ちょっとあっさり目にLINK編、終わります。
食堂でシャルルマーニュとアストルフォが言い合っていた。
「大体、お前もう旦那さんだろ!父親だろ!そのミニスカートは如何なものか!」
「しょうがないだろ!ボクがサーヴァントとして呼び出された時にはこの格好だったんだから!つまりこれがボクのサーヴァントとしての正装なの!それにボクだって最近はちゃんと男の格好してるんだよ!」
「それって少し前まではずっと女装してたってことじゃねぇか!?」
頭を抱えるシャルルマーニュ。そこで給仕をしていた白野を呼び止めた。
「なぁ、あんた!この旦那このままでいいのかよ!」
シャルルマーニュの問いに白野は苦笑する。
「まぁ、いいんじゃないかな?誰に迷惑かけているわけで無し」
「さっすがハクノ!わかってる!」
そう言って白野にアストルフォが抱きつくと頭を撫でる。
その姿はどう見ても女の子同士にしか見えない。
もうどうにでもなれと天井を仰ぐと
すると、シャルルマーニュは目眩を覚える。
「どうしたの、シャルル?」
「いや、ちょっとな……次の戦いの準備するわ、俺。ごちそうさん」
そう言って出ていくシャルルマーニュ。その姿をアストルフォは不安そうに見た。
「アストルフォ、何か気になるの?」
「ううん、なんでもないよー」
そう笑うアストルフォに白野は首を傾げながらも話題を打ち切った。
マスターが2人居る中でローマ軍は大帝へと進軍するメンバーと各地の解放へ回るメンバーに分かれる。月の王はシャルルマーニュやネロ、玉藻と他に数名のサーヴァントを連れて大帝の下へと進軍し、白野は制圧されている都などの解放に回る他に敵施設の調査などを行った。
現在、サーヴァントの複製体などを製造している施設に来ていた。
そこで出会ったのが―――――。
「ふはははははは!よく来たな、騎士王!ふっ!この我を助けるために馳せ参じるとは愛い奴よ。では良いぞ、許す疾く、我を助けよ―――――!」
「……」
何故か天井で機械に拘束されている英雄王を発見して誰もが唖然としていた。
そんな中で1番に動いたのが無銘だった。
「成程。あれほどの数の複製サーヴァントを作り上げるのにどこから魔力を捻り出しているのかと思えば。魔力精製量が随一の奴を捕えれば事足りる訳か。まったくどう転んでも厄介事を招く。慢心も程々にしてほしいものだ」
「ふん!フェイカーよ、これも全ては俺の
「確かに。敵にこれ以上余力を与える必要は無し。不本意だがさっさと助けてしまおう」
「だね。アストルフォ。悪いんだけどヒポグリフで飛んでギルガメッシュを―――――」
助けてあげて、と言おうとした時、誰かが彼女の肩を掴んだ。
振り返って見てみるとそこには今まで見た事のない。まるで聖母のようなとても慈愛に満ちた微笑みを浮かべたアルトリアがいた。
「マスター。宝具の使用許可を。今ならこの施設ごと英雄王を消し飛ばせます」
風王結界を解き、黄金の聖剣の姿を現すアルトリア。
そんなアルトリアにギルガメッシュが慌てた様子になる。
「待て待て待て!騎士王、貴様!身動きが取れぬ者を討つなどそれが騎士王と呼ばれた者のすることか!?」
「あの男はいずれ、必ず我々の思いつかない馬鹿げた事件を起こします。ならばその前に消すことが最善だと進言します」
「言いたいこと分かるけど……今回はギルガメッシュも被害者だし、助けてあげようよ……」
そう言うと、ものすごく不服そうに舌打ちしたアルトリアの姿が印象的だった。
白野たちがそうして各所を周っている間に月の王とシャルルマーニュたちサーヴァントは大帝を討ち、SE.RA.PHには平穏が訪れる。
僅か7日間の戦争。
大帝の侵略は幕を下ろした。
「んー!ちょっと疲れちゃったね、桃野……」
娘を抱えながら宴会の席を外して白野は今回の件を思い返していた。
突然始まった侵攻。
アストルフォが倒され、奪われ、戦い、どうにか取り戻した。
その過程でアルトリアとも契約した。一応その関係は継続されるが、白野の令呪はもう一画しか残されておらず、強制力など無いも同然だ。しかし契約は続行中で、もし何かあったら遠慮なく頼って欲しいと笑って言ってくれた。
そういうところが素直にかっこいいと思ってしまう。
この戦争で討たれた者。
大帝が居なくなったことで天声同化が解け、野に下った者。
役目を終えたとばかりに消えた者。
サーヴァントたちもそれぞれ結末を迎えた。
「思えば、桃野にも寂しい思いをさせちゃったよね」
頬に触れると娘は嬉しそうに母の指に触れる。
そんな白野に後ろから声がかかった。
「よぉ!」
「シャルルマーニュ……」
隣、いいか?と訊いてくるシャルルマーニュに白野は笑顔で頷いた。
「どうしたの?祝勝会、抜け出して来て」
「あぁ、いや。アストルフォの奴がやらかしちまって。今、アーサー王とジャンヌの2人にお説教中でな。巻き込まれる前に抜け出してきた」
いったい何をやらかしたのだろうか、うちの夫は。と聞きたいような聞きたくないような思いを抱きながらどうせあとで知ることになるんだろうなと思った。
互いに無言でSE.RA.PHの夜空を見上げているとシャルルマーニュの方から口を開いた。
「アンタには、話しておこうと思ってな。大帝が、アンタたちを襲った理由を」
シャルルマーニュの言葉に白野は息を呑む。
何故大帝がサーヴァントを使い、自分たちを襲ったのか。直接対峙することのなかった白野は知ることなかった。
それをシャルルマーニュが教えてくれるという。
「あいつは、アンタやアストルフォじゃなく、その娘を手元に置こうとしたんだ」
白野に抱きかかえられている桃野を指さす。
どうして?と問う前にシャルルマーニュは説明を続けた。
「このSE.RA.PHに置いてその娘は最大の未知だ。NPCのように決められた役割に従う存在じゃなく。
一旦言葉を切り、意を決するように続きを口にする。
「そしてムーンセルすら掌握する魔術師に成長する可能性もあるらしい」
「!?」
知らずと娘を抱える腕に力が入った。
「どういう風に。どこまで成長するか不明。真っ白な未知。だから大帝はその子を傍に置いておきたかったんだ。まぁ、アンタやアストルフォも一緒に連れて行こうとしたみたいだけどな」
この量子虚構世界SE.RA.PHで唯一ムーンセルに役割を与えられずに生を受けた存在。だからこそ、何者にも成れるのだとシャルルマーニュは言う。
それに対する白野の答えは。
「うん。関係ないよ。そんなことは」
ひどくあっさりとした答えだった。
赤子というのは未知の存在だ。親ができることは自分の経験から知識や技術を与え、守り、慈しむ。時に叱り、導く。
我が子がどう育つのか。それは今の白野には想像もつかない。
遊星のこともあり、平穏無事とはいかないかもしれない。
「それでも、桃野と一緒に生きていくだけだよ。アストルフォと一緒に」
娘を産み、抱いた時の感情は今も昨日のことのように思い出せる。
それを忘れない限り、自分は胸を張って母として在れるのだ。
だからもし娘が間違ったなら、何度でも前に立とう。
その時、どんな力を持っていたとしても。
それにシャルルマーニュは嬉しそうに一瞬だけ眼を閉じた。
「そっか。なんか、いらない心配だったみたいだな」
「ううん。教えてくれてありがとう」
「俺のダチも頼むな。中々、手のかかる奴だけど、性根だけは信頼できる奴だからさ」
「うん、知ってる」
「そうだな。じゃ、俺。マスターのところに行くわ!アンタはそろそろ、アストルフォに助け舟でも出してやってくれ」
シャルルマーニュは立ち上がると満足そうに笑う。
「じゃあな」
それが、さよならと言っているように聞こえた。
そして幾許かの時間が流れる。
「ねぇねぇ、ママ~」
大きくなった娘が洗濯物を畳んでいた白野の傍に絵本を抱えて寄ってきた。
「どうしたの、桃野?」
「ママは、どんなふうにパパとはじめてあったの?」
洗濯物を畳んでいた手を止める。
昨日、手にしている娘に読んであげた絵本の影響かもしれない。
流石に事実をそのまま話すとなると難しいので白野は出来る限り分かりやすいように話した。娘に自分と夫との馴れ初めを話すのが少しだけこそばゆく感じながら。
「昔ね、ママが危ない目に遭った時に助けてくれたのがパパだったの」
「パパ、カッコ良かった?」
「うん、とっても」
聖杯戦争で訳も分からず戦うことになった自分の味方になってくれた英霊。
それが今や夫婦という関係になるとはあの時は想像もしていなかった。ましてや子を授かるなど。
少し話が進む度にあれこれ質問するのを答えていくと玄関のドアが開く。
「ただいま~」
「パパだ!」
アストルフォが帰ってきたことで桃野の関心がそっちにむいて、駆け足で向かう。
抱っこをねだる娘のを抱き上げた。
「いい子にしてた、モモノ」
「うん!」
後に続いて白野も出迎える。
それに気づいてアストルフォはいつも通り、満面の笑顔を浮かべた。
「ただいま、ハクノ!」
「はい。おかえりなさい、あなた」
一応完結表記に変更しますが、話を思いついたらまた何か書きます。多分この続きかCCC編とか。下手なエロが書きたくなったときとかに。
今のところその予定はありませんが、以前冗談で書いたプリズマ✩桃野は本気で書く場合は別枠の通常投稿で書くと思います。