その嫌悪と憤りは当然のモノだった。
彼女の肉体で生を謳歌し、その尊厳を踏み躙ってしまった。
許されることではないだろう。
それでもどうか知ってほしい。
貴女という存在から生み出された私のことを。
「迂闊でしたね、桜」
「はい……」
階段から転落した白野を病院に運ぶと時間を見て駆けつけてくれたレオに事情を説明すると彼はやれやれと桜に言う。
「そっか。あの子、ホントのことを知っちゃったんだね……」
階段から転落した白野は未だに意識が戻っていない。
怪我自体はほぼ軽い打ち身だが、頭を打った形跡がある為に油断できない状況だ。
「それで桜さん。貴女はどうしますか?」
「え?」
「事故ではありますが、結果的に今の岸波白野さんが意識を閉ざす状況に持って来れました。今の状態なら外側から白野さんに何らかのアプローチが可能なのでは?」
「それは……」
レオの言っていることは正しい。
コールドスリープ程ではないが白野の魂は間違いなく精神の奥深くに落ちている。
今なら手が打てない訳ではない。その為に桜は準備してきた。
「本当に、良いんでしょうか?」
これ以上、自分たちが岸波白野に余計な干渉をして良いのだろうか?
あの部屋で向けられた怯えた顔と罵倒。
そうさせてしまったのは自分だ。そんな自分がこれ以上彼女に関わることが許されるのだろうか?。
ワガママを、押し通しても良いのだろうか?
「悩んでいる時間は無いと思いますけどね。今回を逃せば次はいつ機会が訪れるかわからない。いえ、それ以前に前に言っていた今の白野さんが月の白野さんを消す可能性も強くなったわけですが」
「…………」
レオの言葉に桜の肩が僅かに跳ねる。
「このまま、なにも選ばないという選択をして彼女を見捨てますか」
「それ、は……」
桜とてわかっている。ここが分水嶺だと。
ここで選択を間違えれば取り返しのつかないことになる。
でも、だけどという言葉が桜をまえに踏み出すことを躊躇わせた。
「サクラ、方法は?」
顔を俯かせている桜にアストルフォが前に立つ。
「どっちみちここで何とかしないといけないんだろ?だったらやろう。ね?ボクは何をすればいい?」
真っ直ぐ自分を見つめて問われる。それに答えることが出来なかった。
「言っただろ。やっちゃったからには責任を果たさなきゃって。今がそうだろ?やらないで後悔するより、やって後悔したほうがいい。違うかい?ボクはそのほうがいい」
静かに。しかし確固たる意志を以て桜を諭す。
それに諦めたように桜はメモリースティックを出した。
「それは?」
「白野さんの精神にダイブするためのソフト。月の裏側で用いた五停心観と万色悠滞のデータを再構築して今の状況に合わせてカスタマイズした物です」
「うわ!それってアレだろ!よく復活させる気になったなぁ」
「五停心観。聞いたことがりますね。確か精神医療用に開発されたプログラムだとか」
「わたしではこれしか思いつきませんでした。もう頼りたくはなかったんですけど……」
自嘲気味に笑う桜。
月の裏側で散々お世話になったプログラムだが、作った人間が人間であったため、桜の中で良い感情がある筈もない。
「これを使ってアストルフォさんを白野さんの精神世界へとダイブさせます。そこで、月の白野さんを目覚めさせれば」
「ボクを?」
「はい。これは白野さんとアストルフォさんのマスターとサーヴァントの縁を前提で作られてますから。SGの摘出を行わずに精神の中心まで行けるはずです。ですが……」
「何か問題でもあるの?」
「……これで作れるのはあくまでも入り口だけです。中は地上の白野さんの世界ですから排除しようと動く筈です。本能が異物を排除しにかかります。わたしが組めたのはここまででした」
「いいね、わかりやすいや!ボクがハクノの中に入って月の白野を起こせばいいんだろ?そしてその後は」
「白野さんたちの選択に委ねる形になります」
あくまでも2人を向き合わせる為。これ以上は外野が干渉すべきではないと桜は思った。だから月の白野を目覚めさせることだけを重点に置いた
「ですが、いいんですか?アストルフォさんは相当危険なことになると思いますが」
「良いも悪いもないさ。ボクはハクノのサーヴァントだからね。主を助けるために動くだけださ!危険なんていちいち考慮してたら何にも出来ない!それにボクは考えるのが苦手だしね!だから動くだけさ!」
だから自分のことは気にするなとアストルフォは言う。
桜は、頷くしかなかった。
眠っている白野の寝台の横でアストルフォが寝かされている。
互いの間には多くのコードで繋がれていた。
今回は強制的にアストルフォを白野の精神世界に送り込む作業だ。
「アストルフォさん。こちらの準備は終わりました。準備は良いですか?」
「オッケー。いつでもいいよ!」
マイク越しに聞こえる声にアストルフォは楽観的と言える声で答えた。
「ねえサクラ」
「どうしました?」
「もしハクノたちがどんな選択をしても、ボクたちはそれを受け入れてあげよう。ね?」
もし月の白野の存在が消えてしまうとしても、それは受け入れようとアストルフォは言う。
それがどんなに悲しい結末でも。
「はい。わかってます」
「それじゃあ、お願い」
その言葉を合図にプログラムを走らせてアストルフォの精神を白野の中へと送り込んだ。
それを確認した後にレオがポツリと呟く。
「本音を言えば、僕は月の白野さんが戻って来てくれた方が都合が良いんですがね。それに月の白野さんが消えるということはアストルフォを地上に留めて置くことは出来ない。違いますか?」
アストルフォがあくまでも月の岸波白野だ。彼女の存在が消えればアストルフォも存在できない。契約しているのは肉体ではなく魂だから。
だからアストルフォは言ったのだ。もし月の岸波白野が消えたら戻って来た岸波白野を頼むと。
「……」
その沈黙が真実を雄弁と語っていた。
「まぁ、僕はそう悪い結果にはならないと思いますけどね」
「どうしてですか?」
あっけらかんと言い放つレオに桜は首を傾げる。
「僕の知る白野さんは非常に勘の鋭い人でした。瀬戸際の選択肢選びが上手いとも言えます。それに底無しのお人好しでもある。お2人が同じ岸波白野であるなら……」
例え歩んできた道に多少の違いはあっても、人の本質は簡単には変えられないとレオは言うのだ。
その予想が的中するのを祈るように桜は両手を胸の位置で組んだ。
「この落ちる感覚も久しぶりだぁ」
アストルフォは白野の精神世界に落ちながらポツリと呟く。
今の彼の格好はさっきまで着ていた私服ではなく、サーヴァントとしての騎士服だった。
「と言っても、宝具がひとつもないんだけどね~」
マナが枯渇した地上でどうやって英霊が存在できているのか不明だが、受肉するにあたってアストルフォは宝具全てを失っていた。
持っているのはせいぜい生前から愛用していた騎士剣くらいだ。
今のアストルフォは常人より身体能力が高いだけの英霊に過ぎない。
着地するとそこは真っ直ぐと続く道が広がっていた。
「え~とハクノハクノっと!」
道の先に視力を集中させるとそこには台座に座らされているマスターを発見した。
「アレか。あ~もう!こんな時ヒポグリフが居てくれれば一気にびゅーんって辿り着いちゃうのに!」
走って白野の下へ急ぐアストルフォ。
少し進んだ先で、もうひとりの目的の人物が居た。
「ハクノ……」
「どうして来たの?あなたたちにとって、私はそんなに邪魔だった?」
地上の岸波白野はスカートを握り締めながら訊いてくる。
その姿が、今にも泣きそうな子供の様に見えた。
「違うよ。ボクはただ、彼女を起こしにきただけさ。キミに知ってほしいんだ。彼女のことを」
「嘘っ!!」
アストルフォの言葉を地上の白野は真っ先に否定する。
「私は、もう嫌だ!私を勝手に使われるのは嫌なのっ!?」
「うん。ゴメンね」
目の前にいる岸波白野の言うことは正論だ。誰だって自分の身体を好きに使わせたいなんて思わないだろう。
「それでもボクたちはあのハクノを放って置けない」
そう言って進もうとすると、バチッとアストルフォが弾かれる。
「あ~。やっぱりそうなるよね。イヤなこと思い出すなぁ」
ここはサーヴァントの無意識領域と同じだ。おそらく、目の前にいる少女が許可しない限り、誰も眠る白野には辿り着けない。
「でも突破出来た
一度深呼吸をすると、アストルフォは全力疾走を始めた。
少し進んだところで体に激痛が入る。
「あ、これ思った以上にキツイかも……!」
自分の身体が強制的に分解される不快感と痛み。
転がりそうになるのを堪えて進む。
速度は下がったが進めない訳じゃないとアストルフォは前へと進む。
全体の3割ほど進んだところで再び痛みに襲われる。
最初は耐えられた痛みに2度目は膝を折る。
「だぁっ!!もうこれ邪魔っ!?」
マントを脱ぎ捨てて鞘に納まった剣を支えに立ち上がる。
右足が壊れて出来の悪いロボットのようにしか動かせなくなったためだ。
進めば進むほど。近づけば近づくほどに苦痛を与えられる度合いと個所が深く広がる。
しかしアストルフォは笑みを崩さなかった。
(そっか……ハクノはこんなに痛い思いをしてボクを助けてくれたんだ)
そう思えばこんな痛み、なんてことの無いような気がした。
だって英霊でさえ音を上げそうな苦痛に耐えて自分を求めてくれた。
それが誇らしく、嬉しかった。
「マスターに出来てサーヴァントに出来ないなんてカッコ悪すぎるからね!」
走っていた時とは比べ物にならない遅速。
それでも構わずにアストルフォは進んだ。
苦痛が訪れる度に倒れ、その度に立ち上がる。
その姿を眺めていた地上の白野は。
(どうして?あんなになってまで……)
どれ程の苦痛なのかはわからないが尋常でないことは理解できる。
もう既に歩くどころか剣を支えに摺り足で動いてるだけだ。
そうまでして自分を消したいのかという憤り。そしてそこまで想われている奥で眠る少女への嫉妬。
今すぐに消してしまいたいという衝動がありながらそれを実行できない自分への惨めさ。
それらが入り混じって白野の心の中を搔き乱している。
何よりも何故、その歩みに魅せられ、ずっと見ていたいと思えるのか?
マスターである白野の下へ辿り着いたアストルフォの身体はボロボロだった。
視界は右目が辛うじて機能しているだけ。
耳は聴こえているのか正直怪しい。
所々聖杯戦争の敗者が死んだときに表れる黒い泥のようなモノが付いていて、その部分は碌に動かせない。
「でも……まだ剣は振るえる。どりゃぁあああああああっ!!」
アストルフォは片手で剣を掲げ、マスターを捕らえる鎖を力いっぱい切り離しすと、連鎖的に全ての鎖が消失していく。
「ん……」
鎖が解けると月の白野はその瞼をゆっくりと開けた。
「やあ。お待たせ」
鎖を切った瞬間に剣を手放して白野の胸に体を落とす。
そんな自分のサーヴァントを白野は愛おし気に頭を撫でた。
「ありがとう、アストルフォ。あとは任せて」
「うん。頑張れ、
以前と違い、ここは地上の岸波白野の世界だ。だから月の岸波白野を開放したとしてもアストルフォの苦痛は変わらない。急がなければ、本当に消滅しかねない。
2人の少し離れた位置に地上の岸波白野が降り立つ。
その顔は色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合った複雑な表情をしている。
アストルフォを楽な姿勢で置いた後にもうひとりの自分に近づく。
怯えた様子でいる地上の白野に自分が先ずすべきことをした。
「ごめんなさい。ずっと貴女を蔑ろにして」
頭を下げて謝罪する。
それに地上の白野は面喰らったかのように呆けた表情をする。
「貴女の身体で好き勝手したこと。貴女のことを感じながら無視していたこと。その全てにごめんなさい」
自分にはそれしか言えない。
言い訳なんて出来るわけがない。
その月の白野の謝罪をどう受け取ったのか。地上の白野は歯を音が鳴るほど食いしばり、その顔を憤怒で歪めた。
「いまさら……今更ぁっ!!」
地上の白野が自分と同じ顔の頬を張る。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……っ!」
それで心の何かが切れたのか、涙を流して膝を折った。
ボロボロと涙が零れ落ちる。
「……うれしかった」
それももうひとりの自分に聞かせたかったのか。それとも彼女自身が自分の心を整理したかったのか。ポツリポツリと話し始める。
「なんにも覚えてない私に優しくしてくれたこと。色んなことを教えてくれたこと。リハビリに付き合ってくれたこと。全部がうれしかったの……」
「うん」
「でも……それぜんぶが私に向けられたモノじゃなくて……全部あなたに向けられていたモノだってわかったとき、足場が、崩れたような気がして」
身体を使われていたこと。
性交していたこと。
自分がまた乗っ取られるかもしれないという恐怖。
それら全てが嫌だったが。1番ショックだったのは桜とアストルフォの好意が自分に向けられていたわけではないと理解したときだった。
その全部が一気に押し寄せて来て真面な精神の持ち主が耐えられるわけはなかったのだ。
「で……てって……私の中から出てってよ……
目の前で幼子のように泣きじゃくる自分。
それに視線を外して月の白野はアストルフォの剣を拾った。
自分を斬るつもりなのかと恐怖で目を瞑ると月の白野は地上の白野に剣を握らせて、自分の胸にその刃を誘導した。
「いやっ!?」
刃が肉に入る感触が伝わった瞬間に地上の白野握っていた剣を投げ捨てる。
「どうしたの?今剣を通せば貴女の望んだとおりになったのに」
「う、あ……」
まるで化け物を見るように地上の白野はもうひとりの自分を見上げる。
月の白野はこれで確信した。
この自分に人は殺せない。
そもそも、自分を認識した時点で地上の岸波白野はいつだって月の岸波白野を消せたはずなのだ。
それでも今自分がこうして存在できるのは単純に彼女に人を殺すだけの意志が持てないから。
たとえそれが、自分を脅かす存在であっても。
だから地上の白野は月の白野を押し込めるのみに留めたのだ。
月の岸波白野は膝を折り、
もうひとりの自分と目線を合わせる。
「貴女に、知って欲しいの。私の全てを。私がなにを感じて、どう思って生きてきたのか。それを知った上で、貴女に決めてほしい。この精神世界なら可能な筈」
地上の白野の手を取り、自分の胸へと手の平を当てる。
月の白野とて消えたいわけではない。だが選択肢は全て地上の岸波白野に委ねると決めていた。
ただ、その前に自分のことを知って欲しいと思っただけ。
こうして、月の岸波白野は自分の全てを曝け出した。
地上の岸波白野はどことも知れない学園で着たことのない制服に身を包み、その場にいた。
訳の分からないまま突き進んだ結果、訪れたのは当たり前の死。
しかし、沈む筈だった自分の手を握ってくれた
「ボクはライダーのサーヴァントだよ!よろしくね、マスター!」
現れたのは僅かな間、共に生活した少女然とした騎士の少年。
彼の手に引かれて様々な戦いを潜り抜ける。
最初は、与えられた役割とはいえ、親友と呼ぶべき少年だった。
次は戦う覚悟を教えてくれた師に等しい老兵だった。
次はただ遊びたいだけの幼い少女だった。
次は、自らの信仰を極めようと足掻く僧だった。
そしてそこで異常が起きる。
黒いナニカに飲み込まれた後に堕とされた月の裏側
そこでは表の聖杯戦争では知ることのできなかったライバルたちの一面を知りながら事態の収拾に図る。
そこで矛を交えた青の混じった長い黒髪の少女に似た存在たち。
時には仲間を失い、牢獄に囚われながらも前へと進んだ。
たとえ戦う力がなくとも、前に進むことだけは諦めきれなかったから。
それだけが自分にできることだったから。
そうして辿り着いた元凶。
全てを自分の快楽に飲み込もうと暗躍した女性。
幾つかの偶然が重なりなんとか乗り越えた世界の危機。
しかし、その後に押し寄せてきた崩壊の波を助けてくれたのは自分の知る、しかし異なる存在となった少女だった。
「はい。さようなら、先輩。わたし、貴女のことが、大好きです」
そう言って消えてしまった岸波白野を守ってくれた少女。
そこで、全てが元通りになる筈だった。
岸波白野はアストルフォと共に表の聖杯戦争に戻り、月の裏側の原因だった魔性菩薩と間桐桜が消える。それだけだった。
しかし月の聖杯と一時的に接続した桜のワガママで月の岸波白野は、その魂を地上へと移した。
全てを観終わった地上の岸波白野は膝を折った体勢でもうひとりの自分を見上げる。
「……これを見せて、あなたは私にどうして欲しいの?」
こんなものを見せて、自分と取って代わるつもりなのかと思ったが月の白野は首を横に振った。
「私は、貴女に私のことを知って欲しかっただけ。決めるのは、貴女自身だよ」
そこで、うんでもと続ける。
「私が消えても、この
月の岸波白野とて消えたくはない。桜やアストルフォと共に生きていたい。
それでも、この夢は最初から叶う筈のない
「ありがとう。貴女のおかげで、私は、幸福を
心残りはあるけれど、それでも満足だったと笑うもうひとりの自分に地上の白野は顔を俯かせる。
地上の岸波白野が月の岸波白野の記憶を観て感じたのは嫉妬だった。
あんなにも多くの人に愛されて、突き進んでいった自分。その在り方があまりにも羨ましく、焦がれた。
同時に、彼女がもうひとりの自分なら、自分もこうなれるのかという期待と羨望。
「……私は、消えたくない」
「うん」
「でも、貴女を消すことも、きっと出来ない」
「そう」
「でも、貴女が私なら……一緒に生きていくことが、できるのかなぁ」
地上の白野の言葉に月の白野は目を丸くする。
あの記憶を観たから、安易にもうひとりの自分を消す選択肢が出来なかった。
あんなにも多くの人の愛され、ここまで生きていたもうひとりの自分を。
「選んだ、よ……本当に出来るのかわからないけど。私は、貴女と一緒に生きていく」
こうして、もうひとりの自分を受け入れるようにその体を抱きしめた。
「一緒に、生きましょう―――――」
重なり合う。融け合う。交じり合う。混ざり合う。
2つの心が。精神が。感情が。経験が。魂が。
こうして私たちは新たに生まれた。
「ん……」
目を覚ます。
どうやら上手く行ったらしい。
月の白野は全ての決定を地上の白野に委ねた。
そして地上の白野に誰かを消す気概は持てなかった。
その結果選んだのが融合だった。
地上の白野の魂を外殻に月の白野の経験とかを注ぎ込んだ感覚だろうか?
月で間桐桜というAIが2人に別れたのとは逆のことをしたという感じだ。
後に桜がまだ
ましてや他人ではなく本質的には同じ人間だ。そう齟齬も起きない筈。
もっとも、これは全て白野個人の感覚なので理論的に説明しろと言われれば無理と断言できるが。
ガラス越しに桜が心配そうにこちらを見ているので笑顔で軽く手を振ってあげると感極まったように涙を流す。
それに肩を竦めて未だ目覚めないサーヴァントに笑みを浮かべる。
「お疲れさま。私たちのサーヴァント……」
そうして白野はアストルフォの手を握った。
ここからはR18場面になります。不快な方はバックすることを推奨します。
【おまけ】 あのあと無茶苦茶セックスした。
「ねぇ、桜……この状況の説明してくれないかな……」
「なにがですか、白野さん?」
「うん。なんで私、帰ってくるなりベッドの上で手が縛られてるのか説明を求めてるんだけど!?」
なにをされるのか大体予想付くが、出来れば説明してほしい。切実に。
「実は、ちょっと我慢の限界で……ここのところ、白野さんの件でソフトを組むのに時間を割いていて接する時間が限られてましたし。その、久々に白野さんが恋しくって」
熱っぽい表情でそんなことを言う桜に白野は顔を引きつらせる。
「それは、嬉しいんだけど……なんで手を縛られてるの?」
「はい!いつも白野さんに気持ちよくしてもらってましたから。今日は私が気持ち良くしてあげようかなって。つまりですね――――――さぁ、わたしの中で溺れなさい」
(なんだろう。今一瞬、桜の髪が真っ白になって瞳孔が開いた赤い瞳になってたように見えたけど……それとすごい悪寒がした)
身震いする白野に桜は顔を近づける。
「それじゃあ、白野さん。わたしで気持ちよくなってください……」
艶めかしい唇が近づいてくる。
すると―――――。
「ちょっとタンマァッ!」
2人の顔の間にアストルフォが手を挟んできた。
「あ、アストルフォさんいつの間に!」
「最初からいたよ!ずっと同じ部屋に!」
プクーと頬を膨らませるアストルフォ。
「それよりボクを除け者になんてヒドイよ!ボクだってずっと我慢してたのに!」
「そ、そうですけど。その、今回は譲ってもらっちゃダメですか?」
「ダーメ!ハクノはボクたち2人のハクノなんだから!」
「あの~。私の意思は?」
「え?ないよ?」
「もう本当に我慢の限界なんです。諦めてください」
キッパリと言い放つ2人に白野は天井を仰いだ。
「わぁ……久しぶりの白野さんの匂いだぁ」
白野が上の服を脱いでブラだけになった途端、桜は後ろから抱き付き、首筋から匂いを嗅ぎ、耳を甘噛みしてくる。
「ねぇ、ハクノ!キスしよ!キス!」
こちらの返答を聞く前にアストルフォは唇を重ねて舌を絡ませてきた。
「つっ……んん!」
舌を絡ませている間にも混じりあった唾液が垂れる。
口内を舌で掻き回されている間に桜が白野のブラを外し胸とショーツの中の膣に触れてくる。
胸は乳房を優しく揉んでいたが、時折、乳首を強く摘まむ。反対の指で触れた膣は中に入れずに形をなぞるように動かす。
「アストルフォさん、そろそろ替わってくれますか?わたしも白野さんとキス、したいです……」
「いいよー。それじゃボク、おっぱい舐めたい!」
「……2人とも、がっつきすぎ、でしょ……っ」
「だって……本当に一時はどうなるかと思ったんですもの」
「そーそー。心配、したんだ、よ!」
「んっ!?」
アストルフォが乳首に歯を当てると白野から甘い声が漏れる。そして後ろにいる桜に首を向けさせられてキスを始めた。
いつもはどこか控えめに舌を動かすが今日に限って積極的に白野の口内に侵入してくる。
2人のテンションに戸惑いながらその行為を受け入れていく。
その間、アストルフォの口が胸からお腹にキスを繰り返しながら手を伸ばす。その行動に白野の肩が大きく跳ねた。
「ア、アストルフォ!どこに指入れてっ!?」
「ん?お尻だよ」
「な、なんで!?」
「今日はこっちに挿入れようかなって。サクラもアレ使うみたいだし」
「ア、アレ?」
嫌な予感がする。
後ろを向くと、桜が顔を赤くしてどこからかそれを手に取っていた。
「さ、さくら……それ……は?」
「きょうは、その……コレを使いたいんです……」
桜が手にしていたのは男性器を模した張型。俗にいうペニスバンドという器具だった。
「コレを使って白野さんと繋がりたいんです!」
「それよりそんなのいつ買ったの!?」
「ハクノが目覚めて検査を受けてる間だよ」
「行動が早いよ!」
白野がツッコミを入れている間に桜がペニスバンドを装着していた。
「ふ、2人とも……冗談だよね?さすがに、私も怒るよ……?」
「はい。後でいっぱい叱ってください」
「ごめんね~。ボクたちももう我慢できなくて」
まるで怒られることも楽しみと言った感じの2人の態度に白野は困惑していた。
そうして白野の手の拘束を外し、身体を反対に向かせて四つん這いの体勢にさせる。
白野の尻を掴んだアストルフォが尻穴に自分の肉棒を押し入れた。
「つぁ~~~~ッ!?」
声にならない叫びを上げる。
アストルフォは自分の肉棒を馴らすようにゆっくりと腰を前後させた。
「ハクノ……!こっち、まえと違う感触がするけど気持ちいいよ!」
答えられず、新しい感覚に涙を流すと下に居る桜がその雫を舐める。
「白野さん……顔を真っ赤にして声を抑える顔、すごくかわいいです」
そう言いながら身に着けた張型を膣に合わせる。
「さくら……!ホントに無理だから、待っ――――!」
桜はその先の言葉を自分の唇で塞いだ
そして桜は腰を突き上げて張型を膣内に挿入する。
「~~~~~っ!?」
前後の両方に挿入されてジタバタと動く白野。
それに桜は四つん這いで支えている白野の手に自分の手を差し込んで指を絡ませ、自分の身体へと白野を倒させる。
2人の乳房が互いの形を崩させる。
より深く、舌が交わる。
「さっきより、キツくなって……も、射精るっ!?」
アストルフォが射精すると白野の意識は白く染まる。
それが達したからだったのか。
それとも別の感覚だったのか判断できなかった。
「いや~。ちょっとやり過ぎちゃった?」
「まさか気絶しちゃうとは……」
初めて三人で肌を重ねた時のように白野を挟んでアストルフォと桜はベッドで横になっていた。
今回の情事で余程体力を削ったのか、アストルフォが射精すると糸が切れたように白野はその場で意識を落としてしまった。
「でもハクノの寝顔かわいいな~」
ほっぺをつんつんとしながら白野の寝顔を眺める。
2人の白野の意識が混ざり合ったという話を聞いた時、複雑な表情をした。これが良かったのか判らなかったから。
しかしそんな桜に白野は笑ってこう言った。
『大丈夫。
それは、地上の岸波白野が桜を許したということなのか。意識が混じって月の白野の面が強く出ているのは経験の差だろうが、どちらがどちらではなく、どちらがどちらも、ということなのだろう。
その意識は完全に融合を果たしていた。
どちらかなんて嫌だった。でもこれは予想外だった。
そしてまたこうして一緒に居られることが堪らなく幸せで。
「こんなに幸せでいいんでしょうか?」
「いいんじゃない?幸せになっちゃいけないなんてことはきっとないんだから」
あっけらかんと言い放つアストルフォに桜は目を丸くする。
「きっとこれからもっと楽しいこととか嬉しいこととかたくさんあるよ。3人一緒ならさ!」
だからこれくらいで満足してたらこれから大変だぞとアストルフォは指摘した。
「――――――はい!」
桜は陰りを潜め、花のような笑顔を浮かべた。
翌日。起きた白野に2人は拳骨を落とされ、正座で説教された。
それを嬉しそうに受ける2人に白野は大きく息を吐くことになる。
融合エンド。これ以外だとどちらかが消えるしかなくなるのでご都合主義を前面に押し出してみました。
最初は月の白野がオリジナルを精神世界で殺して元の鞘に納まるノーマルエンドとかも考えましたが中編書いている間にオリジナル白野に愛着が湧いたことと、あまりにも後味が悪かったのでこうなりました。
最後のエロシーンはこの作品はR18作品だってことを思い出して書きました。