---氷堂美智留---
「なあ、最近露出が減ったんじゃないか?」
トモの部屋でまったりしていると、トモに言われた。
「気のせいだよ」
いや、減ったと思う。モデルとして、肌を空気に晒すのを控えているのだ。あの日以来、あの家に通っていた。お呼びの声は一斉無いのに、通っていた。脅されたからでは無く自分の意志で通っている。
「まさか、お前…彼氏が出来たのか?」
ぎくっとした。その一瞬をトモは見逃さなかった。
「はぁ?出来たのか?お前、勝手に彼氏を作るなよ!そういう話は俺を通せ。俺が吟味してやる!」
以前なら、『そうか、頼むよ』って笑って返したかもしれない。でも、恵達の話を聞くと、私までトモの物になっていると実感できた。
「トモには関係ないだろ?これは私の問題だ」
「関係ある。お前のマネージャーなんだ。俺を通せ。今回のそいつとは別れろよ、俺は認め無いからな」
こういう態度、物言いが恵には耐えられなかったんだろう。今の私になら分かる。
「トモ、私はお前の物では無い。寧ろ、彼の物になりたい。もう、お前とは会わない。じゃな!」
そう別れ文句を言って、トモの家を飛び出した。その足で、彼の家へと向かう。彼は嫌な顔をせずに、招き入れてくれ、仕事を再開し始めた。彼は小説家である。ネタに詰まった時以外は、私を相手にしてくれない。でも、相手をしてくれないだけで、厄介者扱いは決してしてこない。これはこれで、私にとっては嬉しかった。
「また、来たのか?モデルにされるぞ」
ムラマサ先生に言われた。モデル…陵辱三昧されるのだが、エロ心無し、エス心無しの観察者たる彼。そんな彼に興味があるが、男性として問題だと思う。
「美智留さん相手でエロ心無しだと、問題だよね」
って、彼の妹の紗霧ちゃん。露出の多い服装でも、エロ目線では見ず、私目線の感想を聞きたがる彼。問題だな。職業病なんだろうけど…
「う~ん…どうするかな…あっ、美智留、来ていたんだ。モデルを頼めるかな?」
頭を掻いて悩んでいる彼。
「うん、そのつもりで来ている。その代わり、最後まで頼むよ♪」
観察が終わると、悶悶とした私を放置しがちの彼。これが一番困るのだ。この館の女性陣、皆の悩みらしい。『悶悶とさせた挙げ句の放置プレイ』これが、彼の得意技らしい。
「最後まで?う~ん…努力はするけれど…」
困ったような顔の彼。結構好きな表情だよ♪
---羽島伊月---
目の前におパンツ星人がいる。俺の作品である『妹のすべて』のコミカライズを担当するマンガ家なのだが、おパンツを髪飾りにするほどの下着フェチな女である。今日は、コミカライズの方向性を相談に来たのだが、俺の部屋で或る物を見つけ、書き手に会わせろと、駄々をこねていた。
「どうして、会わせてくれないのですか?」
「あ~、だから、さっきから言っているだろ?直接の知り合いじゃないんだ」
「じゃ、誰を経由して、書いて貰ったんですか?」
或る物とは、とある事件で俺が紛失してしまったイラストの再現版であった。画像データを色紙に印刷してくれて、直筆のサインをしてくれたそうで、それなりに値打ち物らしい。
「義理の弟だよ」
「義理の?はぁ?伊月先生って、弟さんしかいないですよね?えっ!同性婚ですか?」
作家仲間及び関係者には、ちっひーは弟と思われている。なので、ちっひーの彼氏は同性婚と思われてしまうのだ。
「ノーコメントだ」
彼のおかげで、週1のペースで、ちっひーの手料理が送られてくるようになった。その際、どこで紛失したか思い出せるようにと、料理と共に、作者作成のレプリカが送られてきたのだった。
「どこにいるんですか?義理の弟さんは」
目の前のおパンツ星人は、エロマンガ先生の大ファンらしい。
「言えないよ。彼に迷惑を掛けられないからな」
散々多大な迷惑を掛けてしまっている俺。これ以上は掛けられないと心に誓っている。ただでさえ、ちっひーの心の支えになってもらっているんだし。
「ズルいです!教えてくれるまで、帰りませんよ」
それはそれで困る。仕事のジャマである。いや、待てよ…
「俺の妹枠になるか?ふふふ♪」
「えっ?いやらしいことをするんですか?ダメです!大声を出しますよ」
警察沙汰はこりごりだし、どうするかな。しばらく、ごねていたおパンツ星人は、何を見つけて、帰って行った。アイツ、何を見つけたんだ?
---三国山 蚕---
伊月先生の家で、ゴミ箱から宅急便の伝票をゲットした。この送り主が弟さんの筈だ。『羽島千尋』とあるし。この住所へ行けば…ふふふ♪
翌週の週末、羽島千尋君に会いに、書かれている住所を頼りに出掛けた。五反野駅で下車して、商店街を抜けて、住宅街に突入した。地図アプリで見るが、目的の番地の位置がわからない。最近出来た建物なのか?
目新しそうな建物を目印にして捜索をして、それらしい建物を発見した。しかし、中には入れない。カードキーのセンサー部分があるので、それが無いと入れないようだ。
エントランスにインターフォンを発見。そこで、羽島千尋君を呼び出した。
「羽島伊月さんの紹介で来ました。マンガ家の三国山蚕です♪」
「義兄さんのコミカライズ担当の人?」
「そうです」
「何の用ですか?」
「エロマンガ先生を紹介してください。大ファンなんです」
「…」
インターフォンが切れた。あれ?何か変な事を言ったかな?
---羽島千尋---
妙な人が訪れた。義兄さんの作品のコミカライズ担当のマンガ家さんらしい。正宗君が義兄さんに確認をしてくれた。義兄さんが言うには、完全に拒否したらしいのだが、ボクの送った宅急便の送り状をゴミ箱から盗んだらしい。
「泥棒か…お仕置きは必要だな」
「そうね、兄さん」
鬼畜兄妹が動き出した。言葉巧みに、和泉邸に連れ込んだのだ。
「で、千尋君は?」
「俺がそうだよ」
正宗君が名乗りを上げた。危険な香りがプンプンするのだが。
「おぉ…兄さん、コイツ下着フェチだよ」
紗霧ちゃんが何かに気づいた。
「兄さん?あなた、千尋君じゃ無いのね!あなたは誰よ!」
「おっ!絹恵じゃない」
エリさんが彼女に声を掛けた。
「エリさん…どうして、ここに?」
後で聞いた話だと、エリさんのファンで、コミケで知り合ったらしい。
「絹恵、泥棒はイカンなぁ」
「泥棒じゃないです。ゴミ箱から拾っただけですよ」
「室内のゴミ箱だと、泥棒になるけど、どこのゴミ箱で拾ったのかな?」
正宗君が追い込んでいく。紗霧ちゃんは、ペンタブレットを手にして、既に書き始めていた。
「正体不明のあなたに言う義理は無いわ」
「じゃ、不法侵入ってことでいいな?ここ、俺の家だし」
「えっ?!不法侵入?あなたが招き入れたんでしょ?」
「証拠は?」
「へ?」
「兄さん、いいかな?」
紗霧ちゃんは気になる物があるらしい。
「お前、モデル決定だな。紗霧、いいぞ♪」
彼女の前に進みでた紗霧ちゃん。
「絹恵ちゃん、頭に飾ってあるおパンツと、履いているおパンツを見せてください♪」
え?頭に飾ってある?あれって、リボンで無いのか…絹恵さんと紗霧ちゃん以外、リボンと思しき物をロックオンした。
「え?あなたも下着フェチ?」
絹恵さんのスカートを捲り上げ、前後左右からみつめる紗霧ちゃん。
「う~ん、つまらないおパンツだな。作品に出てくる、シルクのおパンツでは無いのか」
落胆する感じの紗霧ちゃん。
「つまらないですって?これはこれでコスパが良いのよ!」
「エリさん、コイツはどの程度のマンガ家なの?」
「新人よ。あの妹好きの『妹のすべて』がデビュー作だったかな」
義兄さんの作品がデビュー作?それはそれで問題無いか?
「新人だけど…エリさんにはおパンツ画は負けないです!」
「私はパンツに執着していないから…あんた、アレは異常だよ。原作では全裸のシーンに下着姿って…よく妹大好き星人が許したよね」
作品を弄られるのが嫌いな義兄さんの作品に手を加えたの?
「えぇ、私が下着のすばらしさを教え込み、伊月先生には理解して貰いましたから」
「ふ~ん、下着のすばらしさを?俺に教えてくれないか?」
「ふん!どこの馬の骨かわからないヤツには教えません」
正宗君にケンカを売るようなことを…勇気有るなぁ…
「なら、作画対決するか?」
「ふふふ、何者か知らないけど、下着姿の女性のエロさを、見せつけてあげますよ」
そして、『エロい女性絵選手権』が急遽行われることになった。
参加者は、絹恵さん、エリさん、紗霧ちゃん、正宗君。会場は、社屋の3階になった。広いスペースに作業台が有り、画材のストックもあるので。
「ここは、何をする部屋?」
「資料庫だよ。ここなら、ギャラリーが多くても大丈夫だしな」
絹恵さんは、集団が放つ毒気に気づき始めているようで、顔色が優れない。
「エロ画対決かぁ…青葉は出ないのか?」
コウさんが青葉さんに訊いた。
「出ませんよ。師匠達が出るんですよ」
ちなみに、青葉さんの師匠は、エロマンガ先生&朝霧沙樹先生である。
「じゃ、持ち時間は1時間で、一番エロい絵を描いた人が勝ちよ。審査員はギャラリー全員。では開始♪」
詩羽さんの掛け声で開始した。皆、絹恵さんの絵に注目し始めたのだが、絹恵さんは頭のリボンらしき物を外して、顔面に被った…えぇぇぇ~パンティーだよ~。紗霧ちゃんの読み通り、おパンツ製のリボンだった。参加者以外の者の目が点になる。
いち早く復帰したのはなゆさん。
「私より、変態ね。パンティーを被って仕事って…」
ちなみに、なゆさんは全裸になって仕事するそうだ。ボクの視線は正宗君の絵に釘付けだった。あれって、ボクがモデルでは…顔はボクだと思う。身体は誰だ?ボクではなさそうだ。ボクよりも胸が大きいし、形も良い。周囲を見回すと、うまるさんの顔が紅い…身体は彼女なのか…
紗霧ちゃんは紅兎ちゃんの装備ボロボロシーンを描いているようだ。本には朝霧バージョンが掲載されるらしいので、これはこれでお宝ではある。
で、絹恵ちゃんの…下着の描写に主軸を置いているようだ。ブラの細かい模様まで書き込んでいる。でも…新品の下着に見えて、薄っぺらく見えてしまう。う~ん、知らず知らずの内にボクの観賞眼は鍛えられているようだ。生活感の無い絵…正宗君の絵に見慣れてしまうと、だから何って感じに思えてしまう。
そして、タイムアップ…ギャラリー全員で、協議をして順位を決めていく。
「ふふふ、私の絵が一番に決まっているわよ」
絹恵さんは被っていたパンティーを脱ぎ、折りたたんでリボン状態にして、頭に付けた。その行程をムービーとして保存している紗霧ちゃん。今後に生かすのかな?
「順位を発表します。4位は三国山蚕、3位は柏木エリ、2位はエロマンガ先生、1位は朝霧沙樹先生になりました」
「えっ!エロマンガ先生が参加していたんですか?どの人が、エロマンガ先生なの?」
絹恵さんが、周囲を見回している。
「う~ん…生活感が無いなぁ。お前、男と寝る度に新品の下着なのか?いや、いつ男とそうなるかわからないんだ。毎日おニューなのか?作品にそぐわないだろ?そんな金持ち兄妹とは思えないし」
正宗君が、ボクの感じた違和感を指摘している。
「おニューのどこがダメなんですか?美しい物は美しい状態で書くべきです」
「それが、分からないから、順位が低いんだろ?確かに、下着の描写は一番だと思う。だけど、審査員はプロだぞ。そんなリアルティーの無い絵に票は入らない」
リアルティー追求タイプの正宗君らしいなぁ。う~ん、恥ずかしい絵であるけど…絹恵さんは、正宗君の絵を見て固まっていた。ボクの顔を持つ女性が右後方へ顔を向けている構図で有り、その顔は恍惚である。横を向いているので、乳首が立った美しい乳房の側面からの描写。下腹部にはコウさんらしき女性が舌で舐めているように見える。
「何、これ…これって…朝霧先生じゃない…身体中がぞわぞわしていく」
身震いしている絹恵さん。隣にはエロマンガ先生の紅兎ちゃん。
「エロマンガ先生だ…スゴい、エロが浸み出ている」
腰辺りの割れた甲冑の部分には、ローライズのパンティーの上部だけが見え、股間部の甲冑も壊れ、そこからは少し破れ掛かったパンティーが見えていた。
「使用感…戦っていれば、擦れるもんね…」
エリさんの描いたパンティーやブラも使用感が見える。絹恵さんは衝撃を受けているようだ。
「じゃ、結果も出たし。お前に罰を言い渡す。妹のモデルをしろ。以上だ」
「ちょっと、待って!あなた達、何者なの?」
俯いていた絹恵さんが顔を上げると涙目であった。勝負に負けてくやしいのかな?
「俺達か?俺達はプロダクション縁だよ」
そう言い残し、この場を去って行く正宗君。
「彼は誰?」
「私の兄さん…朝霧沙樹よ♪さぁ、モデルしてね♪」
「えっ…あなた…そう、あなたがそうなんだ」
紗霧ちゃんの手にしたペンタブレットの絵を見て、彼女の正体を知った絹恵さん。
その後、絹恵さんこと、三国山蚕先生は、プロダクション縁に参加表明した。朝霧先生の元で修行をしたいそうだ。正宗君的には妹枠で、紗霧ちゃん専属のモデルになったとか…