---和泉正宗---
肝試し時に発生した隠し倉庫での惨劇…なので、みんなで、エルフの館の未使用部分を捜索することにした。万が一に備え、窓の無い部屋に入る際には、防毒マスクを着用した。
館購入時に手に入れたという、屋敷の図面を手にして、捜索をする。結構、年代物のヤバい物が出てくる。ギロチン…誰が使ったんだ?剣や刀…ファンタジー世界から、転移してきたのか?まぁ、そういうヤバい物は、山田さんのお兄さんが処分してくれるそうだ。
「なぁ、エルフ…」
「マサムネ…二人の時は、エミリーって呼んで…」
「エミリーってペンネームか?」
「はぁ?本名よ!エルフが本名な訳無いでしょ!エミリー・グレンジャーって言うのが本名なのよ」
取り敢えずスルーして、本題を切り出す俺。
「で、エミリー…使っていない部屋を貸してくれないか?」
俺の提案に目が点になる山田さん。
「どうするの?」
「改装して、共同の作業部屋にしたい…俺の家は狭いから…毎週のように集まるのはいいんだけど…効率が悪いだろ?」
「費用は折半よ」
「何言ってんだよ。俺が全部持つよ、大家さん♪」
「アンタ!お金…有るの?」
心配そうに俺を見るエミリー。
「和泉マサムネ名義だと…無理だけど…裏技の方ならね♪」
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こうして、館の使っていない部分を改装して、作業部屋にすることにした。大体の構想をエミリーのお兄さんに伝えると、工事とかの手配をしてくれるようだった。エミリーの島での合宿中に改装を終わらせる予定だそうだ。
「マサムネ君…20万部作家で出せる金額では無いだろ?」
ムラマサ先輩に構想を話したら、恐い顔で睨まれた。
「まぁ、副業の方の稼ぎで…」
「副業?そんなことをしているから、心がこもっていない作品になるんじゃないのか?」
激高している彼女の前に、新作『囚われエルフ』のサイン本を置いた。
「うっ…これは…朝霧沙樹の新作…何…サイン本だと…」
本を手にしたムラマサ先輩の手が震えている。
「それの印税で、どうにしますよ。先輩♪」
俺のことを驚いたような表情で見つめる先輩。
「マサムネ君…君が朝霧…あぁ、そういうことか…やられたよ♪」
ペンネームに仕込んだ事に気づいた先輩。多くを語らないでもわかってくれるのは有り難い。
「そうか…あのベストセラー作家が君だったのか…私も少し寄付をするよ、後輩。君達と合同で作業がしたいからな」
満面の笑顔の彼女は、俺の渡した本を大切そうに抱き締めていた。
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集合場所に集まった、山田さん兄妹、俺、紗霧、ムラマサ先輩、恵さん、エリさん、詩羽さん。そして神楽坂さんまでいる。なんでだ?
「合同合宿って聞いて、敏腕編集者として同行しようと思った訳よ」
集合場所は、空港…エミリーのプライベートジェットで、近くの島まで行き、そこから、エミリーのプライベートクルーザーでエミリ-のプライベートアイランドへと向かった。エミリーのお兄さん、クリスさん曰く実家が金持ちらしい。なので、全部印税で買ったというのは嘘になるそうだ。
「マサムネ君、君と知り合った妹は変わったよ」
俺に気さくに話し掛けてくるクリスさん。
「悪い方に?」
「いや、良い方にかな。ワガママでどうしようも無い妹だったけど、気遣う心をゲットしたって感じだよ。ありがとう」
「いえ、俺も迷惑をかけているし」
「妹は迷惑と思っていない。で、妹の事はどう思っているのかな」
「どう?妹枠かな…紗霧と似たような年齢だし」
「妹枠か…今はそれで良いけど…」
「将来のことはわかりません。でも、現状で言うならば、紗霧のことを理解してくれる女性がいいかなって。エミリーは紗霧とも仲が良いし。妹が二人って感じです」
「君は正直だな。それが妹には良いんだろうな。フィルターを通さずに、現状を見て、本音を言ってくれる君がね♪」
「お兄様!」
エミリーの声が聞こえた。声のした方を見ると、顔を真っ赤にして、ワナワナと震えているエミリーが仁王立ちしていた。
「うん?トイレを我慢か?」
「違います!」
「力み過ぎると出ちゃうぞ!」
「出しませんよ~」
俺とエミリーのヤリトリを微笑んで見ているクリスさん。
アレコレと話し込んでいる間に、島に着いた。島の中央辺りにゲストハウスが有り、行けの有る森や、白い砂浜の海岸があるそうだ。まず、ゲストハウスに向かい、部屋割り。皆一人部屋だ。自分の部屋に向かい、ベッドに横になり、取り敢えず寝る…
---和泉紗霧---
兄さんは疲れたのか、自分の部屋に行き、寝ているようだ。うん?神楽坂さん、これは美味しい身体だな…詩羽さんもいいなぁ。
「エルフちゃん、ここって、wifi使えるの?」
大事なことを確認する。
「使えるわよ。使えないと仕事にならないでしょ?」
「まず、水着に着替えて、ビーチかな?」
って、詩羽さんの声。う~ん、それは見ないとなぁ。直射日光下でも見やすいタブレットも持って来ているし。お姉さんチームは水着に着替えている。エルフちゃんもかぁ。私は…いいや…
ビーチに向かうと、水着を纏った女性が…、創作意欲が湧く。
「ふ~ん、こんな短時間で描けるのか」
神楽坂さんが、私の作業を見ていた。う~ん、詩羽さんの肢体にロックオンして気づかなかった。
「おぉ、新型のタブレットかぁ」
エリさんが近寄って来て、タブレットに興味を持ったようだ。
「エリさんは?」
「私はノートPCを持ち込んだよ。あぁ、デジカメもある」
「どういうことよ…」
ムラマサちゃんの声。おぉ~水着姿。それもハイレグビキニだぁ~!新たな獲物をロックオンした私。
「どういうことって、寝ちゃったんだもの。しょうが無いでしょ?」
「こ、こ、このような恥ずかしい恰好をすれば、マサムネ君の隣に居られるって…」
「1ヶ月もいるんだよ。その間に…うんうん機会は沢山あるんだよ」
なるほど…エルフちゃんの口車にのって、そのような姿に。兄さんがエサなのが、気になるが…この際、スルーするか。ムラマサちゃんの姿を描いていく。
---和泉正宗---
う~ん…良く寝た…久しぶりかな、こんなに寝たのは…って…えっ!
「おはよう♪ムネ君」
恵さんが添い寝をしていた。あの柔らかい胸、柔らかい下腹部が、俺に密着している。いつの間にか全裸にされていた俺…
「私はクリエーターじゃないから…ムネ君の傍にいたいだけ…」
恵さんに魅入られた俺は、彼女と身体を合わせる。柔らかい彼女の各部位。蕩けていくそうだ…
「俺なんかでいいの?」
「出逢えた奇跡は…縁が紡いだ物でしょ?」
あぁ、そう書いた。確かに書いた。
「ムネ君だけだよ。真っ直ぐと私を見てくれていたのは…」
あの儚げな笑顔を浮かべる恵さん。
ドン!ドン!
ドアをノックされた。バスローブを着込んで、ドアを開けると、紗霧がいた。
「兄さん…あの女と…」
「紗霧…」
数時間振りなのに、久しぶりに逢った気がした。
「えっ…」
紗霧を抱き締めて、頬を合わせた。紗霧から驚きの声が漏れた。
「どこに行っていたんだ?俺を捨てて行ったのか?」
「そうじゃないよ…捨てる訳無いでしょ?私の…だもの」
「ライバルが妹さんだと、手強いなぁ」
恵さんの声。ライバル?何のだ?
---和泉紗霧---
あの女が兄さんを…でも…それはそれで良かった面も有る。兄さんは一人で留守番出来無いのだ。起きた時に誰も居なかったら、パニックになっていたかもしれない。兄さんの本当のお母さんは、兄さんが留守番をしている間に、事故に遭い…それ以来、留守番が出来無くなったと、私のお母さんに聞いていた。だから、一人にしないでって…私が家にずっと居れば…そんな理由を引き籠もりの理由にしようと思った時期も有る。でも、それはそれで兄さんを苦しめることになるから…
「兄さん、一人にしてごめんね」
「大丈夫…恵さんがいてくれたから」
あの女も兄さんの弱点を知っているのかもしれない。これは強敵である。
「大丈夫よ、紗霧ちゃん。私が一緒にいるからね♪」
うっ!なんかジェラシーが沸々と…でも、兄さんには気づかれないようにしないと。兄さんが悪い訳では無いから。
「どうだった?何か収穫は合ったのか?」
「うん♪ムラマサちゃんのハイレグビキニ♪」
描いたイラストと、生写真を兄さん達に見せた。
「中学生でこんなに…」
恵さんが驚いている。いや、私もだ。中学生の割に胸が大きいムラマサちゃん。でも、あそこは熟成中なので安心だ。この女のように交わる危険性は無いから。
しかし、兄さんは女性の水着姿に、あまり興味を示さない。女性の裸にも興味を示さないんだよな。大丈夫なのかな?少し心配である。過労でホルモンバランスが崩れたのかな?
「服を着たら、リビングへ行く」
「うん♪」
リビングで待っていると、兄さんと恵さんが仲睦まじくやってきた。そして、私の座っている傍に座った。
「それでさぁ、このシーンのイラストを頼みたいんだ」
兄さんの新作『恐怖の人間枕』である。夏場に書いても、発売は冬に近いんだけど…怪談でいいのかな?
兄さんは、ネタ帳を見ながら、朝霧名義の新作の構想に入っていた。メインはソッチだよね。マサムネ名義は、私との共同作品を作りたいという夢の部分、朝霧名義は生活を支える現実部分って理解をしている私。任された仕事をこなさないとな。
「う~ん…」
唸っている兄さん。アイデアが舞い降りて来ないようだ。
「そうか…」
うん?何かが舞い降りたみたいだ。一心不乱にプロットを書き上げていく兄さん。今の兄さんには恵さんも私ですらも、眼中に無いんだろうだ。私も頑張らないと!
「エルフ先生!遊んでばかりで無くて、マサムネ君のように、仕事をしてくださいよ!」
「えぇぇぇぇ~」
山田兄妹のヤリトリが聞こえる。詩羽さん、エリさんも浜辺から戻り、仕事をしていた。あれ?ハイレグのムラマサちゃんは?
---千寿ムラマサ---
どんな服装で、彼の前に行こうかな…この水着は恥ずかしい…でも、このような暑い環境で着物は…う~ん…
コンコン!
ドアがノックされた。ドアに向かい応対に向かう。ドアを開けると紗霧ちゃんがいた。
「どうした?」
「いや…マサムネ君の前に行くのに…この水着では…」
「大丈夫だよ。兄さんは姿で判断しないから。私の兄さんを舐めないでね♪」
紗霧ちゃんの言葉で、背負っていた何かが降りた気がする。そうだった。彼は、そういう物に拘らなかったな。問題ではあるけど…女性の裸に興味が無いって…
紗霧ちゃんと共にリビングへ向かうと、私以外の作家勢は仕事をしていた。
「はい、これ♪」
紗霧ちゃんから、ノートPCを受け取った。
「兄さんから、ムラマサちゃんが来たら、渡してって。没原稿が入っているんだって」
そうだ…ダメ元で頼んだのだ。没原稿も読みたいと…覚えていてくれたんだ…空いている席に座り、電源を入れて、読み始めた。
---和泉正宗---
夕食後、エミリーに見せたい場所があると連れ出された。森の奥深くに、池があった。そこには光の粒が飛び交っていた。
「蛍…きれいでしょ?」
蛍かぁ…幻想的な風景だ。周囲を木々に囲まれている閉鎖空間。飛び交う光の粒。妖精が飛んでいるって言われても、納得してしまいそうだ。
「ねぇ、マサムネ…私と付き合ってください」
意味がよくわからないので、スルーする。何に付き合うのだ?散歩は今、付き合っているが…
「マサムネ!ねぇ…無視しないでよ~」
泣き声になったエミリー。彼女の頭を軽く抱き締める。これで泣き止むかな?
「マサムネ…今は無理って、わかっている。自覚もある。でもねぇ、大きくなったら…」
「エミリーのお兄さんにも言ったけど、将来のことはわからない。現状ではエミリーと紗霧は妹枠だよ」
「うん♪聞いていたわ」
エミリーが俺の胸に顔を埋めてきた。
「鼻水を拭くなよ」
「していないよ~子供じゃないもん!」
「まぁ、取り敢えず、今を生きようぜ!」
「はい♪」
俺の顔を見上げて見ているエミリーの顔が、妖精に見えた気がした。