◇シャーリーside◇
私が朝出勤すると、はやてさんが前からひょこひょこと歩き辛そうにしながら歩いてきた。だが、その顔は幸せに満ちていた。
その顔を見て、私は全てを悟った。すると、胸がチクリと痛む。
「はやてさん、おはようございます」
「ああ、シャーリーおはようさん」
「その様子だとうまくいったようですね」
「ああ‥うん。一応‥な」
何処か歯切れ悪く返事を返すはやてさん。
「あはっ。おめでとうございます」
「後で詳しく聞かせて下さいねー」
彼女は私に同情しているのだろう‥そんな必要‥無いのに!うふふ。今はとりあえず、祝福してあげますよ。おめでとうございます。精々今のうちに、幸せを噛み締めておいてくださいな。
その後私はデバイスルームではやてさんからの報告を聞いていた。食事に関する。彼のリアクションや彼がどういう行為に性的興奮を感じていたか。処女だけあって、その部分に関しては満足いく情報量は得られなかったが。
だが、聞き捨てならない事をはやてさんは話始めた。
「そんでな?彼がエロ本持っててな?その内二冊がフェイトちゃんとなのはちゃんそっくりのモデルやねんどう思う?」はやてさんはプリプリと怒っている。
「まぁウチ似の本もあったから許したったんやけどな?」
なんだ、結局ノロケか。私は興味を無くし、適当に返事を返す。だが次の瞬間、私は心臓が止まるかと思った。
「まぁ彼も若い、健全な男子ですから、仕方ないんじゃないですか」
「でもシャーリー似のエロ本もあったで」
「ぇ‥」
思いがけない情報に私の動きが止まる。
弘義が私似のエロ本を持っていた?
嬉しい‥!嬉しい‥!
別に本なんかに頼らなくても、弘義が望むなら何時だって、私はOKなのに。
「‥リー?シャーリー!どうしたん?」
はやてさんに肩を揺すられ、私は正気に戻る。
「顔真赤やで?熱でもあるんちゃうか?」
言われ、私は頬に手を当てる。
熱い‥顔の熱が引かない。たまらず私はウソをつく。
「すみません。少し具合い悪いみたいなんで‥話はまた、今度で‥」
「うん、お大事になー」
はやてさんは私の言葉をあっさり信じて、部屋を出ていく。
さて、弘義にちょっかいかけに行こうかな♪
プラプラと局内を歩いていると、前方に弘義を見つけた。
弘義を見つけた瞬間、私の顔が瞬間的に熱くなる。
「やっ昨日はお楽しみでしたね?」
「やかましいわ」
「顔真赤にするくらいなら、下世話な絡み方するんじゃありません」
「べ、別に、それで赤くなってるわけじゃないもん」
「えーと‥」
彼は何か言いづらそうにしながら、
「コンドームありがとな‥助かったわ‥」
「ああ、どうせ用意してないだろうなって思ったからさ」
「気が利く幼馴染がいて良かったね?」
「ああ。お前がいてくれてホント助かった‥」
「ありがとうな」
「それならお礼に今度どこか遊びに連れてってよ?」
「へ?いやそれは‥
「はやてさんの許可ならとってあるよ?」
「え?そうなの?それならまぁ‥いいか」
「ふふ。楽しみにしてるからね?そのデートでシャーリーちゃんにメロメロに落としちゃうから」
「これ以上落ちねえよ」
「ぇ‥」
すると、彼はしまったという顔をする。
「じゃあ、楽しみにしてるからねー」
◇弘義side◇
うかつだった。つい売り言葉に買い言葉で返してしまった。
頭のいいあいつの事だ。気づかれてしまったかもしれない。
これ以上落ちない。つまり‥‥‥‥
しまったなあ‥ずっと秘めてきた想いだったのに。高校の頃にはやて達に恋をした。それを話した時、あいつは真剣に応援してくれた。つまりそれは、自分には全く脈がないということで‥そう、俺は初恋と失恋を同時にするという、ずいぶんと器用な真似をしていたものだ。それでもあいつにマギテクを教えてもらいながら一緒に過ごせる事に幸せを感じていた。真剣に初恋を応援してくれた彼女へ、初恋を実らせることが、報いる事になると信じて、全力で駆け抜けてきた。はやてと結ばれ、気が緩んでしまったのだろうか、あいつへの想いは墓場迄持っていくと決めていたのに。そうだ。今の俺には、はやてがいる。俺には勿体無い位の可愛い彼女。彼女を裏切るわけにはいかない。
でもはやては何故、俺とシャーリーがデートするのを許可したんだろう?腑に落ちない感情を心の奥に押し込み、俺は考える事を放棄した。
はやてにとって俺はどうでもいいのだろうか?そんなわけないとかぶりを振りつつ、思いが晴れる事はなかった、。
シャーリーside◇
私は弘義と別れた後、弘義から見えないように廊下の角を曲がった所で立ち尽くしていた。
はあ‥はあ‥動悸が治まらない。先ほどの彼の言葉に揺らされた。
これ以上落ちない‥つまり‥‥
ずっと昔に心のタンスの奥にしまいこんだ筈の気持ち。完全な不意打ちで掘り起こされてしまった。なんで。今更‥彼はもう既にはやてと‥
シクシクと絶える事なく、痛み続ける胸を抑え、シャーリーはうずくまる。ヤッパリやだなあ‥この感覚。久しぶりに甦った自分の感情に苦笑いをしながらシャーリーは苦しそうに呟いた。
「弘義の‥クセに‥」
「デート‥楽しみだな‥」
デートに想いを馳せ、わくわくする心地よさに身を任せつつ、シャーリーはすっくと立ち上る。
さて。はやてさん。あなたの時間は終わりですよ。ここからはずっと私のターンです!
そんなシャーリーの顔はゲマへと戻っていた。