※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

84 / 88
10/18 誤字を修正


伝言ゲーム

---和泉正宗---

 

新たな問題が生じて、高遠さんへ相談した。暫くすると、適任者が来てくれた。

 

「正宗君、どうしたの?蘭達には、内緒でって」

 

蘭の母親である妃弁護士が、ようやく来てくれた。依頼内容を伝えると、

 

「で、養子縁組をすれば良いのかな?」

 

「本人は俺の妹が良いって、言うんですが、俺には両親がいませんから…」

 

初夏を感じる頃、あゆが目覚めた。医師が彼女に起きたことを説明した結果、あゆには身寄りがない事実を、知らされたのだった。そんなあゆと俺の目が合うや、俺の妹になりたいと言い出して…見た目は高校生であるが、中身は小学生である。お互いに、時間ロストの経験者…何かの縁を感じて…俺は決心した。

 

「結婚前に大きな娘が出来るのね。それは蘭達には言えないわね」

 

呆れながらも、笑顔で接してくれている妃弁護士。

 

「まぁ、らしいと言えば、正宗君らしいわね。困っている女性には、手を差し伸べるなんて…君が変わっていなくて、嬉しいわ」

 

俺が俺で無い時に、迷惑を掛けたのだろうな。何をしたのかは、訊いても、教えてはくれないけど。

 

「わかったわ。朝霧先生のご依頼は受けます。顧問料を毎年頂いていますしね」

 

「蘭には、どう言えばいいでしょうか?」

 

当面の問題を訊いてみた。

 

「うん?蘭よりも紗霧ちゃんにでしょ?蘭はわかってくれると思いますよ。だって、私の娘ですから」

 

まぁ、誰と結婚するとしても、大きな娘はネックだな。結婚しないって選択肢もあるけど。

 

「お兄ちゃんじゃなくて、お父さん?」

 

今までの会話を聞いていたあゆが戸惑っている。

 

「兄でいいよ。あくまでも、戸籍の問題だから」

 

「うん。ありがとう、お兄ちゃん」

 

俺に抱きつくあゆ。身体は大人のあゆ。胸の感触が…ましてノーブラだし。う~ん…ブラを付けて貰いたい。

 

「後ですね。長い間眠っている間に、成長していて…女性としての嗜みを、あゆに教えてあげてくれませんか?」

 

一番困っている問題は、生理用品である。男の俺には、さっぱりわからない。

 

「いいですよ。あゆちゃん、しばらく一緒にいて、教えますからね」

 

「はい、お願いします…えぇ~っと、なんとお呼びすれば良いですか?」

 

「お母さんでもいいわよ」

 

「はい、お母さん♪」

 

妃弁護士的には、新しい娘が出来た感じで、嬉しいようだ。

 

 

 

---毛利蘭----

 

衝撃的な事実が母からもたらされた。正宗君に娘が出来たと言う。誰との子供?失踪中に知り合った女性と出来ちゃったのかな?

 

『蘭、聞いている?ねぇ』

 

通話口から聞こえる母の声は、嬉しそうである。何故…娘である私の想い人に、子供が出て来たって、私にとって由々しき事態なのに。

 

「聞いています。で、子供の母親はどんな女性なの?」

 

『聞いていないの?子供の母親はいないのよ。身寄りのない少女を、彼の戸籍に入れたのよ』

 

うん?子供の母親はいない?身寄りの無い少女?

 

「どういうこと?ねぇ、お母さん!」

 

事情をしっかりと聞く私。はぁ?子供は16歳…正宗君は未婚で、高校生の娘がいることになるの??まだ20代前半なのに…

 

『だから、違うって…彼女は6年間意識が戻らなかったのよ。だから、彼女的にはまだ小学生なの。理解した?』

 

え…16歳で小学生…有り得ない。それを受け入れてしまう正宗君もスゴいけど。まぁ、新一というか、コナン君がそうだったな。見た目は子供で、中身は私と同い年だった。それの逆かぁ。

 

『正宗君の娘ってことは、私の孫みたいな者だし』

 

とっても嬉しそうな母。それは、そういうこと?耳が一気に熱くなっていく。

 

『で、まだ、みんなには言わないでね。正宗君は紗霧ちゃんにどう説明しようか、悩んでいるから』

 

悩んでいる?マズいんじゃないのか?精神ストレスは…

 

「私だけ、正宗君の元へ行くわ」

 

『蘭!抜け駆けはダメよ。それに、私がいるから大丈夫よ。じゃ、ねぇ~♪』

 

とっても嬉しそうに報告して通話を切った母。ズルい…でも、聞いた以上は、誰かに相談しないとダメだな。心配だもの。

 

 

 

---司波深雪---

 

蘭さんから、情報が入った。それは、驚愕な事実であった。正宗君に娘が出来たって…はぁい?その情報は、私と一緒にいる美和子さんの耳にも届いた。

 

「女連れで逃げているの?」

 

「まさか、子供が出来て、紗霧ちゃんに言えないから、逃げているのかな?」

 

蘭さんに彼の居場所を訊いたのだが、不明らしい。ただ、彼女の母親である妃弁護士が絡んでいるそうだ。今後のことを相談しているのかな?でもこれは、彼を見つけるチャンスでもある。身重な女性と一緒であるならば、移動は容易ではないから、どこかに長逗留しているのか?

 

手がかりを得た美和子さんの動きは速かった。妃弁護士のスケジュールを調べて、北海道にいるとわかった。滞在期間は2週間から1ヶ月と、長い。今後の相談をしているのか?まさか、相手は妃弁護士なのか?その場合、子供は蘭さんになるが…う~ん…

 

そして、私達も北海道へと向かった。

 

 

 

---和泉正宗---

 

深雪と美和子が、俺の事を嗅ぎ廻っていた。蘭母さんが蘭に話し、そこから情報を得たのだろう。そうなると、紗霧も知っているのか。マズいなぁ…俺の口から、まず説明と思ったのだけど…

 

「蘭が情報を漏らしたの?あの子、何をしているの…」

 

蘭母さんが、怒りを纏った。

 

「じゃ、私が彼女達を撒くわ。あゆちゃんは、もう大丈夫よ」

 

大人の女性としての所作を、あゆが覚えたようだ。蘭母さんの案を受け入れて、俺はあゆと北海道を脱出した。紗霧に会わないとダメだな。あぁ~、どう説明しよう。

 

 

 

---和泉正宗---

 

東京駅で千尋さんと合流した。

 

「高遠さんから聞きました」

 

高遠さんが言うには、まだ紗霧に会わない方が良いと言う。そこで、その後の移動の手配を、高遠さんが手配してくれ、千尋さんに託したそうだ。

 

「羽島千尋です。よろしくね、あゆちゃん」

 

「月宮…じゃなくて、和泉あゆです。よろしくお願いします」

 

あゆがぺこりと頭を下げた。

 

 

3人での逃避行…行き着いた先は、エミリーの別荘だった。

 

「ここなら、夏合宿までバレないと思います」

 

って、千尋さん。

 

「おぉ~!来た来た」

 

って、別荘から詩羽先輩と、英里さんが出て来た。

 

「月…じゃなくて、和泉あゆです。よろしくお願いします」

 

と、二人の姉枠へ挨拶するあゆ。

 

「ここで、勉強を教えるわよ」

 

詩羽先輩は、自身が使っていたという、小学校から高校までの教科書、ノート、参考書を持って来てくれていた。

 

「お願いします」

 

あゆの表情は嬉しそうで良かった。実際問題、この先、あゆは学校へ通えないと思うし。見た目が高校生で小学校は無理だし、見た目が大人で中学校も無理な気がしたから、詩羽先輩達の心遣いに感謝である。

 

「あぁ、この件は、ネタに使わしてもらうわよ」

 

って、詩羽先輩と英里さん。20歳で高校生の娘を持つ父親となった、冴えない彼氏との騒動記を書かれるそうだ。そのくらいなら、喜んでモデルになるかな。

 

 

 

---和泉紗霧---

 

蘭さんのお母さんが、深雪さん、美和子さんと共に、うちに見えた。私とエルフちゃん、ムラマサちゃんを前にして、お話があるそうだ。なんだろうか?ドキドキである。

 

「特に、紗霧ちゃんへの報告です」

 

私に…兄さんのことだよな。なんだろうか。

 

「正宗君の所在は掴めています。ただ、ちょっと問題があり、隔離した場所にいます」

 

問題?また、何かやらかしたのかな?

 

「問題って?マサムネ君は、何をやらかしたんですか?」

 

ムラマサちゃんは、兄さんがやらかしたことを前提で訊いた。

 

「正宗君に、子供が出来ました」

 

はぁ?!子供?誰の子供?逃避行の原因って、それ?頭の中がマッ白になっていく。

 

「ねぇ、紗霧!大丈夫?」

 

エルフちゃんの声…一瞬、意識が飛んだのか、エルフちゃんが抱きつき、ムラマサちゃんが介抱してくれていた。

 

「で、子供の母親は、どこの女性ですか?」

 

気丈にムラマサちゃんが応対してくれている。

 

「いない。子供の母親はいないわ。身寄りのない少女を養女にしたのよ。彼女の望みは、正宗君の妹だったけど、正宗君にはもうご両親がいないから、彼の戸籍に引き取った形なのよ。だから、実質は、正宗君の妹枠であるからね、紗霧ちゃん」

 

私に妹が出来たのか…嬉しいやら、複雑である。

 

「問題は、そこじゃ無いの」

 

苦笑いしている、蘭さんのお母さん。そこじゃ無い?これって、大問題であるのだけど…

 

「問題なのは、彼女の年齢なの…戸籍上の年齢は16歳なのよ…ははは」

 

は?16歳の妹?いや、兄さん的には16歳の娘?ラノベよりも斜め上では無いのか?

 

「戸籍上はって?」

 

ムラマサちゃんが訊いてくれた。混乱している私には、質問すべき箇所すらわからないから、助かる。

 

「事故にあって、植物状態だったの。正宗君が、彼女を毎日見舞い、言葉を掛け続けたけた結果、6年振りに意識を取り戻して…だから、彼女の実際の年齢は、まだ小学生ってこと」

 

戸籍上は16歳で、実際は小学生…それでも、20代前半の兄の娘としては、年齢がでかすぎないか?

 

「う~ん…そうなると、今後、マサムネ君と結婚すると、もれなく大きな娘も付いてくるってことですか?」

 

顔色の優れないムラマサちゃんの問いに頷く、蘭さんのお母さん。私にとっても、由々しき問題…ほぼ、同年齢の娘がいるって、脅威である。どう接すれば良いのだろうか。兄さんとの接し方もわからないのに…

 

 

 

---和泉正宗---

 

詩羽先輩の新作『冴えない彼氏シリーズ 彼の娘が大きすぎる件』は大反響らしい。

 

「有り得ないって感想が多いわ。事実ってラノベよりも奇よね」

 

って、嬉しそうに、次話を書いている詩羽先輩。ほぼ、リアルタイムで、コミック化している英里さんも楽しそうだ。

 

「モデルが目の前にいると、ペンが進むなぁ♪」

 

あゆは、千尋さんの作ったたい焼きを美味しそうに食べている。

 

「これが、正宗君が見た、あゆちゃんの生き霊なの?」

 

スケッチブックに描いた、美味しそうにたい焼きをパクつくあゆを見ている千尋さん。

 

「こっちの少女は?」

 

アイスを大人食いしている少女を指指す、詩羽先輩。

 

「難病で、夏を迎えられないって、宣言されて、アイスを心行くまで食べていたそうですよ。その後、足長おじさんの寄付で、手術を受けて、夏を迎えられるそうです」

 

あゆの寄付のついてに、その少女の寄付もしてくれた高遠さん。寄付控除になるから、税金対策だって言うので、おまかせした俺。

 

 

 

---羽島京---

 

う~ん…あの大先生は、色々やらかしていた。取材の電話が多い。北海道で、二人の少女へ多大な寄付をしたらしい。名前を明かさないでくれって頼んだらしいのだが、名前が漏れて、いい話になっているし。

 

あと、あの『幻の女』のモデルになったっていう少女が、入社した。大先生のデッサンと見比べて、本人確認出来たのだが、かなり優秀な人材であった。

 

「もっと良い企業に入れそうだけど、いいの?」

 

って、確認したのだけど、

 

「えぇ、彼のおかげで、私は今ここに生きていますから」

 

って、嬉しそうに語る彼女。失恋の末に北の海へ向かい、お決まりのコースに嵌まるところを、大先生と出会い、生きて行こうと思ったそうだ。あの大先生は、本当に予想外な行動が多すぎる。

 

あの北の大地で、大先生の寄付により、助かった少女の姉も入社をした。

 

「妹が助かったのは、朝霧先生のおかげです。ですから、先生のお役に立ちたいんです」

 

って、締め切り破り作家が多い、過酷な職場に飛び込んでくれた。新人が2名も増え、恵さんの職場復帰も近いし、事務方の戦力は増えてきている。作家陣は、ムラマサ先生が専業作家になったくらいの変化だが、大先生の動きが今後、どうなるかだな。

 

こうして、今年も夏合宿の季節へと向かって行く。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。