---土間タイヘイ---
課長に呼ばれた…
「どうかしましたか?」
「タイヘイ…今度の土曜日…一緒に…出張だ…よ」
真っ赤な顔で俯いて話している、課長の叶。学生時代、1年後輩であったが、この会社の社長令嬢ということで、僕の上司になっている。
「どうしたんだ?真っ赤だぞ。熱でもあるのか?」
彼女の額に手を当てた。熱は無いようだ。
「だから、なんでも無いよ…いいわね?」
「わかった、土曜だな」
-------
きりえちゃんが、正宗君のプロジェクトに参加することになったとかで、家で揉めているらしい。まぁ、まだ法人登録したばかりの幽霊会社状態だし、信用度は無いものな。
なんて考えながら、駅の前で待っていた。
「タイヘイ、遅くなって、ごめんねぇ~」
叶が走ってきた。なんか、やけに気合いの入った衣装だな…依頼主はイケメンなのか?
この駅始発の特別快速に乗った。席はガラガラなのに、叶が必要以上に僕に寄りかかっている。
「てへへへ♪」
既に夢見状態…徹夜明けか?まぁ、いいか。彼に貰った本を手に取り、読み始めた。しばらく読んでいると、ふと気づいたことが…
「叶、どこまで乗るんだ?」
「へ?ちょっと、待ってねぇ」
慌ただしくシステム手帳を取りだし、相手の場所を確認している。
「五反野駅です」
五反野?彼の家がある場所か。
「お茶の水で乗り換えだぞ」
きょとんとしている叶。
「そうなの?」
乗り換え案内をチェックしていないのか?
「そうだよ。秋葉原で地下鉄に乗り換えるんだ」
「詳しいわね…」
何かを疑うような目付きで見ている叶。
「妹の想い人が住んでいるよ。そこにね。で、一度行ったことがあるから」
「妹さんの想い人?ふ~ん、妹さんって、そんな歳なんだ…」
「まだまだ幼いと思っていたけど…もう、そんな歳になったようだよ」
「タイヘイは?」
「僕?想い人?いないよ。妹の世話で手一杯だよ」
何かほっとしたような叶。どうしたんだ?
五反野駅で下車して、地図を見ながらウロウロしている叶。彼女から地図を取り上げて、目的地を見ると…ここって…叶に地図を返して、彼女を誘導していく。
「この洋館だよ」
「そうなの?なんで、分かるの?」
「だって、彼の家の隣だし…」
---土間うまる----
こんな偶然って有るんだ…新しく作る社屋兼住居のネットシステムとセキュリティシステムを依頼した会社が、お兄ちゃんの会社だったなんて…
仕事部屋で商談をしているお兄ちゃんと上司の女性、マサムネ君とクリスさん、うみこさん。
「まさか、依頼主が正宗君だったとは、驚きだよ」
「俺も驚いています。うまるさんのお兄さんの会社だったとは」
恵さんと千尋さんが、珈琲を淹れている。
「こんな偶然有るんですね」
「出逢えることは縁があるってこと。本に書いてあったでしょ」
あの話のモデルである恵さんに言われると、信憑性が高く感じる。お兄ちゃん達に、お茶菓子と共に珈琲を配膳していく私と千尋さん。
「コンピュータ系のことは、うみこが担当します。彼女は普段イーグルジャンプ社でPGしていますので、そっち系は詳しいです」
うみこさんがお兄ちゃんと上司の人に頭を下げた。完成予想図をテーブルに広げたマサムネ君。彼が描き上げたそうだ。手前に社屋、奥に住居部分がある2棟仕立てのようだ。
「1階には担当編集者の待合室と会議室、仕事場は2階部分にします。3階は資料室って感じです」
マサムネ君の説明を受けて、お兄ちゃんが様々な装置の設置場所やらを提案していく。う~ん…なんか感慨深いなぁ…お兄ちゃんとマサムネ君の共同作業…いつか、私もしたい…
「見積もりは、社に戻って営業担当と検討します。たぶん、うみこさんの描いている額に近くなると思います」
あの上司の人…お兄ちゃんに気があるのかな?商談相手でなくて、お兄ちゃんを見ているし…なんか、嫉妬心が沸々と…すると、マサムネ君が私を見て、リラックスリラックスってジェスチャーをしている。う~ん、私の心が読めるのかな?嬉しいような、恥ずかしいような…
無事に商談が終わったようだ。
「それで、担当者を常駐して貰えるんですか?」
マサムネ君が上司の人に訊いた。システムが順調に安定するまで、24時間とは言えないけど、トラブル時には即対応はして欲しいようだ。作家さんは締め切りという強敵と日夜戦っているそうだから。
「えぇ、彼に常駐してもらいます。たまには私も常駐しますけど…」
って、お、お、お兄ちゃんの腕に抱きついた上司の女性。セクハラだと思います。いや、パワハラかな…もぅ!
「あぁ、うまるさんのお兄さんですか…じゃ、うまるさんと共に引っ越して来たらどうですか?」
って…顔が…耳が…熱い…千尋さんが私の肩を揉んでくれた。
「良かったじゃない、うまるさん♪」
って、耳元で囁いているし…
「そうですね。妹もその方がいいかな♪」
笑顔で私も見るお兄ちゃん…
-------
2月になると、あの本が発刊された。和泉マサムネ作『グータラ姫の呪い』だ。ますます、内うまるに近づく作品となっていた。
「まさに、見て来たような…だな。作家ってスゴいな、見ていないのに」
って、お兄ちゃんが本を読んでいる。私が貰ったのに…いや、あまりにも私的には衝撃的な内容で、途中でお腹いっぱいになったというか。この部屋に監視カメラでもあったのかな?なんで、知っているのな?恥ずかし過ぎる…
「そうだ、うまる。来月、引っ越しになる。3月って、中途半端だけども、転校だぞ」
転校…友達…作れるかな?
「正宗君と同じ学校だ。恵さん、千尋さんがいるから、安心だろ?」
え…嬉しいやら、恥ずかしいやら、複雑ではある。安心には違いないけど。
「引っ越し先は、一区画離れたアパートの予定だ。ちょっとずつでいいから、引っ越しの支度をしておいてな」
お兄ちゃんと一緒に暮らせる上、マサムネ君の傍に住める…夢かな?ほっぺを抓ると痛い…夢では無いようだ。
「夢じゃ無いよ、うまる♪」
私を笑ってみているお兄ちゃん。なんか、幸せすぎて、恐いんですけど…
---金剛叶---
絵のモデルにって言われて、再度訪れた洋館…休憩中に館内を探索してみたら、『立入禁止』の札のある階段を発見した。お宝でもあるのか、興味を抱いて恐る恐る降りていくと…甘い香り…何者かに抱きつかれる感覚…
真っ暗な場所で、何者かに襲われている。声をあげて、助けを求めるが、私の声は空しく響くだけだった。ここって地下室だよな。階段を降りて来たし。
両手首に鎖を巻かれ、天井から吊されたようだ。ブラウスのボタンがはずされ、ブラも…スカートが…ストッキングが…ショーツが…全裸にされたようだ。なんで、こんな目に…
何者かの息吹を感じる。身体が疼いていく。胸が張っていく。乳首が固くなっていく感覚が…太股を伝う暖かい液体…正体不明の物に身体を開いていく私。
周囲にいくつもの気配を感じる。淫らな身体を鑑賞されているのか?タイヘイ以外に触られたくない。
「あっ!」
身体がビクッとした。何者かがデリケートな部分を舐めている。身を捩り、その感触を愉しむ私。徐々に内部に刺激が広がっていく。口に何かが入ってきた。あの部分にも…
---和泉正宗---
叶さんに絵のモデルを頼んだ。この館にはいないタイプだったし、スーツ姿の女性のデッサンが不足していたから。コウとかりんさん、大和さんでも良いのだが、同じモデルばかりではマンネリ化してしまうから。
一息吐くための休憩。彼女から目を離して、恵達と談笑…で、再開しようと彼女の方を見ると、いなかった。あれ?どこに?螺旋階段を上がり、宿泊エリアを覗いたがいない。下に戻り、奥の部屋も覗くがいない。デッサンルームにもいない…あれ?『立入禁止』の札が退かされている…嫌な予感がするのだが。あの甘い香りが残っている地下室。何故か消去できないあの香り、なので使用禁止にした。危険が一杯だから…
万が一を考え、恵達に風呂の準備を頼んだ。免疫を持っている紗霧とエミリーを呼び出して、3人で危険地帯へと降りていった。
「兄さん…アレ!」
全裸になって、セルフをされている叶さん…紗霧が背負っていたバッグから、ペンタブレットを取りだし描いていく。そのバッグって、救命用で無いのか…てっきり、薬とかが入っていると思ったら…
呻き声をあげている叶さん。確かに、セルフ用の道具は置いてあるけど…人前に出すのが忍ばれる資料が、ここに置かれているのであった。
「おぉぉぉぉ~♪この人、激しいんだね~」
激しいねぇ。そこまで乱れた女性は初めてである。興味津々で見ているエミリー、次々に資料用のイラストを描き上げていく紗霧。果てるまで、静観が正解かな?へたに邪魔をすると、襲われそうだしなぁ。
『どう?様子は?』
恵からスマホで連絡が来た。この部屋の恐ろしさは、知っているので、降りて来ない。恐ろしさを知らない千尋君、うまるさんも、恵の体験談を聞いて、降りてくることはないようだ。
『果てるまで待つ…そんな状況だよ』
『激しいの?』
『溜まっていたんじゃないの?邪魔をすると、紗霧達が危険。そんな状況。そうだな、30分後に捕獲するかな』
『わかった。こっちも準備しておくね』
通話は切れた。万が一の為に、この地下室にアンテナを設置して良かった。連絡手段は、それしか無いから。
---金剛叶---
獣の群れに襲われている。乳首を吸われ、乳房を激しく揉まれている。乳首をミルクが通過する度になんとも言えない快楽を感じる。大きくて太い肉棒を舐めて、しゃぶって、頬張る。身体中に広がる、なんとも言えない快感…四つん這いになり、後ろか突かれている。前の穴と後ろの穴を同時にだ。私の腰は自ら激しく蠢いている。何度も中で何かが出されている。調教…されているのか…このまま、ここで果てるのも悪くない…
え?急に刺激のテイストが変わった。仄かに暖かい何かに包まれた。
「もう、大丈夫だよ…さぁ、元いた世界に帰ろう」
って、耳元で囁かれ、耳タブをハムハムされていく。優しい刺激…身体に纏っていた淫らな鎧が落ちていく。タイヘイ…抱き抱えられて、階段を上がっていく感覚。やっと、地上に戻れるのね。タイヘイ…ありがとう…
暖かくも柔らかい物に覆われていく。ほんのりとした暖かさが、私を包み込んでいく。夢うつつな気分である。私を優しく抱き留めているタイヘイの頬を手の平で包み、彼の唇へ私の唇を重ねた。王子様のキス…これで、呪いは消えていくだろう…
---土間タイヘイ---
叶がやらかしたようだ。危険なガスが充満しているので、立入禁止にしていたエリアに、足を踏み入れたそうだ。うまるからの連絡を受けて、彼の家の隣の洋館へ急いだ。
叶がいる部屋に案内されると、ベッドの上にはバスローブを着た叶が静かな寝息を立てて、寝ていた。その傍には、頬に爪痕を残している正宗君がいた。
「大丈夫か?」
叶よりも彼の心配をした僕。
「痛いです…」
涙目の彼…痛そうだ。
「まさか、洗浄中に引っかかれるとは…油断しました」
うまるが消毒薬を塗っている。それの痛みかもしれない。
「危険なガスってなんだい?」
「女性が凶暴になるガスです。だから、男性である俺が救出に向かったんです」
彼に説明をされた。この洋館の以前のオーナーが好き者だったらしく、女性にだけ効く強烈な媚薬効果のある粉末を隠し持っていたそうで、その収容器を誤って破壊した為、この洋館の地下室に、そのガスが溜まっているそうだった。
「建て替えるまで、立入禁止にすることにしたんですが、まさか入っていく猛者がいるとは…」
「すまない…叶が…」
僕は叶に成り代わり、彼に謝罪した。
「いえ、こっちも落ち度はあります。立入禁止の札だけしか、置いていなかったし」
僕が来たので、正宗君達は部屋を後にした。部屋には僕と、バスローブだけを着た叶がいる。まったく何をしているんだ?
「タイヘイ…もっと…」
寝言…僕が夢に出ているようだ。もっと何なんだ?
「もっと…激しく…」
激しく?激しくなんだ?…えっ?こいつには、媚薬が入っているんだよな?いやな予感…そういう夢を見ているのか…
「もっと…突いて…」
僕と…そういうことなのか?