---和泉紗霧---
ゴールデンウィーク中は、勉強三昧…そして、私が妙なことを願った為、あの女は兄さんの前から消え、大先生の問題作の第4章は、あの女絡みらしい…
他人の不幸を望むと、自分に降りかかると言う。兄さん、紗霧は悪い子です。反省しています。だから、見捨てないでください。
「まさかなぁ、恵さん編になるとは…」
ムラマサちゃんが唸っていた。あの女の相手は、あの女のストーカーらしい。
「ストーカーと結婚?有り得ないでしょ?」
って、エルフちゃん。
「どうした?おい、紗霧…顔色が悪いぞ」
ムラマサちゃんが、私を抱き抱えた。
「私が…望んだから…だから、あの女は…」
「考えすぎだ。お前に、そんな力は無い」
そうだけど…タイミング的に…どうしよう…
「紗霧…」
エルフちゃんの声が遠くで聞こえる。
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瞼を開くと、蘭さん、達也さん、深雪さんがいた。ここは?
「大丈夫だよ。軽い貧血だ」
って、達也さん。
「私…どこかが悪いんですか?」
「ちゃんと食事を摂っているかな?」
あぁ、最近、食欲が無い…私が望んだせいで…
「蘭さん、紗霧ちゃんをお願いします」
「はい」
達也さんと深雪さんが病室から出て行った。
「ムラマサ先生、エルフ先生から訊いたよ。考えすぎだよ」
そうなのかな…
「恵さんは、彼とは一緒にならないよ。恵さんのストーカーって、バレたからね」
蘭さんによると、この病院に入院したあの女を追って、やって来たストーカー。様々な手で、病院へ被害をもたらしたそうで、今は牢屋の中らしい。
「恵さんの身体から、違法薬物、脱法薬物が検出されたそうだよ。警察が、彼の両親を問い質したら、白状したって」
あの女を薬で、どうにかしていたストーカー。その事実をストーカーの両親は、あの女の両親に告げず、隠蔽したらしい。我が子かわいさ、ってヤツらしい。
「蘭さんは大丈夫なんですか?」
「私?うん、大丈夫だよ。アイツは私のストーカー認定されたから♪」
蘭さんの話では美和子さんも大丈夫らしい。大先生の予言は、伊月先生とみゃーさんだけ、的中した恰好である。
「伊月先生とみゃーさんは、来月式を挙げるそうよ♪」
そうなんだ…
---和泉正宗---
「で、紗霧の症状は?」
達也さんに訊いた。紗霧もこの病院に入院したそうだから。
「栄養不足による貧血だよ」
俺が傍にいてやれないから…悩みを相談出来る相手が、いなかったのだろう。
「正宗君、君の方が重病なんだから。そんなに思い悩むなよ」
重病?
「俺がですか?何の病気ですか?」
「何の?まさか…」
達也さんの表情が険しくなっていく。
「妃先生の事務所での記憶って有るか?」
「何時のですか?」
最近行った覚えはないけど…達也さんと深雪が顔を見合わせた。俺は、記憶障害なのか…
「エリカ!止めろ!」
達也さんの叫ぶ声…何が起きたんだ?
---司波達也---
危なかった。窓から飛び降りようとした正宗君。エリカが止めて、大事には至らなかたが…
「お兄様、どういうことですか?」
「治ったと思っていた正宗君…アイツが演じていた可能性がある」
アイツとは、正宗君の精神にいる、知能犯的な別な人格である。
「演じていた…では…」
「妃先生の処へ行ったのは、初めからアイツだったんだ。そして、アレルギーショックを引き起こしてから、正宗君にスイッチしたのかもしれない」
危険である。紗霧ちゃんにすら、キバを剥くアイツ。
「そんな…」
深雪の顔から血の気が引いていく。それ程の恐怖を、俺達に刻んできたアイツ。
---司波深雪---
目の前で、お兄様がいたぶられている。
「どうしたよ。僕を殺せば、お前の大好きな兄は助かるよ」
悪魔の囁きをするアイツ。でも、目の前にいるのは正宗君である。殺せない…
「そうか…じゃ、いたぶり殺してもいいな?」
アイツは、注射器を手にした。何かの液体が入っている。お兄様の腕にソレを注入しようとしている。私は…正宗君を殴り殺した…
あっ!夢かぁ…荒い息…夢に出てくるようになったアイツ。いつか、本当に正宗君を殺してしまうかもしれない。アイツの目付き…恐い…
って、ここはどこだ?寝室で寝ていたはずが…これも夢なのか?全裸で何かのカプセルのような装置に入れられていた。
『深雪の淫らな姿が見たい♪』
アイツの声が脳裏に響く。次の瞬間、有り得ない刺激の波に飲み込まれた。身体の中で何かが蠢いている。それも何匹も…
「助けて…」
『淫らな姿を晒せ♪』
身体中に何か、何匹も蠢いている。何が起きているの…
『こんな状況なのに、乳首が立ち、クリも立っているのか…淫らな女だな♪』
目の前で何かが光った。まさか、ストロボ…写真に撮ったの?
『達也がみたら嘆くかな?ふふふ♪』
「やめて…お兄様には見せないで…」
あぁ…気持ちが良い…こんな刺激は今まで感じた事が無い。何をされているんだ?
『ドエムな深雪よ、もっと恥ずかしい姿を晒せ♪』
カプセルから解放された。目の前に正宗君がいる。でもきっとアイツだ…ここで断ち切らないと…
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「深雪…死ぬな!」
正宗君の声…ここはどこ?
「そうだ…俺を殺せ!」
正宗君…
ブクブク…
ガラッ!
「深雪!何をしているんだ?!」
パシッ!
え?お兄様…頬を叩かれた。どうして?
お兄様の手で、私の手が引き上げられていく。私の両手は、正宗君の首を絞め、湯船に沈めていた。
夢なら醒めて下さい…
でも…夢でなかった…私は正宗君を…
「まさか、深雪まで病んでいたとは…」
悲痛な声のお兄様。その日から、私も個室に入院になった。
お兄様と一対一で行うカウンセリング…なんか嬉しい。こんなに私に対して、親身なお兄様は、久しぶりである。
「深雪…アイツの暗示に負けるな!」
暗示?
お兄様は、私の前に、原稿の束を置いた。これは…目を見張る私。タイトルは『とある義兄妹の物語』という作品だった。作者は大先生である。
義理の兄に想いを寄せる妹。だけど、後一歩が踏み出せない。そんな彼女を助けようと、天使が彼女に協力をする。毎晩、彼女の耳元で、彼女の心を揺さぶるような話を、伝えていく。彼女は一種の暗示状態に陥り、彼女の前にあるジャマな元凶を消して、義理の兄に告白する。そんなシーンで物語りは終わっていた。
「これは…」
「アイツが、お前で実験した結果を踏まえて、書き綴ったのだろう。正宗君は、脳裏で思い出した記憶を書いたに過ぎない。元凶はアイツだ。正宗君を殺しても、何も解決はしない」
でも、宿主の正宗君が死ねば、アイツも消えるはずだ。
「いいか、深雪…正宗君は自殺することを防止されている。深層心理の深い部分で、自殺願望が残っているのかもしれない。だから、アイツはそれを叶える為に、誰かに殺される道を選んだんだよ」
あっ…そういう事なのか…私の正宗君に対する殺意は、アイツに植え付けられたのか。でも、彼が消えれば…
「いいか、深雪。もし、深雪が正宗君を殺しても、俺とは一緒にはなれない。お前は塀の向こう側に収監されるんだ」
あ…そこまで考えていなかった。殺意一色だったから。お兄様とカウンセリングが出来るのは、踏みとどまっているからなのか。
「いいか?正宗君から自殺願望を、消し去ることが大切なんだぞ。アイツは正宗君の願望を叶える為なら、手段を選ばないだけだ」
手段を選ばない…危険過ぎる。
---和泉正宗---
家出をした。一緒にいると、仲間を傷つけてしまうから。どこか、知らない街で生きよう。死ぬと哀しむ者がいるから…
当面、生活出来る分だけのお金を、新しく作った口座に入れて、着替えとノートと鉛筆をカバンに詰めて、みんなの目をかいくぐって、家出をした。
駅で電車を待つ。
「私も一緒に行きますよ」
美和子が話し掛けてきた。僕の様子がおかしいから、僕に気づかれないように、張っていたようだ。
「ダメって言っても?」
「勿論付いて行きます。私はあなた専属のエスピーですよ♪」
追い返す気力は残っていない。なので、美和子と二人で逃避行になった。知らない街に着いて、佐藤美和子、正宗姉弟として、宿屋にチェックインした。アパートを借りると、身分証の提示が必要だから。
宿屋の人には、俺が売れ無い画家で、スケッチ旅行中だと美和子が説明した。宿屋の様子を僕がスケッチして、プレゼントすると、宿屋の人は信じてくれたようだ。
昼間…窓から見える景色をスケッチする。ふと、学校帰りの女学生が目に入った。その娘をスケッチしていく。
ある日、美和子が、その娘を部屋に連れ込んだ。
「え!これって、私ですよね…」
描き溜めた彼女のスケッチに魅入っている。
「どうして…連れて来たんだ?」
美和子に訊いた。
「彼女が描きたいんでしょ?」
描き溜めたスケッチの山を指差した美和子。
「いや、何となくだ。目に入ったから…」
「どうかな?モデルになってくれないかな。弟が、アナタをモデルにしたいと思うのよ」
僕の言い訳をスルーして、彼女にモデル依頼する美和子。
「私なんかで良いのですか?」
「うん♪」
美和子が楽しそうだ。僕のことなのに…そして、彼女をモデルにして描くことになった。
最初は制服姿、休みの日には私服、そして、薄着…セミヌードと美和子のリクエストが過激になっていく。彼女は嫌がらずに、モデルを務めてくれた。
そして、ついに…
「いいですよ。正宗先生のモデルなら♪」
って、全裸でポーズを取る彼女。それを、僕はスケッチしていく。
そして、漸く納得する1枚が完成した。美和子が、それをコピーして、彼女へプレゼントした。
「ゴメンね。バイト料がスケッチ画で…」
「いえ、嬉しいです。こんな私を描いてくれるなんて。弟さんが売れることを祈っています」
「ありがとうございます」
---七瀬美雪---
部屋にお気に入りの1枚を額に入れて飾った。見えそうで見えないポーズである。これなら、人に見られても大丈夫なレベルである。
「美雪…ヌードモデルもしたのか?」
幼なじみで、4軒隣に住む、一ちゃんが訊いて来た。
「うん♪そうだよ」
「その絵描きは男性なんだろ?」
「うん♪そうだよ」
「見られても、大丈夫な間柄なのか?」
「一ちゃんみたいなエロ目線じゃないからねぇ♪」
畳に座り、遠くを見つめるポーズ。立て膝を斜めに崩して秘部を隠し、膝に肘を載せ、乳首を隠している。問題無いレベルである。
「う~ん…妖しいなぁ。その作家の名前は?」
「売れていないって言われて、名前を訊きにくくてねぇ」
作家としての名前を訊いていない。連絡先を訊けば良かったかな?
「うん?!この落款って…」
ネットで何かを調べ始めた一ちゃん。どうしたんだ?
「やっぱり…おい…美雪…これ、売れるぞ…」
「売らないわよ!私のお気に入りを売らないでくれる?」
生唾を飲み込む一ちゃん。どうしたんだ?様子がおかしい。
「どうしたの?」
「売れ無い作家って、嘘だよ。超有名な作家だ」
え?嘘っ!
「朝霧沙樹だ…」
「えっ!超有名な…」
彼が朝霧沙樹だったのか…そう言えば、彼の絵は総て、鉛筆画であった。
「コピーでも、高額で売れる…原画が公開していないのであれば…」
一ちゃんが、私のお気に入りに手を掛けた。
「だから、売らないって言っているでしょ?!」
「鑑定してもらおうよ♪」
「売らないって。だから、鑑定なんかしないよ~!」
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翌日、学校の帰りに、あの宿屋に向かうと、引き払った後だった。どうして?
原因は家に帰えると、判明した。私のお気に入りが消えていた。一ちゃんが持ち出したようだ。どこからか、帰ってきた一ちゃんを、捕まえて追求すると、
「即、買い取りしてくれたよ。ほら♪」
って、10万円を渡された。
「だから、売らないって言ったでしょ?!」
私の絵を売ったことで、マスコミなどが、この街に押し寄せて来たらしい。それをいち早く知った取材NGの彼は、この街を去ったようだった。
「返して貰って来てよ!」
お金を一ちゃんに渡しのだが、あの絵は転売による転売で、既に100万を超えたそうだ。
「どうしてくれるのよ!」
「泣くなよ…美雪…ごめん…」
泣くだろう。私のヌードが取り上げられているんだから!!
翌日からモデル探しが始まったらしい。あの絵を持ち込んだ一ちゃんの家の前には、マスコミ関係者の群れがたくさんいる。これじゃ、家から出られないよ~!