※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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引き寄せられる日常Part1

---和泉正宗---

 

土曜の朝、呼び鈴が鳴り、応対に出ると…セーラー服姿の先輩が立っていた。

 

「今日は、どうされたんですか?やけに早いですね?」

 

彼女の自宅からは、ここまで時間的に結構かかる。

 

「マサムネ君…いや、和泉マサムネ先生…隣に引っ越して来ました。てへっ♪」

 

顔を傾け、笑顔で言われた…妖精のような笑顔に、落ちかけた俺…

 

「と、と、隣?エミリーの家?」

 

「違います…正確には裏になるのかな?」

 

少しモジモジした姿に、引き寄せられる俺。

 

「兄さん!その女の戦略に嵌まっちゃダメ!」

 

階段の上から紗霧の声が聞こえ、現実に引き戻された。

 

「先輩は裏に引っ越して来たそうだよ」

 

「ふ~ん…」

 

エロマンガ先生モードだと先輩と仲が良いが、素の紗霧だとそうでも無い関係のようだ。

 

「で、ちょっと来てくれるかな?」

 

「兄さん、行っちゃダメ!」

 

後ろを振り返り、紗霧に声を掛けた。

 

「紗霧、一緒に行かないか?」

 

「「えっ!」」

 

二人の妖精が同時に声を上げた。

 

「行きたいけど…う~ん…」

 

紗霧は困った表情である。一方、先輩は俺の服の裾を握っている。どうしたら良いのか?

 

「あっ、時間だよ~。兄さん、行ってもいいけど、直ぐに帰ってきてね♪」

 

「あぁ、作業場に行かないとダメだから、直ぐに戻る」

 

俺の返事を聞き、自分の部屋に戻る紗霧。毎週見ている番組が、始まる時間のようだった。。

 

「さぁ、来て下さい、マサムネ君♪」

 

-------

 

玄関を出て、最初の角を左に曲がり、俺達の家を通り過ぎると、表札に『梅園』と書かれた家があった。

 

「ここですよ。近いでしょ?」

 

まぁ、家の真裏だし。

 

玄関を入ると、リビングがあり、奥には執筆部屋のような部屋があった。所狭しと、俺の本が置かれ、先輩直筆のノートが積み上がっている。

 

「ここから、マサムネ君の部屋を見ながら、作品を書きます」

 

自然と先輩との距離が縮まり、先輩が俺に抱きついて来た。

 

「ねぇ、抱いて…」

 

お願いをされたので、先輩をお姫様抱っこで、抱き抱えた。

 

「そうじゃなくて…」

 

先輩の唇に自分の唇を重ねた。先輩は自分の腕を俺の首に回し…

 

-------

 

全裸の先輩を描く俺…

 

「えっ?私ですか…なにやら恥ずかしい…」

 

全裸の妖精が何者かに、お姫様抱っこされる構図を描いている。あの時の先輩の表情に心が奪われたから。

 

「う~ん、先輩、こう言う抱き方だと、妖精の羽はどうなるんですかねぇ」

 

妖精の羽は何者かの腕と自重にサンドウィッチされている。潰れるのか?いや、それよりも痛く無いのだろうか?

 

「どうなるのかな?羽が無いのでわからない」

 

コウにでも訊くかな。フェアリー系のゲームキャラのデザイナーだし。

 

「そろそろ、戻ります。紗霧の見ている番組が終わる時間ですから」

 

「わかったよ、後輩…いや、マサムネ君…その絵はくれるか?」

 

「では、コピーしたモノを後で、お持ち下さい。コウと羽問題を検討したいので」

 

「うん。わかった♪」

 

先輩の家を後にした。

 

 

 

---加藤恵---

 

安芸君がしつこく、うるさい。別に2次元ヒロインに、なりたいわけではない。安芸君が私を、2次元ヒロインにプロデュースしたいだけなのだ。

 

「いいか、加藤。お前のことを一番理解しているのは、この俺だ!」

 

あぁ、言い切っちゃったよ…まるで理解していないのだが…

 

「ごめん、安芸君。約束があるから、行くよ」

 

安芸君は私の手首を掴んだ。

 

「行かせる訳に行かない。お前は俺の傍に居れば良いのだ」

 

う~ん…ムネ君が待っているのだけども…

 

「俺以外の男は認めん!」

 

だから…安芸君に認められなくてもかまわないって、何度も言っているんだけども…あっ!おまわりさんだ♪

 

「すみません、ストーカーが離れなくて、困っているんです」

 

「何?」

 

おまわりさんは、私の手首を現認して、安芸君を取り押さえた。

 

「加藤!何のつもりだぁぁぁぁ~!」

 

「安芸君、しっこい!私はあなたの女ではありません!」

 

急がないと、遅刻だよ~。私は駅へと走って行った。

 

 

 

---八神コウ---

 

う~む、考えたことも無かった。妖精がお姫様抱っこされた場合、羽はどうなるかだって…

 

「コウ、妖精はお姫様抱っこしちゃいけないのかな?」

 

マサムネ君から質問が押し寄せて来る。

 

「そうだな…いけない事は無いけど…妖精はお姫様で無いからな…」

 

ひねりもしない素の答えを返した、夢が無いと思われそうな私。

 

「そうか…そういう存在では無いのか…」

 

「いや、マサムネ君。大きさが違うから無理じゃないかな」

 

って、うみこ。なんで、割り込んで来るのだ?

 

「あぁ、そっか…妖精は小さい存在だから、抱き締められないってことか…」

 

「昆虫のウスバカゲロウみたいな者って、考えれば良いと思う」

 

頷くマサムネ君。

 

「ありがとう、うみこ。すっきりしたよ」

 

「いやいや、お役に立てて、良かった」

 

嬉しそうなうみこ…一歩出遅れた感がする。

 

「で、うみこ。これって、プログラムできるかな?」

 

何かの資料を、うみこに手渡すマサムネ君。

 

「う~ん…はじめさん、どうかな?これ?」

 

はじめを呼んだうみこ。そっと近寄り、資料を盗み見た。あのエロマンガ先生のイラストを紙芝居風にした本を、ビジュアル化したいようだ。それもモーションピクチャーで…

 

「出来無いことは無いけど…難しいかな。誰でモーションキャプチャーするかだな。それに…」

 

あぁ、費用が嵩むな。ここにはキャプチャーマシンが無いから…

 

「りんさん、これって、イーグルジャンプ社で作れませんか?」

 

りんに資料を手渡すマサムネ君。

 

「う~ん…難しいかな…ゲームでは無いよね?」

 

「電子紙芝居というか…モーションピクチャーを表示して、その部分の文字も表示する感じです。声やBGMはつけません」

 

「そうね…まぁ、企画会議には出してみます。難しいかな…う~ん…」

 

って、私は蚊帳の外か?りんと目が合った。

 

「ふふふ、イラストレーターはエロマンガ先生よ♪コウちゃんの出番は無いわねぇ~、残念♪」

 

そうなるのかぁ…ここには、柏木エリ先生もいるし…ライバルとして強敵ではある。

 

「なぁ、あれはそろそろか?」

 

詩羽さんが訊いている。

 

「アレ?なんだっけ…」

 

私と目が合ったマサムネ君。年甲斐も無く、耳が熱くなっていく。

 

「あぁ、画集ですね。そろそろの筈です。来週、出版社に訊いてみます」

 

ゲラ刷りは見たが、何点かを入れ替えたらしい。気になる。私がモデルの絵が出ているのかどうか…

 

 

 

---加藤恵----

 

警察署にいる…被害届けを出す為だ。あぁ、今週は行けそうも無いなぁ…

 

安芸君は、相変わらず、独自解釈を刑事さんに披露しているそうだ。

 

「学校は彼と同じクラスなのか?」

 

「はい…」

 

「転校も考えた方が良いなぁ」

 

転校か…ムネ君と同じ学校…良いかもしれない。住む場所だな、問題は。

 

「彼はどうなります?」

 

「片思いって感じなんで、対応は難しいなぁ。未成年だし、非行歴も無いし、学校での素行も悪くないし…まぁ、君が嫌がっていると認識出来無いのは問題だよな」

 

お咎めは無いらしい。接近禁止令も同じ学校に通っている限り、出さないかもしれないと言う。まぁ、しつこい以外に問題は無いしなぁ…どうするかな…

 

 

 

---遠山りん---

 

金曜日…会議をしているとスマホに着信があった。相手を見るとマサムネ君だった。

 

「すみません。ちょっと、中座します」

 

会議室から出て、着信を受けた。

 

「何か、あったのか?」

 

「今、大丈夫ですか?」

 

まだ、学校の時間のはずだが、街並の喧騒がBGMで流れている。

 

「大丈夫だけど、どこにいるの?」

 

「アポ無しで来ちゃいました…」

 

「どこに?」

 

「イーグルジャンプ社の入り口にいます」

 

「何かあったの?」

 

「先週、帰り際にコウが…寂しげだったんで…印刷所から1冊貰って来ました」

 

印刷所から…あぁ、アレか…コウちゃんの為に…学校を休んで…

 

「今、行くから、待っていて!」

 

エレベータに走って行く。

 

------

 

そして、マサムネ君と共に、グラフィックチームのブースへと向かう。偶然、コウちゃんの視線が、私達を捉えたようで、耳が茹で上がっていくコウちゃん。

 

「な、な、な、なんで…マサムネ君…」

 

動揺が激しいコウちゃん。

 

「あれ?マサムネ君、学校は?」

 

はじめさんが訊いた。二人以外はマサムネ君とは面識が無いので、唖然としている。

 

「午後の授業は休んじゃいました。コウに、早く手渡したくて」

 

「コウって…まさか、コウさんの彼氏?」

 

ざわめくグラフィックチームのブース。男っ気がまるで無しのコウちゃん。それは驚くよな。当の本人のコウちゃんは茹でダコのように、顔も耳も紅潮しているし。

 

「あれ?マサムネ君…どうしたんだ?」

 

騒ぎが気になり、うみこさんもやって来た。うっすらと頬を赤く染めて…

 

「マサムネ君、ここだとゆっくり出来無いだろうか、会議室に行こう。上司に君を紹介したいの。君のファンだからね」

 

「ファン?あぁ、そうなんだ。う~ん、コウの分しか持って来なかったよ」

 

残念がるマサムネ君。君のそういうところ、私も好きだよ。弟枠としてね♪

 

会議室に、私、マサムネ君、コウちゃん、うみこさん、はじめさんが入室した。

 

「どうしたんだ?」

 

上司の葉月さんが声を掛けてきた。

 

「葉月さんが大ファンの朝霧沙樹先生が、表敬訪問してくれましたよ♪」

 

私の言葉に固まる葉月さん、大和さん。大和さんは、出資会社である芳文堂のプロデューサーであり、芳文堂とイーグルジャンプ社のパイプ役である。

 

「え?朝霧先生って、女性で無いの…」

 

少女好きの葉月さんは、想像とは違う朝霧先生にショックを受けたようだ。

 

「で、なんで来たんだ…」

 

真っ赤な顔のコウちゃん…動揺を抑えているが、顔色までは制御出来ていない。

 

「コレ、コウに一番先に渡したかったから♪」

 

彼は紙袋から、画集を取りだして、コウちゃんへ手渡した。表紙を見て更に真っ赤になっていくコウちゃん。表紙はコウちゃんがモデルの『手の平に新たなる命を受け取る妖精』だった。

 

「これって、コウさん…」

 

大和さんが驚きの声を上げた。

 

「あぁ、サインも入れてあるよ」

 

表紙を捲ると、朝霧先生のサインが入っていた。

 

「あ、あ、ありがとう…マサムネ君♪」

 

コウちゃんが、マサムネ君を抱き締めた。

 

「なあ、私のは入っていないよな?」

 

うみこさんが確認をした。

 

「入っているよ」

 

該当ページを開いたマサムネ君。そこには、両手を手錠で拘束され、天井からフックで吊り下げられている女性コマンダーのイラスト。服のボタンはすべて引きちぎられていて、服のボタン穴から乳首がこんにちわしている構図である。その顔は恍惚な表情のうみこさんだった。小麦色の彼女の顔は、目で見て分かる位に、赤く染まっていく。

 

「これは…恥ずかしい…うぅぅぅぅ~」

 

「はじめさんのも有ります」

 

はじめさんのは、斬首された生首が板の上で晒されている構図であり、表情には死相が見えるようだ。

 

「これって、あの時の…」

 

型どりされていた時のだね。

 

「皆さん…モデルをしたんですか?」

 

大和さんに訊かれた。

 

「モデルって感じではなくて…顔の表情だけをスケッチしていたようだけど」

 

動揺して言葉が出ない三名の代わりに、私が返事をしておいた。

 

「いいなぁ…私も描いて欲しいな…」

 

大和さんは、自ら地獄へ踏み込みたいらしい。

 

「そうなの?じゃ、明日、きてください。みんな喜ぶと思う。お姉さんみたいな女性がモデルだなんて…」

 

「みんな?」

 

「他に2名、イラストレーターがいるんだよ。いや、コウちゃんもいるから3名か」

 

「そうか!これが『縁』プロジェクトの第一弾なのね」

 

葉月さんが息を吹き返した。そして、画集を1ページずつ丹念に見ていく。

 

「素晴らしい…ブラボー♪」

 

気に入ったらしい葉月さん。その気に入ったページは…えっ?私…いつの間に…耳が熱くなっていく、そんな構図…両手で陰部を隠し、腕で乳首を隠しているが、バストラインは明確であり、指の隙間からは、陰毛が…いや、汚れと言われればそうだけど…そんなギリギリセーフな描写ではある。これを出版した会社は勇気有るなぁ…

 

「これらのは、今後の作品の挿絵に使うのかね?」

 

葉月さんがマサムネ君に訊いた。

 

「そういうストーリーになればですが…今の所は予定に無いです」

 

「彼はイラストレーターなの?」

 

大和さんに訊かれ、

 

「違いますよ。彼は小説家なんですよ」

 

と、答えた私。

 

 

 

 

 

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