---司波深雪---
丑三つ時…彼との逢瀬の時である。
「また…待ち伏せか、深雪…」
「えぇ、帰ってきてくれるまで…」
彼に抱きつく。
「寄るな…ダメだって…」
時には怯え、時にはケダモノになる彼。首を絞められて堕ちる瞬間、気持ちがいい…彼がケダモノになる度に、私の中のエム度が上がっていく。クセになるくらい。
「なんでだよ~、ダメだって、襲うぞ~!」
ケダモノ慣れしてきた私。殺す気は無いことがわかった。脅し程度である事も分かっている。なので、怯まずに、根気良く、彼の心を解き放っていく。もう少しと思った矢先、私は油断したのかもしれない。
「なぁ、好きにしていいか?」
いつもと違う彼が現れた。好きなようにさせると、手首を拘束して、視界を塞がれた。この人格はなんだ?考える時間が無いまま、
バシッ!
身体の中を電流が駆け抜けていった。何だ、この刺激は…意識が刈り取られた。
意識が戻ると、どこかに座らされていた。前後の穴には何かが入っている。視界が塞がれているので、何も見えない。舌を拘束されたようで、何も話せない。
カチャ!
何かのスイッチ音がした。身体の中で何かがうねっている。身体の中がかき混ぜられる感覚である。喘ぎ声を出そうにも出ない。何かが私の上に乗っかった。
「どうだ?リアル人間椅子になった気分は?」
椅子の中に入れられているのか。彼の声が聞こえる。布を隔てて、顔を撫でられている。
シュッ!シュッ!
布に何かを散布された。甘い香りがする。これって、媚薬では…悶悶としていく私の身体。目の前にいるケダモノのエス度は、計り知れない。身体中の穴から、色々な体液が湧き出ているようだ。頭の中がクラクラする。脳ミソをシャッフルされている感覚である。
「もうすぐ、あの記憶無しが目覚める。また、明日、遊んでやるよ♪」
彼の寝息が聞こえる。スイッチは入れたままだ。マズい、24時間もこの状態なのか?彼に知らせる方法は無いかな。うがっ!意識が途絶えていく。
あれから、どの位経っただろうか。彼の気配は感じない。どこかに行ったのか?身体の中をかき混ぜる棒2本は、まだ稼働している。電池式じゃないみたいだ。速度が一定である。手足が固定されているので、麻痺してきている。マズい…違う人格だったのに、油断した。ここまでのことをするとは…
「あれ?こんな所にソファがあったっけ?」
彼の声だ。たすけてぇぇぇぇ~!彼には届かない声…
「うん?なんか気持ちがいいなぁ♪」
私を背もたれにしている彼。身体の中に違う刺激が芽生えた。座面に感圧式のスイッチが有るのか…何かのスイッチが入った。体内にいる棒の先から何かが放出されている。身体の中が麻痺をしていく感じがする。弛緩剤か?あの第3の人格には殺意があるのか…放出が終わると、乳首に刺激が…パルス電流が流れているようだ。身体が壊れていく。パルス電流の刺激が徐々に大きくなってきた。心臓に届くと死ぬ…
バタッ!
パルス電流が止まった。彼が座面から離れたってことだ。でも、今倒れる音がしたような…
「深雪、大丈夫か?」
お兄様の声。漸く人間椅子から解放された私。舌の拘束を外してもらった。
「第3の人格…危険…」
少ない言葉で知らせる。
「そうだな。お前をこんな目に遭わせるとはな」
「彼…助けて…あげて…」
「わかった。やってみよう」
私を真由美さんに預けて、彼を椅子に固定した。逆行催眠を彼に施すお兄様。お兄様の母、司波深夜は精神感応術の使い手だったらしい。その為、お兄様は、催眠療法の仕方を叩き込まれていた。
そう、お兄様は彼の暗示にかかった振りをしていたのだった。流石はお兄様である。彼の様子を窺い、反撃の機会を待っていたらしい。迂闊に手出しをすると、最悪のケースが考えられたから。本来の彼は責任感が強い。自分の為したことに責任を感じ、きっと…
それを避けたかったお兄様は、元凶を探っていたのだった。
「う~ん…まずいなぁ…」
「どうなったのですか?」
「彼は催眠療法を受けていた。ず~っと昔に…それが、徐々に変異して、あの幻覚剤が引き金で、化けたようだ」
催眠療法を受けるきっかけって…まさか、留守番恐怖症…
「たぶん、母親の死で発症した留守番恐怖症の治療だな。留守番するのが恐い…自分から死神が湧き出て、周りの者を連れて行ってしまうって、考えたようだ。それは違う人格がしていたと、彼の主治医が言い出し、彼の中で封印したことになっている。これだな…元凶は…それが、父親とその再婚相手の死を受けて、封印が解け始めたと考えたのかもしれない。彼に恐怖による妄想が、ここまでになるとは、主治医も思わなかったのだろう」
彼の主治医の処方ミスが、元凶なのか…
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体調が戻るのに数日要してしまった。彼は、お兄様の手で、司波家として信頼できる医師の元で、間違った催眠療法を解除していた。
「深雪、どうだ?」
「まだ、感覚がおかしいです」
「お前に施した薬液は、あの第3の人格が、ネットで購入したようだ」
「彼はどうなりましたか?」
「第3の人格は消した。問題は、主人格が2番目にいることで、手こずっているらしい」
主人格では無いってことは、本来の彼は、私に接していた彼では無いのかもしれない。それから、更に数日が経った。
「退院したぞ。当分、様子見だそうだ」
「そう…」
「どうした?元気ないなぁ」
「彼は彼に戻って、私を見たら、どう思うのでしょうか?」
「お前次第だ。お前達二人の問題なんだ。俺にはどうにも出来無い」
私次第?私の対応で彼は…
その夜、懲りずに、彼の部屋に夜這いへ…布団に寝ている彼。その横に入る私。何かに気づいて、彼の身体がピクリとした。
「深雪…」
私を見ないで、私の名前を言った彼。
「なんで、わかったの?」
「深雪の香りがした」
香り?何の?香水なんか付けたことは無い。彼は体勢を入れ替えて、私の股間に…いや、陰毛の茂みの臭いを嗅いでいる彼…そうだ、彼だ!私の臭いを好きだって言ってくれたのは…
また、体勢を入れ替えて、布団から顔出した彼。
「なんか、懐かしい。なんでだろう?」
彼は時間の感覚がズレているのだろう。あれから1年以上も経ったことを知らないのだ。
「久しぶりに逢ったからですよ。私が体調を崩していまいましたから」
彼を混乱させないように、言葉を選んで会話をする。
「そうなのか?大丈夫?」
「えぇ、正宗君に逢えて、元気が出ました」
「僕は栄養ドリンク代わり?」
「ダメですか?」
以前より、対応が柔らかくなった感じがするが、やっと彼は帰って来た。
「ダメではないけど…」
苦笑い気味の彼、正宗君。おかえりなさい♪
---和泉紗霧----
夏休み目前の7月。深雪さんから連絡が来た。兄さんが帰ってきたと…ただ、浦島太郎状態なので、まだ失踪当時の話以外は出来無いらしい。
「浦島太郎を題材に話を書いたりしてねぇ~」
って、エルフちゃん。
「そうなると、タイムワープ物でも書くかな」
って、ムラマサちゃん。
来月の合宿が楽しみである。
そんなリスタートをしようと矢先、伊月さんが婚約を発表した。なんと、相手はビッチのめぐみんだった。はぁ?
「いやねぇ、彼女の親に責任を取ってって言われて…」
頭を掻いている伊月さん。何をやらかしたのんだ?
「相手は高校1年だよ」
みゃ~さんが呆れている。
「先輩、ロリ趣味になったのですか~」
「いや、妹趣味だよ。そこはブレていないのだが」
なゆちゃんのジャブに応戦した伊月さん。
「めぐみんは、妹妄想するのに必要なんだよ♪」
話を聞いて固まる私達…伊月さん曰く「壊れたド変態が通常レベルのド変態になったくらい」らしいのだが、めぐみんの全身を舐めて、全身の味見をしたようだ。
「義兄さん…変態にも程が有ると思うよ」
ちっひーが震えている。
「いや、アイツのパンツも試食したが、とても食べたいと思える味ではなかったよ。あと、卵なんか産めないな。なんせ入らなかったし」
って、女性陣がドン引きである。兄さんのリアル重視思考を真似たらしいが、兄さんは絵に起こして妄想していたのだが、伊月さんは実演体験優先らしい。
「他の女の乳首とかクリじゃ萌えないんだよ。めぐみんので無いと♪」
担当編集者と風俗で味見三昧したらしい。領収書を見て、みゃーさんが震えていたな。
「で、義兄さん、式はいつ?」
「アイツが高校を卒業したらだ」
ビッチだぞ、相手は…
「外ではビッチで、家では淑女だよ。このギャップがたまらないんだよ♪」
変態の感覚がわからない。以前、ちっひーが怯えていたのも頷ける。
----土間うまる---
正宗君が帰ってきたらしい。どうしよう…
「お兄ちゃん、どうしよ~!」
こまるになって、お兄ちゃんに縋り付いた。
「どうにも出来無いよ。男女間の問題は、当事者同士でないとダメだよ」
「でも…」
「そんな顔をするなよ。そうだ、うまるに言っておくが、うまるが僕を卒業出来たら、僕は叶にプロポーズする」
へ?なんだ、それは?
「でもね、叶の気持ちは揺れているみたいだよ。ちょうど、うまるようにね。正宗君と僕との間でね♪」
えっ?バレている。いや、叶さんと同じなのか…なんかイヤだな。同じ料理オンチって点でも似すぎているし。
「お兄ちゃん、私と叶さん、どっちが好きなの?」
うまるに戻って問い質した。
「うまるは妹だよ。だって、出来無いじゃん」
私と叶さんの決定的な違いを宣告された。私は出来無い女で、叶さんは出来る、いやヤレる女だと…
「うまるはうまるでいいと思う。彼もそう言っていただろ?」
「うん…言われたよ」
「僕はこう思うんだよ。うまると僕が一緒になっちゃイケないから、神様がうまるをこまるに変えたんだと。でも一緒にはず~っと居られるように、うまるを幼児体型にしたんだと。これなら、うまるといても親子として世間は見てくれるしな」
そういう見方も有るんだな。
「もしかすると、彼は、そこまで読んでいたのかもな。だから、あんな暗示を掛けたのかもな。叶わぬ夢を体験した暗示をね」
叶わぬ夢を見せてくれたのか…私の王子様は…
「ねぇ、お兄ちゃんから卒業しなくてもいい?」
「いいよ♪それでもかまわない。うまるが選べよ」
いいんだ♪お兄ちゃん…良からぬことを心に描いた為か、こまる状態になった。
「その場合、彼はきっぱりと諦めろよ。僕は嫉妬深いからねぇ~♪」
その二択…難しいだろ…一生、こまる状態でいるか、うまるとして生きるかって…
「まぁ、彼を選んだ場合、ライバルが多いと思うけど、どうする♪」
楽しそうに私をいたぶるお兄ちゃん。彼と出会ってお兄ちゃんの性格が変わった気がする。親しみ易い方向にね。
「直ぐに答えは出ないよ!」
「そうだな、お婆さんになるまで考えるのも良いな。って、こまる状態なら永遠の幼児かな?」
正宗君が知ったら、実験、観察の対象にされちゃうよ~。こうして、私には難しい選択が宿題として出された。期限は老婆になるまで…
---和泉紗霧---
夏合宿は8月1日からである。なのに、叶さんと、イーグルジャンプ組は向かったらしい。設備の点検目的だと言うのだが、ズルい!ズルすぎる!
「だけど、寝る場所がないと、凍死するんだろ?」
って、美智留ちゃん。高校を卒業して、ここに転居してきていた。
「そうなんだけど…5月に鍋料理が旨いって、寒いってことだよね?」
「そう思う」
って、ムラマサちゃん。ノーパンノーブラな着物で行かないらしい。凍死対策らしい。
「全裸で仕事出来るなら、転居したいな」
裸族が悩んでいる。食い物につられている気がするのだが。
「クマ鍋…興味有るよ~」
って、恵さん。
「あぁ、肉に銃弾が有るかもしれないから、注意して食べないとダメらしいよ」
兄さんでなかった兄さんに聞いた。近所の人がそれで、歯を折ったらしいと。
「それは恐いなぁ~。シシ鍋は?」
「そっちは、肉を薄切りにして入れるから大丈夫だって」
「まぁ、現地を見て、決めましょうよ。今後のことを」
って、エルフちゃん。ここに建てるマンションに、飲食店を入れるかを考えたいらしい。2箇所ではメンバー的にきついって判断であった。
今の所、りんさん、兄さん、ちっひー、ムラマサちゃんはあっちに行く。残るのはエルフちゃんと、タイヘイさんだけだし。
「まぁ、こっちは賃貸マンションだけにして、本社スペースだけ置き去りにして、みんなで移住も悪くないかなって」
「そうだな、40代くらいになれば、そうかも」
って、詩羽さん。都会から離れられない派であったりする。