---羽島千尋---
「パンツ見せて下さい♪」
目の前にいる、天使のような笑みを浮かべた少女から、飛んでもない言葉が飛び出した。固まるボク…
「紗霧、初対面の人に、それはダメだよ!」
正宗君の声…
「だって、かわいいんだもの…」
困ったような、かわいい声…
「千尋君、ごめんな。妹の紗霧は、女の子のパンツフェチで、女の子の靴下フェチなんだよ」
この家では妹の方に狂気が舞い降りているのか…
「兄さん、今日の夕食は?」
冒頭の言葉を感じさせない日常感のある会話…妹さんの切り替えが早い。
「紗霧の好きなオムライスだよ」
「ねぇ、夕食が出来るまで、お姉さんと私の部屋で遊んでくるね♪」
「無茶と無理は止めろよ」
「わかっています。無茶振りはしても、無理強いはしません♪さぁ、行きましょう」
天使の笑みを持つ無邪気な鬼畜に手を掴まれ、彼女の部屋へと連れ込まれて行く。彼女の笑みに魅入られたようだ…
---和泉正宗---
「エミリー、手伝ってくれるか?」
「もちろんよ。何をすればいいかな?」
山田エルフ大先生を顎で使う。紗霧と一緒にすると、千尋君が危ないから。
「卵を泡立ててくれるか?空気を含ます感じで」
「ふんわり卵ね。了解です♪」
エミリーと並んで夕食の準備。そこに、
「マサムネ君、夕食は何かな?」
神楽坂さんに解放された先輩がやってきた。
「花ちゃん、オムライスだよ。味噌汁をお願いできるかな?」
「わかったよ。後、本名呼びは避けて欲しいんだけど…」
「そうよ、マサムネ。本名は二人だけの時にしてよ」
妹枠二人は、本名で呼ばれるのが好きでは無いようだ。先輩は、俺の部屋に置いてある割烹着を着込み、味噌汁の出汁取りから始めた。
---白川京---
高校生以上の女子ばかり…ガールズトーク会になっていた。
「で、みゃーさんは彼氏いるのかな?」
詩羽さんに訊かれた。あぁ、みゃー呼びは、千尋君がしたのを受けたようだった。
「いませんよ。誰かいませんか?」
「いるけど、女体として認識されていないからどうかな…」
って、りんさん。それって、和泉先生ですか…う~ん、イケメンって感じでは無いし、甲斐性があるようにも見えないのに、薦められてもなぁ。
「まぁ、青葉も認識されていないよな。マサムネ君的には妹枠の中学生だし」
コウさんが、からかうように言った。
「中学生ってひどいです。せめて、高校生にして欲しいですよ!」
「彼の判断基準って、わからないですよね」
って、うみこさん。この人も表情から感情が読めない。ここに集う女子自体、クセが強い気がするのだけど…
「いや、好みもわからないですよね」
って、大和さん。好み?あぁ、和泉先生のかぁ。
「来る者拒まないタイプなんで、好みがわからないと言うか」
誰でもいいのか?女なら…あれ?それだと、私の立場…
「そうだよな。誰でも良い訳でも無いよな。現にみゃーさんは、女体と認識されていないし。ボーイッシュの千尋君を、迷わず女体と認識したらしいし。う~ん…」
悩み込むコウさん。そうだよね。千尋君が女の子って、私は気づけなかったし。どうやって認識したんだろうか?
「みゃーさん、マサムネ君にせまってみたら?」
って、りんさん。
「いや、好みでは無いです…」
「みんな最初はそうらしいわよ。ねぇ、コウちゃん♪」
りんさんの言葉を受けて真っ赤になったコウさん。へぇ~、そうなんだ。
「私にとっては弟枠だし、コウちゃん、マサムネ君なら応援しようかな♪」
更に赤くなっていくコウさん…そんなに好きなのか?
---羽島千尋---
無邪気な鬼畜により、パンツは奪い去られた…彼女の描いたイラストに目を奪われた隙に…迂闊だった。注意するように言われていたのに…紗霧ちゃんは、ボクを描くのでは無く、奪ったボクのパンツを描いている。
「ねぇ、お姉さん…コレ履いて、ポーズ取って下さい♪」
彼女の手にしているのは、ヒモパン…えっ!あれ?ボクのパンツは?彼女の手にはヒモパンしかない。まさか、コレクション入り?
股間がすぅすぅするので、パンツを受け取って、言われた通りのポーズを…恥ずかしいよ~彼女の目はパンツに釘付けのようだ。身体では無くパンツに…
「ねぇ、ボクのパンツは…」
「後で返します♪待っていてくださいね」
って、ペンを持つ手は止まらずに動いている。少し余裕が出て来て、部屋を見回して見たけど、普通の女の子の部屋のようだ。ベッドの上には…へ?正宗君の等身大抱き枕が置かれている。欲しい…どこで売っているのかな?って、そんなに人気作家だっけ?はて?
足を踏み入れてはいけない魔界に来た気分もする。半日前には、こんなことをするなんて、夢にも思っていなかったし。
「ふ~ん、お姉さん。お尻がいいよね♪」
って、お尻に抱きつく紗霧ちゃん。正宗君に助けてもらいたいけど、こんな姿は見せてく無い…困ったなぁ…
「そうか♪抱き心地が良いってこういうことなのか!」
何か、違う方向へ行く紗霧ちゃん…どうしよう…
コンコン!
ドアをノックする音、それに続いて、
「紗霧!飯だぞ!」
正宗君の声…少し安堵感が…
「はぁ~い、今いきます♪」
って、ボクのお尻に頬ずりしているのですが…あぅ…急に身体に異変が…身体の中が熱い…こんなこと、今まで感じたことが無いんだけど…
「あっ!まずい…」
紗霧ちゃんの困ったような声。何をしたんだろうか?下半身が震えている。
「兄さん…ごめんなさい!」
階下に助けを求める紗霧ちゃん。駆け上がってくる足音…ボクをお姫様抱っこする王子様…違う…正宗君。ボクはどこかに連れて行かれる。どこに?
服を脱がされていく。抵抗せずに正宗君に身を委ねている。こんなことは初めてだ。ボクの身体に何が起きたのか?
暖かい液体に身を沈められた。正宗君も一緒に…
「ごめんね。紗霧が…敏感な部分を…」
起きた事態が分かった…頬ずりしていて、指が触れたようだ…敏感なポッチ…クリトリスに…気分的に高揚していた処に、刺激を受け、ボクの身体は準備がなされたようだ。
「暖めるとリラックスして痙攣は治まるから」
いつも妹さんの後始末をしているのかな?こうやって…
「ねぇ、正宗君…抱いて…」
冷静な思考とは裏腹に、ボクの口は早まったことをしている。ちょっと待って!
正宗君の唇がボクの唇に重なった。手で彼を跳ね除けようとしたのだが、ボクの腕は彼の背中を抱き締めている。初体験は彼の家のお風呂場…頭がのぼせていく。湯船の温度のせいも有るとは思うのだけど、そうでも無い気がする。
気が付くとボクの腰は動いていた。こんなにも貪欲かって思えるくらいに…ボクの中で、これまで眠らせていたメスの部分が目覚めたのかもしれない。それも、彼の胸を背もたれにして…体位が変わっている…2プレイ目?思考が止まっている気がする。体内に刺激が波のように、打ち付けては引いていく…気持ちが良い…これが男女の禁じられた関係…
意識が覚醒していく。バスローブを着て、ベッドに寝かされているようだ。
「目覚めたね…ゴメン…妹が無茶をして…」
私にずっと付いていてくれたのかな?ここはどこだろうか?周囲を見回すと、正宗君の部屋のような気がした。部屋の隅にPCがあり、畳の上には原稿の山がいくつも有るし。
「大丈夫かな?」
「まだ、少しぼんやりしています…でも、大丈夫です。湯あたりをしたような気分です」
「お水は飲む?」
頷く私ボク…口移しで水が…抵抗せず、それを飲み干す。あぁ、そうか寝たままだからか…
「起きられるようになったら、食事の準備をするからね♪」
立ち上がった彼の後ろには、正座をして項垂れている紗霧ちゃんがいた。
---白川京---
「紗霧ちゃんがやらかしたのか?」
千寿先生が、事件の一報を知らせに来てくれた。
「話を聞く限り、事故のようだけど…封印されていたメスの部分が、覚醒したようだ」
義弟として接していた千尋君。精神的に葛藤していたのかもしれない。そこに、魔の手が…封印を破られたのか。
「今はマサムネ君が看病している。毎度のことだから、対処はわかっているようだ」
毎度?彼の妹は何度も事故を起こしているのか…
「ムネ君は紗霧ちゃんのしたことの責任は取るから…あぁ、またライバルが増えちゃうなぁ~」
って、恵さん。ライバル?また?分かっているのは、恵さんとコウさんだけだけど…彼のどこが良いんだ?
「みゃーさんが餌食になるか、賭けないか?」
って、霞先生。賭け?はぁ?
「成立しないでしょ?」
って、柏木先生。
成立しない?なんで?
「そうなるか…う~ん…」
「どう意味でしょうか?」
柏木先生に訊いてみた。
「紗霧ちゃんは当分大人しいわよ。今回はだいぶ絞ったようだし。一番の理由は、マサムネ君が興味を抱いていないことかな」
興味が無い…それは女体として認識されていないのか?
「見た目の年齢が高いって感じかな。神楽坂さんにも手を出していないし」
見た目…私って、老けているのかな?
「いや、作風のイメージに合わないだけでは無いかな」
って、千寿先生。和泉先生のコアなファンらしい。売れっ子作家が、あまり売れ無い作家のコアなファンって、ちょっと不思議ではあるけども。
「紗霧ちゃんは、マサムネ君のストーリーにあった物しか、描かないからな。みゃーさんは、弄りようの無い完成された姿なのだろう」
完成された姿…ちょっと嬉しいけど、仲間はずれ感が濃いのは悔しい。いや、進んで鬼畜の餌食には成りたくは無いけど…微妙な感じである。
「まぁ、新作を書き始めれば、また疼くだろうから、賭けはその辺りかな」
って、賭けはするのかい!
---羽島千尋---
ムラマサ先生に、家に連絡を入れて貰った。温泉に一緒に行って、湯あたりを起こしたので、ムラマサ先生の家に泊まるって事にしてもらったのだ。
正宗君はアトリエへ仕事をしに出て行った。代わりにみゃーさんと恵さんが、様子を見に来てくれた。こういうのは女性同士の方が良いって、ことらしい。
「どう?落ち着いたかな?」
って、恵さん。
「はい。少しボンヤリしていますけど…」
「のぼせたらしいよ。きっと、熱めのお風呂に浸かり過ぎたんだね」
咄嗟にお風呂の準備をしたため、温度設定をとちった可能性があるらしい。その件で、正宗君がボクに謝っていた。
「正宗君と…後悔はしていません。寧ろ、背負っていた物を、降ろさせてくれた感じで、感謝したい気分です」
「義理の弟の件?」
みゃーさんに訊かれた。答える代わりに頷いたボク。
「ここでなら、女の子していいんだなって…正宗君の前なら、本当の自分を出していけるかなって…」
「そうだと思う。ムネ君の前では本当の自分を出しているよ。私のダメな部分から目を背けないし、彼は嫌な顔せずに向き合ってくれる。こんな私を…たまに頼ってくれるのが嬉しいんだ」
って、恵さん。相変わらず、表情から感情は読み取れない。正宗君なら、読み取れるのかな?
「義理のお兄さんの件は、みゃーさんから聞いて、みんな知っているよ。ここでは、気にせずに過ごせば良いと思うな。後…ムネ君も、心の闇を抱えているから、注意してあげてね」
正宗君の心の闇…一人で留守番が出来無い…子供の頃、一人で留守番をしているときに、実の母親が交通事故で亡くなったそうだ。それ以来、一人で留守番が出来無くなったそうだ。更に、あの兄妹の抱える心の闇…二人が初めて出逢った日に、再婚した両親は新婚旅行へと向かう途中に交通事故で…それぞれの義理の親から、連れ子を頼むとそれぞれが頼まれたらしい。だから、兄を一人にしないように引きこもりになった妹…妹のしたいようにさせたいと願う兄…そんな感じらしい。
「誰しも心に闇は抱えていると思う。でもね、支え合えば、どうにかなりそうに思えるんだよ」
そう思います。今も支え合っているんだと思う。恵さんとみゃーさんはボクを支えてくれている。ボクも誰かを…
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翌日、紗霧ちゃんが、書き下ろしのイラストとボクのパンツを持って、謝りに来た。
「昨日は…ごめんなさい!」
丁寧に土下座をしている。
「また、遊びに来ていいかな?パンツを脱がすのは禁止ですよ」
「はい♪脱がさずに描きます…」
まだ、描くんだ…パンツフェチ…う~ん、スゴい…
「お腹減っているだろ?オムライス食べる?」
正宗君からの言葉…それが無性に嬉しいボクがいる。
「食べます♪」