---和泉正宗---
感覚がおかしい。エミリーと紗霧に隠し事が無いかを訊いた。大事になるまえに、阻止をする為に。
「今回は持ち込んでいないよ~」
って、紗霧。
「うん、うん、処分をしたって」
って、エミリー。
「でもさぁ、あの香りを嗅いだ気がするんだよ」
どこかで、甘い香りを嗅いだ気がする。どこだっけ。そのせいで、変な夢を見た気がする。でも、あれって男性に効果が無いはずだが…
「この別荘は新築か?」
エミリーに訊いた。
「中古だよ…」
イヤな予感がする。
「なぁ、まさか、あの館の所有者から買ったってオチか?」
頷くエミリー。固まる俺と紗霧。
「エルフちゃん、マズいって」
「でも、ここは地下室は無いよ」
クリスさんを呼び出して、事態を知らせた。
「あれが、ここのどこかにあるんですか…何かの拍子で漏れているってことですか?」
「ですね。倉庫みたいな物ってありますか?」
「図面上では無いです。それにリフォームもしているので、変な物は排除されていると思います」
気のせいかな…いや、待てよ…
「ここの飲み水は?」
「ミネラルウォーターだよ。昨年もそうだったし」
後は…池…そうだ、池の水…
「池の水の水源って?」
「湧き水と雨水のはずだよ」
クリスさんから、湧き水の場所を聞いて、耐性のある俺とエミリー、サバゲの達人のうみこ、手を挙げた深雪の4名で、探索へと出た。勿論、ガスマスクを装備して。
池の畔を歩いて行くと崖があり、そこから水が湧いていた。
---羽島伊月---
なかなか良いモデルに出逢えた。妹枠の生態を知る上で、貴重なサンプルである。俺の妄想には間違いが多々あった。それをタダしてくれている。
「そんな目でみないでくださいよ~」
俺はどんな目で見ているんだ?鏡で確認。凶悪犯のような目である。危ない目だな。反省だけはしておく。
「で、どうやって、男達を誘惑したんだ?」
取り調べ室の刑事のように尋問を重ねる。
「声を掛けるとコロっとです」
そんなに魅力のある声では無い。いや、達する間近の声は確かにそそるが。そうなると、様々な男達と…偽ビッチでは無く、マジビッチの可能性もあるのか。メモに書き込んでいく。
とにかく、リアル重視の妹物が書きたい。ちっひーに立ち直った俺を見せる為にも。
---和泉正宗---
池の水源はハズレだった。ゲストハウスに戻る俺達。
「あっ!」
エミリーが声を上げた。
「どうした?」
「あのスーツケース…確か、ヤバい薬を詰めたケースに似ているんだけど…」
エミリーの指差したスーツケース…あれって、めぐみんが入っていたスーツケースだよな。そうか、めぐみんを取り調べた時に嗅いだんだ…って、風に乗って甘い香りがする。ガスマスクをしないと…
---------
「マサムネ!正気にもどりなさいよ~!」
エミリーの声が遠くで聞こえる。俺は深雪とうみこに粉を吸わせて、下僕にして、エミリーを拘束した。そして、深雪の口で奉仕させて、うみこのセルフショーを見ている。
「まさか、男性にも効く薬もあったとは…」
エミリーは対象外なので、スルーする。
「深雪、女豹のポーズをしてくれ」
深雪が四つん這いになり、そそるようなポーズをした。それを後から襲い掛かり、深雪と乱暴に交わった。
「深雪の絶望的で恍惚な表情…いい♪それだよ、深雪♪」
「はい…ご主人様…」
こときれたように、その場でグッタリとする深雪。次はうみこを…
-------
海岸にスーツケースがいくつも放置してある。どの娘と遊ぶかな。スーツケースを開いて、深雪を取りだした。グッタリとしている深雪。海の中に入れて、海の中で交わる。
「喉が渇いたのか?好きなだけ呑んでいいよ」
海に沈める。苦しそうに藻掻く深雪。後一歩って処で、口を合わせて人工呼吸をした。
「もう…止めて下さい…もう、無理です」
深雪をスーツケースに戻し、蓋を閉めた。
------
「ダメ!」
誰かの声が遠くで聞こえた。僕は僕のあるべき場所へ帰る。誰かに後から抱きつかれ、僕をどこかへと連れて行く。
「マサムネ!」
誰かが僕の為に涙している。
「正宗君、しっかりして…うみこさん、みゃーさんをに事態を知らせて下さい」
「わかった。彼を頼む!」
誰かが僕と唇を重ね合わせ、息を吹き込む。
「マサムネ、大丈夫だよね?」
「大丈夫です。脈が触れていますから」
---白川京---
うみこさんが駆け込んできた。正宗君の体調不良の原因がわかったそうだ。ガスマスクをして、問題のスーツケースを締め、砂の中の奥深くに埋めた。
原因は、2薬混合で効果が出る幻覚剤だったらしい。昨年、吸い込んだ分のは女性にだけ効果が出る媚薬であったが、もう1つが混ざると、男性にだけ効果が出る幻覚剤になるそうだ。深雪さんが、スーツケースに入っていた。データシートから突き止めたらしい。
正宗君は、何かを見て体験した気になって、絶望して池に身を投げたし、深雪さんが機転を利かして、救助したそうだった。現場に急ぐ私達。
池の畔で、深雪さんがグッタリしていた。彼は、その横で虚ろな目で彼女を見ている。
「大丈夫?」
「大丈夫です…でも、正宗君が…」
ショック症状のようだ。彼を抱き起こし、抱き締めた。
「大丈夫よ、正宗君」
耳元でゆっくりと話掛けた。
「み、や、こ…」
私の名前を口にした彼は、私に身体を預けて、寝息を漏らし始めた。安眠抱き枕状態だな、最近…
------
その夜、紗霧ちゃんが、めぐみんに暴言を吐いていた。
「ゴミ出したスーツケースを持ち逃げって、どういうことよ!この泥棒娘が!」
「捨ててあったんだよ~まだ、使えるのに、もったいないじゃない」
「粗大ゴミのシールを貼ってあったはず。シールはどうしたの?シール泥棒!」
「違う粗大ゴミで使ったよ~使えるもの、もったい無いでしょ?」
「なんで、あんたは何でもないのよ~!兄さんは酷い目にあったのに!」
「知らないって…」
「兄さんが死んだら、一生許さないからね、この殺人未遂者!」
「え?えん罪だって…紗霧ちゃん」
「あなたなんか、知らない!名前で呼ばないでよ!」
紗霧ちゃんの暴言を止める者はいない。この呼んでいない客には、困っていたから。伊月を除いて…
「な!俺が責任を持って、躾るから、カンベンしてやってくれよ」
って、妹枠では無く娘枠になりつつ有る気がするのだけども。
「じゃ、次に問題を起こしたら、伊月と共に海に流すからね!」
最後に、無茶な裁定をした私♪
---司波深雪---
「深雪に酷いことをした…ごめん…」
翌日、彼の部屋にお見舞いに行くと、いきなり謝罪された。
「幻覚だから、気にしないでください」
幻覚で私に何をしたのかを訊いた。きっと、彼の望みなんだろうな。彼の中にある狂気…絶望を感じながらの恍惚な表情を浮かべる私。私をどうにかしたいのだろう。正気の彼には出来無いことを。
「好きにしていいんだよ、正宗君」
「深雪は達也さんを好きなんだろ?」
彼の目は絶望的に見えた。
「私達は兄妹ですから…」
「血は繋がっていないんでしょ?ずっと傍にして、ずっと頼りにしていた男性…恰好良いもんね達也さんは。僕なんか冴えない男だよ…絵を描くことしか取り柄の無い…」
彼は目を瞑り、何も私に話し掛けてくれない。どうすればいいんだろう。
------
夜、彼の部屋を訪れた。でも、彼はいなかった。スケッチブックも無い。何かを描きに出たようだ。どこに?誰にも伝えずに、島内を一人で探す。そうしたかったから。
森の奥にある池の畔に彼がいた。彼の目の前には無数の光が乱舞していた。その光景を見て涙している彼。
「僕も…連れて行って…光の彼方へ…」
彼の手からスケッチブックが落ちた。そして、池に吸い込まれるように沈んでいく彼。咄嗟に、彼の元へと飛び込んだ。池の水は澄んでいて、月明かりだけでも見えていた。彼は静かに何かに誘われるように、底へと沈んでいく。藻掻いたり、苦しんだりせずに、淡々と底を目指して落下していく。
マズい…息が続かない…でも、浮上したら彼を見失ってしまう。意識が遠のいて行く。そんな時、太い腕が私を抱き締めた。水面に浮上して、私を誰かに託し、再度潜っていく…太い腕の持ち主…
------
「深雪!しっかりしろ!」
お兄様の声…
「お兄様…」
お兄様に抱きつく私。
『それでいんだよ、きっと…』
彼の声が聞こえた気がした。
「正宗君は?」
「生きてはいる」
でも?
「クリスさんを振り切って、池へと行こうとしているんだよ」
お兄様の指差した先で、クリスさんが必死に正宗君を抱き締めている。そこにみゃーさんが現れて、何かを注射すると、グッタリとして正宗君。安静剤かな。
--------
スケッチブックに描かれていた物…湖の底にある人魚とケンタウロスの家庭の団らん。彼は加わろうとしたのか?
「たぶん、兄さんは…発作が起きたんだと思います。夜中に目が醒めて、リビングに誰もいなかったから…人の気配を感じなかったから…旅行先って記憶に無くて、みんなに置いて行かれた気分になったんだと思います」
紗霧ちゃんから聞いていた。そうだった。一人で留守番が出来無いという精神的な病…発作が起きると自殺すら辞さない危険は病を持っていた。
「兄さんは基本一人で暮らせないんです。家事はこなせても、孤独には耐えられないんです」
紗霧ちゃんの悔しそうな表情。
「めぐみんが来たから…あんな物を持ち込んだから…許せない」
両手の拳を固く握りしめて、耐えているように見えた。
「で、これからの残りの日の夜は、誰かしら、彼と一緒にいてもらう。あぁ、作家組はダメだからね」
って、みゃーさん。
「うまるさん、ちっひー、深雪さん、恵さんにお願いします」
---土間うまる---
トップバッターは私になった。チューブトップの水着を寝間着の下に着込んで、彼の部屋へ向かった。
「どうしたの、うまるさん?」
昨晩までの記憶が無いのか、普段通りの彼であった。
「今夜は、一緒にいます」
「タイヘイさんと一緒にいたいんじゃないの?僕は大丈夫だよ」
「お兄ちゃんとはそんな関係で無いから…兄妹だし…」
彼はPCの前に座り、作品を打ち込んでいる。
「兄でも好きなんでしょ?見ていればわかるよ♪」
え…そんな素振りをしていたかな?耳が熱い…
「やはりね♪」
観察眼には定評がある正宗君。
「こまるさんになる条件も分かって来ました。タイヘイさんに甘えたい時とか、タイヘイさんに本心を伝えたい時なんじゃ無いかな?」
うっ…レポートの束を手渡してくれた。私がこまる状態になった時のことを思い出して、私の心理を分析したものだった。
「素直になった方がいい。僕のような変わり者は、うまるさんに似合わないよ」
なんで、そんなことを言うの?孤独に向かおうとしている正宗君。彼は、破滅的な道に進みたいのか?
「色々考えた。で、結論は出たんだ。僕に出来ることをして、消えようかなって」
え?催眠術…正宗君が私に何かの暗示を埋め込んでいる。ダメだよ…そんなことしちゃ~!
---羽島千尋---
今夜はボクの番である。正宗君の部屋に向かった。彼は、作品作りをしていた。ソレを見ているだけのボク。
「今度の作品はどういうの?」
「兄と妹の話だよ。妹が好きで堪らない兄と、兄のことを想っている妹。そんな兄妹の話になるんだよ」
それって…
「ボクと義兄さんのこと?」
「空想だよ。リアルでは物語にならないから…でもね、千尋君の寝言…伊月先生の事が多いんだよ」
耳が急に熱くなっていく。正宗君に隠していたことがバレて、恥ずかしいって感じである。
「素直が一番だよ、千尋君」
正宗君が何かをボクにしている。これって、確か…催眠術…
---司波深雪---
私の番になった。気が重い…彼の部屋に行くと、彼は仕事をしていた。
「どうですか?」
「清々しいよ。俺の存在理由が分かった気がするから」
妙なことを言う正宗君。存在理由?
「深雪は達也さんのことが好きだろ?」
「えぇ、お兄様として尊敬しております」
「尊敬?それだけ?」
何が言いたいのだろうか?彼から何点かのスケッチを手渡された。お兄様の各部位のスケッチである。見た物しか描けない彼…お兄様の全裸スケッチをしたのか…
「どうしたの、深雪?太くて頑丈な物が好きなんだろ?」
お兄様の太い腕…腿…アレ…お兄様の分厚い胸板…うっ…私とお兄様の淫らな行為が何点もある…そのスケッチに魅入る私。そして、妄想の世界へ入っていく私。
耳元で誰かの声がする…
----加藤恵---
そして、私の番だよ。ムネ君の部屋に入った。PCの前に座り、仕事をしているムネ君。
「恵の心理分析が一番難しかった」
仕事では無いのか?私の心理分析って?
「彼の強引な性格は許せなかった。それを除けば…」
彼って?ムネ君では無い。強引なことはしない。安芸君のことか?
「何を言いたいのかな~」
「何も言わないよ。見つめ合えばいい…それだけで終わる」
終わる?何がだ?