---工藤優作---
出版社からの依頼で、夏休み特別企画ってことで、夢の対談企画だそうだ。お互いに誰と対談するのかを知らないらしく、相手のことは何も知らされていない。
対談場所は、ここだった。小淵沢に滞在する為に、泊まっているホテルのスィートルームだそうだ。妻を部屋に残して、俺一人で向かった。
部屋に入ると、出版社の編集長と、見た事の無い青年がいた。
「工藤先生、お忙しいのに申し訳ありません。彼が噂の朝霧沙樹先生ですよ」
何?息子を追い込んだ奴だと。のうのうと俺の前にいるのか…
「よろしくお願いします、工藤先生♪」
「あぁ、よろしく」
警戒してしまう俺。単なる対談なのだが…見た目は冴えない青年である。あんな狂気の沙汰を起こすとは思えない。本物か?
「朝霧先生は、ゴーストはいるんですか?」
「うん?いませんが…何故、そう思われたのですか?少し心外です」
「いえ…見た目が、あのような作品を書く作家さんと思えなかったからです」
朝霧作品は読んでいる。作品自体は問題は無いのだが、彼の描く挿絵からは狂気を感じていた。特にエルフシリーズのエルフの生首のシーンなどは、尋常では無い。引きちぎられた皮膚感、垂れ下がる血管や神経…リアルな描写すぎる。実際に、やったのでは無いかと疑ってしまう。
「そうですか…そう言えば、奥様は女優さんですよね。どんな役でもこなせるのですか?」
「例えば?」
「実の息子さんとの情事シーンとか。その場合の心情なんかが興味があります」
まさか、コイツが仕掛けたのか…そのせいで、有希子は…
「どうされました?そんな、実際に息子さんとしろとは言ってませんよ。まいったなぁ。そんなに怒りを露わにしなくても良いじゃないですか?」
うっ、無表情で過ごすはずが…コイツ…
「工藤先生は、もっとクールな人かと思っていましたが、激情タイプなんですね♪」
俺を挑発するような笑みを浮かべる朝霧沙樹。
「そんなことは無いです。ただ、妻のことを弄るから」
「奥様を愛しているのですね」
「君は愛する女性がいるのかね?」
「それは、問題発言ですよ!私は、性別、年齢を不詳にしているんです。営業妨害ですか…」
いきなり激高した彼は立ち上がり、部屋を出て行こうとするが、出版社の者達が宥めている。
「そうやって、若い芽を摘むんですね…それでは、ごきげんよう♪」
彼は出版社の者達を振り切り、部屋を出て行ってしまった。
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対談が中止になり、有希子の待つ部屋に戻ると、有希子が朝霧と情事をしていた。
「貴様!何をしているんだ!」
朝霧の首を絞め、窓際に追い込んだ。抵抗する朝霧…
「どうやって、部屋に入ったんだ?」
ガチャ!
部屋のドアが開いた。朝霧の仲間達か?
「抵抗しないで、手を上にあげろ!」
銃を手にしている奴ら…分が悪い。俺はゆっくりと手を離し手を上に上げた。何人かの者が俺に群がり、後ろ手にして手錠を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「えぇ…いきなり、彼が首を絞めてきて…」
事情を訊いている女性。それに答える女性…何!有希子だと…
「障害…いや、殺人未遂かな。現行犯で逮捕します」
コイツら、刑事か…
---高遠遼一---
彼のシナリオはスゴい。演じがいがある。確かに、殺したら終わりでは、つまらないな。『ナイトメアは終わらない』とでも、作品名を付けたいくらいだ。ふふふ♪
対談中に出された飲み物に、幻覚剤を混ぜていた。奥様狙いと思わせて、部屋で奥様がやられている幻影が見えたのだろう。
彼はホテルの外から、知り合いの刑事に、首を絞められていると通報した。たまたま、見上げたら目に入ったって設定だ。こうも上手く演じてくれるとは…工藤優作…名演技だったよ♪
次は誰に悪夢を見せるのかな♪
---工藤優作---
有希子の首を絞めたことで、逮捕された。朝霧に嵌められたと説明したのだが、その朝霧が通報したそうだ。アリバイも確かだそうだ。出版社の者と、ホテルの外で、見上げたら、俺が有希子の首を絞めているのが見えたそうだ。そして、直ぐに通報…出来すぎている。
くそっ!
取り調べ…対談の時に激情タイプというイメージが出版社の者に抱かれたらしく、それが警察に伝わったようだ。
「ふ~ん、奥様と息子さんが情事をねぇ。それを、大先生に看破されて、奥様に怒りをぶつけたのですか?」
あのビデオが警察に届けられたらしい。くそっ!朝霧めぇ~!
「息子さんは高校生ですよね?青少年条例違反ですよ、あなたの奥様は…海外在住で、この国の法律を知らないってことですか?」
有希子も罪人にするのか…朝霧…
「警視庁があなたを引き取るそうですよ、工藤先生♪」
俺は、警視庁へ護送された…
---七瀬美雪---
モデル…小淵沢ベースで京さんからレクチャーを受ける。
「まず、全体像を描いて、その後、部位ごとのスケッチをするのよ」
先生のデッサンが描かれている原画の束を見せて貰った。うっ!こんなにリアルに描くのか…なんか恥ずかしい。部位ごと…乳首だけ、乳首と乳房を含めたバスト、お臍だけ、陰毛だけ、割れ目だけ…確かに部位ごとである。えぇぇぇ~お尻の穴だけ…これも…
「エロ目線では無いので、恥ずかしがることは無いけど、体力勝負だからね」
部位を先生の前にさらけ出して、5分程度動かないでいるのが大切らしい。
「部位ごとのスケッチが終われば、全体像だけのスケッチになるから」
部位ごとのスケッチを元に、ヌードにもセミヌードにも出来るらしい。う~ん…プロってすごい。
「呼ばれるまでは、ここで待機になります」
ここの共同作業場も興味がある。エロマンガ先生はタブレットを片手に…エルフ先生、ムラマサ先生をモデルに…エロ恥ずかしい挿絵を描いている。
きりんりん先生はタブレットで描いた絵に沿って、切絵を製作している。おパンツ先生は、パンティーのスケッチ中だそうだ。
「明日辺りに、更に賑やかになるわよ。イーグルジャンプ組も合流するから」
イーグルジャンプ社って、ゲーム会社だったっけ。フェアリーなんとかって、ゲーム…少しやった気がする。
「五反野ベース組も戻って来るから、明日辺りは鍋パーティーかな♪」
クマ鍋…肉が固い…手の平はコラーゲンタップリだけど…
---和泉正宗---
高遠さん、深雪と共に、山に入った。護衛のエリカ、美和子も一緒だ。夏の山をスケッチする為だ。山は手入れをしないと荒れてしまう。荒れるとクマ達がやって来てしまう。これらの隠れる場所を作らないのが、手入れのコツって、誰かに聞いた。
深雪にポーズを取ってもらい、スケッチをしていく。特に使う予定はないけど…今は、深雪が描きたいのだ。
「アッチの山もそうかい?」
高遠さんに訊かれた。
「えぇ、三方の山は領地内です。あと、奥の山の沢も」
結構広い土地である。耕作するには向かないけど。下を見ると、緑の絨毯が敷かれたようだ。牧草地が広がっている。まだ、耕作地を拡大中である。冬場のエサのストックの収穫量が足り無いから。千尋君と伊月さんが、あれこれと考えているそうだ。
「うん?この辺はクマが出るのかい?」
地面を見て高遠さんが唸っている。
「あぁ、足跡ですねぇ」
って、美和子。
「罠を仕掛けておきます」
エリカがリックから、簡易罠を取りだし、設置していく。簡易的な罠なので、殺傷力は少ない。痛い目に遭わせて寄り付かないようにするタイプだそうだ。
「そろそろ戻りますか。結構奥まで入っちゃったから」
鬱蒼とした森は昼間でも薄暗い。野生の獣にとっては、狩り時かもしれない。勿論、僕達が狩られる側である。クマの歩く音に注意を払い、下山をしていく。
---工藤有希子---
首に縄を掛けられて、吊されている。足の親指だけが床に着いている。眠ったら、お終いだろう。
「母さん、どうだ?気持ちが良いか?」
新ちゃんが嬉しそうに声を掛けてきた。
「なんで、こんなことを?」
「ふふふ…母さんの苦しむ姿が見たいからだよ♪」
なんで…新ちゃん…
「とても俺を産んだとは思えない身体だよなぁ~」
胸を揉まれている。気持ちがいい…
「あれあれ?息子に胸を揉まれて、濡れるって、どういうことだ?」
うっ…見ないで…そんなに顔を近づけないで…新ちゃんの鼻息が当たる度に、身体が疼く。抱いて…突いて…と。
「ふ~ん、薄いピンクを保っているのかぁ~♪」
捲って見ないで…指を這わさないで…我慢が出来なくなる…から…
「新ちゃん、お願い…愚かな母親を襲って…新ちゃんに乱暴されたいの…」
あの日以来、息子に陵辱されることに恐怖と不安と期待が渦巻いている。身体が限界である。心がもう限界である。
「わかったよ、母さん♪」
首の縄を外し…
---工藤優作---
目の前で、有希子が新一のニセモノと…有希子が息子に乱暴をされたいと願った。目の前にいるのはニセモノの筈だが、有希子には判断出来ないであろう。
警視庁に送還されたはずだが、偽の警視庁へ送還された。ここはどこだ?
「どこだと思います?」
仮面を被った者が隣にいた。
「お前は誰だ?」
「誰だと思いますか?」
「朝霧か?」
「彼は、このようなことをしません。作家ですからね」
「じゃ、お前は誰だ?」
「工藤新一、探偵さぁ~♪」
「本物の新一は無事なんだろうな?」
「あれあれ?父さん、僕が本物だよ~」
コナン君の声色…コイツ…何者だ?
「では、そろそろショウが終わりますよ。親子の交わりがねぇ♪」
「この後、どうするんだ?」
「工藤優作は、逃亡犯です。人質に工藤有希子を攫って…」
なんだ、その筋書きは…
「天才探偵さんの苦しむ姿、いいですね♪」
こいつ…朝霧で無いのか…
「この後は…返してあげますよ。警察にね♪」
首に針の刺った感触…麻酔銃か…
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「おい!いい加減、出て来なさい!」
目暮警部の声で目覚めた。俺の手には短銃が握られている。横には有希子が縛られている。鎖で結び目の部分は南京錠で止められていて、簡単には外せないようになっていた。
「おい!突入しろ!」
ガッシャン!
窓の割れ音…催涙ガスが投げ込まれ、部屋は煙が充満していく。そして、複数の奴らに、抑え込まれた。
「確保…確保しました。銃を握っていました」
「自殺されないように、注意しろ!」
目暮警部の声が聞こえ、意識が持って行かれた。
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取り調べ室…目暮警部が自ら取り調べをしている。
「どうして、あなたが、あんなことを…」
「どんなことをしたことになっているんだ!」
「どんなことを?どういうことですか?」
俺に降りかかったことを、目暮警部に話した。
「う~む…」
「朝霧沙樹を調べてくれ。あいつが怪しいと思うんだ」
目暮警部は腕を組んだまま、瞑想しているようだ。こいつもニセモノか?
「朝霧沙樹はシロですよ、優作さん」
漸く話出した目暮警部の口から、意外な言葉が出て来た。シロだと?!
「いいですか、公安から口止めされているので、大きな声では言えませんが、工藤君の問題を解決したのは、彼ですよ」
朝霧指揮の下に、コナンから新一に戻す薬が開発されたらしい。目暮警部には、時限式の毒薬と説明したらしいが。
「毒薬を解析して、解毒薬を作ったのは、彼が懇意にしている小淵沢の病院の薬科部門だそうです」
なんだって…じゃ、新一は助けてくれた彼に、危害を…そして、その仇を俺に…そういう構図になるなぁ。
「毛利君の娘の件だって、朝霧沙樹が工藤君との間を取り持とうとしたらしいのですが、工藤君が公文書偽造をして…」
蘭ちゃんの戸籍を汚した…じゃ、朝霧の役周りは何だ?
「朝霧沙樹は罪に問えないですよ」
女性の捜査官が入って来て、そう俺に告げた。
「佐藤君、どういう意味かね?」
目暮警部も驚いている。
「彼はダブルです。だから…」
二重人格者なのか…精神疾患持ち…う~ん、責任能力の問題になるのか。
「彼は、静かに暮らしたかっただけ。なのに、探偵達がこぞって、朝霧沙樹探しゲームを始めて、彼の穏やかになった精神を踏みにじったんですよ、警部」
朝霧沙樹は、小淵沢に身を置き、静かに暮らしていた。そこに、新一達がちょっかいをだしたのか…なんてことだ…
「被害者なんです。そこを間違え無いでください、工藤さん。どうして…どうして、彼を穏やかな生活から、追い出したんですか?いいですか?檻から魔物を解き放ったのは、工藤君を始めとする探偵達です。そこを間違え無いでください。あと、二度と、小淵沢には来ないでください」
佐藤という女性は、取り調べ室から出て行った。
「そうだったのか…出版社にも恨みを保っていそうだな。それで、あの事件か」
夏休み企画の対談…出版社は俺に、朝霧の仮面を剥ぐことを期待していたのかも知れない。あの異質な小説家の素顔をさらけ出させる為に…