07/02 誤字を修正
爽やかな風…なんか、とても久しぶりである。
僕はどこかの野外の喫茶店にいる。ふと顔を上げると、黒髪の少女と目が合った。彼女は僕に笑みを浮かべ、僕を見つめている。彼女の笑顔…心の重みが砂のようになって、風に舞って飛び去っていくようだ。
「ねぇ、一緒に、お空でお散歩をしない?」
彼女が僕に近寄って来た。彼女の手には箒が二本…一本を僕に手渡してきた。
「コレに跨がると、空を飛べるんだよ」
彼女が実演をしてくれた。僕は彼女に続いた。
澄んだ空、柔らかな日差し、気持ちが軽くなる微風…僕達は空の上でデートを楽しむ。
夕暮れになると、海岸にいた。水平線に浮かぶ夕日…僕は彼女に抱きついた。一瞬怯んだ彼女。僕の手には華奢な彼女のボディラインを感じている。軽く目を閉じる彼女。僕は彼女の唇に自分の唇を重ねた。
海風が僕達を祝福するように、優しく抱き締めてくれている。
波打ち際…暖かな砂と冷たい波が交互に感じられる。彼女と身体を重ねている僕。彼女は初めてなのか、僕にお任せのようだ。彼女の全身に口付けをして、マーキングをしていく。未使用な部分の汚れを、舌で舐めていく。
「ねぇ、あなたの名前は?私はテコよ」
「僕はマサムネだよ、テコ」
「また、会えるかな?」
「縁が紡げば、また会えるよ…」
---和泉紗霧----
兄さんの新作…『夢国の少女』。作風が変わってしまった。いや、朝霧沙樹のデビュー作のような感じだ。モデルは誰?海にはめぐみんボム事件以来、行っていないはずだし…う~ん
「紗霧、神楽坂さんが、マサムネ先生作品として、認め無いそうだぞ。私もだ!」
って、ムラマサちゃん。そうなると朝霧作品として発刊かぁ。まぁ、妥当だと思う。マサムネ先生作品だと、私が挿絵を描くのだけど、この作品に添えられるイラストは無理だ。私の描くエロかわいさは、この作品ではミスマッチないなりそうだし。
「モデルが気になるなぁ…」
って、エルフちゃん。誰だろうね…あの女では無いと思う。あの女には初々しさが無いし。では、誰だ?
---和泉正宗---
夏休みの残りが僅かだったけど、紗霧達には内緒で、小淵沢を離れた。海のデッサンがしたかったから。美和子さんに車を出してもらい、深雪と蘭が同乗した。なにかあった時の為に伊月さんが千尋君と美雪、エリカを乗せて、後に続いている。
「どの辺りの海が良いのかな?」
美和子さんに訊かれた。
「海辺に1軒だけお店がある…ダイビング用品が並んでいたかな?」
夢で見た情景を想い出していく。縁を紡いでいれば、彼女と会えると信じて。
「それだけだと…もう少し情報は無いですか?」
情報端末を手にして、深雪が検索をしてくれている。
「後…オープンテラスの喫茶店…」
「海沿いを走るか…」
夕日が見える…地平線に浮かぶような…
「美和子さん、止めて!」
車が止まると、デッサン用品の詰まったカバンを手にして、車を降りた俺。海風を感じて、誘われる様に走り出す。たしか、この辺りから浜辺に降りられたはず…来た事の無い場所なのに、俺の記憶にはうっすらと残っている。
あった!ダイビング小屋…小屋の周囲にはダイビング用のボンベが何本も置かれていた。その風景を、景色を、紙の上に再現していく。
地平線に浮かぶ夕日…箒に跨がりデートを楽しむ少年と少女…
「うぴょー!スゴい…テコ、この人スゴいよ」
知らない女性の声、心に引っ掛かる名前…テコ…
「どうしたの?ピカリ…」
俺の前の前に、あの時の少女がいた。少女も僕を認識してくれたようだ。
「まさか…マサムネ君…」
「テコ…会いたかったよ…」
彼女に抱きつき頬を重ねた俺…
---大木 双葉(テコ)-----
夢で出逢った彼に再会した。夢の中では、結構大胆なことをしていた。なので、物凄く恥ずかしい。そんな私にとっての黒歴史が、芸術作品となって皆に見られていた。
「これ…テコだよ…ねぇ…」
ピカリがデッサン画と私を見比べている。恥ずかしい。穴があったら入りたいよ。
「トン汁、うまい♪」
彼は、結構な人数を引き連れて、私を探しに来た。どうして…
「まさか…彼が朝霧沙樹なのか…」
マトちゃん先生が声を上げた。え?!彼があの朝霧沙樹先生なのか…そう言えば、鉛筆だけのデッサン画…本物よりもエロスを感じる…耳が熱くなっていく。そんな大物と夢乗世界とは言え、関係を持ったとは…大胆過ぎる…
「あぁ、秘密にしてくださいね。朝霧先生は、性別、年齢共に非公開ですから」
彼の連れの女性がマトちゃん先生に、お願いをしている。本物なんだ…
「今までにいないタイプですね、先生」
女性の私でも、うっとりと見とれてしまうような女性が、彼に話しかけた。
「そうかな…」
私を描くことに集中して、あんな美人を蔑ろにする返答…有り得ない。彼からは、鉛筆が紙に擦れる音だけがする。こんなに真剣に見つめられたことは無い。
えっ!服を着ているのに、彼は私のヌード画を描いていた。それも、目の前で見て居たような…透視能力でもあるのか?
「先生は、一度見た部位を組み合わせて、ヌードが描けるんですよ」
って、女性から説明を受けた。一度見た?それは夢の中だよ…現実には見せていないからね。
「大胆だね、テコ…」
って、ピカリ…誤解だよ~!
「伊月先生、近くに宿を予約しました。だから、飲んでも良いですよ。美和子さんも♪」
「いいのか?あぁ、千尋と深雪さんが運転できるか。では、ビールください。トン汁はお替わりで!」
宿を取ったって…明日からも密着取材かな…恥ずかしいよ~
「あぁ、先生は集中すると、2時間くらいは戻って来ないから…」
苦笑い気味に女性に言われた。2時間も、こんな真剣な眼差しに晒されるんですか…
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書き上がると、深雪さんの膝枕で寝てしまったマサムネ君。
「全身全霊を以て、描くから、疲労がすごいんですよ。目覚めたら、食事にしてあげないと、栄養面は大事ですか」
深雪さんは、マサムネ君の付き人だと言う。
「伊月さんって、あの羽島伊月先生ですか?」
弟くん先輩が、驚きの声を上げた。
「先生の作品に共感します。あんな妹が欲しいです」
いつも姉ちゃん先輩に、使われているもんな…
「深雪、美雪…明日は水着で頼む…」
「わかりました」
え…あの二人の水着姿を描くの?比べられたら困るなぁ…二人共モデルさんのような体型だし…
「あれ?私は?」
「エリカは描かないよ…」
「はぁ?明日、吠え面をかかせてやる♪」
「デッサン旅行ってこんな感じなんですか?」
深雪さんに訊いた。
「久しぶりなので、少し多めの人数です。長い間、病と闘っていたので…」
夢で会った時、マサムネ君は、病床だったかもしれないそうだ。生と死を行ったり来たりするような危険な状態が長く続いたらしい。
そして、宴はシンデレラタイムまで続いた…
----和泉紗霧---
兄さんが海でバカンスしているらしい。私達を置いて…それは、朝のミーティングの時に発覚した。
「母屋は京香さんしかいないので、遊びには行かないでください」
って、みゃーさん。
「え?兄さんは?」
「あっ…今、デッサン旅行中でいないんだよ」
「夏休みの合宿…ズルい!」
私を置いて旅行…まさか、あのモデルに会いに?
「どこにいるんですか?」
ムラマサちゃんが訊いた。
「伊豆…みんなで、行こうか?」
って、みやーさん。反対する者はいない。
兄さん達は民宿に泊まっているらしいけど、追加人数の問題で、ホテルのスィートに宿泊だそうだ。人数割りすると、割高では無いらしい。
そして、ホテルにチェックインして、水着に着替えて、兄さんの元へ…
兄さんは風景をデッサンしていた。私を見るなり、
「紗霧、タブレットはどうした?」
しまった…遊び感覚で来てしまった。兄さんは仕事感覚だったらしい。私はタブレットを取りに戻った。
---テコ---
いつもは、ダイバー以外いない、人が疎らな海岸…今日は賑わっている。何かイベントでもあったかな?
「テコ…」
ピカリが、あまりの人の多さにビビっている。
「これは一体?」
「彼の同僚がこぞって来たそうだよ」
って、マトちゃん先生。
「全員が彼女てことでは無いそうだよ、テコ♪」
全員では無いってこと?まさか、ハーレム生活?私はその中に入れられてしまうか?
「ダイビングかぁ…免許持ちだけで、潜るか?」
「あぁ、そうすると水中カメラがあった方が、資料につかえますね」
そんな会話が聞こえて来た。ハーレムでは無く、女性スタッフなのか?
「どうしました?」
深雪さんが声を掛けてくれた。
「いえ、人が多いなぁて…」
「彼の同僚です。海…久しぶりですから♪」
水着姿の深雪さん…ピカリは見とれているのか、声が出ない。マトちゃん先生さえも…トップモデルのような出で立ちである。
「同僚って?」
「作家仲間ですよ。マサムネ先生の創作姿を見て、ヤル気になっているというか…」
「作家さん?」
「テコさんはラノベを読まれますか?」
「はい…霞詩子先生とか、柏木エリ先生とか、千寿ムラマサ先生の作品が好きです」
「ならば、あとでサインを貰うと良いですよ。全員、いらしていますから」
えっ!いらしているの?どこだろう?本人を見た事が無いのでわからない。
「まさか…エロマンガ先生もいらしているのか?」
って、姉ちゃん先輩。
「勿論ですよ♪」
「山田エルフ先生はいないでしょ?」
って、マトちゃん先生。
「来ていますよ♪」
みんなの憧れの作家さんが、目の前にいるらしい。
「きりんりん先生はいないですか…」
ピカリが遅れて訊いた。
「珍しく参加しています。運が良いですよ。あまり、外には出られない先生ですから」
って…ラノベ界の売れっ子作家さんが、一同に集まっている。何かのイベントでも、ここまでの作家さんが集まることは無いのに…
「部外秘でお願いします。あくまで、マサムネ先生のデッサンがメインですから」
朝霧沙樹がメインなんですね。あのマサムネ君が朝霧沙樹だったとは…
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お昼…小屋は大繁盛であった。ほぼ貸し切り状態である。トン汁が売り切れに…メニューが次々に売り切れになっていく。
賑やか店内…店内の隅では、マサムネ君が深雪さんの膝枕でお昼寝である。
「深雪さんもいかがですか?」
「ありがとう。マサムネ君が起きたら、一緒に食べます」
愛おしいように、マサムネ君の頭を撫でている深雪さん。羨ましい…こんなにも人を愛おしいと感じ、接したことが無かったから。深雪さんはマサムネ君に献身的である。こんなにも献身的に接したことが無い。その辺りが、物凄く羨ましく思えた。
皆さんの豪快な食欲が一段落したそうなので、取り纏め役の羽島京さん、通称みゃーさんから、参加者の紹介があった。彼女は羽島伊月先生の奥様らしい。
「結婚しても、納期を緩めてくれないんだよ」
って、伊月先生。
「はぁ?2ヶ月遅れなのに、どう緩めろと言うの?他の先生に対して、失礼でしょ!」
って、尻に敷かれていることに、弟さん先輩がビビっていた。
「サイン…直筆のサイン…宝物にしよう♪」
って、姉ちゃん先輩。
ピカルはきりんりん先生の製作風景を見つめていた。
「うぅ~…おはよう…深雪」
「おはようございます、マサムネ君♪」
「おぉ、大先生が起きたようだな。酒飲み集団は、端によって!アルコール臭を振りまかないように!」
みやーさんから注意が飛んだ。彼は、まだ完治していないらしい。病名は恐くて訊けない…
「兄さんは、心の病なんだよ」
って、彼の妹であるエロマンガ先生が教えてくれた。
「テコさんには感謝している。夢の世界とは言え、兄さんに治る切っ掛けを与えてくれたから」
私に感謝してくれているエロマンガ先生こと、紗霧ちゃん。えっ…「さぎり」…「あ…さぎり」だから、ペンネームが朝霧のかな?
ドン!
私の目の前に紙の束が置かれた。これは…朝霧沙樹先生の新作…『夢国の少女』…なんか嫌な予感だ。
「目を通してください。感想を教えて下さい」
って…目を通し始めた。これは…あの時の…え…目を疑うシーン。こんなことしたような…していないとは言えないような…
赤裸々に私と彼との出会いの物語が描かれていた。これは…世に出るのか…
「キャンプファイヤーに入れて燃やしたいです」
感想を述べた。耳が熱い…
「テコ…こんなことをしたのか…」
えっ!マトちゃん先生が読んでいた。いや、みんなで回し読みって、有り得ない…
「夢の達人になると、こんなことが出来るのか…」
感慨深く言う姉ちゃん先輩。いや…それは…言い訳が口から出ない。言い訳はしたくない。彼の前では…
「うぴょ~!テコ、大人だね…」
顔から血の気が失せていくピカリ…そして、作品に挿入される予定のデッサン画が…昨日描かれた物ばかり。中には、ここへ来る前に、夢で見ただけのデッサン画も含まれていた。
「これ…鳥肌ものだな…」
って、マトちゃん先生。波打ち際に、小さな丘のような物が2つ並んでいるだけ…よく見ると、水面の下には首から下の身体が見える。頭部にはウミガメの影が有り、見えない構図であった。
「鉛筆だけで、ここまで表現出来るものなのか…水の透明感がここまで再現されているとは…」
私的には、水平線に浮かぶ夕日に映る、箒に跨がった二人…あの場面を見てないものには。太陽に黒点が2つ浮かんでいるようにしか見えないようだ。
「さすが、天才画家だな…」
ってマトちゃん先生。う~ん、本になるってことは、みんなの目に触れるんだよな…恥ずかしさが120%である。