※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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SS:霞ヶ丘 詩羽

 

 

あの海女の小屋は満員お礼で、目当てのトン汁は昼間に完売したらしい。

 

「明日、リベンジだな」

 

「うんうん」

 

飲兵衛組が、そういう結論に達したので、近くの宿へ泊まることになった。だけど、紅葉シーズン前の秋だというのに、民宿は満員で、少し遠くにあるホテルにチェックインした。

 

温泉を満喫し、夕食…当然のように宴会を始める飲兵衛組。主に、伊月さん、みゃーさん、エリさん、詩羽先輩、コウ、うみこ、りん、そして、神楽坂さん…

 

飲まない組、飲めない組は、飲兵衛組から離れて宴会。巻き込まれると、大変だから。特にりんと神楽坂さんは、酔うほどに…

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

詩羽先輩に連れ出された俺。いつもの威厳有る先輩の姿では無く、どこかしおらしく感じる。連れ出された先は、バーラウンジだった。カウンターに並んで座る。

 

シェーカーを振る音が、BGMに感じる、なんか良い空間である。

 

「何か、飲む?」

 

「ジンジャーエールで」

 

「じゃ、私はモスコーミュールで」

 

バーテンダーが頷き、しばらくすると、俺と詩羽先輩の前に、飲み物が置かれた。乾杯をして、一口飲むと、

 

「ねぇ、訊いた?」

 

って、切り出してきた詩羽先輩。

 

「何をですか?」

 

「恵のことよ」

 

そういえば、最近会っていない気がする。今、里帰り中だっけ…記憶が少し曖昧だけど。

 

「いえ…何かありましたか?」

 

「結婚するらしいよ…出来ちゃった結婚…」

 

相手は、恵の高校の時の同級生だという。

 

「相手の男…安芸倫也って言うんだけど、アイツの両親が子宝に喜んでね、恵の両親を説得したそうだよ」

 

それは、恵の意志に関わらず、結婚決定になったってことらしい。

 

「幸せになれそうですか?」

 

「ならないだろうな。恵は、正宗君のことを、今でも…」

 

「俺では無理ですよ。浦島太郎に近いんですから」

 

自分の知らない間に、成人していた俺。まだ、高校生気分である。だけど…俺の知らない間に、みんなに沢山の迷惑を掛けたようだ。

 

「ねぇ、恵の代わりになれるかな?」

 

「はい?」

 

詩羽先輩の言葉の意味を理解し損ねた俺。

 

「いきなりは無理よね。接点が希薄だったし。私は五反野ベースが基本だったから」

 

俺は小淵沢ベース主体だった。入退院を繰り返す為に。

 

◇

 

珍しく、詩羽先輩が酔いつぶれた。カクテル1杯でだ。彼女を背負い、彼女の部屋へ行き、彼女をベッドに寝かし付けた。部屋を出ようとする俺の腕を掴んでいる詩羽先輩。

 

「お願い…今夜は一緒にいて…」

 

俺は彼女に引き寄せられて、彼女の上に載った。彼女の胸の谷間に鼻先を入れ、臭いを嗅ぐ。

 

「ねぇ、好きしていいわよ。私の失恋記念日だし」

 

え!詩羽先輩のような素敵な女性でも失恋をするのか…

 

「相手は、どんな方だったんですか?」

 

「そうねぇ…正宗君とは正反対かな。自己顕示欲と独占欲が強くて、去る者を追い詰めるタイプ。興味が無くなれば、見向きもしない。自己陶酔タイプで、離れようとすると、甘い言葉で引き寄せる策士よ」

 

う~ん…作品に出来そうな設定である。そんな勇者もありか?

 

「俺は去る者を追えない愚か者かな」

 

「そんな事無いよ。君がいなかったら、私は小説家を止めていた。エリもマンガ家を止めていたかもしれない。私達の自由に創作させてくれた。感謝ばかりよ。自信を持ちなさいね」

 

まだ、たまにボンヤリしてしまう。気づいたら、俺も詩羽先輩も全裸で抱き合っていた。

 

「いいよ。出しても」

 

って、言われても、そういう気分では無い。失恋で弱っている女性に出来ないかな。って、俺の身体は正直な反応をしている。詩羽先輩のテクニックを前にして、元気いっぱいになっている。それを詩羽先輩が肉体へと吸い込んでいく。

 

「実はねぇ、恵の相手…私とも付き合っていた。何度も離れようとしたのよ。だけど、その度に甘い言葉で惑わして…その挙げ句がこれ。恵と一緒になっても今まで通りだって。バカにしているわよね」

 

俺の上に載っている詩羽先輩の腰が力強く、ゆっくりと蠢いてきた。

 

「今まで通り、彼の会いたい時に呼び出されて…もう、うんざり。だから、私も小淵沢へ移転する。いいでしょ?」

 

頷く俺。ベースをどっちにするかは、それぞれに任せている。否定はしない。拒否もしない。それぞれの意志決定に任せている。

 

「恵…可哀想に。結婚してもアイツに振り回されるんだろうな」

 

何かの映画みたいに、結婚式に乱入して花嫁と逃げる…そんな気力が湧かない俺。恵への想いはその程度だったのか。

 

◇

 

翌朝…朝帰りで自分の部屋に戻った。詩羽先輩に聞いた話をノートに書き残しておく。欲塗れの勇者…俺の作品に今までいなかったタイプだ。これをネタにして、プロットを書き上げていく。

 

うたた寝をしてしまったようだ。気が付くと、紗霧、花ちゃん、エルフがいて、俺の書き上げたプロットを回し読みしていた。

 

「起きたのか。こんな所まで来て、仕事か?」

 

って、花ちゃん。

 

「アイデアが舞い降りたから、一気にプロットを書き上げようと…寝ちゃったようだな」

 

「兄さん、ほぼ書き上がっているよ。後、エンディングをどうするかだね」

 

って紗霧。エンディングか…どうするかな?詩羽先輩の気持ちを代弁するなら、ハーレムにいる女性陣の反撃に遭い…それだとつまらないか。まぁ、売れないラノベ作家らしい結末かな。

 

 

 

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