※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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カオスな館

---白川京---

 

久しぶりに、なゆちゃんが缶詰になっているホテルへと、足を伸ばした。

 

「どうしたんですかぁ~、みゃーさん…最近見ないから、心配してましたよ~」

 

って、全裸で私を出迎えてくれたなゆちゃん。可児那由多という売れっ子作家であるのが、全裸でないと執筆出来無いという技の持ち主である。

 

「男でも出来ましたか?」

 

「出来ていません。バイトが忙しくてね」

 

バイトは、あのカオスな館でのお仕事である。

 

「バイト?出版社だったよね?どこかの作家付きかな?」

 

「まぁ…」

 

「え!バイトなのに作家付きなの?」

 

驚いた表情をするなゆちゃん。

 

「バイトなのにねぇ…」

 

苦笑いする私。

 

「誰に付いているの?」

 

「和泉マサムネ先生…」

 

一番仕事量の多い作家名を上げた。月産5作もの没原稿の他、全うな仕事を月に1作半こなすスーパー作家だと思うのだ。

 

「累計20万部だっけ?へぇ~、そんなに売れていないのに、みゃーさんをねぇ♪いい男なの?」

 

「全然。イケメン系でも無いし、醤油顔でも無い。恋愛対象にはどうかなって感じよ」

 

恋愛対象に…未だに女体として認識されていない。これは言えない情報だな。

 

「採算取れるのかな?出版社は?」

 

取れていると思う…職業は売れ無いラノベ作家ではあるが、裏稼業でベストセラー作家だし…これは口外出来無い秘密事項である。

 

「どうだろうね?バイトの私にはわからないわ」

 

何かを疑うような視線でみるなゆちゃん。

 

「ラノベ作家になる夢はどうしたの?」

 

以前は、そういう夢はあったけど…あのカオスの館勤めになって変わった。作家よりも今の仕事が楽しいのだ。今の仕事、作家間、出版会社間の連絡及び調整である。醍醐味は、発売前の新作が読めること…一緒に書いている気になれることかな。後者の比率は大きいし。

 

「あきらめたわ。売れ無い典型が目の前にいるんですもの」

 

彼は売れ無い訳では無い。現に裏稼業の方は売れまくっている。相棒の存在が大きい気がする。相棒の作品を使いたいが為の作品作り…売れ無い原因の一端だと思う。

 

「ふ~ん…それにしては、生き生きしているのが、不思議…」

 

疑っているのは、そこなのか…確かに生き生きしているかも知れない。あの仕事になってから、毎日が楽しいのだ。

 

「そうかな…で、伊月は最近、どう?」

 

千尋君の義理の兄で、なゆちゃんの想い人で、私の元クラスメイトのことを訊いた。

 

「どうって…変わり無く、妹愛に燃えているわよ。これから行く?」

 

行くといらんことを話してしまいそうだ。

 

「止めておくわ」

 

「そうなんだ…ねぇ、朝霧沙樹先生に会えるかな?」

 

え!一瞬固まった私。ソレをなゆちゃんは見逃さなかった。

 

「知っているんだね♪ねぇ、会いたいんだけど、セッティングしてくれないかな」

 

甘えるように言うなゆちゃん。

 

「会ってどうするの?忙しい作家さんなんだけど」

 

「ほぉ~、そう来たか。みゃーさんって、朝霧沙樹先生付きなのね♪」

 

「違うけど…」

 

まぁ、同一人物ではあるが…

 

「ねぇ、会いたいよ~♪」

 

「これから行く?」

 

「うん♪」

 

エサに喰い付いた魚…

 

--------

 

なゆちゃんを手土産に、カオスな館に出勤…早速、霞先生、柏木先生が喰い付いた。

 

「中々、エロいですね」

 

「エロさが醸し出されているわね」

 

たじろぐなゆちゃん。

 

「え?あの…どなたですか…」

 

「おぉ~♪」

 

ペンタブレットを持ち、なゆちゃんを色々な角度から見るエロマンガ先生。今日は、千尋君がお泊まりに来るので、エロマンガ先生を預かったのだ。その為の手土産…カオスな館の住民達の毒気を帯び始めた私。

 

「えっ?ねぇ、みゃーさん…朝霧先生は?」

 

「明日の朝、来ますよ♪」

 

「新人のモデルさんですか?」

 

エロマンガ先生に、触発された青葉さんも、ペンタブレット持ち、エロマンガ先生同様に色々なアングルからモデルさんを見ている。

 

「あれ?なゆちゃん…どうしたの?オドオドして。いつものなゆちゃんは、どこに?」

 

なゆちゃんの毒気よりも、濃い毒気を持つ住民達。

 

「みゃーさん、どういうこと?この人達、恐いよ~」

 

--------

 

翌朝、なゆちゃんはグッタリしていた。エロマンガ先生は、和泉先生からのお叱りにより、初対面の者に無茶はしないようだ。初対面な者には…翌朝、デッサンスタジオに、なゆちゃんを連れ込んだ、無邪気な鬼畜達。睡眠充分な朝は元気である。

 

「ねえ、おパンツを見せてください♪」

 

エロマンガ先生の直球に、固まるなゆちゃん。

 

「みゃーさん…この子達は何者?」

 

怯えた声で訊いてきたなゆちゃん。

 

「ペンタブレット持ちはエロマンガ先生で、もう一人は山田エルフ大先生です」

 

「みゃーさん…そんな名前の人は知りません…」

 

真っ赤な顔を横に向けて言う紗霧ちゃん。ペンネーム呼びは大嫌いなようだ。

 

「おはよう、マサムネ君」

 

「おはようございます。で、客人は?」

 

和泉先生の声で固まるエロマンガ先生。

 

「紗霧ちゃんが…」

 

ガチャ!

 

デッサンルームに入って来た和泉先生。ここ、デッサンルームは、主に朝霧先生の為の施設である。光と影を作り出せるように、移動式のライトが数個設置されているのだ。

 

「その子が、可児先生?」

 

「そうです」

 

私が返事をすると、備え付けの棚から、スケッチブックと鉛筆を取りだし、描き始めた。

 

「なゆちゃん、朝霧先生よ♪」

 

戸惑うなゆちゃん。まぁ、エロマンガ先生と朝霧先生の揃い踏みは、異様かもしれない。作風が違うしなぁ。

 

「みゃーさん…ありがとう。次のシリーズのアイデアが浮かんだよ」

 

担当作家さんの為になったようで嬉しいです。でも、彼のデッサンを見て固まる私…

 

「どうして、私なんですか?」

 

女体認識されていないはずでは?

 

「気弱な小悪魔と、強気な天使って感じかな」

 

私は天使なのか…いや、この天使の絵はおかしい。なぜ、全裸なんだ?顔は私で間違いは無い。身体も…いつ見たんだ?

 

「見たでしょ?」

 

「理由は?」

 

理由は言えない…陰毛の刈り込み具合なんて…

 

「言えないなら、言いがかりだよ♪」

 

天使と悪魔が絡んでいる絵を描き始めた。そうか…エロマンガ先生のイラスト…あれを参考にして…

 

「で、可児先生…なゆちゃんって呼べばいいのかな?」

 

「はい…愛称でかまいません…」

 

「御用件は?」

 

ヘロヘロに弱っているなゆちゃんに、手を掛ける素振りの無い和泉先生。好みでは無いようだ…

 

「いえ…みゃーさんとの関係を訊きたくて…」

 

はぁ?何を訊きたいって?

 

「関係?はて?なんだろうな…友達ってことでは無いし…う~ん…あぁ!そう…そうだな。友達の知り合いかな?」

 

友達?それは千尋君かな?

 

「あれ?なゆさん、どうしたんですか?」

 

千尋君の声…

 

「ちっひーこそどうして…」

 

「ボク…正宗君の…」

 

朝霧先生の背中に抱きつく千尋君。朝まで一緒だったのか。顔は未だに紅潮している。

 

「え?そんな関係…バラなの…」

 

ショックを受けた顔になったなゆちゃん。たぶん、二人の関係、いや千尋君の性別を誤解しているだと思う。この館では、千尋君は素に戻っているのだった。

 

「バラ?ねぇ、バラってなんですか?詩羽さぁ~ん」

 

「百合の逆だよ。ソイツ、性別を誤解しているんじゃないのか」

 

霞先生が答えてくれた。

 

「あぁ、そうですね。ボクの性別を誤認識しているんだと思います」

 

と千尋君。会話が混沌としてきた。

 

「え?朝霧先生って、和泉先生?千尋君って、女の子?えぇぇぇぇぇ~!」

 

混沌としだした会話から、正解だけを読み取ったなゆちゃん。さすがだ。

 

-------

 

皆で朝食。千尋君からなゆちゃんに、真実が語られ、何故そうしていたかも語られた。

 

「なるほど…確かに、犯罪に発展しますよね。先輩に妹がいたって判明したら…」

 

で、縁プロジェクト入りを打診した大和さん。混乱しながらも了承した、なゆちゃん。そんな彼女には、縁の仲間になったことで、朝霧先生の秘密が語られた。

 

「色々納得できました。みゃーさん、大出世じゃないですか。縁プロジェクトのプロジェクトマネージャーだなんて」

 

いや、そんな立派な肩書きでは無い。でも誰も否定してくれない。そう思っていいのだろうか?

 

で、なゆちゃんが朝霧先生に会いたかった理由…以前、ネットでの文字だけの対談が行われ、なゆちゃんの登校拒否について経験に、共感していたのが気になっていたそうだ。

 

「うん、まだ入学してから1日しか登校してないんだよ」

 

って、紗霧ちゃん。もう10月末なんですけど…

 

「あぁ、妹さんが…それで、私に共感を…納得しました。共感ついでに、朝霧先生を口説いていいですか?」

 

口説くって言葉に反応した女性が数名…

 

「なゆちゃんって、彼氏入るんでしょ?千尋君の義理の兄さんだっけ?」

 

「彼氏で無いんですよ。私、告って振られたんですよ。ねぇ、傷心な私を癒やしてくださいよ~」

 

「なゆちゃん、マサムネ君と付き合うって、紗霧ちゃんの餌食になるってことだが、大丈夫なの?」

 

「ひぃ~!それは…餌食は止めて下さい…たまに、パンツなら見せますから…」

 

全裸で執筆すんだから。パンツくらい問題無いと思うのだが…

 

「で、役割はどうするんだ?」

 

霞先生がプロジェクトの話に触れた。

 

「サイドストーリー担当で良いんじゃないかな?なゆちゃん、各キャラクターの設定を頭に入れて置いて」

 

「了解です♪」

 

なゆちゃんは楽しそうだった。こんな風に、みんなで何かを作りたかったのかもしれない。私がそうだったように…

 

 

 

---羽島伊月---

 

同期デビューした不破春斗と二人で、家呑み…

 

「最近、千尋君達来ないのか?」

 

ちっひーが来ないとつまみがしょぼい。

 

「可児子も来ないし、京も来ないなぁ…」

 

「お前、何かやらかしたんじゃないのか?」

 

妹関連以外、やらかしたことは無い。あまりにも激しい妹愛の為、ちっひーは来づらくなったのか?可児子と京は原因がわからない。う~ん…

 

「心当たりは無いなぁ」

 

「本当か?」

 

「あぁ…」

 

春斗がネットサーフィンを始めた。しばらくすると声を上げた。

 

「おい、これって…」

 

春斗が俺に見えるように、モニタを俺の方へと向けた。そこには、可児子似の悪魔と、京似の天使が絡むという、イラストが表示されていた。

 

「それって、何?」

 

「朝霧沙樹の新作の挿絵の1枚が公開されたそうだ。妖精シリーズが終了して、今度は天使と悪魔シリーズらしい」

 

似ている…う~ん、偶然か?それとも、二人共朝霧沙樹の愛人に?

 

「まぁ、俺には関係は無いなぁ。妹枠で無いし」

 

「そうなのか?俺は気になるが…」

 

春斗は京狙いだっけ?

 

 

 

数日後、春斗からメールが届いた。添付ファイルを見て固まる俺…ちっひー似の妖精が…何者かにやられたイラストと…生首を台の上に載せられているグロいイラストだった。

 

「おい、これはなんだ?」

 

スマホで春斗に訊いてみた。

 

『朝霧の妖精シリーズ完結編の終盤のイラストだ…3人共朝霧の処にいるんじゃないか?』

 

いるから何だ?いや、ちっひーだけは返して欲しい。俺の食事レベルが下がっていくから…

 

春斗との通話を終え、自宅へ連絡をしてみた。久しぶりに…で、ちっひーと話をしたいと用件を言うと…友達とシェアハウスしていて、家にいないと言う。どういうことだ?

 

更に、犯罪だけはするなよって、忠告をされた。なんでだ?俺は犯罪者では無いぞ!

 

言いし得ぬ何を感じ、居ても立ってもいられず、今度は可児子の缶詰ホテルへと足を向けた。しかし…可児子は引き払っていた。出版社に問い合わせをしても、居場所は言えないって、門前払いだし。朝霧…俺から総てを奪うのか?しかし、妹愛だけは渡さんぞぉぉぉぉぉ~!

 

 

 

---羽島千尋---

 

自宅から、義兄さんが探していると連絡があった。両親共に、ボクの安全を第一に考えてくれており、山田エルフ先生の洋館への下宿も認めてくれた。今は、正宗君、恵さんと共に高校へ通っている。

 

出版社からの連絡で、なゆさんも義兄さんに捜索されているようだった。彼女の出版社も、山田エルフ先生の家での缶詰を認めてくれたようで、なゆさんもボク達と暮らしているのだった。

 

一方、みゃーさんは…義兄さんが探している様子も無いことから、すっかりと義兄さんから離れることを決意したようだ。

 

ここでの生活は楽しい。来る者は拒まない正宗君を、なゆさんが気に入ってしまったのは、誤算だけど…でも、進んでどうこうしないので、誰も彼のことを浮気者とは言わない。そもそも、夜這いが行われるのは、正宗君が熟睡中であり、不可抗力の要素が大きいし。まぁ、なゆさんは確信犯というレッテルは貼られている。

 

作家活動に関しては、皆プロで有り、書くときは書くようだ。そんな作家達をボク、恵さん、京さんで支える。それなりに皆、今しか出来ないリア充を満喫していると思う。

 

 

 

 

 

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