※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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京に迫る狂気

---白川京---

 

リア充な日々は、時間の過ぎるのが早い。もう12月だし…先月は色々な変化があった。なゆちゃんが相談に乗り、紗霧ちゃんが復学し、エルフ先生も紗霧ちゃんの中学へ編入したり。

 

締め切りを守らないのであれば、もう出入り禁止と和泉先生に宣告され、エルフ先生となゆちゃんが渋々、締め切りを守るよう努力しだしたり…

 

私にも変化の波は訪れていた。和泉先生が気になり始めていた。カオスな館の毒気のせいかもしれないけど…何にでも一生懸命な姿は好感度が高い。みんなもその辺りが気になる入り口のようだし。

 

和泉先生はこりずに、没原稿を生産し続けている。神楽坂さんは、話題作りにギネス登録を目論んでいる気がする。

 

「ねぇ、就職しない?」

 

神楽坂さんに、いきなり言われた。どこに?

 

「神楽坂さんの出版社ですか?」

 

「そうじゃなくて…まだ設立中の会社なんだけど…正社員1号にならない?」

 

誰かが独立するのだろうか?

 

「どんな会社ですか?」

 

「締め切りを守らない作家達の管理よ♪今の仕事の延長と思ってくれればいいわ」

 

うん?延長?

 

「けっこう作家達が集まってきたから、作家達を管理する会社でもつくるか、って話になってきたのよ。当面のスポンサーは各出版社よ。出版社からすれば、締め切りを守っていただけるのであれば、協力を惜しまないってスタンスなの」

 

だいたいの想像は出来てきた。

 

「社名はまだ仮だけど、『プロダクション縁』って感じになるわ。責任者は朝霧先生の名前にするの。知名度が高いからねぇ」

 

プロジェクトがプロダクションになるのか…大人の事情が絡むと…

 

「まだ卒業してませんが…」

 

「ふふふ♪もう、あなたの両親の承諾は取れているわ。今年度もしくは、今年中に中退することをねぇ」

 

カオスの館の腕利きコンシェルジュは仕事が早かった…はぁ?両親の許可を取って有るって?!

 

「どう?好きな仕事を続けない?」

 

う~ん…この腕利き編集者は大学にもアプローチをしているかもしれない。目が笑っているし…

 

「沈黙は了解ってことで♪じゃ、大学の手続きは進めるわね」

 

って、進めいたんですかぁぁぁぁ~!

 

こうして、就職することになった私。役所仕事は各会社の専属スタッフがしてくれるそうで、私は今まで通りパイプ役と締め切り管理のようだ。

 

「恵ちゃんと千尋ちゃんも、卒業したら正式な社員になるから、今まで通りよ」

 

あの二人の了承を既に取っているのか…和泉先生、千寿先生すら恐れる敏腕編集者、あなどれない。

 

「新社屋も検討しているから。社員寮付きのやつ。みゃーちゃんも、当面エルフ先生の家に住み込んでね♪」

 

24時間仕事漬けの予感…作家って仕事は24時間勤務だし。書きたい時に書いて、後は遊びの時間で無いようだし。書いていない時の殆どを、妹の心配かネタを絞り出している和泉先生を見ていると、本当にそう思う。そう考えると、伊月達は何をしているんだって感じだ。

 

カオスな館な住民達と仲良くなるにつれて、色々な情報と知識が蓄積されている。千寿ムラマサ先生…デビュー前から和泉先生のコアのファンであった。ファン故、ペンネームに和泉先生の名前の一部が入っているらしい。決して、和泉先生が劣化コピーでは無いと力強く語っていたのは、印象的であった。ただ、没原稿製造マシンの和泉先生なので、出版ペースは遅く、その間を埋めるように自分の読みたい物を書いた結果が、今の地位らしい。

 

あの敏腕編集者も、エルフ先生も、実は和泉先生のコアなファンだそうだ。才能のある人にしか理解出来無い何かが、和泉先生の作品にはあるのだろうか?凡人の私には分からない…

 

 

 

---不破春斗---

 

京さんに会いたい…そんな気持ちで、女友達に頼んで、彼女の自宅へ連絡してもらい、彼女の所在を訊いて貰った。やっと、見つけた…朝霧が囲っていると思っていたのだが、山田エルフ先生の家にいるそうだ。作家付きになったのか?早速、山田エルフ先生を訪ねてみた。

 

インターフォンのボタンをを押すと…いきなり、京さんが応対に出て来てくれた♪

 

「春斗です。京さん…会いたかったです」

 

「…」

 

うん?応答が切れた。門には鍵が掛かっていなかったので、中に入ってみた。デカイ洋館だ。ここに、山田エルフと二人で住んでいるのか?鍵のかかっていない窓が無いかをチェックすると、有った!俺の為に開けて置いてくれたのかな?そこから、侵入した。そこは、ピアノが置いてある部屋だった。ここで、何をしているんだろう?妄想が頭を駆け巡っていく。そうか、京さんは山田エルフのメイドの可能性も有るなぁ。京さんのメイド姿を想像するだけで、萌え萌えである。

 

ドアの開けて、館の攻略を始める。どこにいるのかな?1階の部屋を見て廻る。いない…上の階かな?静かに階段を昇っていくと…

 

バキ!

 

いきなり殴られ、手首を捻られて、床に倒された。何しやがる!

 

「不法侵入だな。今、警察が来る。大人しくしていろ」

 

耳がとがっているように見える男性。コイツが山田エルフか!

 

「俺の女を返せ!このエロ作家風情が!」

 

俺を抑え付けている男から逃れようと、四苦八苦するが逃げられない。

 

「何を勘違いしているんだ?私は作家では無い。編集者だよ」

 

はぁい?お前、見た目がエルフだろ?!

 

暫くすると、制服姿の警官がやって来て、俺に手錠を…どうして?俺は京さんに会いに来ただけなのに…

 

 

 

---白川京---

 

まさか、春斗さんがやって来るとは…不法侵入してまで、会いに来るとは…彼の行為に恐怖を感じた。きっと、千尋君もいつか伊月がやって来るのではって、恐怖を抱いているのかもしれない。

 

自宅から、変な電話があったと連絡を受けていた。知らない女性から、私の居場所を訊く連絡だったらしい。迂闊にも親は、大学の友人だと思い、教えてしまったらしい。しかし、女性の名乗った名前は、私の記憶になかった。なので、警戒をしていた。誰かが私を探していると…

 

エルフ先生のお兄様のクリスさんに相談をして、万が一の際の手筈を決めていた。クリスさんが警護の為に、館で仕事をすることにしてくれたのだ。そして、今日…私狙いの者がやって来たのだった。

 

「みゃー、大丈夫か?!」

 

和泉先生が、声を掛けてくれた。

 

「えぇ、クリスさんに助けて貰いました」

 

「そうか。怪我は無いよね?」

 

「ありません」

 

「マサムネ君、この家のセキュリティを見直した方がいいな」

 

クリスさんが和泉先生に声を掛けた。

 

「そうですね。千尋君がいるし…」

 

やはり、二人は千尋君のことを心配していたようだ。

 

「みゃーの方は、警察がストーカー法を適用してくれるって。半径2キロ圏内の立ち入り禁止だそうだよ、だから…心配しないで…って、心配だよね…」

 

厳しい顔の和泉先生。こんな私のことも真剣に心配してくれるんだ。嬉しい…少しずつ、彼に心が開いていく。

 

「クリスさん、どうします?」

 

「どうって…ここじゃなぁ…お巡りさんが巡回コースにはしてくれているが、こうして侵入者がいた訳だから…絶対安全は無理だな」

 

顎をさすりながらクリスさんが答えた。

 

「移転計画を前倒しにするように、各会社に相談してみるよ」

 

移転?新社屋の話かな?

 

「ですね。資金は俺と先輩、エミリー、後なゆさんも出しても良いそうです」

 

新会社の看板作家4名が、共同出資になるのか。

 

「各会社も資金は出し合うことになっている。締め切りが守られるのであれば、安い出資だと言っているよ」

 

苦笑いしているクリスさん。それは、山田エルフ先生となゆちゃんのことですね。

 

--------

 

新社屋構想…土地は抑えてあるそうだ。この館の裏の土地だそうだ。この辺は地価が安いらしく、それ程の出費では無いと言う。まぁ、都心に設けたら、飛んでもない額になるだろうな。将来的には、この館、和泉先生の家。千寿先生の家をマンションにして、貸し出すことも視野に入れているそうだ。人気商売の作家生活、別口の収入も大事だと、和泉先生が言うのだ。妹のやりたいこと、妹を養うことの両立の為、二足のわらじを履く和泉先生らしい言葉だ。

 

和泉先生の真面目さ…惹かれている。見た目はぱっとしないのが難点ではあるけど。没の連打に負けずに、今日も没原稿を書かれているし…いや、まだ没と決まった訳ではないけど。

 

今年も残り2週間って頃になると、クリスマス気分が漂い…始めることはなかった。

 

「サンタさんは来ないんだよ。うちには煙突が無いから」

 

って、紗霧ちゃん。

 

「うちも無いのよ…」

 

って、エルフ先生。

 

「お前達、サンタがいるって信じているのか?!」

 

って、千寿先生。中学生組の会話を笑って見ている私達。

 

「えっ!いない?」

 

「ムラマサ、あんた夢が無いわねぇ」

 

「ふっ、現実を見て生きている。私はマサムネ君がいれば、サンタなぞ要らんわ」

 

「うっ!た、た、確かに…マサムネが要れば…そう、居て欲しい…」

 

「でもねぇ、兄さん…ケーキだけでも欲しいなぁ」

 

って、感じの会話になっていった。結構仲の良い中学生組。

 

「ケーキかぁ…千尋君、作れる?」

 

「うん♪出来ます。作りましょうよ」

 

「じゃ、クリスマスは、ここでパーティーだな。みんなで料理を作ってさぁ」

 

クリスマスパーティーが開かれることになったようだ。料理担当はみんなでは無く、マサムネ君、ムラマサちゃん、エルフちゃん、千尋君がメインで、残りはお手伝いになるらしい。この頃になると、私は和泉先生を名前で呼ぶようになっていた。

 

「スポンジから作るの?」

 

千尋君が訊いた。

 

「オーブンがどうだろ?エミリーの家のオーブンはどう?」

 

「うちのは万能よ、マサムネ」

 

「じゃ、スポンジからにしようか。そうなると、準備する食材は…」

 

買い込む物をリスト化していく。あの侵入事件の後、皆で話した結果、恵さんもストーカーがいるらしいことが判明して、私、千尋君、恵さんは、なるべく一人で外に出ないように、マサムネ君から言い渡された。紗霧ちゃんもストーカーぽい少女につきまとわれていたそうで、マサムネ君は私達のことを紗霧ちゃん同様に、心配してくれていた。

 

-------

 

霞先生から、縁プロジェクトのメインストーリーである『冴えない彼氏の育てかた』の内容を聞いた。女性に興味の無い青年と付き合う為に、四苦八苦する女性達サイドの学園ドタバタ群像劇だそうだ。彼はなんの変哲も無い普通の人らしいが、女性達は何やら訳有りの能力持ちらしく、戦闘シーンもあったり、ラブコメ要素もあったりと、それぞれの作家の持ち味を生かすサイドストーリーも売りらしい。

 

「メインは私だけど、サイドはみんなで分担なのよ。で、1冊出す度にエリが、コミカライズ化していくの」

 

先月、1冊目が出版された。なので、今は柏木先生が四苦八苦している。トーン貼りの手伝いを私と恵さんでしていたり。千尋君は食事番がメインなので、参加はしていない。

 

「2冊目が出るまでに出版させないとなぁ…う~ん…」

 

登場人物が多い分、描き分けが大変そうである。

 

「エリ、コミケはどうするの?」

 

霞先生が訊いてきた。

 

「出ないわ。だって出なくても、『たかさご書店』という販路が出来たのは大きいわ…定期的に出せるのは嬉しいよ」

 

って…マサムネ君のおかげらしい。『たかさご書店』の看板娘と友達で、頼んだらしい。でも、そのおかげで、『たかさご書店』はマニアの間では有名な本屋になったらしい。同人誌や作家のお試し書き的な自費出版本、マサムネ君の没原稿本など、他のまっとうな本屋には置かれない本すら、売っているお店に変貌し、売上も伸びたらしい。

 

「出版社直営の本屋もありかな…」

 

って、あの神楽坂さんですら呟いたり。

 

 




紗霧サイドの話が少ないので、もう1作品をクロスさせます(^^;
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