CCCの宝具解禁イベントのアストルフォVerです。かなり大雑把に仕上げました。
CCCのアストルフォの衣装はアポクリファのジーク君の服だと思って頂ければ。
本作品の白野は原作よりメンタル弱めで書いてます。
EXTRA CCC編(1) 前編
白野をBBが監禁していた空間を抜けるとそこには一面の青が広がっていた。
「ユリウス……」
あの永遠に続くと思われた監禁から救い出してくれた仲間
自分のことを友だと言ってくれた人。
なぜ彼が白野をそう称したのかはわからない。
ただ、ユリウスは自分に全てを託して逝ったのだ。
泣きそうになる。
ユリウスだけではない。臥籐もガウェインもレオも。短い時間に多くの仲間を失ってしまった。
そして何より―――――。
「ライダーは、無事なの……?」
岸波白野のサーヴァント。純真無垢で常に明るく前向きな騎兵。
記憶もなく、何もかもが足りていない自分を信じて剣となってくれた優しい少年。
「まずは、ライダーを捜さないと……」
幸いにして先ほどと違って道は見えている。後はともかく進むだけだろう。
それだけが、岸波白野に出来ることなのだとBBに監禁されたあの黒い空間で再確認したばかりなのだから。
橋に似た一本道の通路を警戒しながらも白野は進んで行く。近くに自身のサーヴァントたるライダーがいないことに不安を覚えるが、それは仕方ない。
どれくらい足を進めたのか。長い通路から遠くを見るとそこにはこの場には少し不釣り合いな、見覚えのある色が目に留まる。
「うそ……あれはっ!?」
その色は自分の知る色だと早く確認したくて白野は疲れを無視して走る。
だってあれは――――――。
「ライダーッ!?」
自分のサーヴァントたるライダーの存在を確認すると声を上げて彼を呼んだ。
するとライダーはキョロキョロと左右を見渡した後に白野の存在を捉えた。
「ライダー!無事だったのね!良かった……!!」
息切れして胸を押える白野。しかしすぐに違和感を覚えた。
彼ならばもし自分の姿を確認すれば自分の方から駆け寄っては来ないだろうか?
自惚れではなく、今までの行動パターンからの確信。
それに着ている衣装も気になる。
いま彼が着ているのは表の聖杯戦争で着ていた彼の騎士服だ。しかし、バラバラになった時は別の衣装を着ていた筈。
なにより、どうして彼は不思議そうな瞳で自分を見ているのか。
次にライダーの口から発せられた言葉は、岸波白野の頭を停止させるに足る言葉だった。
「キミは、誰だい?」
「え……?」
その言葉を頭が理解したとき、白野は自身の視界がぐにゃりと歪んだ気がした。そんな筈はないという焦燥から白野はライダーの腕を掴む。
「何を言ってるの!?ねぇ、こんな時にそんな冗談やめて!」
「つっ!?ちょっと!痛いってば!?」
力づくで手を振り払われてしまった。
「もう!いきなりなんなのさ!乱暴だなぁ!」
腰に手を当てて怒ってますと言った感じで抗議するライダー。
その姿が白野が契約を交わし、これまで心を通わせてきたサーヴァント・ライダーとあまりにも違くて。
一度落ち着けて白野は自身について説明に入る。
「私は、岸波白野……あなたと契約して聖杯戦争に参加しているマスターだよ」
「へ?マスター?ボクの?」
呆けた表情をするライダーに白野はこれまでのことを説明する。
表の聖杯戦争で異常事態が起き、月の裏側に落とされてしまったこと。
そして月の裏から脱出するためにライダーと共に迷宮を駆けてきたこと。
しかし月の裏側から脱出することを妨げる存在にライダーとバラバラにされてしまったこと。
白野が説明できる範囲で説明するがライダーはう~ん、と腕を組んで唸っている。
「確かにボクはサーヴァントだし、今まで何度か聖杯戦争に参加したこともあるけどキミと契約したことはないと思うなぁ」
困ったように言い切るライダーの言葉が白野の心に幾多の傷を付けていく。
その痛みはついさっきまでBBに監禁されていたあの空間ですら生温いと思えるほどに。
だが、それはかつて白野がライダーに与えていた痛みだった。
白野が表の聖杯戦争の記憶を有していないと知った時、ライダーが一瞬見せた落ち込んだ表情を思い返す。
それでも彼は決して自分を責めなかった。
『大丈夫!マスターならすぐに思い出すさ!』
そんな、純粋に信頼を寄せてくれたサーヴァント。だから、岸波白野はライダーを責めることは出来ない。
今ならわかる。記憶というのは失った者より、自身との記憶を共有出来なくなった者の方が辛いのだと。
だけど、だからこそ、白野はここでライダーを責められない。
「ちょっ!止めてよそんな顔するの!ボクそういうの弱いんだからさぁ……」
渋面な表情で握り拳を作って今にも泣きそうなのを堪える白野にライダーは慌てた様子で抗議する。
そしてガシガシと自分の頭を掻く。
「あぁ!もう!だったらちょっと付き合ってよ!」
ライダーは自分の後ろにを指差した。
そこには巨大な壁が存在し、そこに見知った人物が埋められている。
「あれは、ライダー!」
それは、目の前にいる筈のライダーだった。それも白野と共に行動していた時に着ていた執事服姿。
「な~んかここに来たときからアレが在ってさ。近づいてみようとしたんだけど、ボクひとりじゃ近づけないみたいなんだよね。でもキミと一緒なら行ける気がするんだ」
だから一緒に来てほしいというライダー。
その申し出は白野にとってありがたかった。
何故ライダーが迷宮の核となっているのかは不明だが、あそこに辿り着けばライダーの記憶が戻るかも知れない。
差し出されたその手を取るのに、躊躇いはなかった。
「それじゃ、ヨロシクね」
そうウインクするライダー。それが、今まで当たり前のように受けていた特別な好意ではなく、彼が周りに当たり前のように与える平等な好意だとわかると胸にトゲが刺さったかのような痛みを覚える。
それでも、彼の好意は嬉しくて。
「うん。よろしくね、ライダー」
その時の自分は、ちゃんと笑えていただろうか?
一本道しかない通路の進みは白野が想定していたよりずっと楽だった。
そうして僅かに気が緩んでいた瞬間に。
「っ!?」
「ハクノッ!?どうしたの!?」
大丈夫と答えながら白野は今しがたの現象について考えた。突然強力な静電気に触れた感覚。しかし罠が設置されている気配はない。
どういうことだろう?と疑問に思っていると、それを説明できるものが現れた。
「今のは波長の違う霊子に対する防衛機能。この先はいくらセンパイでも進めません」
そこには空中に立っているBBの姿があった。
白野がその姿に驚いているとBBは呆れたように溜息を吐いた。
「いくら拡張規模した私でもサーヴァントのフォーマットは読み込めない。ここにいる私は実体のない虚像です。ライダーさんの心の中であるここでは私の姿と声を認識させるので精一杯です」
「ライダーの心の、中……?」
「そうです。ライダーさんは虚数空間に落ちた際に防衛機能により、冬眠休息に入りました。一分後の消滅を防ぐために自らの時間を止めたのです。あの壁は凍結されたサーヴァント自身。そしてここにいるライダーさんは本体を守るために用意された本能。初期状態のサーヴァントです」
「つまり、ボクはハクノと契約する前の状態ってことかな?そしてアレを開放すればボクとハクノの関係が元に戻る?」
推論を述べるライダーにBBは頷いた。
「えぇそうです。しかし、アナタはあの核に近づきたいと思いますか?」
BBの問いかけにライダーは首を横に振った。
「ボクは別にアレが何なのか知りたかっただけだしなぁ。別にこのままでも構わないし」
「そうでしょうとも。アレは理性。アナタは本能。理性を開放すれば必然的に本能であるアナタは消えてしまう。いくら理性が蒸発していると揶揄されるライダーさんでもそれは変わらない。アナタだって消えたくはないでしょう?大人しく次の召喚者を待ちなさい」
BBの説明を聞きながら白野は自分が何をすべきか悟った。
足を進めようとするとそこには先程よりも強い電圧が白野を襲う。
「飲み込みの悪い人ですね。ここから先は部外者以外は立ち入れない領域。それも生徒会のバックアップのない貴女では速やかに異分子として解体されます。生徒会の方々が生存しているとわかった以上、貴女の生命は効果的に使うべきだと判断しました。戻った道に旧校舎へ続くゲートを作っておきます。いいですか?こんなところでつまらなく犬死になんてしないでくださいね、センパイ」
それだけ言い残すと、BBはこの場から消えてしまった。サーヴァントの内部であるここでは今までのように干渉できないのかもしれない。
「探査はここまでだね。あそこは誰も近付けない場所みたいだし。僕もこれ以上は近づきたくないなぁ。キミはどうする?戻るって言うならそこまで送るけど?」
ライダーの問いに白野は言葉ではなく行動で答える。
足を前へと動かし、先に進むとさっきとは比べ物にならない電流が白野を襲う。
それはもはや警告ではなく攻撃だった。
「――――っ!?」
その電流により、自分の体の一部が内部崩壊したことが読み取れる。
「な、なにやってるのさ!?さっきの娘の話を聞いてたでしょ!?そこは本人以外は立ち入れない領域なんだよ!?死ぬ気っ!?」
大声で警告するライダー。
白野とて状況はわかっている。
でもこれは理屈じゃなかったし、休んでいる暇もなかった。
ライダーが眠る核まで自分の心が痛みで萎えてしまう前になんとしてもあそこまで辿り着かなければならない。
先程よりも若干落ちた速度だが白野は気にせずに前へと進んだ。
次の痛みがすぐに白野へと襲い掛かる。
足と体の幾つかに小さな黒い泥のようなモノが付いており、その部分が完璧に破壊された個所だと理解する。
既に走ることが不可能になった足で歩きながら自身のサーヴァントの下へ赴く。
後ろではずっとライダーが戻ってくるように叫んでいるが、今は後ろを振り向く時間さえ惜しい。
次の痛みが襲い掛かる。今度は足元の先の感覚がなくなった。だが幸いにも歩く機能は残っている。なら、進むことに支障はないだろう。
「だからヤメテってば!
今更ながらその考えには至らなかったな、と白野は自嘲する。つまり、この行為は本能であるライダーにとってお節介どころか迷惑行為なのだ。後ろから斬りつけられないだけマシというものだろう。
それでも、白野は自分勝手なエゴだと分かっていても、足を止めることだけはしたくなかった。
そして焦ったライダーの声が無茶をしたときに自分を心配してくれるあの声に似ていて少しだけ嬉しさを覚えた。
最早棒になった足を無理矢理動かして前へと進む。最初の頃より大分遅くなった歩みだが進んでいることには変わりない。
一歩一歩ふらつきながらも白野は足を進めていった。
次の痛みが襲い掛かる。今度は視界を半分奪われた。そして足はその機能の大半を停止し、バランスを崩して地面に倒れる。
だから足の代わりに手に力を込めて四つん這いになって前へと進む。
BBに監禁されたあの空間で散々これで前へと進んだのだ。同じことを今もすればいい。
でも視界が封じられるのは困る。だって
「ううっ!そんなにボクを消したいの!でもそのままじゃキミが先に消えちゃうじゃないか!?いい加減、戻ってきなよ!?お願いだから!?」
膝と手を動かして直も前に進む。残りはあと三割程度。このまま進めば頭が残るくらいに辿り着けるだろう。
次の痛みはすぐに襲い掛かって来た。だが幸いというか、痛覚はほとんど機能していないのか、先程までより苦痛は感じない。
ただ、腹の中がごっそり持っていかれた感覚や、下半身が完璧に機能を失ったことでさらに進むのが遅くなってしまったのには困った。
だけどあの監禁空間で再認識したのだ。自分に戦う力はなく、出来るのは前に進むだけだと。だからこの程度で歩みを止めてなんていられない。
匍匐前進で進む。あまりの不格好さだが、今はそんなことを気にしていられる場合じゃない。
「ホントにヤメテったら!?キミがそんな風にボロボロになっていくとボクの胸が痛くなるんだよ!!」
泣きそうなライダーの声が耳に届く。その声を聞くと申し訳なくなるが、それ以上に記憶のないライダーが自分を心配してくれるのが嬉しかった。
端から見れば無様な匍匐前進で白野は前へと進んだ。
その間も少しずつ体が崩壊していくのが解ったが、気にせずに前身を続ける。
そしてようやく、ライダーの本体が目と鼻の先になった。
アレさえ、解放できれば――――――。
「どうして―――――。どうしてそこまでするのさ。ボクの記憶なんて、キミにはどうでも良いことでしょう!?」
ライダーの声が胸に響く。
だけどそれを口にするわけにはいかなかった。
ライダーとの記憶を失った岸波白野。
それを惜しんだライダーの姿を覚えている。
『ほらマスター!行こう!』
『記憶が有ろうと無かろうと、キミはボクのマスターだ!それだけは変わらないよ』
『ボクはこう見えても騎士だからね。どんなことがあってもマスターを守るよ!』
「大丈夫。ハクノなら、どんな困難だって乗り越えられるさ」
月の裏側に落ちてからのライダーとの思い出を覚えている。
向けられた信頼を覚えている。
それで十分だった。全身全霊を懸けることに後悔も迷いもない。
ようやく、もうすぐ手の届く位置まで進んだ。
しかしそこで白野を妨害しようとする存在が現れる。
「そこまでです」
「びー……びー……」
既に口もやられていたのか呂律が上手く回らない。それでも白野は目の前の敵の名を呟いた。
「せっかく封印したサーヴァントを開放されては堪りません。貴女はここで排除します」
そして召喚した敵性プログラムが白野に襲い掛かる。
足が動かなくなった白野にその攻撃を躱す術はなく―――――。
その瞬間、敵性プログラムと白野との間になにかが割って入った。
金属のぶつかる音。白野を背にして立ったのは本能のライダーだった。
「らい、だー……?」
「っ!?なぜアナタが邪魔を!その人を野放しにすることは、アナタにとっても自殺行為の筈でしょう!?」
「仕方ないじゃないか!?あんな姿を魅せられて黙っていられるほどボクは落魄れてないんだよ!」
突撃槍を構えるライダー。
「まったく。本当に無茶するよキミは。うん。でも嬉しかった。あの頑張りに報いられるのがボクしかいないんなら、ボクがキミを助けるしかないよね!ううん、違うかな。ボクはボクの意志でキミを助けたいんだ、マスター!」
ライダーが助けてくれた。まだ契約する前の無関係な筈である彼が。
「ほら!後ろにいる
そう言われて白野は振り返ることなく
「自分のことの筈なのに、あの子のサーヴァントになったボクがちょっと羨ましいかな」
別れの際に、
ようやく、辿り着く。ここまで来てどうやってライダーを開放するか考えたが、すぐに苦笑した。
自分が何をすべきか。そんなことは考えるまでもない。
岸波白野が出来ることはいつだってたったひとつだけなんだから!
「来て!ライダー!」
ライダーを呼ぶと、彼が囚われていた壁は破壊されて、白野の傍へと着地する。
「マスターの声、確かに届いたよ。よく頑張ったね。だから今度はボクの番だ!マスターが受けた屈辱は何倍にもアイツを返してやる!今のキミなら、アイツを呼び寄せることも可能な筈さ!!」
ライダーを開放したおかげか、白野の欠損はすぐに修復される。この瞬間から白野はライダーにとっての異物ではなくなったのだ。
「そんな!宝具の解禁なんて!そこまでの成長を、このセンパイは出来ないはずなのに……!」
「ボクのマスターの成長速度を甘く見るな!マスターなら、それくらいのことは楽勝だよ!」
苦い表情をするBBにライダーは自分の突撃槍を向けた。
「さぁ覚悟は良いよね!今のボクは本っ気で怒ってるんだからな!そんなチャチな敵なんて一撃で消し飛ばしてやる!さぁおいで、
何もない空間から現れたのは上半身が鷲で下半身が馬というあり得ない存在。
その背にライダーと白野が跨っており、空中からBBと敵性プログラムを見下ろす。
「マスター、しっかり捕まっててよ!いっけぇっ!!」
ライダーはヒポグリフを全力で突撃させ、敵性プログラムを宣言通り一撃で消し飛ばした。相手に抵抗する暇すら与えない。
ライダーがBBに突撃槍を突き付けて宣言する。
「キミのところへはマスターが直々に赴く。それまで首を洗って待ってなよ!」
「調子に乗って……!―――――っ!?投影が維持できない!覚えてなさい、ライダー!」
そのままBBは文字通り幻のように消え去る。既に本能のライダーもいない。
「マスター。心配かけてごめ―――――っ!」
白野がライダーの胸に飛び込んだことで中断される。
「ライダー……!ライダー……!ライ、ダー……っ!」
白野は涙を流しながらひたすらにライダーのことをひたすらに呼び続けた。
そんなマスターの頭をライダーは何度も撫でる。
「大丈夫。もう大丈夫だよ、ハクノ……」
白野が泣き止むまで、そのまま慰め続けた。
エロは後半から。
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