。完全に酔っている。
普段から大量に酒を飲むようでは鍛えた身体もすぐにボロボロになりそうなものだ。自然とナコトは心配になってきた。
「今の私は自信喪失中ー。まさか信じられないくらい強いアンデッドだとは……。そういうモンスターが世の中には居たんだねー」
「そうですか」
「ああいうのとは関わり合いたくない。でも、また会いそうで怖い……。怖いから酒を飲むのさー。私だって死ぬのは怖いからねー。はぁ……」
「それで……、
話しの内容を無視して気になる事を訪ねた。すると意気消沈気味だった彼女は頷いた。
その後、静かに食事する。感情の落差の差が激しいが色々と経験してきた結果なのだと思うことにした。
「
「強さはついでです。知識として知りたいんです。暇つぶしのようなものでしょうか」
「ふーん」
かなりの量を飲んでいるのに口調が
これは油断していないという意味かもしれない。
追っ手が居るという話しもあったし、完全に泥酔しない程度には量を調節している、と。
ナコトに相槌を打ちつつ敵か味方を分析されている可能性もある。だが、さすがに酒臭いのと合間に出るゲップも少し気になった。
「……で、私に何か用でもあるの? 悪いけどヤバイ話しはなら他所を頼って……」
「いえいえ。暇つぶしですよ。……でも、貴女が良ければ武技を教えていただきたいし、強さについて研究してみたいです。衣食住はこちらで提供しますが……」
「……えー。色々と私も渡り歩いたけど……、ろくな連中と当たった試しがないよー。怪しい宗教とか? 暗殺組織?」
「単なる個人趣味の施設です。今回、その街に来たのは待ち人と合流する為です。遥か帝国から来てもらうので時間がかかってて」
「……私も帝国に行こうかなーと思ってたとこ。でもどうしてか、こんなところに来ちゃったんだよねー。ここからだと遠いよねー、バハルス帝国……」
「そのようですね。交通網もこれから整備されるところですし……」
話しが一段したところで追加の酒を注文する女戦士。
尿意とか起きないのか心配になってきた。それと酒場の酒の貯蔵量だ。
この小都市は近場の大都市である『エ・ランテル』まで数百キロメートルも離れている。そこから酒樽を輸入するのは一大事業並み。それでも定期的に注文を入れているのは協力者の確保のためだ。
それと同時に地元経済を回す。いわば先行投資だ。
イミーナの分だけでも凄い事になっているのに酒豪まで現れたとなれば少しは慌ててしまう。
資金面は問題無いけれど人材確保が難しい。特にここまで無事に運ぶことが。
だからこそ近くの畑で酒やワインの原料の生産を始めさせたばかりだ。気候的にも問題ない処を選んでもらったけれど、本格的に賑わうのは数年先だ。
「ところで貴女は一人ですか? 誰か待ち人とか?」
「んー? 一人だよ」
「私のところは二人……。更に後二人来る予定になっています。どうです? 一緒に鍛練でも。強さを得る事に興味があれば新たな武技とか身につくかもしれませんよ」
「わはは。それは……凄いねー。……で、衣食住が見返りな訳だ」
「単なる趣味人の娯楽です。それと施設は最近活動したばかりなので人が殆どいません。これも勧誘の一環という事です」
「へー」
どう聞いても胡散臭い。それは確かにナコトでも思うけれど、他に言いようが思いつかなかった。
彼女にしてみれば見返りが不明な場所に向かうほど短絡的ではない。
ナコトとしては強引な手法が手っ取り早い。だが、せっかく出会えたので言葉を交わしている。自分の興味が湧いている内は平和的に。
「それとも法国からの追っ手とか思われているとか?」
「んふふー。そんなことを簡単に言う奴は居ないよー」
「……無理強いは良くないか……。なら、その追っ手が来たら捕まえてみましょう。どんな能力を持っているのか、興味があります」
いとも簡単に言ってのけるナコトに対し、謎の女性は薄く笑いながら少しずつ酔いが醒めるのを感じた。
言い知れない恐怖が蘇るような。そんな感覚になってきたからだ。
目の前の人物の気配に覚えがある、と。
「そんなこと言って監禁するわけでしょ。でも、私らを捕らえても法国から何も取れないよ」
「……強さの秘密以外は特に……。例えば伝説の武具とかはどうでもいいです。どうせ、自分には使えそうにない気がしますから」
「私なら何処かの組織に売ったりして路銀を稼ぐけどね」
「ある程度の蓄えはあるので。先にも言いましたが娯楽です。協力者には深い感謝を。あと、狙われたくないのでそういう人たちはちゃんと開放する予定です」
「……余計に怪しいな」
「でしょうね。まだ手探りで何も形になってませんから。どういう方法がいいのか、相談中というところです」
話し半分に聞き流しつつ新たな酒を呷る。だが、どうにも酔えない。頭がいやに冴えてしまっていた。こういう時は嫌よ勘がするものだと女性は感じた。
長年の勘は中々に侮れない。
「……あー。追っ手が居るって言っちゃったからか」
追われているのであれば匿ってやる。その代わり色々と協力しろ、ということなら従う方が生存率は上がる。なにより、そういう風に渡り歩いてきた。
様々な組織に入り、利用し利用されてきた。それが彼女の人生でもある。
「私を勧誘したところで得は無いと思うけどねー。武技っていっても大したもの持ってないよ。それとそれをあんたに教えられるとも限らない。こればっかりは才能の問題だから」
「それでいいんです」
女性はゲップをした後、残っている
大半が飲み物で満たされたお腹は妊婦のように膨らんでいた。気の済むまで飲んだとはいえ、少し苦しくなってきた。対するナコトは話しだけで何も注文していない。
それと腹を摩るところで外套の中身が見えた。
薄着の様な軽装の鎧と黒い内着。ただし、肌の露出が多かった。主に肩、お腹、太腿。それと胸は大きめ。
イミーナの盛り上がりに欠けた胸ばかり見ていたせいか、大きい胸が新鮮に映った。
胸当てや腰回りは装飾なのかジャラジャラとして鎖のようで何らかの金属片が縫い込まれていた。
酒代を奢ってもらった都合もあるし、無下にできないが信用も出来ない。
法国からの追っ手と言うわけでもない、とはいえどうしようか迷う所。
しばらく悩んでいると来客が入ってきた。
「モーデさん。お待たせ」
手を振りながら近づくのは女性にとって見覚えのない男女だ。もちろん、追っ手の顔見知りでもない。
彼らは何の迷いもなくナコトの側に駆け寄る。
「ご苦労様。彼らを相席させてもよろしいでしょうか?」
「席は空いてるから好きにすれば……」
ヘッケランはテーブルと足元に転がる空いた酒瓶を見て驚きつつも同席者の女性に一礼し、イミーナは座った途端に酒を注文する。
ナコトはただでさえ大酒のみの現場を見てしまったため、食欲が湧かなかった。
本当は健康の為にも何か食べ方がいいのだが、今日は調子が悪いらしい。
「この人達はあんたの連れかい?」
「はい。後二人来る予定です」
「ふーん。見たところ冒険者のようだけど……。こんなところで会うとはねー」
ここは都市として出来て間もない。冒険者が遠征する場所としてもまだ難しい位置にある。それと南方にすぐ亜人の大群と法国が存在する。
「遠いバハルス帝国から……。ちょっとした仕事で……」
「……へー、帝国から」
「王国で居を構えようと思って移住しにきたんですよ。大事な仲間の為に危険な仕事は止めようと思いまして……」
冒険者も依頼内容によっては危険な仕事を請け負う。しかし、帝国に存在する
つまり彼らは元
「私は逆に帝国に行こうかなーと思ってたら、そちらのお連れさんに勧誘されて……」
「勧誘? ……それはまた……。という事は貴女も冒険者ですか?」
「似たようなもの、とだけ言っておくよ」
イミーナの近くに酒の入った木のコップが置かれた。それといくつかの料理が並べられる。
ナコトはどうにも食欲がわかなかったので黙っていた。
そういえば、とヘッケランにナコトと教えるのを忘れていた。運営者がナコトだけだから別にいいか、と早々に悩みを追い出す。
当のヘッケランはにこやかに話し続けた。興が乗ったのかは分からないが、イミーナも酒を飲みつつ帝国に居た時の事をいくつか会話に織り交ぜる。
いい雰囲気に見えたので、とは行かない。
個人的に興味があるのはやはり『
何のためと言われれば娯楽であり趣味としか言えない。興味を失うと無気力になる。それが怖いと思っているから色々な事をする。
傍目には人体を解体したり、命の尊厳を無視しているのだが、便利な魔法の有効活用だ。それはそれで聞こえがいい事は分かっている。
ただモンスターを倒す事に浸かったり、決まった用途だけにしか使われないのは実に勿体ない。
こういう文化はもっと使用範囲を広げるべきだ。武技は完全に戦闘にしか使えそうにないが。
「大量のモンスターを討伐するんだー」
「それでどういう風に強くなるかはまだ分からないんです」
イミーナは酒を飲みつつ黒衣の女性の突き出た腹をチラチラと見ていた。
ナコトもそこまで飲んだ彼女に驚きを感じている。本当に身体を壊さないか、とイミーナも同じようにならないか心配になってきた。
人の少ない酒場とて客の入りは時間経過とともに増えてくる。主に夜間は二倍ほどなるかもしれない。そこまで入り浸る気は無いけれど。
「一人で旅をされるなら実力を付けてからでも遅くはないと思いますよ」
「……そうだねー。そうなんだけどねー」
「胡散臭いですよね」
「分かってるじゃないか。私は……グェプ……。腹が苦しくなってきた……。怪しい組織はちょっと……控えたいんだよ。……帝国に行ったら幸せになれるかと言うと怪しいもんだけど……」
膨れた腹をさすりながら話しに聞き耳を立てる女性。雰囲気的には悪いとは言えない。
ナコトとしてはこの辺りが限界だ。長く人と喋ってこなかったし、と。
当初ほど関わりを持とうという気も薄くなっていた。
酔いが回ってきたのか女性の目が宙を泳ぐように動き出す。それにナコトは気づく。
魔法による酩酊ではなく、単純に飲みすぎだ。余程嫌な事があったのだと思う。
一人で景気よく飲める量などたかが知れる。分かっているだけで一〇人分以上は飲んだのではないか。
ちなみにイミーナは本気を出せば五人分くらい楽勝で飲む、らしい。
「宿は取っておられますか? 具合が悪いなら運びますよ」
「……うぇいやー。それには及びませんよー。腐っても……うぉう……。あー、思っていたより酔いが回ってきた……」
「……一緒の宿でいいですよね?」
ヘッケラン達に尋ねると苦笑しながら了承してくれた。
酒代は既に払うつもりであるし、人数が増えたところで問題は無い。問題があるとすればアルシェ達がいつ来るか、だ。
黙って待っている事が意外とつらかった。
よくよく考えたら酷い泥酔状態になった彼女はどうやって帰る気だったのか。そこら辺で雑魚寝でもするつもりだったのか。
素朴な疑問を抱く。
目を回して意思疎通が出来なくなった彼女にこっそりと眠りの魔法をかけ、しばらく起きないようにして宿に放り込んだ。
手荷物も大して無かったけれど、帝国に行くための準備でもしようとしていたのか、それは明日に出も聞けばいい。
「……きっと凄い寝小便をしそうです」
だいたい妊婦の様な腹の状態で泥酔してトイレとかどうする気なのか。
イミーナはそこまで酔った経験は無いと言っていたがヘッケランは彼女の後始末に大忙しだったと告げた。
出る時は大人でも出る、と。
「そうお? 全然記憶に無いんだけど……」
「完全に泥酔してて覚えていないだけだ。俺が居なかったらどうしていたのか……」
毎回泥酔するわけではないけれど、そういうイミーナになるのは本当に稀だとか。
新たな荷物が増えてしまったが、現状が酷くなったわけではない。それにせっかく出会えた人材でもある。
法国の追っ手にも興味がある。急なイベントに少しだけ胸がときめいた。
「しかし、景気よく飲みましたね、あの人。……本当によく入ったものだ」
「お酒好きの神秘という奴です。イミーナ、あまり飲み過ぎるなよ」
「は~い」
イミーナが飲む酒はアルコール度数とか低いのか。遠慮くなく飲み続けているので気になった。
ワインだけだと思っていたが、何らかの発泡酒という事だった。
ナコトも酒を飲める年代だが大して興味が無かった。質素な茶でもいいし、果実の飲み物でも構わない。
牛乳も飲めるが煮沸しないと腹を壊すと言われている。
「……何もしないで待つの苦手……」
「モーデさんはのんびりするのが好きな人だと思ってました」
「あまり生き急ぎたくないだけです。適度な忙しさの方が好みです。完全に何もしないというのは……、今まで無かったもので」
施設づくりに忙しかったし、アイテム制作や人材の確保の情報を得ようとしたり。
何かしらは行動していた。その合間に鑑賞という趣味はあるにはあるが、完全に動かないわけではない。
それから新たな用件も思い浮かばず、無為に時間が経過していく。
午後に差し掛かり、客の数が増えてきた。殆どが酒飲みの職人とよそから来た冒険者だ。
観光客は基本的に居ない。外の世界はモンスターや野盗などの犯罪組織が跋扈しているので。
尿意を覚えて目が覚めた女性は辺りを見渡し、宿屋らしき部屋に居る事を
二日酔いのようだ。それも酷く痛む。
「……さすがに飲み過ぎた……。あと、具合が悪い」
這いずるように移動し、そのまま服も脱ぎ捨てていく。
トイレにたどり着く頃には全裸にっていた。
衣服の重さから武器などは持っていたようだが、いつ宿屋に来たのか。宿泊の手続きを取った覚えはないが今はまず尿意が先だ。
一息つく間もなく、尋常ではない量のおしっこがしばらくで続け、酒のにおいが混じっていたらしく、とても臭かった。
頭痛と相まって気分が重い。止めどもなく出てくる様子にこのまま脱水に陥るのではないかと怖くなった。
「……代金は……奢ってもらった筈だから踏み倒していないよな?」
最後の方が全く思い出せない。
ここまで酷い酔い方は久しぶりだった。
お腹をさするとすっかり萎んでいて、腹筋の割れ目が見えてきた。
「……ちょっと出過ぎだろ。……あー、ベッドで寝小便しているかも……。いや、それならここでこんなに出ないか……。丁度、目が覚めて運が良かった。……しっかし臭えな……」
飲んでそのままベッドで熟睡したようで、口臭も酷かった。
髪の毛もボサボサで何もかもが酷かった。女性としての嗜みは最低限維持していないと気分が良くない。
そのうち大きい方も出てきて体内の不純物が無くなり、身体の不調が解消されていく。しかし、頭痛は酷くなるばかり。
風呂に入って二度目しようと決めた。
「……こんなに身体の中に入っていたのかよ。どんだけ飲み食いしたんだ、私……」
少しずつ思考がはっきりしてくると宿を取った記憶が無いので相席した人物によるものと推測する。
勧誘しようとしていたから恩を着せる目的のためかもしれない。それならこのまま逃げるか、と。
奢ってもらっておいて逃走すると余計な追っ手が増えるだけだ。見た感じでは法国の者には見えなかったし、連れは帝国側から来たと言っていた。それが本当かは別として。
「……いや、まだ出るのかよ。……よく内臓が破裂しなかったな……」
下腹部を摩ると膨らみを感じるのでまだ少し出るのだなと落胆する。
膀胱が想像以上に膨れている。身体を鍛えていたから平気だったのかもしれないが、一般人であれば危険領域だ。
すべて出し切るのに三分以上はかかった。想像以上に体感的には長く感じて驚いた。
トイレを済ませた後、顔を洗ったり歯を磨いたりした。その後で備え付けの風呂に入るのだが風呂付の部屋を取るとは豪勢だなと思った。
身体を洗い終えて水気を取り、ベッドに潜り込む。一応、濡れていないか確認した。
あまりに酷い場合は雑魚寝するしかないが、質の高い部屋はだいたい選択はこまめに
「……途中で決壊していたらトイレどころじゃないよね」
無事を確認して眠りにつく。
酷く痛む頭に悩まされながら。
出すものを出したし、身体も洗ったので精神的に安心したお陰か、すぐに眠れた。
次に目が覚めると夕方になっていた。頭痛の方は既に解消していた。
「……こんなに眠ったのはいつ以来だ? 追っ手とか逃亡生活が長すぎたか……。お腹、減ったな……」
適当に脱ぎ散らかしていた服を集め、荷物を確認する。取られて困るのは武器と路銀くらいだ。
飲食代は浮いたが、思わぬ失態につい舌打ちが漏れる。だが、久しぶりに目いっぱい酒が飲めた。しかも奢りだ。
「……さて、どうするか。旨い話しには気を付けるクレマンティーヌ様だが……。弱体化した身としては……乗るべきか? 宿屋の面倒までみてくれたようだし。……それとも逃げる? 余計な敵が増えるだけだ……」
彼らの話しに出たモンスター退治というところが気になった。
受けた恩を返すという意味で見学だけでもしてみる価値はあるか、と。それ以降はその時考えればいい。この先の人生が安泰というわけでもない。
荷物をまとめて宿を出ると宿代は既に貰っている、と言われた。
そのまま酒場に向かうと客で賑わっていた。
朝の時間帯は落ち着いて飲めるので今の時間だと注文もままならない。それゆえに避けていたが、見ている限り、落ち着ける雰囲気ではなさそうだ。しかし、身を隠すには丁度いい。
片隅の空いた席に座り、フードを目深にかぶる。
「……あの連中は居ないのか……。それはそれでいいか。……あー、しかし、飲み過ぎた。少し抑えなければ身が保たない……」
軽めの定食を頼む。
それにしてもらしくなかった、何度も思い返す。そうして料理が運ばれてきた後は空きっ腹に少しずつ肉料理を満たしていく。
やはり真っ当な食事が出来るというのはありがたい。気持ち的にも落ち着いてきた。
この先の予定は未知だが法国領に近い街なので長居は出来ない。このまま闇夜に紛れるか、朝の明るい時間帯を狙うか。それとも協力者を募るか。
様々な選択を浮かべては捨てていく。
路銀もそうだが強さを取り戻さない限り、自由に行動できない。何らかの強化を逃げながらできるとも思えない。
「………」
それに拘束できるのにしなかったのは法国の追っ手ではなかったから。またはただのお人好し。いや、かなりの額を払わせたのだから人助けで済むはずがない。
軽く唸りつつ水を飲む。
利用できるものは何でも使うしかない。手を挙げて店員を呼ぶ。その時、自分の手がガントレットに包まれていたことに気づいた。が、後の祭りなので素知らぬふりをする。
気付けに酒瓶を何本か頼み、会計を済ませる。そして、追跡者が居ないか気を付けつつ宿屋に戻る。
日がすっかり暮れて真夜中になる頃、滞在先の部屋の扉をノックする者が居た。
こちらから尋ねるより前に聞き覚えのある男性の声が聞こえてくる。
モーデとかいう男の連れだ。
女戦士クレマンティーヌは耳澄ませて足跡を確認する。扉の向こうには少なくとも三人。これはあの場に居た全員だと思われる。
武器がちゃんと仕舞われているか確認した後、入室を許可する。
「お邪魔するぜ」
「……なんか色々と迷惑かけちゃってすまないねー。宿代まで払ってくれたそうで」
「それはモーデの旦那に言ってくれよ」
部屋に入ってきたのはヘッケランとイミーナ。最初に声をかけてきたモーデの三人。それ以降の姿は無かった。
見た感じでは冒険者だ。それも軽装であるところから駆け出しか、軽戦士。自分と同じ戦闘形態だと少し厄介かもしれない。そんなことを即座に分析する。
「姐さんはずっと寝てたんだろ? お腹減ってないか?」
「さっき済ませてきちゃったよ。気を使わせてすまないね。それと気分はもうすっかり良くなった」
黒い外套をまとったままベッドに腰を下ろすクレマンティーヌ。
ヘッケラン達は部屋に備え付けの椅子に座る。その様子からこの部屋は彼らが共有する予定の者であることを知る。
大部屋を一室借りて仲間と過ごす。そういうことか、と納得する女戦士。
「三人で私を取り囲んで……。実は追っ手だとか、だと笑えないんだけど……」
「まさか。俺達は真っ当な冒険者さ。非合法の
「そうだねー。私もあんたらの顔に覚えはないよ。……仕事中のはね……」
殺気を振りまこうとしたが食事で空腹を満たした今は余計な神経は使いたくなかった。すぐにため息で力を抜く。
確かに酒場で会うまで彼らとは面識が無い。しかしそれは顔を覚える価値のない者の中に居た可能性を否定するものではない。
その辺りを細かく思い出そうとするのは時間がかかる。それに印象としても初対面だ。
「それで? 勧誘の続き?」
「いや、ここは俺達が使う部屋だから」
「あら、そうなの? ベッド一つしかないようだけど……」
寝袋の用意や雑魚寝用のアイテムなどを持ってきているから大丈夫なのだとか。
誰が使おうと自由なのは理解するが、彼らと同室というのは初耳というか意外だと思った。
朝方独占させてもらって申し訳ないと告げると、相手も恐縮し始める。
「もう夜中だけど……。姐さんは泊っていくんだろ?」
「そうだねー。そうするしかないね」
この宿は部屋に余裕があれば同伴を許すようだ。細かい部分まで聞かなかったが、おそらく宿の主人は気を利かせて同じ部屋を案内したのだと思った。それはそれで余計な気遣いだ。
また来たのかよ、なら同じ部屋でいいか。そんな感じだと理解する。
連れが来ないうちはベッドはクレマンティーヌが使ってもよい事になり、イミーナ達は寝床の用意を始める。
そこでどこに隠し持っていたのか、新たなベッドが唐突に出現した。
「おわっ!? 今、どこから出した?」
「……秘密です」
モーデとやらは苦笑気味に言った。
おそらく何らかの魔法だと思うが信仰系以外は攻撃に関するものでもないかぎり、詳しいわけではない。
何もない空間からアイテムを取り出すのは高い位階魔法だった筈だ。それも大型のベッドとなるとどれくらいの次元か想像出来ない。
魔法のアイテムだとしても覚えが無いし、希少価値はかなり高いと予想する。
「……なんだか面白い人間のようだねー」
同時に危険な匂いも強くなった。
迂闊に制圧しようとすれば何かしらの反撃が予想される。未知の魔法を持つ者ほど怖いものはない。
現に、と思考が続きそうになったが良くない事ばかり考えても仕方がない。
秘密を知るには相手の懐に飛び込むしかない。その選択を選ぶべきかが今は問題だ。
それに完全に熟睡していた時点で自分の運命は決したも同然だ。それをしないのは見極めようとしているから。自分ならそうする。
暢気そうなヘッケランは床に寝袋を敷き、謎のモーデは窓際に移動している。
イミーナは新たなベッドに早速飛び乗って手荷物を広げていた。あまり見ていなかったが彼女は耳が長かった。体形的に見て
母国では戦争している敵側の種族だが、クレマンティーヌには関係のない問題だ。
「あんたらは……、鍛練だとかが終わったら法国に行くのかい?」
「王国で慎ましやかに過ごそうかと。モンスターの相手や働き口次第では傭兵でも……」
「私は家庭を持って……。店でも開きたいわね。酒場はちょっと抵抗あるけど……」
モーデは特に決めてないと言った。
それぞれ一獲千金を狙う冒険者というわけではなさそうで意外だと思った。そういう偏見があるのは認めるところだ。
クレマンティーヌはただひたすら逃げるだけ。実に惨めな人生だ。
楽しい毎日を送りたいと思っても障害が多い。
「……私は退屈な毎日が嫌い。……でも、窮屈な毎日も嫌い。楽しく生きられればいいやって思ってたけど……。それはそれで難しい事も知っている」
帝国に逃げたとしても匿ってくれるのは非合法な組織くらいだ。
恩を受ければ返さなければならない。なら、一宿一飯の恩義もまた同じだ。彼らから少なくない恩を受けているのは事実だ。
では、どうするクレマンティーヌ様、と自問する。
他人との相部屋になり賑やかな話し声で眠れないかと危惧していたが、ヘッケラン達はあっさりと眠りにつき、起きているのはクレマンティーヌだけ。いや、もう一人のモーデは寝たふりをしているかもしれない。
思いっきり寝た後なので目が冴えていたが、だからといって逃げ出す算段を取る事が正しいとも思えない。
消灯の為に暗い室内だが、闇夜に慣れている為に周りが分からないことは無い。
「………」
隣のベッドは静かだ。激しくお盛んな行動を期待しなかったわけではないけれど。
ただ、イミーナと思しき者のいびきが薄っすらと聞こえていた。無警戒な声を聞いて苦笑する。
逃げるにしても力を付けなければならない。
情報収集の観点から少し脇道に逸れても損はないかもしれない。
違う。そうではない。
得体の知れないモーデからこのまま逃げるのは危険だと身体が警告を発している。
いやに自然体だが素直に逃げられる自信が今は無い。根拠はないが術中にはまっている気がしてならない。
もし、何らかの事情で死んだとしても
「………」
それにしてもモンスター退治。しかも何らかの拠点で
どのように強化するのかは分かっていないようだが、そのような施設が近くにあるという。
法国の探知範囲は意外と広い。それを掻い潜っている施設がまだあるというのか。
色々と考えていると頭が痛くなってくる。それからしばらく答えの出ない問答を繰り返していたが、推測ばかりで飽きてきた。
殺す機会はあった筈だし、このまま寝ても事態はきっと同じだ。そう思って眠りにつく。
何事も無く朝を迎えると気分は昨日とは打って変わって晴れやかだ。二日酔いも取れた。
「おはようございます」
見知らぬ相手から挨拶を受ける。それに返答するクレマンティーヌ。
結局一晩一緒になった自分はお人好しかと思ったが、気分が良かったので流れに身を任せる事にした。
「そういえば……、聞きそびれていたけれど……。あんたらはいつまでこの街に居るんだい?」
「仲間が来るまでです。帝国から来るので時間がかかるようで……」
「来たら何処かに行くんだね?」
「ええ。秘密の特訓場のようなところに……」
「そこに行ったことはあるのかい?」
「ええ、まあ……。凄い施設でした」
連続する質問にヘッケランとやらは澱みなく答えた。
監禁されていないようだけれど、聞く限りでは怪しさ満点だ。だが、人に話しているところを見ると完全に秘密主義の人間というわけではなさそうだ。
話しに出た施設には大量のモンスターが居るという。それらをひたすら倒す。
鍛練として正しいかは置いといて、大量というところが気になる。そんなものを放置して暢気にこんなところで時間を潰していていいのか、と。
酒場の反応からも近場で異常事態が発生した、という噂は聞かない。
近くというのは欺瞞か、と推測するも確証はない。
身支度を整えた後、何となく彼らと共に宿屋の一階で朝食を食べる事になった。
付き合っているのは情報収集の一環だが、変な気持ちだった。特に彼らの顔が明るいのが。
これは仲間と会えるのを楽しみにしているからだ。
「酒や宿代を奢ってもらって黙って居なくなるのは気が引けるから、少し付き合ってあげるよ。……その代わり、私には敵が多いから守ってくれるとありがたいんだけど」
「分かりました」
即答かよ、とつい言葉が出そうになった。
勧誘の為に狙っていたのであれば渡りに船か、と。
「でも、私とて長居したくないんだよね。……監禁なんかごめんなんだけど……」
「期間は三ヶ月ほど。増強による身体の慣れはおそらくそれくらいかかると思いますので。その間の衣食住は責任を持って面倒をみます。……という事でよろしいでしょうか?」
全く澱みなく答えるナコト。その潔さに思わず感心した。
半年でも構わないが知らないところに長期間は居たくなかった。
ついでに場所を尋ねると近場である事を除けば正確な場所は教えられないという。それは彼女とて予想していた。
秘密基地だから当たり前だ。
正式な契約書は取り交わさなかったが、付き合うことを決めたクレマンティーヌ。次の問題はヘッケラン達の仲間の到来だ。いつ来るかが分からない。その間、クレマンティーヌに資金を渡し、必要なものを買う様に言いつける。
「……もう仲間としてみているのか。……まあ、今のままじゃあ私も困るから……助かるけど……」
先行き不明なのは変わらない。彼らと付き合おうが、帝国に行こうが絶対に安心とは言い切れないから。
日用品を買い付けつつ追っ手の気配が無いか確認していく。ヘッケラン達はのんびりと酒場で情報を集める。
そんな暮らしがさらに二日続いた。
現地の人間は慣れているのだが、ナコトは退屈していた。とにかく、こういう何もしない日を長く過ごすのが苦痛だった。
平和な世界を混沌に沈めてはいけないし、そういうつもりもない。これは単に都合のいいイベントが起こらないだけだ。
定期的に何らかのイベントが起きるゲームとは違い、無味乾燥な現実世界のような事があっても不思議ではない。
「……まるで運営最終日の閑散とした光景のようだ」
違いがあるとすれば彼らの日常は通常通り。明日も彼らは動き出す。世界が消えたりしない。
わくわく感というか無意味に世界を支配しよう、とか元気なキャラクターであれば毎日を楽しく過ごせるのかもしれない。それがナコトには出来ない。
探求心がそれほど高くないからだ。
国を作ろうとか未知のダンジョンを発見しようとかアグレッシブな気持ちになれればどんなにいいか、と考えない事も無い。
仲間を募るのはこれからの人生を楽しくさせるため。それ以上の好奇心がもし湧くのであれば、それはそれで願ったりだった。
更に一日が経過。待つだけの生活に飽きているがヘッケラン達は元気だった。新たな仲間クレマンティーヌも自己鍛練に余念にが無い。
便利な能力を持っていない人種にとって毎日が戦いだ。実際にそれそこが本来の日常だ。
だが、戦いを好まないナコトにとってはそれのどこが面白いのか分からなかった。
ゲーマーになりたいわけではないし、有名になりたいとも思った事は無い。
ただ、退屈しなければいい。それだけだった。
折角魔法があるし、モンスターが居る。ゲーム的に戦わなくても研究は出来る。なにより余計な制限が無い。
「……なにをするにも必要な人材確保だ」
一人で全ての能力を兼ね備える事は不可能。さすがに膨大な作業項目を一人で処理しようとは思わなかった。なにより面倒くさいし、覚えられない。
最終的に既視感のある風景が浮かんだ。それは完全にファンタジーではなく、現代社会だ。
異世界に来て事務作業をするのも勘弁願いたい。
やはりファンタジー世界に合った生活を考えなければ。そうナコトは誓う。
「……それ以前に王国から出ないのがいけない」
拠点を作ってしまってから全然外国に行かなくなった。
他にも国がある事は確認しているし、スレイン法国に行こうと思えば行ける。更に南方や東方。果てはまだ見ぬ未開の地。
冒険者らしく。
だが、それらは実験が終わってからにしよう、と思った。その間にいくつか国が滅ぼされるかもしれないが、それはそれで歴史だ。ナコトが全てを操る事など出来ない。
しかし、それでも他の国に目を向ける事も大事だ。
もっと広い開拓が自分には必要だと思った。
「……浮遊する城とか亜人の国とか……。何処も荒廃した砂漠地帯であればどうしようもない。生物の営みがある世界で良かった」
一人で物思いに耽るのは意外と精神的に負担だなと思いつつ。
気分を変える意味でもクレマンティーヌにスレイン法国の事を尋ねる。
王国と帝国、法国は人間が主体の国家だ。特に法国は『六大神』を崇める宗教国家。
「人間至上主義。他は滅殺。表向きではそうなっているよー。裏では特殊部隊を世界に放って都合の悪い存在を滅ぼしている。私が居た『漆黒聖典』もそんな感じ」
軽い気持ちで語られる秘密。
元より漆黒聖典、というか法国から逃亡した身であるから暴露に抵抗が無い。
かといってナコトにとっては警戒すべき問題かというと質の違いしかない。
「あー、国家を転覆する程の秘密は無いから。ちょっと暴れた程度だよー」
子供っぽく笑いながら言う女暗殺者。
このところ不幸続きで顔に疲れを見せていた。今のところ追っ手の気配はないが、法国に近い事もあり、そろそろ街から出ようと考えていた。
ナコトは『漆黒聖典』を素材の一つと捉えて、もし襲ってくるようであれば捕らえる予定に入れる。様々な