---土間うまる---
そして、引っ越し…荷物に偽装してトラックに紛れ込んだ海老名ちゃんを、お兄ちゃんが排除する。
「ダメだって」
「なんでですか?私も家族のような者ですよね?」
どこか思考がショートしている海老名ちゃん。お兄ちゃんは困り顔である。一瞬の隙を突いて、海老名ちゃんを残して、新居へと向かった。
新居となるアパートは、2Kであった。私の部屋…
「うまるも年頃だし、部屋は別の方が良いだろ?」
「家賃は大丈夫?」
広めのアパート…お兄ちゃんは奮発したのだろうか?
「八王子よりも家賃は安かったよ。だから、今までくらいの家賃だ」
なら、安心だ。お兄ちゃんにあまり負担を掛けたくないから。
引っ越し先に着くと、マサムネ君達が来てくれていた。何故か、あの女もいるんですけど…
「タイヘイ…手伝いに来たわよ」
横柄で、お兄ちゃんに馴れ馴れしい女…
「そんな顔は似合わないよ」
マサムネ君が声を掛けてくれた。そうだね。嫉妬はダメだよね。お兄ちゃんとマサムネ君の二兎を追っている私がしちゃいけないか。
荷物を部屋へと運び込んでいく。私の部屋には紗霧ちゃんがいて、ゲーム機環境を整えてくれている。
「紗霧、ゲームはするなよ!」
「うっ…兄さん、そんな目で見ないでください…ごめんなさい」
整えてくれていたのでは無く、ゲームをしたかったらしい…
手伝いが多かったので、割りと早く、荷物を運び込めた。
「タイヘイ…出張の際は、泊めてね♪」
「叶…それはダメだ。それに日帰り出張だろ?」
「そうだけど…でも…」
「言ったはずだ。僕は妹のことで手一杯なんだ。すまない…」
私が原因で、付き合えないのか…お兄ちゃん…何か責任を感じる私。
「お兄さん、彼女が泊まる時は、うまるさんはうちで預かりますよ。紗霧も喜ぶし」
って、私の心を読んだかのような提案をしたマサムネ君。
「いや、いいんだよ。少しでも長く妹と暮らしたいから」
お兄ちゃんが私を見つめている。お兄ちゃんって、シスコンなのか?
「じゃ、叶さんを、預かります。仕事場の2階なら泊まれるスペースがありますから」
「そうだね。叶、そうしてもらえよ」
「うん…」
寂しそうな表情のお兄ちゃんの上司。
引っ越し祝い…作業場をパーティースペースにして、蕎麦が振る舞われた。マサムネ君達が用意してくれたようだ。
「引っ越しと言えば、蕎麦だからな」
って、コウさん。年末の蕎麦打ちを手伝った関係で、蕎麦打ちに参加したようだ。
「歩いて5分程度だし、困った事があったら、言ってくださいね」
「ありがとう、マサムネ君」
お兄ちゃんもマサムネ君を気に入っているようだ。彼を見る目つきは私を見る時のと変わらない気がするから。
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週明け…転校1日目…担任の先生の後に付いて、教室へと向かう。教室に入ると、知った顔が揃っていた。マサムネ君、恵さん、千尋さん、智恵さん…一気に緊張が緩む。席は、智恵さんの隣…
「緊張はほぐれたかな?」
休み時間、マサムネ君が声を掛けてきた。
「はい…」
授業…マサムネ君はたまに上の空状態になる。小説のネタを考えているらしい。恵さんに教えてもらった。
「新作?」
放課後、智恵さんがマサムネ君に訊いた。
「そう…後1週間で書き上げないと…う~ん…」
彼のノートは授業の内容と、小説のメモが混在している。作家って大変なんだな。
「うん?あぁ、ノートか…まぁ、テスト前になったら、千尋君のノートをコピーするから大丈夫だよ」
私の視線に気づいた彼が答えてくれた。
帰り道…中学生組が合流した。まるで集団下校状態だ。
「どうだ?新作の調子は?」
ムラマサちゃんが、彼に訊いた。
「先輩の期待する方向で書いていますが、難航しています」
「すまないなぁ。私の都合で…」
累計1700万部に届きそうな作家先生は、累計20万部の作家先生の作品に影響されていた。これはこれで驚きな事実である。彼の作品に作風が引っ張られる千寿先生…その事を理解している担当編集者。事実は小説よりも奇である。
「あらすじを読んだけど、この前の事件がネタなの?」
って、エルフちゃん。この前の事件とは、叶さんの事のようだ。
「そうそう。地下室にいる魔物によって、豹変していく女生徒達…彼らを助ける為に立ち上がる仲間達の物語だよ。問題は豹変シーンがイマイチなんだ。やり過ぎると、規制に引っ掛かるから」
規制とは青少年保護条例の事らしい。暴力的、性的すぎる作品は成人向けと分類されてしまうそうだ。作家先生は締め切り以外にも敵がいるようだった。
「あぁ、あの規制は邪魔よね」
「はぁ?エミリーはヒロインを脱がしすぎだよ」
彼はエルフちゃんを本名で呼んでいる。ムラマサちゃんに対しては、時々呼んでいるらしい。
「そんなに脱がしていませ~ん。この前だって、開始25行辺りまで脱がしていませ~ん!」
う~ん…どうなんだろう。開始25行って、3ページ目辺りでは脱いでいるような…
「それに朝霧作品なんか、初めから脱いでいるでしょ?!」
「はぁ?妖精とかエルフは服を着ないだろ?」
「き、き、着ます!私はこうして着ています」
耳を真っ赤に染め上げて、反論するエルフちゃん。周囲の仲間達は、二人の論議を楽しそうに聞いている。
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学校を終えて、18時くらいまで紗霧ちゃんの部屋で過ごし、仕事を終えたお兄ちゃん共に帰宅する。それが日課になりつつある。
「どうだ、学校は慣れたか?」
「うん♪初日から…マサムネ君達がいたから」
「そうか…良かったな、うまる」
夕食は家で…お兄ちゃんの手料理を食べる。勿論、料理を教えて貰うこともたまにしている。
「彼は、どうなんだい?」
食後、洗い物をしているお兄ちゃんに訊かれた。
「どうって?」
「その…うまるのことをどう思っているのかなって」
「どうなんだろう…今は締め切り間際の小説で一杯一杯みたいだよ」
「そうか…まだまだだな♪」
うん?お兄ちゃん…何か嬉しそうだ。お兄ちゃんも闇を抱えているのかもしれない。私を独り立ちさせた気持ちと、私と長く暮らしたい気持ちの相反する気持ちに揺れているのかもしれない。そういう私も、彼といたい気持ちと、お兄ちゃんと長く暮らしたい気持ちで揺れている。兄妹だから抱える闇は同じなのかな?
---金剛叶---
彼に謝罪に来たのだが、モデルにされていた。
「ねぇ、どこが気持ちいいの?」
恥ずかしいことをストレートに訊いてくる彼。言葉責めか?
「股間を舐めてください…」
彼は私の答えを確かめるように、言われた通りの事をしだした。
「あっ…ダメ…いい…」
膣内が痙攣している感じだ。高校生でテクニシャンなのか?彼は行為の合間に、メモを取っている。新作のモデルらしい私。
「で、股間のどこが一番気持ちいいの?」
更に恥ずかしさを、増長させる質問を浴びせてきた。うっ…
「ポッチ…吸ってください」
クリトリスが吸われている。彼の口の中で弄ばれていく。膣の入り口が蠢くような感覚が生じてきた。私の身体は欲しているのだ。彼を…タイヘイ一筋のはずの私は、彼を求めていた。そんなことを口に出して言え無い。私のささやかな抵抗。
「へぇ~この穴って動くんだ…」
膣の入り口を指でなぞっている。ダメ…おかしくなりそう…自分で自分の胸を揉み込む。刺激が欲しいから。自分で自分の乳首を虐める。刺激がもっと欲しいから。
「おぉ~指を入れると締めようとするんだ。これって、叶さんがそうしているの?」
無邪気な少年が訊いてきた。もう、ダメだ…入れて…奥の方まで…
「はぁ…はぁ…はぁ…」
言葉を発したいのだが、呼吸が荒くなっていて、言葉が出せない。口元からはヨダレが流れて行く…飢えたメス犬状態かもしれない。また、彼を襲いそうだ…そんなことを考え始めた矢先…、私は彼に抱きついた。
「お願い…下さい…もう我慢出来無い…ねぇ、これ以上豹変する前に…お願い…」
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四つん這いになり、彼に後ろから突いて貰っている。パンパンパンと肉が叩き合う音が、何とも気持ち良い。
「もっと…もっとください…」
彼の媚薬が中で出された。この液体のもたらす感覚は好きだ。もう3回ほど、出して貰っている。力つきて、畳に蹲る私。
「豹変すると、スゴいんだ…ありがとうございます。参考になりました」
いや、私の方が『ありがとうございます』です…溜まっていた物が出し切れたと思う。彼のした行為により、何か心が軽くなった気がした。
彼はメモを見ながら、更に何かを書き込んでいる。今はタイヘイよりも彼が愛おしく感じている。彼の背中に抱きつき、乳房の感触を彼の背中に覚えて貰う。
「また、モデルにしてください…」
彼の耳元でそう伝え、彼の頬…私が与えた消えない傷跡に、自分の頬を合わせて、睡魔に導かれていく。
---和泉正宗---
叶さんのおかげで、新作は書き上がった。自信満々で神楽坂さんに手渡した。原稿に目を通す神楽坂さん。
「う~ん、渾身の一作ですね。規制に掛かりそうな表現はチェックしますが、今回は攻めましたねぇ」
まぁ、豹変具合を書き表すには、ギリギリを攻めないとダメかと思ったから。
「う~ん…この最初の犠牲者の描写は鬼気迫るもの感じます。誰をモデルにしたのですか?」
言えない…
「内緒です。秘匿事項にします♪」
はぐらかしておく。
「タイトルはどうしますか?」
考えていなかった。どうするかな…
「そうだな。『呼び覚まされる本性』とかは?」
「少し長いですよ。一言で言ってください」
ハードル上げる神楽坂さん。まぁ、神楽坂さんのハードル上げで、俺の経験値は増えているんだと思う。でも、一言って…叶…って金剛叶だっけ…金剛…混合…
「『混合される性(さが)』はどうかな?」
「あぁ、媚薬効果で妄想と現実が混ざり合うってことですか…まぁ、及第点ですね。編集部に戻って検討してみます」
どうにか採用されたようだ。シリーズ化だと体力が保つかな…一抹の不安。
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「マサムネ君…今回の新作はスゴいなぁ」
先輩がやって来た。
「鬼気迫る豹変振り…誰で取材をしたんだ?」
相手が気になる様子だ。
「妄想です…」
「君は見たままの物を書く作家だろ?」
そうだけど…名前出すとマズくないか?
「大人の女性です」
「それはわかる。子供では無理だよ」
「相手の名誉の為に、名前はカンベンしてください」
「まぁ、そうなるか。でもなぁ、大人の予備軍の私としては、気になるんだよ。本当にこんな風になったのか?」
こんな風?どこの話だろうか?
「どの辺りの話ですか?」
俯いて耳が真っ赤になった花ちゃん…
「どこって…口に出すのは…ちょっとなぁ…」
口に出せないシーンって…はて?官能小説では無いはずだが…
「もう、いい!もう…」
あぁ、泣きながら帰って行ってしまった。そんなに口に出せないシーンってあったっけ?
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4月になり、住居部分は完成した。社屋部分はまだかかるらしい。外観は出来てはいるけど、内部がまだまだのようだ。
新居部分は、ワンルームマンションみたいな感じである。トイレ付きのユニットバス付きの部屋でネット環境も充実している。いや、ネット環境はまだまだである。社屋部分にサーバを置いて、文書管理をさせたり、高度セキュリティシステムで、ハッキング防止などの防護をする予定である。なので、暫定的な回線しか装備していない。
部屋からキッチンは省いた。食堂を作り、火元を一元管理することにしたのだ。後、ユニットバスではくつろげない方の為に、男女別のお風呂場も作った。とはいえ、男性は俺とクリスさんしかいないけど…当面、男湯は休業状態になる。時間制で男専用時間を設けることにしている。
入居者はエルフの館に住んでいる方々だ。俺と紗霧、先輩は家があるので、当面は家に住む予定である。あの危険なエリアを取り除く為に、まずエルフの館を更地にして、マンションにする予定である。1階部分には飲食店スペースを作り、将来に備える。千尋君達が高校を卒業しないと、専属で働けないから。後、行政の審査を通す為の準備を必要だし。
千尋君は学校の休みの日に、資格を取るための勉強をしている。調理師、栄養士、防火管理者などだ。
詩羽さんは大学に行かないので、1日中、創作活動をしている。エリさんは、住民票を新居に移して、俺達の通う高校へ転入してきた。みゃーは大学を中退して、仮社屋となる住居スペースで、各パブリッシャーと連絡を取り合い、締め切りの管理を始めてくれた。なゆは、通信制の高校で勉強しながら、執筆活動中である。
イーグルジャンプ組は、週末だけ寝泊まりする部屋を、二部屋キープした。コウとりんさんの部屋、青葉さん、うみこ、はじめさんの部屋になるらしい。
それぞれが、それぞれの思い描く未来へ、一歩ずつ進んでいる。
え?シリーズ化決定…あの或る意味では問題作は、発売と同時に売れているらしい。なので、早々とシリーズ化だと、神楽坂さんから連絡が来た。スケジュールは先輩の発刊スケジュール沿いなのが気がかりではある。先輩に書かすために、赤字覚悟で売り出す気なのか…あの敏腕編集者…
で、エリさんの琴線に触れたようで、コミカライズ化し始めた。敏腕編集者が担当に付いたそうだ。
「いや、1冊で3度美味しいです。久々の?いや、初めての大ヒットですよ、和泉先生♪」
と、ご満悦の神楽坂さん…