After編(1)
それはおめでたい知らせだった。
ある日、月の王に仕えるサーヴァントのひとりである玉藻の前から白野の端末に届いたメッセージ。
内容を確認してみるとそこには短編小説程の長さが有りそうな文が送られており、要訳すると月の王との子を宿したため、それを祝って千年京で祝祭を行うのでぜひ来てくれという知らせだ。
他にはネロより先に子供が出来た事への優越感やら。
主とのラブラブ(おそらくは捏造あり)生活の自慢やら。
色々と書かれていたが内容を大雑把に読み流した。
「へぇー。タマモ、子供できたんだ」
「そうみたい。ケイローンを呼んで調べてもらったって」
「あぁ。ハクノを診断したのも彼だったからね」
そんな話をしていると桃野が白野のスカートをクイクイと引っ張る。
「ねぇ、ママ。しゅくさいってなぁに?」
それに白野は娘との視線を合わせて幼子に分かるように説明する。
「うん。とっても嬉しいことがあったからみんなでお祝いしましょうってこと。玉藻は偉い人だから町全体でお祭りをしてお祝いするんだって」
「そうなんだぁ」
理解したのかは微妙なところだが当日行けばある程度雰囲気くらいは掴めるだろう。
そう思いながらも白野は娘を見る。
僅か2年足らずで既に物心がつき、言葉も話せる。慎重も百を超えており、初めての子育てである白野もそれが異常だということくらいは理解している。
シャルルマーニュが教えてくれた桃野の可能性。
それは今回子供ができた月の王たちにも教えておいた方が良いだろう。
「3日間やるみたいだし、向こうで宿を取ってお祭りを楽しもうか」
ここ最近地上から旅行者として月に来る魔術師も増えたために宿泊施設の数も増えてきている。
白野の提案に桃野が喜びを全身で表す。
「お出かけ!?」
「そう、お出かけ」
「楽しみだねぇ、モモノ」
「うん!」
アストルフォが抱き上げると桃野は嬉しそうに父に抱きついた。
それを微笑まし気に見ながらこう思う。
今はまだ
着いた千年京は思った以上に派手な催しだった。
屋台などの出店が多く、歌や芸などを披露している者もいる。
桃野はそんな大きな人波に圧倒されているようだ。
岸波親子3人はそれぞれ浴衣を着て、髪を首の後ろで結わえている。
白野は水色を基調とした白い花が描かれた浴衣。
アストルフォは紫色を基調に魚や湯飲みなど色々な絵が描かれた浴衣。
桃野は桃色の生地に星柄の絵が描かれた浴衣。
日本のお祭りを基にしている催しのためそれに合わせて用意したのだ。
「こうしてみると前のお祭りを思い出すね」
「あの時はローマの方だったけどね。でも賑やかさは変わらないかな」
「まえにもお祭り、やったことあるの?」
「桃野が小さい時にね」
大帝の乱の後、祝勝会と称してローマで数日間のお祭りが催された。その前には仲間内で宴会とかやったのだが目出度いことは盛大にやるべきだとローマの町が祭り一色に染まった。
さすが散財して国を滅ぼした皇帝だ。その煌びやかさは今回の比ではなかった。
桃野を真ん中にして3人で手を繋いで歩いていると見知った顔が店を出していた。
「クー・フーリン」
「よ!久しぶりだなお前ら!」
「なにやってるのさ、君?」
「あ?見て判んだろ。焼きそば屋だ焼きそば」
クー・フーリンの屋台には作り置きの焼きそばが置かれている。
「意外だね。クー・フーリンは店を周ってると思ってたけど」
「ま、暇潰しだな。3日間この祭りは続くんだし、自分の店出すのも悪くねぇさ。小遣い稼ぎって理由もあるがな。そんなわけで買ってけよお前ら。顔見知り価格でちょいと割引してやる」
「はは。それじゃあ、2つくれる?私と桃野は分けて食べるから」
「あいよ!毎度あり!」
焼きそばを袋に包んで渡されるとこちらもお金を払う。するとアストルフォが質問した。
「他の誰かも店を出してたりするのかい?」
「あ~。確かロビンフッドの奴がどこかで
「そっかありがと」
最後にクー・フーリンが桃野の頭を撫でて別れた。
次に見かけたのは意外な人物だった。
「ネロ?」
「む、そなたらか」
「こんばんは。どうしたのひとりで?」
てっきり月の王の傍に居るのかと思っていたがどうしてひとりで居るのか。
質問されて薔薇の皇帝はあからさまに機嫌を損ねる。
「余とてひとりになりたい時もある。べ、別に不貞腐れて参加を拒否したが寂しくなってお忍びで来たわけではないからな!」
(うん。確かに忍んでない)
だって日本祭りの中であの過激な男装(本人談)服だし。すごく悪立ちしてる。
と、思ったが言葉にせずにいると何かを思い出したのかふつふつと怒りのゲージが上がっていくのが分かる。
「そもそもだ!あのIN―RAN狐め!事あるごとに子を孕んだことを自慢して来よってからに!!」
余程腹に据えかねているのか愚痴が吐き出される。
どうやら王宮内で色々とあるらしい。
もっともSE.RA.PHでは子を孕む可能性はあまり高くないらしいのでどちらかの方が愛されているかというより完全な運なのだろうが。
「見ておれキャス狐よ!余とてすぐに奏者との子を――――」
決意を固めるネロに呆れた声で知った顔が近づいて来た。
「貴女は人通りでなにを叫ぼうとしているのですか」
「おねえちゃん!」
アルトリアがやってくると桃野はとてとてと近づく。
現れたのは白野と一応は主従関係にあるアルトリアだった。
アルトリアとは頻繁に会うし、食事もよく一緒にするので桃野も彼女には懐いていた。こうしてみると年の離れた姉妹に見える。
(私も見た目の年齢差はそうない筈なんだけどなぁ)
何とかなく釈然としないものを感じているとネロがアルトリアに半眼で話しかける。
「騎士王か。しかしお主なんだその両手はいくら何でも買い過ぎではないか?」
「……ほうっておいてください」
アルトリアの片手にはイカ焼きとフランクフルト。リンゴ飴などの棒が指に挟まっており、反対側には食べ物の入った袋が幾つもあった。
彼女は彼女で祭りを楽しんでいるらしい。
「そういえば2人は他の誰かと会ったのかい?」
「えぇ。私はガウェインと。それから向こうの店でロビンフッドに会いました」
「余は無銘に会ったな。どうやら祭りの騒動を治めるために巡回しているようだ。まったく祭りの時でも堅苦しい奴よな」
無銘はどっちかというと店を出してそうだったが。どちらにせよすれ違うことくらいはあるかもしれない。
そこから2・3言葉を交わして別れた。
「ん~」
「眠そうだね」
「まぁ、あれだけハシャげばね。それにいつもならもう寝てる時間だし」
1日目の祭りが終わり、宿に戻ってきて眠そうにしている桃野をアストルフォにもたれかかっている。
布団を敷き娘を寝かせるとすぐに夢の世界に落ちて行った。
その無防備な寝顔に頬が緩む。
窓の外には桜吹雪が舞っていた。
「ずいぶんと綺麗な景色だね」
「うん」
外には満月と桜吹雪の夜景色。
例えそれがそう見せるために作られた景色だとしてもその光景を綺麗だと思う心は本当だ。
「ねぇ……ちょっと2人で外に出ようか」
宿の部屋は聖杯戦争のマイルーム並みのセキュリティを持っているため、部屋に誰かが侵入することはないだろう。
あの様子なら余程のことがない限り起きることもない筈だと2人は夜の散歩に興じていた。
「なんか、こういうの久しぶり」
「そうだね」
アストルフォの腕に絡みながら歩く。既に人だかりは無く、歩いているのは2人だけだった。
落ちてくる桜の花びらは全て幻で身体に落ちても感触はなく、ただ消えて行く。
こうした景色が試験的に作られていてそのうちに雪や雨なども再現されるだろうという話だ。
まぁ、ずっと晴天の空より変わり映えの在る空の方が良いだろう。
歩きながら色々な話をした。
これまでのことやこれからのこと。
そうしているとアストルフォが後ろから抱きしめてきた。
「アストルフォ?」
「ゴメン、ハクノ。我慢しようと思ったけどやっぱりしたい……」
「へ?したいってまさか、本気!?」
「最近ご無沙汰だったからさ。さすがにモモノと同じ部屋でするわけにもいかないし」
「それは、分かるけど……場所考えなさい!こら!浴衣に手入れない!」
いくら人気がないとはいえ外である。さすがにここでするのは憚れた。
帯を緩めて緩くなった浴衣の中にある乳房を揉み始める。
「こんなところ、誰かに見られたら……!」
「だいじょうぶ。周りに人の気配ないから」
「そういう問題じゃ、ない!?」
抵抗するが慣れた手つきでこちらの性感帯を刺激する中で少しずつ抵抗する力が削がれていく。
身体を支えるために近くの木に片手を付きながらもう片方の手で声が出ないように口を押える。
「その格好……すごく興奮する!」
はだけた浴衣から片方の乳房を露出させてところどころ見える肌色がとても性的興奮を促していた。
子を産んでからは以前にはなかった艶を見せるようになっている。
それに外という状況に緊張感と確かな羞恥心と興奮があった。
「すぐ、終わらせるから」
浴衣を捲って尻の部分まで上げると自分の肉棒を秘部へと押し当てる。
後ろから白野を一気に貫くと一瞬声を上げそうになったがどうにか抑える。
涙目になって必死に声を我慢するが腰を押さえていた手を覆い被さるような体勢になって胸を後ろから鷲掴みにし、指で乳首を転がす。
「ハクノ、締め付け、スゴッ!」
早く終わって欲しいからなのか、それともこの状況に酔っているからなのか、いつもより肉棒を膣内が締め付けてくるように感じた。
宣言通り絶頂はすぐに訪れた。
「んっ!」
白野の膣内に精液を注ぎ込むとアストルフォは体を離した。
意地でも最後まで声を上げなかった白野は体が離れると息を荒くして恨めしそうにアストルフォを見ている。
「いや、えっと……ゴメンナサイ」
とりあえず顎に一発拳を入れてやった。
「ねぇママ~。なんでパパずっと正座してるの?」
「昨日ちょっと悪さした罰なのよ」
「?」
アストルフォはあの後宿に戻ってから一晩中正座をさせられており、首に提げられたプラカードには『私は発情した駄犬です』などと書かれている。
とりあえず昼くらいまでは放置しておこうと決めている。
「桃野。ママとお風呂に入って来ようか」
「朝から?いいよー」
「え、と……ボクは?」
「もし戻って来た時にその正座を崩してたら帰ってもしばらくご飯抜きだから」
「……はい」
涙目になって落ち込む夫を余所に白野は部屋の扉を強く締めた。
After編はこんな感じで日常編みたいな感じで書きます。たまにエロ無しとかもあると思います。