※この作品はR-18です。

とある魔族のペットな彼女   作:寿 タカシ

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遅くなりましたが第一話アップしました。
ちまちま書いているのでこれからもこれぐらいの更新速度になるかと。

今回も特にエロは有りません。

あと、(バレバレだろうけど)クロスしているキャラの名前が出ます。


第一話

 最初に気付いた事は、自分がベットに寝ていたことだ。

 ぼんやりと天蓋を見上げながら、気だるげに額に前腕を当てて自分の状況を確認しようとして、自分が政府高官の罠に嵌まり虜囚の身となった事。オークに何日も交代交代に陵辱された事。そして、黒尽くめの男───そこまで思い浮かべて、静流は勢い良く上体を起こした。

 流れるように体から滑り落ちたのは上等なシルクの毛布。薄手のそれは静流の蠱惑的なボディラインをくっきりと浮かび上がらせて、露出など無きに等しいのに妙に艶かしい。

 そして、シルクの毛布の下から現れたのは、マゼンタ色の下着に身を包んだ己の姿。毛布同様にシルクのそれはつけ心地も良く下品なら無い程度にレースをあしらった物で、デザインや材質から判断するに、普段自分が使っている下着より一つ二つランクが上の上等な物だ。

 手早く室内を見渡せば、自分が寝ている天蓋付きのベッド、落ち着いた調度品や家具、そのどれもこれもが形だけ真似した粗悪品とは一線を画した高級品で纏められていた。

「起きたか」

 室内に男の声が響く。静流の反応は劇的だった。下着姿なのも気にすることなくベットの上から飛びずさると構えをとる。自身の得物はないものの静流とて対魔忍である徒手空拳が出来ないわけではない。問題は、静流は潜入工作を主とする対魔忍であり、同じ若手の雷撃の対魔忍・水城ゆきかぜや斬鬼の対魔忍・秋山凜子程には戦闘能力が高くないこと。

 それでもなお、自身と対魔忍としての誇りの為、静流は構えをとった。

「ほぉ、流石は対魔忍か。睡眠をとっただけでそこまで回復するか」

 ちょうど静流の死角だった位置。小さなテーブルの上にはカップとティーポット。長く細い脚を組んで座る男の手には古惚けた装丁の恐らく魔導書の類と思われる本。俯き加減で本を読む男は静流に視線を向けてはいない。おそらく気配の動きで察知したのだろう。その後ろに静かに佇むのは長い髪をポニーテールで纏めた女性。人間界の正式なそれと比べれば些か露出の多いメイド服と眼鏡の奥の紫色という人間ではありえない瞳の色から彼女が魔族のメイドである事が伺える。聞いた話だと有力者の元には、高位淫魔族が侍女や執事として仕えていることがあるらしい。そんなことを思いながら静流は静かに室内の観察を続ける。

 洋風で統一された室内には大きな窓が一つ。見える景色からそれなりに高さの高層建築物の高層階である事が伺える。自身の姿と高層であることのリスクを天秤にかけても、静流にとってこの男の傍にいることの方が危険と感じられた。故に、タイミングを計る為男に視線を向けると───男はそこにいなかった。

 先程まで、窓にほんの一瞬意識を向けただけの筈なのに、男の姿は忽然と消えていて───

「肌や髪の艶が多少は戻ってきているな。睡眠だけでこれなら手入れをすればより輝くか」

 後ろから静流の顔や首筋を撫で上げ、髪を手に取ってその感触を確かめる男の声が耳元で囁かれる。

 肌が粟立ち、恐怖と嫌悪感で咄嗟に裏拳を放つも男は余裕をもってそれを後方に大きく飛退く事で躱した。

「本当に元気の良い事だ。だが、脱出の算段を付けているところ悪いが、お前の首筋に注を向けてもらおうか」

 男が悠然と椅子に向かって歩きながら自身の首を指さす。静流は男から視線をそらさずに首筋に触れた。

 何かある。布状の何かが首に巻かれている。首輪とするには厚みが足りない、おそらくチョーカーだろう。ワンポイントの飾りがついているのが手探りで確認できた。

「そちらに姿見がある。確認してみるといい」

 男の指さす方向を、先程の事もあり慎重に男からは目を逸らさずにそちらに移動して姿見に視線を向けた。

 黒い革製と思わしきチョーカー。マゼンタの薔薇の装飾も確認できた。

「悪趣味ですね───首輪のつもりですか?」

 嫌悪感を隠そうともしない表情と声色で男を睨み付ける静流に、男は肩を揺らして笑った。

「ああ、そうだな。それは正しく“首輪”だ。まぁ、飼い主の義務だからな───話は変わるが、俺の能力の話をしてやろう」

 椅子までたどり着いた男がゆっくりと椅子に座り足を組む。軽く腕を上げるとテーブルの傍で主人を待っていた高位淫魔族と思わしき女性はカップに静かに紅茶を注ぎ入れ、それを男の傍に音も立てずに置く。見た目若く見えるが熟練した侍女としての技量を持っているようだ。

 男は静かにマスクを取り外すとそれをテーブルに置いて、カップを手に取り紅茶と思わしき中身を口にする。

 マスクで隠されていた口回りを晒した男の素顔は整っていた。あのマスクの役割は不明だが、少なくとも醜い口元を隠すため等ではないことが伺える。

「俺の能力は魔力による爆弾精製支配能力。魔力で爆弾を作り出し支配する。あの繁殖猿共を吹き飛ばしたのもそれだ。まぁ、俺より格下に位置するものには俺の爆弾は余程強力に作らないとその目に映らないがな───例えば、お前の首の“首輪(ソレ)”の様にな」

 目を見開いて戦慄した静流がそっとチョーカーに触れた。成程、確かにチョーカーは“首輪”だったようだ。それを認識した静流は恐怖を噛み砕くように歯を食い縛り、ともすれば口から飛び出そうになる罵詈雑言を飲み込む。ここでそれを発したところでその無様さで男を喜ばせるだけだ。今までのやり取りで十分に男の加虐性を理解した静流はそう分析して吐息を一つはいた。

「本当に悪趣味ですね」

「そうか? デザインはよくできていると思うがな」

 愉し気に嗤う男の返答は些かズレたものだったが、間違いなく態とだろう。

 舌打ちをしたくなるのをこらえ、静流は男に座った目を向ける。

「───私をどうするつもりですか?」

「言ったろう、お前は俺のペットだ。ああ、安心しろ。俺は無責任にペットを手放すことはしないさ。最後まで面倒を見てやる」

 ペットを飼う最低限の義務だな。そう言って男は中身を飲み干したカップを静かにソーサーに戻した。

「早速だが出掛けるぞ。勿論、お前に拒否権はないぞ、高坂静流。着替えを手伝ってやれ」

「かしこまりました。旦那様」

 最後の言葉を侍女に告げて男はマスクを装着して踵を返す。そんな男の後ろ姿を見やりながら、静流は歯を強く噛み締めた事で歯軋りを鳴らす。

 自身の能力を含む様々な情報が調べられたと理解したからだ。事ここに至って名前を知られただけだと楽観視する事は出来なかった。何故なら、この部屋には植物の類いは一切無い。自身の木遁の術について調べられた証だ。

「名前を───」

「ん?」

 だからだろうか、せめて一矢報いんと静流は部屋の入口で振り返った男に皮肉を口にした。

「ペットと蔑む相手に名乗る度胸もありませんか? 女性の名を一方的に口にして自分は名乗らないなんて無教養な上に臆病者なんて救いようがありませんよ?」

 僅かに侍女の眉が動くが声を荒げることも、行動を起こすこともない。下手に出しゃばらないその姿勢は侍女としての技能の高さだけではなく、心得もきちんと身に着けているようだ。

 男は静流の皮肉を気にも留めないのか、肩を竦めて体を扉に向けて顔だけ振り向いた姿勢で答えた。

「鴉(からす)───それがお前の主人の名だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒尽くめの名は体を表すと言わんばかりに見た目と名前が一致した男、鴉とその鴉に囚われの身となった静流の姿は一台の車の後部座席に在った。

 イギリス生まれの有名高級車であり、その名の由来ともいわれる静穏性故に静かな室内で、高級車の名に恥じないシートに座る静流は不機嫌さを隠そうともしないながらも無表情に努めるという何とも言えないものだった。

 マーメイドと言われるタイプのボディラインがよく出るマゼンタ色のドレスに身を包んだ静流は忌々しい思いでいっぱいだった。対魔忍として活動する際の静流のスーツの主な色はマゼンタ。下着の色にしろドレスの色にしろあえてこの色を選んでいるのだろう。自身が対魔忍であることを強く意識するよう、そして、“首輪”をつけられペットという扱いを甘んじて受け入れなければいけない屈辱を決して忘れぬようにするために。

 嗜虐性の強い癖に弱者を一方的にというやり方は好んでいない――と、鴉というおそらく高位の魔族であろう男を分析する静流。それは、静流にとって最悪であり、好条件だった。

 どちらにせよ静流は生き延びる為に抵抗する必要がある。抵抗を続けるうちは“首輪”を爆発させることもないだろうが、そうした静流の抵抗は確実に鴉を喜ばせる事になりそれに憤りを感じるが今は堪え忍ぶ時だ。

 対魔忍として潜入任務だけではなく俗にハニートラップと言われる類いの訓練も受けている静流は、流石にそれ専門の房術使いと比べれば拙いだろうが自慢のスタイルを誇る躰で───

 そこまで考えて静流は自分の体を抱きしめるように腕を組んだ。

 好きでもない、嫌悪しか抱かない様な男に抱かれねばならない。房術使い達は皆こんな思いを抱えてそれでも任務を遂行するのかと一部では卑下される彼女等に敬意を抱く。しかし、いくら嫌でもやらねばならぬ。おそらく救助は絶望的だ。この鴉という男に囚われている現状は完全にイレギュラーであり、上層部にはおそらく自身の行方を掴めていないだろう。そんな中頼れるのはもう己しかいないのだ。何より、魔族である鴉に屈するなど自身の誇りが許さない。

 そんなことを考えていると車が静かに停車し執事服を着た高位淫魔族と思われる男が扉を開けて恭しく首を垂れる。

「ついて来い」

 それだけ言うと鴉は車から降りて歩き出す。その後ろを渋々追う静流は自身の現在地を知った。

(東京キングダムの繁華街───)

 東京湾に浮かぶ無法地帯である東京キングダムにおいてまともに街と言える体裁を整えているエリア。それがここである。東京キングダムにおいて力を持つノマドの様な大組織が拠点を構えているエリアでもあり無法地帯である東京キングダムにおいて一定の秩序が存在する場所でもある。まぁ、だからと言って安全かと言えばそうでもなく、有力者のテリトリーが乱立するエリアであるからこの無法地帯に集まった訳有りの住人達もある程度静かなだけだ。なにせ、このエリアでうっかり力をひけらかしたが故に、大組織の幹部の怒りを買い惨たらしい屍を晒した新入りは数えるのも億劫な程に居たのだから。

 そんな繁華街にある一つのビル。その前に停車した車から降りた二人はそのビルの扉をくぐる。

 室内は落ち着いた調度品にシックな音楽が流れる何らかの店舗であるらしく従業員と思われる女魔族が二人静かに鴉に近づいて頭を下げる。

「本日はご来店ありがとうございます。ご予約はお済でしょうか?」

「ああ、鴉だ」

 鷹揚に答える鴉に女は、にこりと微笑む。

「鴉様ですね、承っております。本日は全身エステをご予約でしたが後ろの女性で間違いございませんでしょうか?」

「ああ」

 どうやらここはエステサロンらしい。無法地帯にエステサロンとは何とも場違いだが、こんな場所でも美しさに磨きをかけたがる女の欲望と執念は恐ろしいものだと自身も女であるが呆れる静流。

「それではお客様、こちらへどうぞ」

 何が悲しくてこの男の為にエステを受けなければいけないのかと思いつつ、それ以外の選択肢がないので溜息を一つ漏らし静流は先導する女魔族の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一旦全ての衣服を脱ぎ、貫頭衣の様な簡素な服に着替えた静流は施術室というべき部屋に通された。

 一目で用途の解る道具や今一つ用途が不明な道具の数々、大小さまざまな容器に入れらた薬品の類。室内には穏やかな音楽が流れ、見苦しくないようにセンス良く観葉植物が設置され客の緊張の緩和を促す。

 まずはマッサージで血行を促進するらしくうつ伏せになった静流のはみ出た巨乳が見える背中から、スタッフの手で温められた薬液を塗り込まれる。

「んっ」

 手で温められたとはいえ、まだ微かに冷たい薬液に思わず声が漏れる。薬液の冷たさになれる頃には背中のマッサージは終わり、硬すぎず柔らかすぎない素晴らしい弾力の丸みを帯びた魅力的な尻。むっちりと肉付きがよいがけして見苦しさはない太股。すらりとした脹ら脛。対魔忍という過酷な職業でありながらモデルになれそうな美しい足。血行が良くなっていくためかそれらにうっすらと朱が指した頃、複雑な心境ながらもマッサージを堪能していた静流の吐息に熱が籠り始める。自分の躰が昂って来ていることに気が付いた静流は思わず横に伸ばした腕のマッサージをしている魔族を睨み付けるが、相手はそれに気づいて苦笑を浮かべた。

「血行を良くすることが目的ですので一切媚薬の類いは使用していません。ただ経験者は多少興奮してしまいますが。お伺いしたお話ですとお客様は治療済みではあるようですが、オークの媚薬成分に犯されていたようですので、多少の興奮は我慢してください」

 その言葉に苛立たしげに舌打ちをする。確かにオークに犯されていた時に比べれば躰の昂りは穏やかだが、“治療済み”という方が気に入らない。治療ということはおそらく魔科医の手によるものだろうがその際、何かを仕掛けられている可能性もあるのだ。ただでさえ首輪があるのにこの上、体を魔界の住人に弄られいるなどプライドの高い静流からすれば業腹な事この上無い話だ。

 そんな静流をさておきエステは恙無く進んでいき最初の頃こそ不満だらけだった静流も色々と馬鹿らしくなり最後には素直にエステを楽しんでいた。物凄い開き直りでありのそうする他無いからでもある。

 そうして幾ばくかの時間が過ぎた頃、全身を磨きあげられた静流と鴉は対面することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当に業腹ですけど、魔界の技術はこんなことまでずば抜けているなんて侮れないですね)

 再びドレス姿に戻った静流は先導する魔族に続きながら自分お体を見やった。オークの苛烈な陵辱で荒れ果てた肌は潤いきめ細やかで触れれば手に吸い付く卵肌。酷く乱暴に扱われて渇き枝毛が目立った髪は潤いを取り戻し一本一本が煌めいて歩く風圧に軽やかに舞っている。自身の置かれている環境故か緊張で強張っていた体もすっかりリラックスしたためか、歩く姿も施術前と比べて美しく見える。全体として一段上の美貌に磨きあげられた静流は美容にまで及ぶ魔界の技術に驚くやら呆れるやら。

 もっとも、静流は知らないことだがこれ程の美容技術を有するのは淫魔族の一部だけであり、流石にありふれた技術ではない。

 そうして静流が案内された部屋にはソファーに座り優雅に紅茶を飲みながら読書に更ける鴉が居た。周囲に他の利用者が見えないのは、利用者が少ないのか絞っているのか。少なくとも静流には後者に思えた。

「お待たせいたしました鴉様。お連れ様の施術が終了いたしました。いかがでしょうか?」

 傍らのテーブルに本を置き、立ち上がった鴉が静流の髪を一房手に取る。極上の絹の様な手触りを堪能した後に、頬を撫で上げその手に吸い付く卵肌を楽しむ。その度に静流の体は震え、嫌悪で眉をしかめるが鴉はそれに気付いても一切頓着しない。

「いい仕上がりだ、悪くない。あの女の紹介だから些か疑っていたが中々どうして………これからも贔屓にさせてもらおう」

「ありがとうございます」

 恭しく頭を下げる魔族に満足げに笑みを浮かべるとマスクを取り付けて歩き出す。

「会計を───それと、日頃のケアに必要な商品を一式。来月分までだ」

「かしこまりました。ご用意しますので少々お待ちください」

 鴉の言葉に魔族は笑みを浮かべ静かにしかし素早く移動していく。それを見ながら静流は複雑な心境になった。対魔忍という生業に身を置く静流ではあるが、対魔忍であろうとも女。自身の美容に興味が無い訳ではない。今日受けた施術はそういう意味では喜んで受けたいものだが、場所が東京キングダムの上に魔族のペットとして受けねばならぬのは屈辱極まりない。これがまっとうな技術として五車町で受けられるのであれば多少の無理をしてでも通うのだが………

(考えるだけ無駄ですね。とにかく今は生き残る為に───)

 自身をペットと呼び、体を磨き上げた男の次の行動を考え憂鬱な気分になる静流であった。

 

 

 




如何でしたでしょうか?

今回は繋ぎの回なので特に物語は動きません。
そして、次回はエロの予定。

ちなみに、どうして男キャラが鴉なのかと言えば、静流が薔薇の鞭使いだからというしょうもない話。
ただ鴉はエロ的には有りなキャラだと思う。コイツの変態発言と行動は未だに記憶に残ってる。まぁ、同じ冨樫作品の某ピエロよりはマシなんだろうけど。
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