---土間うまる---
次の宿泊先に着くとお兄ちゃんが、既に到着していた。部屋割りはお兄ちゃんと二人部屋のようで、お兄ちゃんの部屋へと急いだ。
「お兄ちゃぁぁぁぁん!」
私はこまるとなって、お兄ちゃんに泣きすがった。
「うまる、どうしたんだよ?なぁ…」
久しぶりの私の大泣きに戸惑うお兄ちゃん。
「また、こまる…どうしてかなぁぁぁぁぁ~!」
こんなことは、お兄ちゃんにしか出来無い、お兄ちゃんにしか訊けない。
「一人の時か?」
恐る恐る訊いてきたお兄ちゃん。
「わからない…気づいたら、こまる状態でマサムネ君と…」
昨夜の大問題を告白した。
「へ?人生に一度きりのイベントの記憶が無い…おぃ…」
絶句するお兄ちゃん。
「気づいたら…マサムネ君の上にいて…既に…」
「上にうまるって…」
上にいるって事は、そういうことだ。マサムネ君主導ではなく、私が自発的に…それは明白である。
「おめでとうと言って良いのか、わからん状態だな…で、その時は戻れたのか?」
「うん…マサムネ君のキスで…でも…でもねぇ…全裸状態で…私の神秘を見たらしい…」
私自身でも仕組みがわからないのに、それを目撃されてしまったのだ。
「全裸で、こまるからうまるへ?それはそれで衝撃的だな…」
衝撃だと思う。幼児体型から高校生へって…
「で、どうしたいんだ?」
「わからないよ~!お兄ちゃん、どうしたらいいかな?うぇぇぇぇぇ~ん!」
お兄ちゃんに泣きすがる私。どうしていいか、見当も付かないし…
「どうって…う~ん…」
考え込むお兄ちゃん。
---和泉京香---
甥の正宗から招待を受け、温泉宿に来た。結構高級な部類に入る有名な宿だ。どこにそんなお金があったのだろうか?累計発行部数20万部程度のラノベ作家と学生の二足のわらじなのに…ロビーで待っていると大勢の女性に囲まれて、正宗が現れた。ハーレム?何をやっているんだ?
「正宗!どういうこと?」
甥っ子に声を掛けた。
「あっ、叔母さん…お久しぶりです」
以前より、逞しく見える甥っ子。女性達に手で合図をして、フロントで鍵を受け取り、私と二人で、部屋へと向かった。部屋はこぢんまりとした二人部屋のようだった。
「この部屋をお使い下さい」
私と共に部屋へと入って来た。
「あの女性達は誰なの?あなたは、何をしているの?」
渦巻く疑念が口から、次々に呼び出す。彼は何も言わずに、私に言われたい放題、言われている。
「何故、答えられないの?」
「京香さん…モデルになってくれませんか?」
想像とは違う返答が彼の口から、飛び出した。モデル?なんの?
彼はスケッチブックを手にして、鉛筆で私を描き出した。小説家を止めて、画家になったの?聞いていないんだけど…
「どういうことよ?」
彼は私の背中の後ろに座り、私の肩を揉み始めた。心地良い刺激…気持ち良い…だけど、徐々に違う刺激が私を襲い始めた。耳タブをハムハムされ、頬を重ねている。甥っ子のもたらす至福の刺激にうっとりしていく。まるで、兄さんにされている気分になっていく。
はぁ…はぁ…はぁ…
息遣いが荒くなっていく。
ネチョ
股間が生暖かい。正座をしていたのだが、足をモジモジすると、股間から音が…恥ずかしい…恥ずかしければ恥ずかしく思う程に、股間の湿り気は増大していく。どうしよう…甥っ子で欲情なんて…恥ずかしい。
胸を揉まれ、乳首をソフトタッチされていく…?乳首?服は?えぇぇぇぇぇ~!いつの間にか全裸で、彼の胸に背中をもたれていた。この子は、いつの間にマジシャンになったのよ…
「京香さん…その表情…いいですよ」
耳元で彼の囁き…吐息が耳に甘美な刺激をもたらしていく。胸が苦しい…キュンとして、切ない…兄さん…どうしよう…空から見守ってくれているであろう兄さんに問い掛ける。
柱に背中を預けて、刺激に耐えている。目の前では彼が、私の淫らな姿を描いている。しかるつもりだったのに…しかられる立場になっていた私。兄さん…
コンコン♪
彼が訪問者の応対へ…誰にも、こんな姿を晒したくない。でも、全身が金縛りにあったのか、自力で動けない。
「スゴい♪兄さん…京香さんを…」
紗霧ちゃんの声…ゆっくりと、声のした方を見ると、ペンタブレットを手にして姪っ子が、私を描いていた。こんな姿を描かないでぇぇぇぇぇ~!
「京香さん♪次のシーンに行きますよ」
彼にお姫様抱っこをされて、運ばれていく。どこへ?次のシーンって?部屋の奥の障子を開けると、内風呂があった。樽状の湯船が置いてある。洗い場は無いようだけど…風呂場の状況を観察していた私の身体は、彼の手により正座の状態にされ、彼女の手により、左手首と右足首、右手首と左足首のペアで拘束された。動けない…どうするの?動けない私を彼が抱えて、樽の中に置いた。樽の中は空だ。湯船で無いのか?
「熱い!」
背中に熱いお湯が流れている。
「源泉掛け流しです。ここで暖まってくださいね」
え?まさか…樽の蓋が閉められた。真っ暗な樽の中…熱いお湯が流れ込んでいる。茹だっちゃうよぉぉぉぉぉ~!今まで、つらく当たり、冷たい態度で接していたから…仕返しなのか?これって、拷問じゃないの…
「助けてぇぇぇぇ~!出してぇぇぇぇぇ~!」
大声で叫んだつもりだが、か細い声しか出ない。あの兄妹は鬼か?いや、鬼のように接した私への仕返しなのか…兄さん、助けてぇぇぇぇ~!
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どのくらい経ったのだろうか?ここはどこ?兄さんの元に来られたのかな?どこかに横たえている。どこ?あの兄妹が上から私の惨めな姿を描いていた。のぼせているのか、頭がクラクラしている。湯あたりか?
「京香さん、協力してくださいね。兄さん、京香さんに言われた通り、学業と仕事を両立させています。少しくらい身体を張ってもバチは当たりませんよ」
って、彼女が私に向かって言う。こんなに物事をはきはき言える子だっけ?
「兄さん、どう?」
「まぁ、釜茹での刑の描写は行けると思うよ」
「でも、生徒役じゃないよね?」
「風紀担当の先生って設定でどうかな?」
「それだと教師ばかり3名だよ」
「だよね…生徒役のモデルを探さないとダメだな…」
モデル…そう言えば、モデルになってって言われたような…
「ねぇ、どういうこと?これは一体?」
茹だった身体の上体を起こしながら訊いてみた。
「肉親って京香さんしかいないから…ギリギリまで責めるには肉親でないと…」
他人様には頼めないってことか…だからって、これは酷いでしょ?声に出して言えない、実は小心者な私。そんな私の前に、彼が本を1冊置いた。『混合する性』と言うタイトルだった。作者は和泉マサムネ、画はエロマンガ、朝霧沙樹とある…あの朝霧先生の挿絵なのか?
「この本の取材です。編集部の方から、ギリギリまで責めて描いてくれって…」
ギリギリ?パラパラと本を捲って見ていると、朝霧先生のタッチで、ギリギリの裸体が描かれている。そのバックには何時ものホンワカするキャラがいたり…なんとも不思議な挿絵である。
改めて見てみると、正宗はスケッチブックに鉛筆、紗霧はペンタブレットを手にしていた。それって…まさか…そんなはずは…
「正宗、あなたは和泉マサムネって言うペンネームよね?」
「そうですよ。どうしましたか?」
正宗の描いたペンタッチは、朝霧先生のソレに見える…
「あ…さぎり…さき…って…」
自分で口に出して、理解した。そういうことなのか…
「正宗…あなたの二足のわらじって…朝霧沙樹と和泉マサムネのダブルペンネームなの?」
「そうですよ♪売れ無いラノベ作家では、妹と一緒に末長く暮らせないでしょ?」
じゃ、紗霧は…
「あなたが、エロマンガ先生なの?」
「そんな名前の人は知りません」
真っ赤な顔で俯く彼女。そういうことなのか…この兄妹は二人三脚で本を作っているのか…で、もう一人の家族である私をモデルに…嬉しいような、末恐ろしいような…
「後、今後の予定表です」
書類が目の前に差し出された。書類に目を落とすと…プロジェクト縁…マンション化…飲食店経営…などの文字が躍っている。まだ、のぼせているようだ。
「将来的な収入源の予定表です。もう少し余裕が出来たら、同居しましょうよ、京香さん♪」
舐めるように私の全身を見る正宗…身体が目当てなの?
「じゃ、京香さん。夕食は19時ですから」
二人が、私の部屋を仲良く後にした。あれ?身体目当てで無いの?弱っている全裸の女性を放置って…
---羽島伊月---
警察とか通院とかで、まるで書けていない。締め切りだと言うのに…どうするかな?編集担当が目の前で唸っている。
「穴が空くのは困る。どうにか、一本書いてくれないか?」
「って、言われても…」
もう、ちっひーに無理難題は言わない。いや、言ったことは無いが。ちっひーの前で、妹妄想は口にしない。それはそれで良いのだが、妹妄想をすると顔がちっひーになってしまい、筆が進まないのだ。どうするかな…
「妄想しても良い妹枠の女性を提供してくれないか?」
「出来る訳無いだろ?下手すると、売春斡旋に間違われるし」
それは有るな。うんうん、もう警察のご厄介はカンベンだ。どうする…あっ♪いい手が思いついた。
「なぁ、穴が空かなければ良いんだよな?」
「それはそうなんだが」
「作者は俺で無くてもいいよな?」
「うん?素人はダメだぞ!」
スマホを手にして、義弟へ連絡をした。
「今いいかな?」
『どうしました?』
「頼みがある…没作品でいいんだけど、一作穴埋めに使いたいんだ」
『うん?マズいでしょ?出版社違いますよ?!』
「俺の作品として、アレンジはするから…頼むよ」
『お義兄さん…今回だけですよ。メアドはこの前ので良いですか?』
「すまん…借りは返す。必ずだ。倍返しにする」
『俺で無くて、千尋君にしてください』
通話が切れると同時に、俺のPCにメールが届いた。届いたメールに目を落とす。う~ん、改造すればいけるか。
「いけそうだ」
「おい、誰から原稿を貰ったんだ?」
「俺の義弟君で、没原稿製造器の二つ名を持つ、早書き名人の和泉マサムネ先生ですよ」
ちっひー、みやー、可児子は俺を着信拒否しているので、義弟君の連絡番号とメアドを交換してある。本当にアイツは、俺とちっひーにとって大恩人だよ。倍とは言わず、3、4倍にして、恩を返したいぞ。
「うん?お前の義弟なのか?」
「ちっひーの彼氏だから…そうなるでしょ♪」
頭を抱えている担当編集者。
「おい、待て待て!違うレーベルの作家だぞ」
「大丈夫ですよ。プロジェクト縁ってレーベルだから…賛助企業になってくださいね」
「そういう抜け穴か…まぁ、あそことは協力態勢があった方が良いのは確かだ。伊月、お前も合流するのか?」
「ちっひーが許してくれればね♪」
義弟君の提供してくれた作品を俺流の作風へと書き換え始めた。
---土間うまる---
お兄ちゃんと正宗君の部屋にいる。今回も正宗君のキスにより元に戻れたのだが…
「原因は何ですか?」
正宗君に訊かれた。
「原因なぁ…どうなんだ?うまる」
お兄ちゃんにも訊かれた。
「わかりません…初めは甘えん坊キャラを演じていたら…」
「演じなくても…」
正宗君が何かを言いたげだ。うん?演じなくても甘えん坊キャラなのか…私って…
「甘えたくなると、あぁなるんですか…厄介ですよね」
厄介だよ~。
「で、訊きにくいのだが…うまるの初めては…」
お兄ちゃん!何を訊いているの?恥ずかしいってぇぇぇぇ~!
「初めて?ファーストキス?じゃないか…なんだ…あっ!アレかぁ…まさか、記憶に無いの?!」
正宗君の顔は驚きに満ちあふれた表情であった。あぁぁぁぁぁ~!どうしよう…
「お兄さんの前で言うのはアレだけど…あんなに激しかったのに?」
「激しい?」
お兄ちゃんの目が点になっていく。初めてが激しいかったの…私も驚きと共に、恥ずかしさが込み上げてくる。
「えぇ、初めて女性に恐怖を感じました」
苦笑いしている正宗君。え…恐怖って…私は何をしでかしたんだ?
「言いにくいとは思うが、どんな感じだったんだい?うまるの記憶に無いみたいなんだよ」
って、お兄ちゃんは更に恥ずかしいことを訊いている。耳が熱い、顔が熱い、胸が熱い…
「う~ん…いざって時に…こまるさんに変身して…」
はぁ~?それは失礼なことを…ジト目で私を見るお兄ちゃん…涙が溢れていく私の瞳。
「あぁ、泣かないで…で…こまるさんが僕のアレを玩具のようにして遊び始めたので…僕は疲れもあったので、ウトウトしてしまったんですよ。そうしたら…『隙有り!』って、うまるさんに戻られて…騎乗位で…」
あ…あ…あ…あの時…だ。その直後に意識が戻ったのかぁぁぁぁぁ~!それはタジタジになるよね…萎えるよね…
「ごめんなさい…本当にごめんなさい」
ひたすら正宗君に謝る。唖然としているお兄ちゃん。
「謝らないでください。そんな感じで、なんで、あぁなるのか原因が知りたいんですよ」
正宗君の言い分はもっともである。イザ!って時に、それでは…でも、原因って言われても…
「正宗君、こんな妹だけど、嫌いにならないでくれるか」
お兄ちゃんが彼に頭を下げた。
「頭を上げてください。嫌いになりませんから。ただ…僕とかお兄さんの前でなら問題は少ないけど…」
事情を知らない人の前でだよね、問題は…って、恵さんにも見られたのか…
「恵さんは?」
「たぶん、見ていない…意識が飛んでいたから…」
それなら、問題は少ないか、今回は…その後、夕食まで三人で意見を出し合ったが、解決には至らなかった。