※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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深まる秋X

---和泉紗霧---

 

冬休みを迎えるに辺り、私には強敵が二度も立ち塞がる。中間テストと期末テストである。落第は阻止しないといけない。エルフちゃんも同じである。そこで、うまる先生に、テストのヤマを張って貰い、疑似テストなる物をしてもらい、学力アップに繋げる作戦を決行した。

 

「う~ん…これどうやって解くんだろうか?」

 

うまる先生は、途中経過を書いてくれない。いきなり、正解だけを書き込んでいく。

 

「ねぇ、途中はどうするの?」

 

エルフちゃんが質問した。

 

「え?途中?う~ん…」

 

途中経過で悩むうまる先生。天性の優等生は、相変わらず、教え下手のようだ。

 

「ムラサメちゃん、教えて…ください…」

 

「私はムラマサだ!いい加減覚えろ!」

 

シャレだよ。シャレ…あの一件以来、私に甘い顔を見せなくなったムラマサちゃん。そんな、ギスギスした雰囲気を変えるかのごとく、階下から良い香りがしてきた。テスト勉強期間とテスト期間に、ちっひーが家事担当として、来てくれたのだ。山の秋の恵みと一緒に…今夜は松茸ご飯らしい。

 

「あぁ、松茸…」

 

勉強組は全員、松茸の香しい香りに、イチコロだった。これは強敵だ。頭脳に嗅覚が勝っていく。

 

 

 

---羽島千尋---

 

うまるさんのお兄さんと、夕食の支度をしている。

 

「山の恵みは興味あるなぁ。俺達も小淵沢に行こうかな」

 

叶さんにプロポーズをしたうまるさんのお兄さん。良い返事を貰えたようだ。

 

「他にも柿とかクリも持って来ました」

 

「そうなると、明日はクリご飯だな」

 

「お兄ちゃん…出来た?」

 

うまるさんがリビングに顔を出した。あぁ、松茸の香りが2階に漂ったのか。

 

「囲炉裏で鍋もいいなぁ」

 

うまるさんのお兄さんの妄想が広がっているようだ。実際問題、紗霧ちゃんとエルフちゃんが卒業しないと、ここを完全撤収出来ない。誰かしら、残らないとダメなのだ。なので、うまるささんのお兄さん達の移住は1年半後になりそうである。

 

ボクの兄さんは、五反野ベースでの赴任生活をみゃーさんに禁止されている。遊ぶ場所が多いと仕事が更に遅くなるという理由である。だけど、正宗君が上京する際のサポートメンバーであるので、割とちょくちょく上京しているようだけど。

 

「うまるさん、後は蒸らしだけ。あぁ、おかずはどうしようかな?」

 

確かに囲炉裏生活に慣れると、都会の台所での鍋は、味気ない物になりそうだ。ガスの火力が弱い上、大鍋での調理に適さないし。

 

「あぁ、ヤマメがあります。今朝血抜きをした奴が…」

 

「塩焼きだね。よし、俺が調理する」

 

クーラーからヤマメを取りだし、うまるさんのお兄さんへ手渡した。そうだ、魚類を冷凍庫に入れておかないと。山暮らしだと、干したり、燻蒸したりするから…冷凍庫って、あまり使わないなぁ。あぁ、漬け物は冷蔵庫に入れないと。都会のキッチン事情に疎くなっている。反省しないと、腐らしちゃうなぁ。

 

 

 

---和泉紗霧---

 

松茸ご飯…サイコー♪土瓶蒸し…おぉぉぉぉ~松茸のフルコースだ。

 

「うまい…」

 

ムラマサちゃんですら、豪快な食べっぷりをしていた。それほど、旨い料理が並んでいる。さすが、ちっひーだ。

 

「小淵沢のお店はどう?」

 

うまるちゃんのお兄さんが訊いた。

 

「ソバとうどんだけですけど、営業していますよ。正宗君がソバ打ちをしています」

 

兄さんのソバ…食べたい。なんとしても、補習は避けないと、冬休みは五反野暮らしになってしまう。

 

「具は何があるの?」

 

「山菜のテンプラですね。この季節だと。まだ、牧場が本格始動していないから」

 

「クマとか猪と鹿は?害獣指定で、狩っていないの?」

 

「里山に降りて来たのは、狩りますけど、奥地まで遠征には行かないです」

 

そうだ、狩猟免許も取らないと…兄さんは取れないから、私が代わりにハンターになろう。

 

「里山を管理していますから、そうそう降りては来ないですよ」

 

そうなのか…

 

 

 

---工藤新一---

 

依頼主の安芸倫也が、指名手配をされたそうだ。罪状は人身売買だと言う。俺に依頼した探し人も売る目的だったのだろうか?

 

俺は、あの呪われた地に足を踏み入れた。蘭に会いたいから…小淵沢警察には顔を覚えられているので変装をして、街の中のホテルにチェックインした。そこには変装した金田一もいた。

 

「奇遇だな」

 

じゃない。コイツに関わるとロクなことは無い。

 

「俺達が組めば、今度こそ、アイツを逮捕出来るはずだ」

 

前回、コイツと組んで、俺達の方が逮捕されたはずだが。罠に嵌まったのは確かだ。どうやって、俺達の動きを知ったのだ?朝霧沙樹は。

 

「前回のおさらいをしよう」

 

って、金田一。確か、離れから侵入して…甘い香りがして…あれが何らかの幻覚剤だったのだろう。

 

「裏から攻めるのはどうだ?」

 

「裏だと?」

 

「山を越えて、里山を下って、母屋の裏へ行くんだよ」

 

金田一が地図を広げた。

 

「俺の捜査によると、ここに山小屋があって、ここから里山まで直ぐらしいんだ」

 

地図には赤いバッテンが記されている。ここが山小屋か。すると、山を1つ超えれば、行けそうだな。

 

「地元のハンターに訊いたんだけど、あいつら、里山から奥には来ないらしい。なので、ここを拠点にすれば、バレないと思うんだ」

 

地図上では、確かに山小屋から、近い位置に里山があるが…

 

「信用できる情報なんだろうな?」

 

そこが一番のポイントである。

 

「地元のハンター情報だよ。信頼できるだろ。なんでもハンター達が、利用している小屋らしいんだよ」

 

ハンターが利用する小屋なら、クマなどは来ない場所ってことだな。う~ん…しばらく、俺なりに情報収集して、金田一の情報に載るかを決めることにし、それぞれの部屋へと戻り、寝ることにした。

 

◇

 

翌朝…事態は動いていた。目が覚めると、俺達は全裸でその山小屋にいた。それも子供姿で…あの薬を飲まされたようだ。何時の間に…

 

「GPS情報によると、あの山小屋のようだな」

 

時計に内臓されたGPS機能で、緯度経度を割り出した俺。だけど、腕時計しかない。スマホが無い。腕時計のギミックも弄られたようだ、麻酔針が打てない状況である。

 

「ここを出て、里山から、母屋の裏手にアタックだな」

 

って、金田一。

 

「罠じゃないか?ここに俺達を連れて来たってことは…」

 

「だけど、ここにじっとはしていられないだろ?食い物が無いぞ」

 

あぁ、確かに…腕時計しか無い。靴も履いていない。しかしこれでは、山道は危険である。

 

「俺は行くぜ!」

 

金田一が階段を降りていった。

 

「うわぁぁぁぁぁ~!」

 

降りきった辺りで、金田一の悲鳴が聞こえた。襲われたのか?身を隠して、階下を見るが、誰もいない。どこかに隠れているのか?物音すらしない階下の室内。俺も迂闊に動けない。動くと床が鳴りそうだし。

 

2時間くらい、身を潜めているが、階下から物音1つしない。どういうことだ?意を決して、階下へと降りていく俺。階段をゆっくりと一段ずつ降りていく。

 

誰もいないようだけど…アイツは何に襲われたのだ?

 

カチッ!

 

何かのスイッチ音。床が消え、落ちていく俺。滑り台だと?どこに落とされるんだ?滑り台は滑りを良くする為か、油のような物が塗られていた。全身が油塗れになっていく。そして、地面に降り立った。

 

目の前では、金田一がクマに喰われていた。なんだって…次の瞬間、腹部に激痛が走った。視線を落とすと、抉れている。背後からはクマのうなり声…

 

 

 

---佐藤美和子---

 

里山のパトロール。クマが降りて来ていると危険であるので、うみこさん、コウさん、深雪さん、達也さんとパトロールをしている。

 

ガサ!

 

草を踏みしめる音…音源に対して皆で銃口を向けると、高遠さんがいた。

 

「一人では危ないですよ、この時期は」

 

「一応、銃は持ってきています。正宗君にキノコ鍋でもと思いまして…」

 

彼の手には袋があった。

 

「どんなキノコがありましたか?」

 

コウさんが中を覗いた。

 

「これって…」

 

コウさんが手にしているのは、スマホのようだ。液晶部分が踏みつぶされている。襲われたのか?

 

「たぶん、人の山に勝手に入って、クマにやられたのでしょうね」

 

私達は里山で山の恵みを得ているが、奥地には手つかずで、山の幸がたくさん有り、不法侵入覚悟で、それらを持ち帰る者が後を絶たない。高遠さんは、里山との境辺りで見つけたと言う。

 

「そうなると、里山も荒らされたかもしれないな」

 

って、うみこさん。手分けをして、境界ギリギリまでパトロールをした。すると不法侵入者の末路の痕跡を見つけた。目の前には、靴やカバンなどが散乱していた。里山から見える、谷の部分にだ。

 

「あそこはクマのテリトリーですから、回収は難しいですよ」

 

と、高遠さん。その言葉に頷く達也さん。

 

「冬眠した後、回収ですね」

 

冬眠しない熊は危険らしい。まぁ、そういう熊は、ここでは間引く対象であり、鍋の具材ではあるけど。

 

「しばらくはパトロールの強化も必要かと」

 

高遠さんの言葉に頷く私達。

 

 

 

---和泉紗霧---

 

そして、中間テスト…ギリギリでセーフだ。エルフちゃんは英語を舐めていて、アウトらしい。だけど、中間テストである。まだまだ大丈夫である。問題は期末テストの方だ。

 

みゃーさんに、深雪先生の派遣を依頼したのだけど、熊対策で派遣出来ないと言われた。今年の秋は熊が不法侵入者達を襲っているらしい。なんで、兄さんの山に入るかな。熊たちは番犬代わりなのかもしれないが、里山に降りてくると危険なので、警戒を強化しているそうだ。

 

兄さんの方針で、奥地は手つかずにしている。奥地にエサが豊富であれば、害獣達が里山に来ないだろうってことらしいが、不法侵入者達が彼らのえさ場を荒らしているらしい。その代償は里山へ脅威となって降り注ぐのに。

 

「不法侵入者対策はしていないの?」

 

うまるちゃんに訊いた。

 

「出来ないのが現状ですよ。だって、敷地が広いし」

 

広いのがネックなのか。目が届かない場所も出てくるよね。

 

「達也さん所有の山から侵入されているらしいので、達也さんも困っていますよ」

 

司波兄妹の所有地と隣接しているからか。う~ん…

 

「この季節、松茸狙いの集団が多いらしくて…」

 

あの美味しい松茸だと、狙われるな。それよりも、他に良い家庭教師はいないかな?蘭さんは、兄さんのお気に入りだしなぁ。後は、みゃーさんは忙しいし。詩羽先輩はどうかな?

 

詩羽先輩の部屋を訪れた。

 

「家庭教師?無理かな。もう忘れちゃったし」

 

えっ…そんな…

 

「理数系だよね?問題は…そうなると、恵は?」

 

あの女か…抵抗がある上、要介護者では無いのか?

 

「頭を使うのは良いことだし、呼んであげるよ」

 

って、あの女が来ることになってしまった。気まずい予感が満載だよ。

 

 

 

---加藤恵---

 

リハビリがてらに、紗霧ちゃん達の家庭教師をすることになった。詩羽先輩が迎えに来てくれ、うまるちゃん兄妹と叶さんが来て、みゃーさん、ちっひー兄妹が代わりに五反野ベースへ行く事になったようだ。

 

電動車椅子で車に乗り込む。私を移送する車をムネ君が買ってくれたそうだ。電動車椅子から降りずに、そのまま乗り込めるギミック付きである。

 

「恵の為って言うより、俺も車椅子の時があるからね」

 

って言うけど、だいぶ体力が回復しているようで、車椅子はあまり使っていないようだ。

 

久しぶりの五反野ベース。和泉家の1階は、車椅子で入れるバリアフリー化がなされていた。これは、ムネ君の為らしいけど。

 

「1階の正宗君の隣の部屋を使ってね」

 

って、みゃーさん。ちっひー兄妹は介護士の資格を取っていた。これもムネ君の為であるが、今回は私の介護をしてくれるようだ。

 

「で、どこがわからないの?」

 

教え子である紗霧ちゃんとエルフちゃんに訊いた。ノートを手にして、アレコレ質問をしてきた。補習ギリギリかな?この二人は…

 

質問が無い時は、書き取りの練習。麻痺は和らいで来ているが、書き疲れることが多い。20文字辺りが限界かな。休み休み練習をする。いつか、ムネ君の隣でアシスト出来る様になりたいから。

 

 

 

---工藤優作---

 

新一との連絡が途絶えた。出所して、連絡が有ったきりである。また、なんかやらかしているのか?こっちに引き取ることも考え無いとダメか。久しぶりに帰国することにした。有希子のことも気になるし。

 

 

 

 




闇パートは高遠さんが担当です(^^;
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