---土間うまる---
楽しいクリスマスパーティーが終わった直後、来週に年越しパーティーだと言う。う~ん、それも参加したいなぁ。もっと、マサムネ君と話したいよ~
翌日、家に帰って、お兄ちゃんに打診をした。
「大晦日なんだけど…一緒に年越しパーティーに行こうよ♪ねぇ、お兄ちゃん!」
「おいおい、帰ってきて、いきなりなんだ?」
あぁ、お兄ちゃんに話さないと、わかってもらえないか。なので、言える範囲だけを話した。
「うまるの友達のお兄さんが朝霧先生だって…」
お兄ちゃんへのプレゼントとして貰った、妖精シリーズの最終巻のサイン本を手渡した。
「スゴい…」
そうだ♪私が貰った『追憶の紅兎』のサイン本と、表紙のイラストを本棚に大切に収納した。
「そっちもサイン本なのか?」
マサムネ君の極秘事項をお兄ちゃんの耳元で囁いた。
「何?同一人物だって…で、うまると同い年?!」
「うん♪でね、大晦日のパーティー、お兄ちゃんと来てって。だから、一緒に行ってよ~、ねぇお兄ちゃん♪」
何かに気づいたお兄ちゃん。
「うまる…お前…家の中なのに…どうして?」
うん?最初、なんのことか、分からなかったけど…そうか!私、内うまるになっていない。マジで、呪いが解けたのか…
「パーティー中にね…コーラを呑んでいたら…変身した姿なんか見られると、場が混乱するからって、紗霧ちゃんのお兄ちゃんのマサムネ君が、私を人目に付かない場所に保護してくれたんだよ。でねぇ、これは呪いだから、王子様のキスがあれば解けるらしいって口にしたら…」
「で…そのカレのキスで元に戻れたのか?」
頷く私。あ~、耳が熱い。赤くなっているのかな?
「そうか…うまるに彼氏か…」
感慨深そうなお兄ちゃん。
「まだ、彼氏になっては…なって欲しいけど…」
「そんな歳になっていたんだな。わかった。一緒に行こう。非売品を貰ったお礼も言わないといけないし、彼らのご両親にも挨拶しないとな」
あっ…そうだ。もう1つ言わないとダメなことが…
「あのね、お兄ちゃん…紗霧ちゃん達のご両親は…事故で…」
察しの良いお兄ちゃんは、皆を言わずとも理解してくれた。
「そうなのか…そうか、だから、うまるの彼はプロの作家で、家計を?」
「うん…だから、親の話はしちゃダメだよ。妹さんのしたいようにさせたいから、叔母さんの養子縁組の話も断って、自立しているんだって…」
「そうなのか…そうなると、俺達の方が救われているんだな」
お兄ちゃんは既にサラリーマン。マサムネ君は私と同じ高校生である。彼の負担は大きい。
「あぁ、もう1つ…紗霧ちゃん達も血が繋がっていないから…」
「そうなのか…それなのに…高校生で…うまるは見る目がありそうだな」
お兄ちゃんに誉められたようだ♪
「お兄ちゃん、誤解しないでね。まだ、告白していないんだから。後、私が…私の方が…だから…余計な事は言わないでね」
「わかったよ。うまるがそこまで想うなんて…会うのが楽しみだ。将来の弟君にね♪」
お兄ちゃんの言葉で、のぼせたようになっていく。お兄ちゃんの弟って…そういう事だよねって…
「だから、先走らないでよ~」
「そうだった。ごめん、ごめん♪」
きっと、お兄ちゃんも認めてくれると思う。
---羽島伊月---
年末が迫っているというのに、ちっひーが来ない。う~ん、年末年始はカップラーメンか…それはわびしいなぁ。
俺はちっひーに何かやらかしていたのかな?親父の言い方だと、俺がちっひーの幸せをぶち壊す的な存在のように聞こえた。はて?なんだろうか?
「千尋君もいない、京さんもいない、なゆちゃんもいない…寂しい年末年始になりそうだな」
春斗がぼやいている。散歩をしていて偶然、みゃーに出逢っただけでお縄かもしれないそうだ。俺はそうならないようにしないとな。行動範囲が狭まるのは嫌だし。
「で、千尋君に何をやらかしたんだ?」
「何もしていない。いや、ちっひーが妹だったらいいなって言ったかな?」
つまみのバタピーを摘まんで、口の中に入れた。
「それって、セクハラ発言だと思うが…それに嫌気が差したんじゃないのか。お前の妹愛に耐えられないでな」
「そうかもしれない…難しいところだ。妹愛とちっひーの料理、どちらも捨てられないんだよ。どうするかな」
乾き物のつまみ、顎が鍛えられそうだが、舌が満足しない。物足りない…親父に連絡する。
「あぁ、俺だよ。伊月だ。ちっひーに伝えてくれ。会わないでもいいから、年越しそばと、お節を持って来てくれって」
『おい、持って行くって、会うって事で無いのか?』
親父の声が何故か強張っている。俺は恐怖の対象なのか?
「じゃ、そっちに届けてもらってくれ。俺がそっちに取りに行く」
『だから、千尋はお前のメイドでは無いんだぞ!わかっているのか?』
「わかっていないのは、親父だろ?なんで、妹を仕込めないんだ?!」
あっ、切られた。
「今のは伊月が悪いぞ!妹がいないのを親父さんのせいにするのは、逆恨みだ!」
そうかもしれないが…妹が欲しい。妹の生搾りのミルクが呑みたい。妹の生パンティを食したい。経験しないと作品に現実味が帯びないんだよ~!
と、妄想と経験願望の境で揺れる俺…俺は俺の理性を抑え込めるのか…俺は俺の暴走を止められるのか…春斗のような前科者になるのも嫌だしなぁ…
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良い具合に酔った俺達は、酔った勢いで、みゃーのいる山田エルフ邸を目指した。駅の近くの本屋に立ち寄ると、レジの奥にエロマンガ先生のイラストが飾られていた。欲しいなぁ…
レジに店員はいない。なので、イラストを拝借…次に本を物色。可児子の本の隣に、クソ作家の本が置かれていたので、全部排除して、床に置いた。累計20万部程度で、可児子の隣にいるんじゃない。可児子の本の隣に俺の本を並べていく。
「ちょっと、何しているんですか!勝手に配置を換えないでください!」
店員か?スルーだな。
「ちょっと、それ!うちの看板のイラスト!盗まないでくださいよ!」
俺の抱えているエロマンガ先生のイラストに手を掛けようとしたので、突き飛ばした。
「これは俺のだ!触るな!ヒック」
春斗は俺が突き飛ばした女を介抱しながらムネを…
「やめてぇぇぇぇ~!いやぁぁぁぁ~!」
春斗から逃げようと暴れる女。店の奥から爺が出て来たので、店を出る俺。さてっと、どっちだ?
「春斗…」
あれ?春斗がいない。どうしたんだ?アイツがいないと、場所がわからない。う~ん、帰るかな。
---不破春斗---
酔いが冷めると、留置場にいた。あれ?なんで、こんな場所に?記憶がまるで無い。しばらくすると刑事らしき奴らが来て、俺を取り調べ室に連れて行った。
「おい!連れの男はどこに逃げたんだ?!」
連れ?あぁ、伊月か…どこに行ったのかな。あぁ、本来の目的を思い出した。
「白川京に会いに行く途中だったんですけど、一人で先に行ったのかな?」
何かの書類に目を落とす刑事。
「お前、その女性に対して、接近禁止令が出ているよな?懲りずに仲間と共に、会いに行くってどういうことだ?」
あ…そうだ。それで、俺は留置場にいるのか。納得した。酒の力は恐いなぁ。
「お前には婦女暴行の容疑、連れには強盗及び傷害の容疑が掛かっている。弁護士でも呼ぶか?」
何か、罪が上乗せされているような…
「婦女暴行?記憶に無いですが…」
「本屋の女性店員の胸を揉んでいただろ?」
「まったく、記憶に無いです。弁護士の先生をお願いします」
---羽島伊月---
春斗とはぐれ、その足で、自宅へと久しぶりに足を伸ばした。
ドアの鍵穴に鍵を差し込むが開かない…鍵を換えたのか?なんで、俺に言わないんだ?いや、合い鍵を寄こせっていうんだ。ドアの前で四苦八苦していると母親が帰宅してきた。俺の顔を見て固まるちっひー似の母親。
「あぁ、ちょうどいいや。ちっひーを呼び出してくれないか?」
スマホを取りだして、どこかへ連絡する母親。ちっひーにか?
「もしもし、助けてください!」
ちっひーで無いようなので、スマホを取り上げ、110という通信先と切断して、ちっひーに連絡をした。母親のスマホから俺が出て、声が震えているちっひー。
「母親を返して欲しければ、ちっひーのお節料理を自宅へ持って来い。いいな♪」
って、ふざけて、脅迫紛いの頼み方をした俺。通話を切って、母親に家の鍵を開けさせて、家の中にようやく入れた。家の中で、まず向かったのはちっひーの部屋だ。母親が俺が入るのを阻止しようとするが、力任せに部屋に入った。引っ越したのか、あまり物が置いていない。そんな閑散としたちっひーの部屋に、何故か、女性物の制服がハンガーに吊るしてあった。アイツ、女装趣味があるのか…今度、会ったら妹にコスプレしてもらうか。
ちっひーを妹に見立てて妄想しているうちに、酔いが醒めてきた。俺は何しているんだ?そんな自問自答をしながら、冷静にちっひーの部屋を物色し始めた。女性物の制服を調べる。ちっひーの通っている高校の制服のようだ。本棚に残っている本を調べる。教科書類が総て残っている。その中の1冊に、俺の視線がが引き寄せられた。『保健体育(女)』という教科書である。なんで?女生徒向けの教科書があるんだ?その教科書を取り出すと、戸籍謄本が落ちて来た。なんで、一緒に有るんだ?謄本に視線を落とすと、ある項目が目に入り、今までスルーしてきた些細な記憶が、走馬燈により映し出された。
俺の冷静な脳細胞が、1つの結論を導き出した。ちっひーが俺を避けた理由。俺がちっひーの幸せをぶち壊すと言う理由…そういうことか…灯台もと暗しなのか…そうだとすると、親父の反応、母親の反応の意味がわかってきた。俺はなんてことをやらかしてしまったんだ。ちっひーは俺の中の日に日に高まっていく妹愛に、恐怖を感じていたのだろう。あいつの前で何度も、妹がいた場合の妄想を力強く語っていたから…
玄関の方が賑やかになってきた。親父が帰宅か?ドタドタと数名の足音が、この部屋に近づいて来た。
「おい!羽島伊月だな。ちょっと署の方で話がしたい」
刑事か?母親が呼んだのか?
「任意か?なら行かない。今、忙しいんだよ」
「現行犯逮捕だ。傷害罪だ」
「俺は誰も傷つけていないぞ」
「そこに倒れている女性は、お前がやったんじゃないのか?」
倒れている女性?部屋を出ると、廊下に母親が倒れていた。
「俺じゃ無い。記憶に無いし」
「不破春斗と共に押し入った店から盗んだ物は?」
「盗んだ記憶は無い。春斗とは途中ではぐれたんだ。そうか、あいつ強盗したのか」
「お前なぁ!どうして、冷静に他人事のように言えるんだ?」
刑事が俺を睨みつけてきた。今の俺は、それどころでは無い。ちっひーにどう償えばいんだ?
---羽島千尋---
マサムネ君とみやーさんと共に、病院へと向かった。母さんが運び込まれたようだ。義兄さんに突き飛ばされて、脳震とうを起こしたらしい。
「どうしてよう…」
身体の震えが止まらない。まさか、義兄さんが、あんなことを言い出すなんて…
「千尋君…」
マサムネ君が優しく抱き締めて、ボクを落ち着かしてくれている。君がいてくるのは嬉しいし、心強いよ…今のボクの心の支えになっているマサムネ君。
病室に入ると、母さんの意識は戻っていた。ただ、全身に打撲があるらしく、包帯が全身に巻かれている。
「母さん、大丈夫?」
母さんに縋り付こうとしたボクをマサムネ君が止めた。なんで?
「全身打撲だよ。抱きついちゃ、お母さんが痛いよ」
そうだった。優しい声で諭してくれたマサムネ君。母さんに痛い想いをさせないで済んだ。
「千尋…彼が?」
「うん♪マサムネ君だよ、母さん」
「そう…千尋がお世話になって…ありがとうございます」
「俺と妹の方が千尋君のお世話になり、助かっています」
母さんはマサムネ君を気にいってくれたようだ。母さんにはマサムネ君の境遇を話してある。怪我人だけど、マサムネ君にとっての地雷を踏まないように、言葉を選んでいるようだった。
「これからも…娘をお願いします」
「いえいえ、こちらこそ…」
母さんとマサムネ君が話している間、みゃーさんがボクを、優しく抱き締めてくれていた。この病室に着いた後も、ボクの身体は震えていたから。
---和泉正宗---
千尋君はお母さんの付き添いで、病院にしばらく泊まるらしい。明日、着替えとかを持っていかないとなぁ。持って行く物とかは、みゃーとなゆが用意してくれるらしい。
「しかし、伊月のヤツ、飛んでも無いことを…」
みゃーと二人で、智恵の入院した病院へと向かっている。怪我はねんざ程度らしけど、精神的にダメージが大きかったようだ。途中、駅前の交番に立ち寄る。盗品の捜査状況を教えて貰う為に。
「あぁ、マサムネ君」
この交番のお巡りさんは、全員知り合いである。紗霧の件…要するにめぐみんの件で、大変お世話になっているから。
「すみません。うちの関係者が…」
「君の関係者は被害者だろ?だから、君が気に病むことは無い。で、たかさご書店から盗まれた物だけど、行方不明だそうだ。換金した可能性も有ると、買い取りショップなんかも、捜査しているそうだよ。この街のシンボルになりつつあるお店の宝だからね。きっと、見つけると智恵ちゃんに伝えてくれるかな?」
交番で一番エライお巡りさんに説明をされた。
「わかりました。伝えます。よろしくお願いします」
みゃーと二人で、交番にいるお巡りさん達に頭を下げて、智恵の元へと急いだ。途中、たかさご書店の前を通ると、規制線が貼られていて、捜査中のようだった。
避けては通れない問題(バレない方が不自然というか)なので…料理を届けに来た千尋君が襲われる話も書いたのですが、それはあまりにも救われないので、没にしました。