---和泉正宗---
土曜の朝…呼び鈴が鳴り、応対に出ると…うちの高校の制服姿の恵が立っていた。
「おはよう!ムネ君♪」
呆気に取られている俺…
「どうしたのかな?ねぇ、ムネ君♪」
「いや…どうして、うちの制服を…」
疑問を口にした俺…コスプレするにしては、地味な趣向だし…
「月曜から、ムネ君と登校できるんだよ~♪」
嬉しそうに話す恵。呆気に取られている俺…
「隣に引っ越して来たんだよ~♪」
先週のデジャブか?いや、先週は先輩だったなぁ。
「どうして…」
「そんな心配そうな顔をしないで…ちょっと、前の学校で問題が起きてね。で、転校を勧められて…どうせなら、ムネ君と同じがいいなぁって…問題が問題だったんで、知り合いのいるクラスにしてもらったんだよ」
知り合い?俺のことか?いやいや、恵の方が1学年上のはず…
「学校の雰囲気にも慣れたいから、ムネ君と同じ学年から、やり直すんだよ♪」
「そんなことって、有りなの?」
「うん♪事実は小説より奇なものだよ」
「ずるい…」
背後から紗霧の声…振り返ると紗霧が階段に座っていた。
「私は兄さんと通えないのに…ずるい…」
中学1年の妹と同じクラスは…難しい…まして、妹は登校拒否中だし…
「うん♪紗霧ちゃんの分まで、楽しんでくるね!」
そういって、俺の背後から抱きついて来た恵。紗霧はふくれっ面だ。
「紗霧…かわいい顔が台無しだぞ」
「えっ?」
耳を真っ赤にして俯く紗霧。
「で、隣って…先輩の家?エミリーの家?」
俺の肩に顔を載せている恵に訊いた。
「エルフ先生の館だよ。空き部屋がまだあるから、使っていいって。家って、誰か住まないと傷むから、好都合だって」
頬と頬が触れ合っている。今、恵はどんな表情で紗霧を見つめているのだろうか?妙に、紗霧の顔が悔しそうだし…
「あっ!紗霧、時間じゃないか?!」
はっとした紗霧。
「そうだ!始まっちゃう!兄さん、ありがとう♪」
慌ただしく自分の部屋に戻る紗霧。毎週かかさずに見ている番組って、何だろうか?少し気になるが、地上波の番組では無くて、ネットTVの番組らしいのだが…
「ムネ君、着替えて、仕事部屋に行くね。制服、汚しちゃうとマズいから。またね♪」
恵は、そう言い残すと、山田さんの家へと向かった。
---八神コウ---
今日は、昼まで仕事で、午後からマサムネ君の元へ…大和さんという手土産を持って…フランス人と日本人のハーフである彼女。スタイルも良いし、ムネもデカイ…きっと、気に入ってもらえるはずだ。ふふふ…
「コウさん、彼は彼氏なんですか?」
悪巧みを思案していると、青葉が声を掛けてきた。コイツは、手土産にはならない予感だ。
「彼氏ってことは無い。イラストレーターとしてライバルで有り…」
マサムネ君のことを考え始めたら、耳が熱くなっていった。
「彼氏なんですね?コウさんが歳下好みとは知りませんでした」
いや、私も知らなかった。まさか、マサムネ君で恋に堕ちるとは…
「彼はどんな人なんですか?」
どんな…更に耳が熱くなっていく。
「全裸で弱っている女性が、目の前にいても気遣うだけで、決して襲おうとはしない、紳士ですよ」
うん?何故か、うみこがいて、うみこが答えている…
「全裸で弱っている女性って…まさか、コウさん?!」
違う…それは、たぶん、うみこだろう。私にはそんな経験は無いし…
「まぁ、そんな感じですよ」
うみこが話を勝手に進めている。誤解されるだろう?
「何やって、弱ったんですか?」
ゆんに訊かれている。
「まさか、ヨッパらって?」
青葉の一言に、皆が「なるほど」って、頷いている。違う…えん罪だぁぁぁぁ~!声を大にして言いたいのが、顔まで熱いので、俯いて大人しくしている。
「う~ん…コウさん…私も連れて行ってください」
青葉が地獄に志願をした。いや、こいつは地獄へは連れ込まないか?見た目、中学生だし…
「行って…どうするつもりだ…」
「いえ…私もスキルアップしたいです。違う分野のイラストレーターの皆さんと交流して、一皮剥けたいんです!」
意気込みは買う。しかし…中学生枠は一杯なんだ。そう言えば、大学生枠がいないなぁ…
「勇気あるなぁ、青葉♪」
はじめが楽しそうである。たぶん、型取りすらされない気がするのだが…
---大和・クリスティーナ・和子---
仕事が終わり、りんさん、コウさん、はじめさん、青葉さんの5名で、朝霧先生のアトリエに移動中である。
「実は…芳文堂も"縁"プロジェクトに1枚噛んでいるんです」
「あぁ、出版会社ごとの壁を越えたプロジェクトらしいですね」
青葉さんが訊いてきた。
「そうよ。イーグルジャンプ社が、ゲーム部門として名乗りを上げてくれたのは、良いことだわ。これで、私も関われるもの」
りんさんの持ち込んだ企画に、上層部が目を付けた。エロマンガ先生と和泉マサムネ先生の共同企画の電子紙芝居にである。和泉先生の担当者の神楽坂さんが没指定したということで、芳文堂がその権利を神楽坂さん経由で手に入れたのである。我が社的には、文庫と電子紙芝居をセット販売を考えていたりする。
「エロマンガ先生と和泉先生はどんな方かしら…」
イメージ的にはおっさんコンビであるが、朝霧先生の例もある。期待は裏切って来るのだろうか?
「腰を抜かすなよ」
コウさんが、呟いた。そんな驚きの事実があるのだろうか?
最寄り駅近くの商店街には、マニアの間で有名な「たかさご書店」が…ここには、エロマンガ先生直筆のイラストが、展示してあるらしい。が、コウさん達は、寄り道をせずに、目的地へと向かっている。う~ん、帰りにでも寄るか。
そして、着いたのは、周りの風景に溶け込まない古びた洋館であった。表札には「山田」と書かれている。
「ここだよ。山田エルフ先生の邸宅の一部を、間借りしているんだよ」
正門の隣にあるこじんまりとした門から入った。これって、勝手口ではないのか?勝手口を入ると、小さなドアが有り、そこから洋館へと足を踏み入れた。
中には、大きなテーブルが有り、食事が用意されていた。
「マサムネ君、遅くなって、ごめん」
朝霧先生に声を掛けるコウさん。
「お腹が減ったでしょ?今日はカレーライスです」
椅子に座ると、カレーライスとオニオングラタンスープが出て来た。キッチンもあるようだ。大きなテーブルの向こうには螺旋階段があり、その向こうは大きな間口の窓が有り、庭が一望出来るようだ。
「いただきま~す♪」
美味しい…よく煮込まれたカレーだ。
「マサムネ君は料理が得意なんだよ」
自慢げに朝霧先生のことを話すコウさん。一体、どういう関係なんだ?
「あぁ、そうだ。紗霧ちゃん、コレ」
中学生くらいの女の子に、うみこさんが何かを手渡した。
「エアーガンですね。おぉ~、本物ソックリな外観…」
女の子は、エアーガンを、スケッチしていく。彼女はイラストレーターの卵かな?
「エルフ先生とムラマサ先生は?」
りんさんが訊いた。
「まだ、今週分の仕事が上がっていないから…今週は無理かな?」
確か、"縁"プロジェクト参加の作家の条件は、本業をおろそかにしないだったわね。
「詩羽さんとエリさんは、奥で作業中ですよ」
柏木エリ先生がいるのか…高鳴る胸の鼓動…
「食後に、紹介します」
朝霧先生もスケッチブックを手にして、何かをスケッチし始めた。静かなランチタイム…しかし、長くは続かなかった。
「みんな、やっているかい~♪」
業界でも有名な敏腕編集者の神楽坂さんが来訪した。
「おぉ、大和さん♪早速の訪問かぁ♪で、和泉先生!」
「はい…」
えっ?!返事をしたのは朝霧先生だった…何故?
「君に出版枠をあげよう♪」
「どれでですか?」
「うん?あぁ、没原稿が多いから、作者も困惑かな?ははは♪」
朝霧先生?は困惑している。
「『世界で一番かわいい姉妹達』ですよ。あぁ、シリーズ化してくださいね♪」
「シリーズですか?ネタが…」
「最低でも5巻は書いて下さい。それが条件です♪」
「鬼…」
「電子紙芝居を大和さんの会社に譲った、そのあおりですよ、和泉先生♪」
いや、譲ったのは神楽坂さんである。いや、ちょっと待って…
「か、か、か、神楽坂さん…和泉マサムネ先生って…」
「あぁ、秘密事項ですよ。朝霧先生と同一人物ってことは♪」
え…作風がまるで違う…
「この大先生は、信念を持ってラノベを書かれているんです。副業のペンネームの方が有名で売れているとは、皮肉な話ですよ。まったく…たまには、私が担当している作品でも、大ヒット作を作って下さいね!」
「はい…鋭意努力中です…」
「大先生、7人の妖精シリーズが、ヒットの兆しですが、私の担当作にヒットの兆しが無いのは、嫌がらせですか♪」
楽しそうに担当作家を虐めている神楽坂さん。
「いや…持ち込み作品数は、神楽坂さんが一番ですよ…」
「ギネスに登録しようかな…毎月没原稿が5作以上って、和泉先生くらいですよ。普通は才能を疑うでしょ?」
毎月5作も没原稿…いや、その合間に朝霧作品も…彼、寝ているんかな?
「まぁ、千寿コレクションシリーズで、サルベージしているから、このくらいにして上げましょうかね」
「ちょっと待ってください、千寿セレクションシリーズで無いんですか?」
「ムラマサ先生が、コレクションシリーズにして欲しいと要望を出されましてねぇ♪」
「マサムネ君、そういうことになった。あぁ、神楽坂さん、これ、今週分です」
中学生くらいの女の子が、ノートの束を神楽坂さんに手渡した。
「千寿先生…こんなに書いたんですか?」
千寿先生?この子が千寿ムラマサ先生なの…
「マサムネ…やっと、解放されたわ…」
ピンクを基調にしたゴスロリドレスの金髪の女の子が入って来た。
「彼女が山田エルフ先生ですよ」
神楽坂さんが紹介してくれた。え…こんなに若い…いや、幼い子が売れっ子作家なのか…
「一番の驚きをしてもらいましょうかね。あのペンタブレットの子がエロマンガ先生で、和泉先生の実の妹さんですよ」
絶句するしかない。おっさんコンビは、良い方向に裏切られたが、斜め上を行く裏切り方ではある。
「よし、上がった。神楽坂さん、チェックをお願いします」
奥の部屋から、高校生ぽい女の子が出て来た。持っているのはコミカライズの原稿…柏木エリ先生かな…
「霞詩子先生、よろしいですか?」
「はい♪」
神楽坂さんに呼ばれて、奥の部屋から出て来たのは、綺麗な女性であった。
「これで、クリエーター陣は紹介終わり。続いて、りんちゃん、そちらの新人さんを紹介してくれるかな?」
「あっ、はい。芳文堂の大和・クリスティーナ・和子さんです」
私は立って、頭を下げた。
「ハーフ?」
えぇっと…彼女は…山田エルフ先生だったかな。
「えぇ、フランスと日本のハーフです」
私の代わりにりんさんが答えた。
「もう一人は、我が社のグラフィックチームの涼風青葉です」
「よろしくお願いします」
「大和さんは、モデルになりたいそうです。青葉さんは、クリエーター陣と情報交換して、スキルアップしたそうですので、よろしくお願いします」
「神楽坂さん…じゃ、これ…」
和泉先生が、神楽坂さんに原稿用紙の束を渡した。
「お前…こんなに書いてあったのか…」
「まぁ、ネタが浮かばない時に、日記のように描き溜めました♪」
「兄さん、出版枠確保、おめでとう♪」
「紗霧達のおかげだよ♪」
妹さん達と喜ぶ和泉先生…
---和泉正宗---
別室にて、俺と紗霧、大和さんで、電子紙芝居の打ち合わせをする。
「ラノベ絵本とセットで販売する予定です」
「販売形式はおまかせします」
「で、モーションピクチャーは無理かもしれないわ…ヒットすれば、2作目以降では予算が付くかもしれないけど…」
確かに、お金がかかるよな。でも、対策は考えてある。
「うみこに、絵と絵の間を補完できるようなプログラムを、個人的に頼んでいます。だから、コマ割りがうまく行かない箇所に関しては、妹にイラスト補完してもうらうように頼んでいます」
紗霧が大和さんに指でVサインを示した。
「あぁ、そのプログラムは、今後のゲーム製作でも使えるわね」
「ねぇ、モデルさんになってくれるんですよね?」
うっ…紗霧が徐々にエロマンガ先生のような目付きで、大和さんを舐める様に見ていた。
「えぇ…そのつもりで来ましたけど…」
黒のレディーススーツを着ている大和さん。どんなシチュエーションを浮かべているんだ?紗霧のやつは…
「囚われの女秘書とかは?どうかな、兄さん…」
えっ!って表情の大和さん。いや、驚くだろう。そんな構図をいきなり…戸惑っている大和さんを、紗霧の指示通りに、椅子に縛り付ける。
「どういうことですか…」
「いいですねぇ♪その恐怖に飲み込まれそうな表情は」
ペンタブレットを手に描き始めた紗霧…いや、たぶん、すでにエロマンガ先生に変身したかもしれない。
「和泉先生も描いたら、いかがですか?」
う~ん、何かそそらない。これでは、普通過ぎる…って、エロマンガ先生の発想に感染しているような…ははは。
ブラウスの第2ボタンまではずす。ムネの谷間が見え、ブラは見えそうで見えない。スラックスのホックを外し、チャックを降ろして、パンティを露出させる。
「何をしているんですか?止めてください!」
何枚か描くと、
「ポーズチェンジだな。和泉先生♪」
完全にエロマンガ先生になった妹…ポーズチェンジって、いってもなぁ…