アルトリアのステータスは凜セイバーのイメージで。
回路が繋がったアルトリアは白野からの支援を受けて少しずつ戦況を盛り返していた。
「やるな勇士よ!お前に私が殺せるか!!」
「我が新たなマスターに危害を与える貴様の首をここで貰う!!」
剣と槍が幾度も激突する。
2人の女性サーヴァントがその身体を交錯するたびに余波でエネミーやアグレッサーが蹴散らされていった。
(ここで宝具は使えない。ハクノの安全もあるが、それを許す程目の前の敵は容易くない!これほどの使い手は生前を含めてどれだけいたか!)
一介の騎士としての僅かな喜び。しかし現状後ろに守るべき者のいる今ではむしろ苛立ちの方が勝っている。
「ハァッ!!」
鬼神の如き気合と共に敵サーヴァントを弾き飛ばす。
互いに無言で獲物を構え直すと僅かに視線を逸らした。
「どうやらそちらに運が回ってきたようだぞ?」
飛来する2本の剣。それを敵サーヴァントが鮮やかに躱すと同時に空から人が降ってくる。
「我こそはセイバー・シャルルマーニュ!貴殿をペンドラゴン卿とお見受けした!この場を援護する」
手にした剣を敵サーヴァントに向けて宣言するシャルルマーニュ。
しかし相手は自らの獲物を下げた。
「どういうつもりだ?」
目の前の女性が数の不利で臆したとは思えず問うと向こうは肩を竦める。
「こちらも今帰還命令が下ってな。少々物足りないがこの場は引かせてもらおう。そちらもこれ以上長引かせて大事なマスターの負担になりたくはないだろう?決着は次の機会にな」
言うや否や、こちらの返答を聞かずに去って行く女性ランサー。
それを確認した白野は安心からその場に座り込む。
「ハクノ!?」
「ごめん、安心したら、足に力が入らなくなっちゃって」
力無く笑う白野。
無理もない。赤ん坊を抱えながらずっと襲われる恐怖と戦ってきたのだ。
愛する伴侶の心配もあっただろう。
その上でアルトリアと契約して僅かとはいえ戦闘に参加。
これで平常で居られる方がどうかしている。
「ありがとうございます、ハクノ。貴女の判断でこの場を切り抜けられました」
「もう、守られてるだけはイヤだからね」
そうして笑い合っている2人のシャルルマーニュが提案する。
「なぁ、アンタら。良かったら俺たちのところに来ないか?ペンドラゴン卿が加わってくれれば千人力だし。俺たちはそっちのマスターを休める場所も提供できる」
「えぇ。私たちもそちらと合流しようと移動していました」
「そっか。なら来てくれ!こっちのマスターに会わせるよ。アンタも大丈夫か!赤ん坊を抱きかかえながらすごいな!」
「ハハ……ありがとう」
そう言って立ち上がるとシャルルマーニュが白野が抱えていた赤ん坊を覗き込む。
すると彼は目を丸くした。
「アストルフォ……?」
「いやぁ、SE.RA.PHに赤ん坊ってのも驚いたけどまさかあのアストルフォの子供ってのは二重の意味で驚いた!」
抱いている子のことを説明するとシャルルマーニュは仰天した。
しかしすぐに難しそうな顔をする。
「しかし、アイツは向こうに捕まっちまったか。間違いなく
「でも絶対に取り戻すよ。この子の為にもね」
「そっか。カッコイイなアンタ。ま、アイツは馬鹿だからな!ちょっと殴れば元に戻るだろうさ!」
シャルルマーニュの励ましに白野は苦笑を浮かべる。
言葉だけ聞くとアレだが相手に裏表がないからか不快感はない。
空中庭園に着いた3人はシャルルマーニュに月の王の下へと案内されている。
案内されながら白野の中で緊張が走っていた。
もうひとりの岸波白野とはあの聖杯戦争での戦い以来1度として会っていない。
それがこんな形での再会になるとは思わなかった。
「お~いマスター!ペンドラゴン卿とそのマスターを連れて来たぜ!」
作戦会議を行うと思しき部屋の扉を開ける。
中には月の王であるもうひとりの岸波白野。
そしてかつてレガリアを巡り争ったネロと玉藻の前。
他のサーヴァントたちがこの場に居ないのは彼が気を利かせてくれたのだろう。
「よく来たね。色々と大変だったみたいで」
「うん。ありがとう。こっちのお願いを聞いてくれて」
「いや、俺たちも戦力は集めてたから。トップサーヴァントのひとりのアーサー王が仲間なら心強い。それに、君も無事でよかった」
彼の印象は聖杯戦争当時と変わらない。
月の王という立場でSE.RA.PHの平定に努める存在となった今でも彼は彼のままでいるらしい。
そのことに安堵を覚えているとネロがこちらに近づいて来て、桃野に顔を覗き込む。
「おぉ!この赤子がそなたの娘か。愛らしい子ではないか!」
ネロが桃野のほっぺを突くとその指を握る。それを嬉しそうにするネロ。
「ネロは、子供好きなの?」
「うむ!特に愛らしい童女は良い!生前は多くの童女を侍らせ、湯あみの時などに色々な遊戯に興じたモノだ!その娘がもう少し大きくなったら我が城に来るがよい!その時は余のハレムの一員として愛でようではないか!」
「うん。絶対嫌」
「何故だ!?」
額に青筋を立てて拒否する白野にネロが驚愕の表情をする。
それを見ていた玉藻の前が呆れたように溜息を吐いた。
「いや、あんな話聞いたら当然でしょうに。それはそうとご主人様。あの子を見て何か思いません?」
「うん。まさかSE.RA.PHで赤ちゃんが産まれるとは思わなかった。実際見てみて感動してる」
「いえいえ!そういうことではなく!俺も赤ちゃんが欲しいなーとか。むしろ今日から良妻賢母の私と子作りしたいなーとか!あ、私はいつでも準備オッケーですので!」
「そ、その話はまた後日……」
顔から冷や汗を垂らしながら顔を背ける月の王。
なにせ女性である岸波白野の妊娠を知ってからネロと2人で熾烈な口論が日夜繰り返さてれおり、月の王は2人のサーヴァントから逃げ回る日々を送っているのだ。
もしこれで成長したアルテラが加わったらさらに混沌化するだろう。
そんな未来に頭を悩ませていると桃野を抱き上げていたネロが宣言する。
「よーし!この娘のために余が子守唄を歌ってやろう!」
それに月の王と玉藻が蒼白になって止める。
「や、止めろネロ!」
「それ子守唄っていうか、むしろ永眠しちゃいますー!?」
「なにをするこの駄キツネ!生前、余が歌を歌ってやれば侍らせていた童女たちがすぐさま眠りに就いたのだぞ!」
「それ絶対気絶してただけでしょう!」
言い争う2人に白野は唖然として見ていたが、すぐに笑みがこぼれる。
自分の住んでいた場所とは違うその明るさに。
そこで今まで黙っていたシャルルマーニュが話しかける。
「結構、賑やかで楽しいだろ?」
「えぇ。とっても」
余談だが、後日仲間になる自称トップアイドルのサーヴァントが加わることにより、今回以上の騒動に発展する事件が起きるのだがそれはまた別の話。
月の王が用意してくれた部屋で無銘が即興で作ってくれた幼児用の寝台に桃野を寝かせて白野も腰を落ち着かせた。
アルトリアは隣に部屋を取り、何かあれば呼んでくださいと言って別れた。
こうして何もしない時間が出来ると不安からアストルフォのことが思考を埋める。
天声同化とやらを受けたアストルフォを本当に元に戻すことが出来るのか。
彼が敵に回って現れた時、自分は本当に戦えるのか。
もし彼が天声同化を受けようと言った時に自分がそれに抗えるのか。
何より今は―――――。
「寂しい、なぁ……」
彼が自分を目覚めさせてくれてからずっと傍に居てくれたのだ。
あの明るい声が傍に無いことに違和感を覚える。
「ん……アン……」
体を倒すと手が自らの乳房を掴む。
乳房を揉み、乳首を指で転がしながら少しずつ足を開いて行った。
そして、反対の手が秘所へと移動し、ショーツをずらして敏感な突起部分に指が触れる。
「アス、トルフォ……やっ……」
彼がどんな風に自分の身体に触れてくれていたのかを思い起こしながら少しずつ手に力がこもる。
身じろぎして衣服が乱れるのを気にせず自慰に没頭した。
秘所から愛液が流れてそれに触れると自慰を始めてほんのりと赤く染まっていた頬の赤みが増したが、白野は行為を止めずに自らを慰め続けた。愛する人が傍に居ないという事実から少しだけ逃避するために。
「……んっ!?」
膣内にゆっくりと自分の指を入れると声を押し殺して快感に浸る。
口を半開きにして唾液が垂れるのを気にせず、ところどころで喘ぐ声を漏らし、伴侶の名を呼びながら自身を絶頂へと導いた。
「あっ……!?」
行為を終えた後にぐったりとして天井を見つめる。
その感情はただただ虚しかった。
「なにしてるんだろ、私……」
自分の浅ましい行為が情けなくて白野は一筋の涙が流れた。
「それじゃ、次の戦闘からはボクも参加するからね、バーサーカー!」
アストルフォは自分を刺した狂戦士の黒騎士に笑顔で話しかける。
「天声同化ってあんまり好きじゃないけどされてみると案外楽しいね!」
黒騎士はただ呻くだけだがアストルフォは特に気にした様子はない。
「ハクノもモモノも迎えに行かなくっちゃ!大帝に天声同化されればみ~んな幸せになれるからね!」
両の指を合わせてその時が来ることを楽しみに笑みを浮かべるアストルフォ。
その左薬指に填められた指輪が照らされて一瞬だけ光を放った。
もし桃野を預けるなら女性サーヴァントより男性サーヴァントの方が絶対安心できると思う。