---羽島伊月---
朝、目覚めると全裸のちっひーが、俺と抱き合っている。小振りな胸ではあるものの、弾力は気持ち良い。俺の肉棒は、ちっひーの中に奥深く刺さっていた。
「義兄さん、おはよう♪」
ちっひーが笑顔で俺の唇に唇を重ねて来た。柔らかくて決めの細かい皮膚感…それだけの刺激で大砲が火を噴いた。
「義兄さん、早すぎるよ。早漏なの?」
「ちっひーが気持ち良すぎるんだよ」
ちっひーの乳首を口に含み吸う。口いっぱいに広がるちっひーの味…美味しい、朝の目覚めにはこれだな。だけど、徐々に塩気と鉄の味が口に広がっていく。なんでだ?目の前のちっひーの顔からは血の気が失せていた。まさか…口を離すと、ちっひーの乳首からどす黒い血が流れ出していた。
「ちっひー!しっかりしろ!」
「彼と添い遂げたかった…なのに…」
ちっひーの首には首輪…首輪から伸びる鎖は、天井に固定されていた。
「なんで…義兄さん…邪魔したの…」
俺はそんなことはしたくない…なんで、こうなったんだ…時間は巻き戻らないのか?そうだ、救急車を…ベッドから降りて、スマホを手にした俺。待ち受け画面には、首のない男の死体に泣きすがるちっひー…俺が殺したのか…
はぁ…はぁ…はぁ…今夜も禄な夢を見ない。ここ最近、ずっとである。俺はちっひーに…後悔の念ばかりが空回りしている。軽い気持ちで書いていた妄想小説…今も書くには書けている。しかし、書いた内容がグロテスクに変貌して、夢に現れてしまう。ヒロインはちっひーでだ。
担当編集者に相談をして、病院に通っている。覚醒している時は何も問題無い。今まで通りの俺である。しかし寝てしまうと…悪夢を定期視聴する羽目に陥っていた。寝た気がしない。しかし、熟睡しているようで、悪夢三昧以外、悪い箇所が無い俺。
どうすれば良いんだ…
---羽島千尋---
こんなことは初めてだ。自分の枕を抱えて、正宗君の部屋を訪れた。
「ごめん…今夜、隣で寝てもいいかな?」
「かまわないけど…寝るのは0時くらいだよ」
彼はPCに向かって作業していた。それは彼の日課であり、生きる為の行為であり、妹さんと生きる為に必要な行為でもあった。
ボクは正宗君の寝床に入り、暖めておく。今までに何度も一緒に寝た。でも今夜みたいに枕を持参したのは初めてだった。
「う~ん…」
何かを悩んでいるような彼。
「ボクで役立てるかな?」
彼に声を掛けた。
「千尋君だったら、うまるさんにどうアプローチする?」
えっ?意外すぎる質問…咄嗟に答えが浮かばない。
「だよね…忘れてください。う~ん…」
何か、想像出来ないことを妄想しているような彼。
ベッドを抜け出して、彼の背後から、PCのモニタを覗き見た。朝霧作品『天使と悪魔』のようだ。まだ、発刊されていないので、全貌は不明である作品である。もしかして、モデルはボクとうまるさん…もし、そうなら、有り得ない組み合わせでしょ?
「ボクは悪魔?」
「うん?そうだね…うまるさんという天使を惑わす小悪魔かな」
って、プロットを口にした彼。えっ?ボクが小悪魔なの?
「心優しい小悪魔…上級悪魔になる為の試験で、天使を惑わす試練を行うんだけど、心優しい小悪魔は天使と友達になり、二人は恋人のようになっていくんだ。で、最後は…二人で新しい生き方を選択して終わる…そんな感じになるんだ」
ボクとうまるさんが恋人…新しい生き方?気になる。
「問題は、天使は欲に塗れると堕天使に堕ちるんだよ。だから、その愛は純粋無垢で無くてはいけない。独占欲とか欲情とかは抱いてはいけないんだ」
純粋無垢な愛…難しいテーマを書いているようだ。彼がスケッチブックを手渡して来た。捲っていくと、ボクとうまるさんを描いたデッサンがたくさんあった。ボクは悪魔の羽と尻尾を持っている。うまるさんは天使の翼と光輪を持っている。二人が愛おしそうに抱き合うデッサン。愛おしそうに身体を合わせるデッサン。実際には、こんなことした事無いのに…作家さんの想像力ってスゴい…
「大筋の展開はデッサンで描いてあるから、それに沿って話をつけていくんだけどね」
彼はボクと顔を合わせない。モニタを見つめている。モニタには文字が追加されていっていた。
「ボクはどうしたら、いいのかな…」
「作家って、妄想と現実の区別は出来ているよ。出来無いような者は作家では無い」
義兄さんのことだね。
「もし、千尋君に手を掛ければ、その瞬間、彼は作家では無くなる。彼は妄想を文字に変えているんだろ?俺は不器用だから、見ないと書けないけど…」
そうだ…義兄さんは、見ないで書いている。妄想というキャンパスに描かれた物を書いている作家である。正宗君は見た物を応用しているけど…
「正宗君は紗霧ちゃんで妄想する?」
一瞬沈黙が訪れた。キーボードの打音が止まったのだ。
「今はしないかな…以前は…でも、身体が浮かばないんだよ。モヤに隠れていて…顔しか見えないんだ。俺は、どうしていいかわからず…学園異能バトルに走った」
正直な正宗君。義兄さんも正直なんだと想う。現実と妄想を入り交じらせていたのは、ボク達の両親だけなのかもしれない。
「逢いに行くかい?」
「一緒に行ってくれる?」
「勿論だよ」
---羽島伊月---
土曜日の午前中…呼び鈴が鳴った。担当編集者は、今日来るって言っていたかな?何の躊躇も無くドアを開くと、みゃーとちっひーと彼がいた。固まる俺…何をしに来たんだ?おい…まさか…汗が噴き出していく。鼓動が激しくなっていく。
気が付くとベッドに横になっていた。俺を心配そうに見ている、みゃーとちっひー…俺はどうしたんだ?これは、夢なのか?俺はちっひーを、今日も壊してしまうのか?
「驚いたわよ。いきなり汗を吹き出して、倒れるんだもの」
みゃーの声。俺は倒れたのか?
「義兄さん…私を妄想の中に引き釣り込みたいの?」
ちっひーの声…引き釣り込めば…結末は毎晩見ているよ。どうすれば、良いんだ。
「義兄さん、紹介がまだだったね。ボクがお世話になっている朝霧沙樹先生だよ」
アイツを紹介してくれたちっひー。朝霧…沙樹…コイツが…
「ボクは彼の傍で一生を終えたいと思っています。例え、彼と結婚は出来無くてもね。彼のおかげで、ボクは心の拠り所を得ました。心の安らぎを得ました。ボク自身を取り戻せました。そのお返しがしたいんです。彼と彼の妹さんを支えてあげたいんです」
何を言っているんだ?結婚しないでもいいって…
「遊びなのか…」
「違う…真剣だよ。ボクも彼も…真剣だからこそだよ。出逢いは一期一会。再会できるのは縁がある証拠…ボクは彼と出会い、女の子であるボクに再会出来た」
言っている意味は、なんとなく、わかる。ソイツに出逢わなければ、一生、俺の義理の弟でいないとダメってことだよな。
「だけど、どうなんだ?一生添い遂げるって言うのは…結婚もせずに」
「彼は、ボクに将来のビジョンを見せてくれた。ボクの進むべき道を示してくれたんだよ。今、その道を進む上で必要な勉強をしている」
ちっひーの顔が誇らしげに見えた。こんなにも力強い笑顔が出せるのか…
「みゃーはどうなんだ?」
「私?私も、ちっひーと同じよ。彼の傍で、自分の出来る事をするわよ。結婚しないとは言わないけど、少なくても、彼とは結婚しないと思う。彼は私にとって大切な弟枠だからね♪」
そうか…結婚すると弟枠では無くなるのか…そうか、ちっひーもそうなのか。恩人枠が旦那になるのが許せないのかもな。俺にとって、ちっひーは弟枠だ…それが良い落としどころか。
「おぉ、以前のような笑みを浮かべたね。ふっきれたのかな?」
みゃーがからかうように言った。あぁ、そうかもしれない。ちっひーの彼氏がお膳立てしてくれたのか?やっぱり、天才作家には勝て無いなぁ…
---羽島千尋---
義兄さんに逢って、良かったと思う。義兄さんなりに結論が出たそうだ。ボクは義兄さんにとって、永遠の弟枠で良いそうだ。ふっきれた義兄さんの表情には、接見した時のような狂気な目付きは消えていた。
帰り道、彼に抱きついて泣いてしまったボク。
「気がかりなことが無くなって、気が緩んだかな?」
みゃーさんが優しい声を掛けてくれた。彼は、何も声を掛けてくれない。きっと、掛ける言葉が浮かばないのかもしれない。ボクのしたいようにさせている彼。
---八神コウ---
マサムネ君達は、ゴールデンウィークに温泉旅行に行くそうだ。なのに、私達は仕事とは…
「新作のキャラコンペがあるのよ。しっかり、アイデアを出してね」
って、りん。コンペには青葉、そして、大和さんの推薦枠で強豪2名が参加するそうだ。
「りんは、知っているのか?強豪枠が誰かをさぁ?」
「勿論♪出来れば、強豪枠が通らないことを祈っているわ。ゲームが変わっちゃいそうだもの」
あっ!一人はわかった。エロマンガ先生かぁぁぁぁ!それは、強豪すぎるだろ?かわいい女の子のイラストを描かせたら、一番だと思うし。
「あぁ、一人はわかったみたね。そういうことだから、社内コンペをもぎ取ってねコウちゃん」
「温泉に行きながら、考えるのは無しか?」
「う~ん…コンペ提出作品創作合宿?」
そうだ。その手があるじゃないか!
「うんうん♪」
「酒抜きでもいい?あぁ、私と大和さんは飲みますよ♪」
はぁ?なんだよ~二人は参加なのか…ズルい!
「じゃ、青葉と私も参加で話を通してくれよ!」
「後、うみこさんもだよ♪」
ライバルのうみこは、この前モデルをしたそうだ。豹変しそうなことをされたらしい。何をされたのかも気になるが、温泉の方が気になる。
---土間うまる---
「お兄ちゃん、行って来てもいいよね?」
正宗君達と温泉旅行に行きたいと、お兄ちゃんへ伝えた。ただ、問題がある。長い休暇中にお兄ちゃんを一人にする不安。帰ってきたら、ミイラになっていたら、泣くに泣けないよ~
「行きたいって割りに、複雑な表情だな、うまる」
それは複雑だよ~。正宗君もお兄ちゃんも大切で、ず~っと一緒にいたいんだもの。
「そうだな、行って来ても良いよ」
お兄ちゃんの許可はゲットできたが…
「お兄ちゃん…一人で大丈夫?ねぇ、帰ってきたら、屍化していないよね?死んじゃあ、いやだよ~」
お兄ちゃんに泣いて縋る。
「勝手に殺すなよ。実はなぁ、僕と叶にもお誘いが来ているんだよ♪」
はぁ?何ですか、それは…何か、泣いて損した気分が満載なんですが…
「問題はきりえちゃんだな。まぁ、大人組が彼女も行けるように、親御さんを説得するらしいよ」
大人組とは、神楽坂さん、大和さん辺りらしい。
「で、お兄ちゃん…あの話はどうなったの?」
「あの話?あぁ、将来的な話か?そうだな。うまると一緒に暮らせるなら、良い話だと思う。まぁ、会社で単身赴任とか左遷されたら、料理人の道も有りだと思うよ」
あの話とは、飲食店構想である。料理好きが揃っているので、前向きの人が多い。私と恵さんは美人ウェイトレスを目指そうと、誓い合ったりしている。
「叶も協力したいそうだ。僕も驚いたけど、あんな前向きな叶って初めてみたかも」
うっ…叶さん…まさか、私と同じ二兎追うんじゃ…なんか、あの人と被るのは何故…他人なのに…
「うまる…旅行中に、彼と進展が有るといいなぁ♪」
え?耳が熱い…なんか、私よりもお兄ちゃんの方が、彼を気に入ったみたいだ。義理の弟として…先走らないでよ~!お兄ちゃん…
うまるは、ホノボノ系キャラなので、エロパートに持ち込みにくい(^^;