※この作品はR-18です。

冴えない彼氏の育てかた   作:もっち~!

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夏合宿その5 Part1*

---和泉紗霧---

 

そして、今年も夏合宿の季節に…私もエルフちゃんも補習無しで、始めから参加出来ることになった。危なかった。1点に救われた感がある英語…

 

そして、あの別荘のある孤島へ、私達が足を踏み入れた。息苦しい程のドキドキ感。兄さんに会える喜びよりも、兄さんの娘に会う緊張により、目眩がしそうなくらい気持ちが悪い。

 

見覚えのある建物が見えて来た。目の前のビーチでは、詩羽先輩、エリリンさん、知らない女の子がビーチボールで遊んでいた。あの子かな?私よりも大柄に見える。私よりも健康的に見える。私よりも…

 

「紗霧、何を泣いているのよ~」

 

って、エルフちゃん。

 

「だって…」

 

ムラマサちゃんが優しく、私を抱き締めた。少し、落ち着きを取り戻したかな。

 

建物に入ると、ちっひーと兄さんが仲良く、料理をしていた。

 

「兄さん…」

 

兄さんの元へ駆け寄る私。だけど、何かに蹴躓いて…

 

ドスン!

 

兄さんの元へヘッドスライディング…

 

「紗霧。慌てなくても、俺はここにいるぞ」

 

って、兄さんに肩を抱かれて、起き上がらせて貰った。

 

「兄さん…何が遭ったの?」

 

兄さんに抱きつき、泣いてしまった。色々な想いが、私の中を駆け巡っていく。

 

「朝霧先生♪」

 

「うん?あぁ、あの時の…そうか、新人さんが入社したって、みゃーが…君だったのか」

 

事務方の新入社員の羽川翼ちゃんが、兄さんに挨拶している。

 

「先生、おかげで、妹は助かりました。ありがとうございます」

 

って、同じく事務方の新入社員である美坂香里ちゃんが、兄さんに礼を言っている。

 

「うん?あ…あのアイス大人買いの子のお姉さんかな?」

 

「そうです。美坂栞の姉で、香里といいます」

 

「そうか、良くなったのか」

 

「妹も、元気になったら、入社したいと言ってました」

 

う~ん、兄さんは、色々やらかしていたようだ。知らない間に…

 

「正宗君のおかでで、優秀な社員を二人手に入れましたよ」

 

って、みゃーさん。二人共通学していた高校では、学年一の成績を残してきたと言う。私と大違いである。頭の良い子が好きなのかな?

 

「そうだ、みんなに紹介しないと」

 

あの知らない少女が入って来た。

 

「戸籍上では娘だけど、実質は俺の妹になるあゆだ。みんな、よろしくね」

 

「あ…和泉あゆです。よろしくお願いします」

 

あの少女がぺこりと頭を下げた。

 

「戸籍上では16歳だけど、実際は小学校5年くらいだから、大人の扱いはしないで欲しい」

 

実際は小学校5年生?見えない。私よりも大人に見えるし。

 

「千寿ムラマサだ。よろしくな」

 

「はい♪」

 

ムラマサちゃんは、彼女に挨拶に行っている。え?!エルフちゃんもだよ。

 

「山田エルフです。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、お願いします」

 

「恵、もう大丈夫なのか?」

 

「ムネ君♪もう少しだよ」

 

しまった。あの女もいたんだった。一杯一杯な私は、注意散漫になっていたようだ。何もかも出遅れているし。

 

「部屋割の表は、ここに張っておくわよ」

 

って、みゃーさん。コウさん達イーグルジャンプ陣は、後から来る様だ。って、兄さんの部屋にあの少女が…ズルい…私の兄さんなのに…奪われた感がある。

 

「エロマンガ先生、お仕事の準備をしてください」

 

「そんな名前の人は知らない…え?もう仕事なんですか?」

 

みや~さんが笑顔で、笑っていない視線を向けてきた。

 

「エロマンガ先生、先月、締め切り落としましたよね?」

 

「だから、そんな名前の人は知りません…って、先月は試験勉強で…」

 

「学業と仕事の両立がルールですよ~。わかっていますか~?」

 

あぁ~、兄さんが遠くなっていく。私はみゃ~さんの手で缶詰状態に…

 

 

 

---和泉正宗---

 

「今夜のメニューは?」

 

伊月先生に訊かれた。

 

「海の幸で舟盛りですかねぇ」

 

今朝、近くの漁師さんから、海産物を買い込んである。千尋さんと共に、下準備中である。

 

「うちのちっひーと一緒になってくれるのか?」

 

「兄さん、いきなりだね」

 

千尋さんが苦笑いしている。

 

「俺は、こうしてみんなといるのが好きです。それじゃダメですか?」

 

「ダメでないよ。ただ、兄として、妹の心配をしたいだけだよ」

 

「兄さん、私の心配より、自分の心配をした方がいいよ」

 

伊月先生の後にはみゃーさんが立っていた。

 

「なぁ、他人の心配より、自分の心配をしようね、あ、な、た♪まだ、今月分が、おわっていませんよ。伊月先生!」

 

「え?!明日からじゃダメ?」

 

「ダメですよ。仕上げないと、今夜のエサは抜きですよ」

 

嬉しそうに宣告するみゃーさん。顔から血の気が引いていく伊月先生。この二人の関係は、結婚しても変わらないようだった。

 

◇

 

「なぁ、小腹が減ったんだけど」

 

詩羽先輩とあゆがやってきた。先輩にはカレーライスと、あゆにはたい焼きを出した。

 

「お兄ちゃんのたい焼きサイコーだよ♪」

 

あゆは美味しいそうにパクついていく。

 

「これはどうかな」

 

千尋さんが、今川焼きをあゆに出した。

 

「これも美味しい。ちっひー、サイコーだね~」

 

あゆは千尋さんのことを、愛称のちっひーと呼んでいた。

 

「ありがとう、あゆちゃん。新作がんばろうっと」

 

たこ焼きにチャレンジしに、焼き場に戻る千尋さん。

 

「で、新作は書いているの?」

 

詩羽先輩に効かれた。

 

「えぇ…『湯煙の女』って言うのを書いています」

 

幽奈との思い出をネタに、文字に起こしている。朝霧沙樹の担当曰く、『現地妻シリーズ』だと呼ばれている。

 

「ふ~ん、さすが早書きだね。こっちも順調だよ。ネットにアップして、反響がすごくて、単行本にする作業をしているわよ」

 

英里さんは、単行本になる前から、コミカライズ化していた。編集部の許可は取れているらしい。

 

「で、本職の方はどう?」

 

「あぁ…神楽坂さんから、OK出ないです」

 

相変わらず、和泉マサムネ名義の方は、体たらくである。

 

「勇者マサムネは、どこへ向かっているんだい?」

 

「どこでしょうね。目的も無く彷徨っている、そんな感じかな。どこへ向かえば良いかも、分からない」

 

紗霧の元へ戻ることが恐い俺。傷つけてしまいそうで、恐いのだ。

 

「ふ~ん…まぁ、それもいいのかもな。君の通った後には、何かしらが残っている訳だし」

 

俺は何を残してきたんだ?恐怖と惨劇かな。

 

「俺は何をしてしまったんですか?」

 

俺は俺の事を知らない。

 

「覚えていないことを、無理に想い出すことは無いわよ」

 

「でも…」

 

「もう少し、自分に自信を持った方がいいかな。君の人柄が好きで、こうして、みんな集まっているんだよ。それは君が残した物は、良い物だってことだからね」

 

って、言われても…

 

◇

 

夕食の下準備が終わり、部屋に戻って少し休憩…部屋に戻ると、ベッドに深雪がいた。

 

「久しぶりに一緒に寝ましょう」

 

ベッドから降りた深雪は、何も羽織っていなかった。俺の手を引きベッドサイドに招き、俺の着ている物を脱がしていき…

 

ベッドに横たわり、深雪と身体を合わせた。

 

「俺なんかでいいのか?」

 

「いやだったら、ここにいないですよ」

 

深雪の指で誘導され、俺は深雪の体中に入っていく。暖かい…深雪の体温を全身で感じ、深雪の鼓動を全身感じていく。生きているって実感を、改めて感じていく。

 

「私を好きにしてください。私の身体が欲していますから」

 

何をどうすれば良いんだ?こうしているだけで満足な俺。何もしない俺に対し、深雪は俺の上で蠢いている。全身に深雪が這っている感じだ。深雪の乳首、深雪の乳房…総てが、俺に纏わっていた物を、そぎ落としていく。何が纏わってっていたんだ?深雪の身体が折れに溶け込んでいく。心が軽くなっていく感じである。

 

二人でシャワーを浴び、水流に歓迎されながら、俺達は愛し合った。

 

 

 

---和泉紗霧---

 

「次は、このポーズをお願いします」

 

モデルのムラマサちゃんに、ポーズの出していく。

 

「こうか?」

 

「そうです」

 

う~ん…本にはならないけど、ネット小説である『勇者マサムネ』に挿絵を入れていく。これが、私のお仕事である。

 

エルフちゃんは、新作のプロットを唸りながら産み出していた。

 

「勇者マサムネはどこへ向かうんだろうな」

 

って、ムラマサちゃん。どこだろうな。私の元だといいんだけど、あのあゆって子と、二人でどこかへ行くのかな?

 

「おいおい、泣くなよ。なぁ、紗霧」

 

兄さんのことを考えると、涙が出てくる。

 

「しょうがないなぁ」

 

ムラマサちゃんが、私に近寄り、優しく抱き締めてくれた。徐々に、爆発しそうな感情が収まっていく。

 

「兄さんはどこへ行くんだろう…」

 

「紗霧的には、どこがいいんだ?」

 

「私の元…戻って来て欲しい。あの頃の兄さんに…」

 

閉じこもっていた私の為に、毎日食事を作ってくれていた兄さん。閉じこもっていた私を、みんなから護ってくれていた兄さん。あの頃に戻りたい。あの頃に戻って、閉じ籠もらずに、兄さんと生活をやり直したい。もう無理だけど、それが私の願いである。

 

「マサムネは何がやりたいのかな?」

 

エルフちゃんが呟いた。そうだよね。兄さんのやりたいことを、させて上げたい。兄さんがそうだったように。私のしたいようにさせてくれた兄さん。ムラマサちゃんのしたいようにさせていた兄さん。エルフちゃんのプロポーズは断ったけど、それなりにさせていた兄さん。いつだって、兄さんは私達のしたいようにさせてくれていた。

 

「どっちにしても、あのあゆって子が成長するまでは、動けないだろうな」

 

そうだ。兄さんが、途中で投げ出すとは思えない。あの悪魔が起き出さない限りは。

 

「でも、ショックよ。あんな大きな娘を作るなんて」

 

って、エルフちゃん。見た目、エルフちゃんの方がお子ちゃまに見えるし。

 

 

 

---毛利蘭---

 

う~ん…聞いていた話よりも、見た目が大きな娘さん。お母さんは孫のようっていうけど、私の子供って言うにはデカ過ぎるんだけど…

 

「蘭、ごめん」

 

私に謝る正宗君。

 

「うぅん、正宗君がしたいようにしていいのよ。私は、正宗君をサポートしたいだけだし」

 

いや、嘘である。一緒になりたいに決まっている。でも…ライバルは多い。深雪さんが一番のライバルだ。スタイルもいいし、彼の為になんでも出来るって豪語しているし。そういう意味では私は覚悟が足り無いのかな。

 

「ありがとう…蘭」

 

唇を重ねて来た正宗君。彼の首に腕を回し、舌を彼の口の中へ入れていく。私って、こんな大胆だったっけ。そう思える行動だ。

 

私の優位性は…お母さんの存在かな。正宗君が頼ってくれている私のお母さん。あゆちゃんを、自分の孫と言い切っているし。それは、私の娘ってことに…激しく彼を求めていく私。彼をベッドに押し倒し、彼と身体を会わせて行く。私の香りで燻してあげたい。そんな気分である。

 

 

 

---和泉正宗---

 

夕食がスタートした。神楽坂さんがこのタイミングで到着。早速、酒盛りに参加しているし。刺身の売れ行きが良い。千尋さん、俺、花ちゃんで、魚介類を刺身にしていく。エミリーは焼き魚と、焼き貝の担当である。小腹の減った組用のカレーライスも用意してある。

 

「お兄ちゃん、たい焼きは?」

 

「あぁ、もう少し待てるかな?」

 

「うん、待っているよ」

 

あゆが作業を見ている。

 

「千尋さん、たい焼き頼めるかな?」

 

「正宗君、ちっひーでいいよ。わかった。あゆちゃん、一緒に焼こうか」

 

「うん」

 

嬉しそうなあゆと千尋さんが去って行く。俺は、いつの頃から千尋さんと呼ぶようになったんだ?記憶がボンヤリしている。

 

刺身を作り終えると、花ちゃんが、アラ汁を作り始めた。

 

「ここはまかせていいかな?」

 

「あぁ、疲れたのか?」

 

「そんな感じだよ。部屋にいるから」

 

「わかった」

 

俺は、部屋に戻った。宴会場と違い、静かな部屋。作業台に座り、書きかけの絵を仕上げていく。画集を出す予定なので、少し絵を溜めているところである。スケッチブックを手にして、幽奈を思い出しながら、湯煙に佇む幽奈を描いていく。

 

 

 

---羽島京---

 

大先生の書き上げた1枚を見て、皆で唸っていた。この場に大先生はいない。深雪さんに頼んで、大先生を部屋で休ませている。

 

それは川岸の絵であった。川の向こうには綺麗なお花畑が見える。川の手前には、何個かの石を積んだ山がある。これって…

 

「マズくないか?」

 

「これって、三途の川ですよね?」

 

彼は見た物しか描けない。って、ことは、死にかけたってことだ。どこで?どうして?

 

「美和子さん、そういう情報ってあります?」

 

「う~ん、正宗君が死にかけたって、情報は無いんだけど…いつ、見たんだ?」

 

その見た時期が問題である。ここで見たのであれば、大問題だし。

 

「温泉地の絵が数点ありますね」

 

そうなると、温泉地で死にかけたのか?どうして?

 

「考えられるのは、山越えの際かな。体力的に厳しいって、除外したルートがあるんですよ」

 

そうなると、問題は少ないけど…新作の『湯煙の女』を読めば、謎が解けるのか?

 

 

 

 

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