※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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思い込みと妄想の果て*

---和泉正宗---

 

僕は逃げた。一人、家に帰ってきた。みんなには暗示を掛けてきたので、バレることは無いと思う。自分の部屋を片付けていく。引っ越しの手配はしてある。縁の代表はみゃーに変更もした。

 

そして、みんなの前から逃げる。みんなの明るさが、僕への気遣いが苦痛に思えてきたから。僕がいなくなっても、問題無いと思う。朝霧の収入は縁に入るようにしてある。僕はバイトで食いつなげれば良いのだ。

 

父さんの位牌と母さんの位牌を大切に箱に収めた。書き上げた原稿の束を、先輩の家に総て運び入れる。和泉マサムネは引退だ。ネット投稿の素人に戻る。そこでエロマンガ先生に絵を付けて貰えば良い。

 

引っ越し業者のトラックに僕の部屋の荷物だけ、運んで貰った。僕はこの館から破門されます…

 

--------

 

五反野を離れて、新天地に根を下ろす。これからは、一人で生きると決めた。発作と闘いながら。みんなに迷惑をかけるのはつらいから。

 

新作『兄妹』を書き上げないと。三組の義理の兄妹の物語。新生朝霧の一作目である。学校も行かずに、書いていく。

 

10月に入って書き上がった。出版社にメールで送る。朝霧の担当編集にだけは、状況を知らせている。朝霧への印税とは別に、生活費を振り込んでもらった。

 

バイトは農家の手伝いである。食には困らない。農業技術も学べて、自給自足の足がかりになるし♪

 

 

 

---和泉紗霧---

 

何かを忘れている。夏合宿で何かを失った気がする。思い出せない、なんだっけ…

 

「紗霧、何を悩んでいるのよ?」

 

学校で、エルフちゃんに訊かれた。

 

「何か重大なことを、忘れている気がするんだよね」

 

「うん?重大なこと?」

 

「そう…手遅れになるとダメなことだよ」

 

記憶をフル回転させるが思い出せない。気分転換に、本屋さんに寄る。おぉ~!朝霧沙樹の新作が出ている。『兄妹』かぁ~。

 

家に帰ると、朝霧沙樹の新作のサイン本が届いていた。彼も縁の一員なので、新作が出ると、メンバー全員分のサイン本を送って来てくれるのだ。

 

その夜から、『兄妹』を読み始めた。三組の義理の兄妹の物語。兄と妹の葛藤、心理描写が見て来たような感じである。私も兄が欲しいなぁって思える。うん?兄…なんか、いた気がするんだけど…

 

 

夢を見た…兄と向き合う私。

 

「だから、僕が一緒だとダメんんだよ。僕は妹と…しまった。それだと、お前は妹でなくなる」

 

兄さんが泣いている。私のしたなにげ無い行為のせいで。

 

「だから、離れて暮らそう。いつか、また暮らせる日は来るかもしれない」

 

光の点滅が目を襲う…待って!兄さん…

 

 

 

そこで目覚めた私。光の点滅…あれはなんだ?その日、学校の図書館でエルフちゃんと調べ物。

 

「光の点滅ねぇ…蝋燭ゆらゆらだと催眠術なんだろうけど…」

 

エルフちゃんのなにげ無い一言…催眠術。確かペンライトで…その手の本を読み漁って、正解に辿り着いた。で、何を暗示されたんだ?

 

その日の夜、館で緊急動議を発動した。『何か忘れていないか』である。

 

「そうなんだよね~、何かを忘れている気がするんだよ~」

 

って、恵さん。私の友達のエリさんの友達だった人だ。そういえば、ここにも三組の義理に兄妹がいる。それぞれ、兄妹なのに付き合っているし。朝霧作品に通じるのだけど…

 

「待って!」

 

みゃーさんが何かに気が付いた。

 

「そうだわ。みんなの関係性を確認すればいいんだわ。もし、何かを忘れていれば、それは共通する物のはずだから」

 

縁で繋がっているメンバー。そこに不具合があれば、忘れている物の正体が分かるってことだ。皆で、関係性を再確認すると…

 

う~ん…不具合が無い。おかしいし。

 

「なぁ、この作者を知っているか?」

 

ムラマサちゃんが一冊の本を取り出した。『転生の銀狼』である。私のイラストが採用された作品である。

 

「それが、何かな?」

 

エルフちゃんが訊いた。

 

「いや、この作者の生原稿が、我が家に大量にあるんだよ。紗霧、お前、イラストしていたんだろ?この作者の事を知らないのか?」

 

作者は和泉マサムネ…私と同じ苗字である。関係者なのか?思い出せない。う~ん…

 

「もう1つ、わからないことが有るのよ。朝霧沙樹先生って、誰の縁?」

 

みゃーさんが訊いてきた。縁で一番の稼ぎ頭の作家さんについて。誰も答えられない。誰だっけ?

 

「この作者のペンネームには『さぎり』って入っているのよ。紗霧ちゃん、あなたの縁では無いの?」

 

あっ!本当だ。考えてもいなかった。私の名前がペンネームに入っている。偶然か?

 

「俺からもいかいなぁ…」

 

伊月先生が割り込んできた。

 

「俺と妹の仲を取り持ってくれたのは誰だ?それが思い出せないんだよ」

 

「あぁ、それなら、俺の処も。妹と付き合う切っ掛けを誰かに貰ったんだが、思い出せないんだ」

 

達也さんもかぁ。

 

「僕の処もです。うまると付き合う切っ掛けが思い出せないんですよ」

 

三組とも誰かの仲介で妹と付き合うことになったらしい。誰だ?

 

 

翌月、朝霧の新作『セントールの恋』が発売された。

 

「あれ?読んだ覚えがある」

 

って、ムラマサちゃん。

 

「私もあるわ」

 

って、みゃーさん。いや、読んだことがある者が多い。多少内容が違うが、初期プロットを読んだと言うのだが。

 

 

翌日、みゃーさんが朝霧の出版社に連絡をして、朝霧先生の所在を訊いた。

 

「え?全国を旅していて、どこにいるか、わからないんですか?」

 

全国行脚中だと言う。場所なんか関係ない作風だろうに。何でだ?

 

 

 

---和泉正宗---

 

僕の中の闇が疼く。それを抑えるために、88箇所お遍路巡りをしている。僕は妹を護るどころか、妹と寝てしまった罪深き者である。妹の為に本は書き続ける。妹の幸せの為に祈りも捧げ続けたい。紗霧の為に僕を使い切りたい。

 

88箇所を巡り終わると、本の執筆をする。そして、闇が疼くと…その繰り返しである。って、今年も後少しである。紗霧は元気かな。遠くにいる妹のことを想うと、涙が出てくる。僕が弱いから…きっとそうだ。もっと、強くならないと。

 

「正宗君!」

 

誰かに呼ばれた。こんな所に知り合いはいない。きっと、幻聴だ。歩を止めずに進む僕。

 

「正宗君!」

 

僕を後から抱き締める誰か。誰だっけ?

 

「違います」

 

嘘を吐く僕。

 

「正宗君!」

 

僕を抱き締める涙する女性。

 

「どなたでしたっけ?」

 

「忘れたの?京香だよ」

 

京香?誰だっけ?顔を見たが思い出せない。そう言えば、紗霧の顔すら思い出せないことに気が付いた。

 

「探したよ。アナタの担当編集者を尋問して、やっと聞き出せたわよ。ねぇ、みんなに何をしたの?」

 

何をした?僕は何かをしたのか?思い出せない。

 

「それすら忘れたの?何が遭ったの?ねぇ、正宗君!」

 

僕は京香という女性に連れられて、ホテルの一室に連れ込まれた。

 

「ねぇ、何があったの?」

 

「わからないです」

 

「じゃ、何をしているの?」

 

「紗霧の為に僕を使い切っています」

 

「紗霧ちゃんの為に?どうして、傍にいてあげないの?」

 

優しく問い質す京香という女性。誰だっけ?

 

「僕は妹を護れなかった。僕は妹と寝たケダモノです」

 

涙が止まらない。僕は大切な妹に、なんてことをしてしまったのだ…悔いても悔いキレない。

 

「紗霧ちゃんと?愛し合っているから、いいんじゃないの?」

 

京香という女性から、爆弾が投下された気分だ。妹と愛し合う?とんでも無いことだ。

 

「だって、紗霧ちゃんは、正宗君のことが大好きなのよ。なのに、どうして?」

 

ケダモノになればいいのか。この女性を襲えば…京香という女性に襲い掛かる僕。

 

「ちょっと、何をするの?正宗君」

 

唇を重ねて、舌をねじ込み、腔内を犯す。そのことで、女性の抵抗が弱まっていく。観念したのか?女性の服を1枚1枚脱がしていく。全裸にして、自分も全裸になり、身体を会わせて行く。

 

「正宗君…ダメだって…」

 

言葉では拒否しているが、身体は僕を受けて入れている。腰は彼女の方が動かしているし。彼女の方からも舌が入って来たし。

 

「ダメだよ…あなたの叔母なのよ…」

 

彼女の身体の中は落ち着く。ずっといたい気分になる。彼女の胸、何か懐かしい。谷間に顔を埋めて、乳首をしゃぶる。

 

「もぅ…ダメだって…」

 

そういいながら、僕の背中に手を回し、抱き締めている。そして、彼女の中で出して、フィニッシュ。

 

「出したのね…」

 

中出しされたことで、僕の行為を拒否する言葉は出なくなった。

 

「これから、どうするの?」

 

「僕はケダモノです。野に放ってください」

 

「拒否します。一緒に来て。ねぇ、家に帰ろうよ」

 

僕の説得を続ける京香と言う女性。

 

「私を好きにしていい…だから、一緒に帰ろうよ。紗霧ちゃんの家がダメなら、私の家でもいいから」

 

「でも…」

 

「毎日、私の身体を好きにしていいから。ねぇ、帰ろうよ、正宗君」

 

 

 

---和泉京香---

 

結果的に、私は正宗君を騙した。彼を病院へ入院させたのだ。彼は精神を病んでいた。間違って服用させられた幻覚剤のせいらしい。みゃーさんが記憶を取り戻した。正宗君を見て…

 

「こんなになるまで、一人で?ごめんね。忘れていて…」

 

「この子が暗示を掛けたせいよ。みゃーさんは悪くない」

 

夏合宿に行ったメンバー、家の近所に住む知り合いに暗示を掛けて、自分のことを忘れさせた愚かな甥っ子。記憶の戻った紗霧の話では、紗霧の方から関係を持ったらしい。正宗が寝ている間に。正宗に落ち度は無かった。だけど、自分から関係を持ったと想い、壊れてしまったようだ。幻覚のせいもあるが、どこか壊れていたのかもしれない。

 

「作家なんか、どこか壊れているもんですよ」

 

と、伊月先生。そうかもしれない。私の掛けたプレッシャーで壊れた可能性が大である。

 

『期限までに作家として自立できない場合、私の養子、養女にします』

 

と、正宗に迫った私。正宗は、紗霧のしたいようにする為、兄妹二人での自立を目指して、睡眠時間を削り、精神を削って、作家として活動してきたのだろう。この子の不器用で真面目な性格が災いしたのだと思う。

 

「京香さん、兄さんに会えませんか?」

 

紗霧に訊かれた。

 

「面会謝絶なの」

 

この子に正宗を渡したくない。私の大好きだった兄さんの忘れ形見の正宗を。

 

「兄さんに謝りたい。私の愚かな行為で、兄さんを追い込んでしまったから」

 

可愛らしく泣く紗霧。私はアナタを許さない。私の正宗にした仕打ちをね。

 

「帰りなさい!」

 

「イヤです。会えるまで帰りません」

 

「正宗は退院後、私と暮らします」

 

「私も一緒に暮らします」

 

「強情な子ねぇ。あなたがいたら、正宗は立ち直れないのよ!」

 

「えっ!私が悪いの…兄さん…」

 

言い過ぎたかもしれない。この子に何かあれば、正宗は…

 

「正宗に訊いてから決断します。いいですね」

 

頷く紗霧。

 

 

 

---司波深雪---

 

催眠術による暗示は医者の手により解除された。館の住民は全員、正宗君のことを思い出した。でも、戻れない一線を越えた者にとっては、それは苦痛であった。

 

私はお兄様と関係を持った。私とお兄様の奥底にしまい込んだ恋心を突かれたのだった。

 

「深雪…彼に戻るなら止めないよ」

 

お兄様の優しい言葉。でも…

 

「お兄様の身体が忘れられません。彼には無い部分ですから」

 

彼には力強さを感じない。

 

「そうなのか…」

 

お兄様の顔が悲しそうである。

 

「恩を仇で返した気分だよ」

 

お兄様でも気づかなかった私達の家族関係の問題を、見破った正宗君。彼がいたから、お兄様と関係を持てたのかもしれない。

 

「彼は、始めから、こうしようと思ったのかもしれないな」

 

お兄様から意外な言葉。私とお兄様の仲を取り持つために…彼は小説家である。精神分析も出来る小説家である。初めてお兄様に紹介した日に、筋を考え終わっていた可能性。有ると思う。そういう作家である。彼は…

 

 

 

---土間うまる---

 

お兄ちゃんと関係を持ってしまった。今更無かった事に出来無い。でも、彼の分析は正しかった。お兄ちゃんに物凄く甘えたい時、こまる状態になったのだ。

 

「どうするんだ、うまる?」

 

「どうにもならない。だって、お兄ちゃんとは…」

 

「だけど…」

 

「お兄ちゃんは私が嫌いなの?」

 

「大好きだよ♪」

 

私に抱きつき、唇を重ねてくれるお兄ちゃん。

 

「彼には感謝だな…一生、彼に付いて行こうかな」

 

「私も一緒に付いて行くよ、お兄ちゃん♪」

 

 

 

---羽島千尋---

 

「兄さん…」

 

正宗君の狂気に敗北したと言う兄さん。一矢報いたいらしいけど…

 

「アイツ…初めから、こうするつもりだったんだな。くそっ!俺よりも狂っていやがる」

 

兄さんと関係を持った。ボクの中に眠る、兄さんへの想いを突かれたようだ。

 

「消え方まで考えていたなんて…許せない」

 

怒りの言葉を出す兄さんであったが、その目には涙が溜まっている。正宗君のことを心配しているんだ。心底から…

 

「まだ、意識が戻らないのか?」

 

「うん、まだだよ。面会謝絶だし…」

 

「そうか…」

 

 

 

---和泉正宗----

 

雲1つ無い青空、白い小さな雲が見えた。桜の花びらが舞う坂道…それは坂の上から飛んで来た白いベレー帽だった。地面に落ちきる前に、僕はそれをキャッチした。手にしたベレー帽は、仄かに暖かい。誰かが今まで被っていた物のようだった。坂の上、飛んで来た方を見ると、僕と同じくらいの歳の少女が、僕を見つめていた。このベレー帽は、彼女の物だと直感をし、彼女の元へ走り寄り、ベレー帽を彼女へ手渡した。

 

手渡した筈なのだが、また白いベレー帽が飛んでいく。僕はそれを追いかけてキャッチする。その度に彼女の元へ行くのだが、また白いベレー帽は…

 

彼女って誰だ?

 

僕は誰だ?

 

思い出せない。

 

僕はなんで、ここに居る?

 

ここはどこだ?

 

思い出せない。

 

自問自答を繰り返す。答えは出ない。思い出せないから…

 

ふと、窓に視線を向けると、桜の花びらが舞っていた。雲1つ無い青空に、桜の花びらが舞っていた。僕を待っていてくれているのかな?彼女は…

 

ベッドから起きて、刺さっている管や針などを抜いていく。ベッドを利用した窓に手を掛けて、何かの装置で窓を突き破った。そして、シーツを利用して、隔離されていた場所から出た。僕を待っている人を探しに行かなきゃ…

 

 

 

---和泉京香---

 

目覚めた正宗はベッドの上で暴れて、鎮静剤でまた眠りについたそうだ。窓から見える桜の花びらで、記憶がフラッシュバックしたのかもしれない。

 

私は決断した。正宗を自宅療養することにした。正宗の家の正宗の部屋に、介護用のベッドを置いた。ここなら、誰かしら、家にいる。誰かしら、話をしてくれるはずだ。ここが、もしダメなら、私と二人で暮らすのも悪く無い。

 

 

 

 

 

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