◇弘義side◇
昼。駅前の喫茶店で、俺ははやてを待っていた。
今日はクリスマスイヴ。勿論デートの待ち合わせだ。
クーリスーマースーがー今年もやーってーくーるー。♪
毎年この時期は呪詛を吐いていた俺だが、今年は違う。はやてがいるからね。何だろう。彼女がいる。それだけで世界に対して優しくなれる気がする。はやてが一杯いれば、世界から戦争が無くなるんじゃないかな。いや、例え別のはやてだとしても、他の奴にはやてが抱かれるなんて俺は許せそうにない。きっと皆が皆、はやてを奪い合う。より混沌とした世界になるだろう。
結論、
はやてのお陰で世界の秩序は保たれているのだ。
あ、異論反論抗議、口答え等は一切認めない。
つまり同意意外は認めない。いいね?
ありがとう。はやて。産まれてきてくれてありがとう。
もうクリスマスはどっかのじっさんの生誕祭じゃなくはやての生誕祭にしたらいいんじゃないかな。そしたらクリスマスは夏場になっちゃうか。でもホワイトクリスマスがより奇跡っぽくなって良いんじゃないかな。
それにほら、年末はなにかとお金も入り用だしね。
庶民の財布にも優しいはやてマジぱねえ。っべーわ。最高かよ。
ブレンドのコーヒーをスプーンでかき混ぜながらとりとめのない事を考えていると、
横に人の気配を感じた。
はやてだ。
走ってきたのか息を切らしながら、こちらを見つめる彼女を身体を横にずらして迎えいれる。今日も今日とて、
俺達は四人用のテーブルに隣り合って座る。
最早いつもの事なので、店員も生暖かい目をするだけで特に何も言わない。
隣に座った彼女の手を握り、冷えきった手を温める。
「外結構冷えてるみたいだね」
「大丈夫?」
「うん。これがあったかいから」
そういって彼女は羽織っている水色のストールをこちらに見せる。
「それは何より」
自分がプレゼントしたものが
気に入ってもらえてるようで嬉しくなる。
お互い一瞬だけみつめあうと、クスリと、どちらからともなく笑みをこぼす。
「それで今日の予定は?お姫さま」
「なんも決めてないで」
わーお。まさかのノープラン。
俺がぽかんと口を開けていると、はやては困ったように笑い、
「とりあえず、一緒にいたかったんやもん‥」
チラチラとこちらを見ながら、頬を染めつつ、そんな事をおっしゃる。
なんだこの生き物。可愛すぎかよ。
「ごめんな‥あきれてしもた?」
的外れな心配をする彼女に仕方ないなと苦笑をこぼし、やや乱暴に彼女の頭を撫でる。
きゃーと彼女が小さく悲鳴をあげる。だがその顔は心地よさげで俺の腕を止める事はせずにされるがままになっていた。
「セットが乱れるやろー!」
やや赤くなった頬を脹らませながら抗議をしてくる彼女に頬を差し出す。
待ってましたとばかりにつねってくる彼女。
「いひゃひゃひゃ」
最後に強めにねじられ、解放された頬を抑えながら、
「いってー‥」
彼女を見ると、ムフー。と鼻を脹らませて、ご満悦そうだった。そんな彼女と目が合う。どちらからともなく笑いがこぼれ、しばし二人で笑っていた。
なんて幸せなんだろう。
ずっとこんな時がつづけばいいなと俺は心からそう思うのだった。
ひとしきり笑った後、彼女はこちらに身体を預けてきて、尋ねた。
「それで、この後どうするん?」
「広場でツリーのイルミネーションが点灯するらしいよ?見に行かない?」
ええなぁ。行こ行こ♪」
「あの‥?」
不意に掛けられた声にビックリしながらそちらを見ると、店員さんがジト目でこちらを見ていた。
「ご注文‥良いですかね?」
そういえばはやての注文してなかった。
ワタワタと俺達は謝りながら注文する。
「悪い事‥してしもたな‥」
シュンとした面持ちではやてがこぼす。
「いつ頃からいたんだろうな‥最初からだったりして‥」
「ブッ」
はやてが堪えきれないように吹き出した。
「ちょっ‥やめえや‥想像したらわらてまうわ」
良かった。笑ってくれた。
店員さんには悪いが、俺の最優先はいつだってはやてなのだ。
バカップルと嗤ってくれて構わない‥
リア充爆発しろ!と、呪ってくれても構わない。気持ちはわかるから。
「よし。行こうか」
「ん。了解や。」
いそいそと出発の準備を整え、はやてへと手を差しのべる。俺の手をソッと握り、はやても立つと、俺に身体を預け、
「ちょっとお花摘み行ってくるわ」
「ん。了解」
手早く会計を済ませ。スマホで情報を確認する。
良かった。時間は間に合いそうだ。俺はポケットにいれてある小箱を握り締め、ひとつ深呼吸をするのだった。
俺が脳内でシミュレートしていると、はやてがいつの間にか戻ってきていた。
「お待たせ。どうしたん?難しい顔して」
「何でもないよ」
無理やり笑顔を作って答えると
「そか‥行こ♪」
彼女はいまいち釈然としないといった面持ちで、俺の腕を組んで、引っ張る。
「ごちそうさまでしたー」
「でしたー」
俺達は店員さんに挨拶をして店を出る。
「あじゅじゅしたー」
チラッと見えた店員さんが3D化してるように見えたのは気のせいだと思いたい。
「おー寒いねー」
「雪でも降りそうやなー」
冷えた冷気が身体に刺さり、俺達は身を寄せ合いながら広場へと歩くのだった。
割と厚着越しでも伝わる二つの膨らみの感触に、俺は不思議に思った事を聞いてみた。
「はやてー?」
「んー?」
「おっぱいおっきくなったー?」
「ブッ」
突然はやてが吹き出し、ワタワタとし出す。だがどこか嬉しそうだ。
「こないなところでそんな事聞くんやない!」
「えー?だって気になったから‥」
「後でな‥」
俺の耳に口を寄せ、ぽしょりと囁く彼女は今日も可愛い。
そう言われてしまっては今は我慢するしかない。
そうこうしているうちに広場へと到着する。
まだツリーは点灯していない。
「良かった。間に合った」
広場には結構な人が集まっていて、その熱気で、少し寒さも和らいでいた。
俺ははやての手を引いて、ツリーの前迄歩くと、はやてに向き直る。
「雪や‥」
はやての呟きに合わせるように雪がちらつきだした。
「ホワイトクリスマスだね‥」
俺がそう返すとはやてが頭を預けてきた。
「はやてさん」
「はいっ!?」
どこか緊張した面持ちで俺を見上げるはやて。
「俺は、魔力も無いし、はやてに見合う男でいられてるかわからないけど、はやてと一緒にいるときが1番幸せなんだ。ずっとこのままこうして手を繋いでいられたらいいなと思った。」
そして彼女の手を離さないとばかりに握り締める。
そしてポケットから小箱を取り出し、蓋を開けてはやてへと差し出す。中身は勿論指輪だ。コツコツ三ヶ月分貯めた。
「だから、俺と、結婚してください!」その瞬間、ツリーが点灯した。狙ったわけではないのだが有り難い。日頃の行いが良いからな。
一向にはやてから返事がないし箱も受け取ってもらえない。ああダメだったかと、絶望の心持ちで、俺は目を開ける。すると、はやてはボロボロと涙を流していた。
「えっと‥?泣くほど嫌だった?」
俺も泣きそうになりながら声を絞り出す。
「そんなわけないやろ!えぐっえぐっ‥」
「これは嬉し涙や!えぐっえぐっ‥」
「そ、そうなの?んじゃ指輪受け取って貰えないかな‥?」
するとはやては困ったような顔で指輪と俺を交互に見る。彼女の
「受けとりたくても、手握られてるから受け取れないやろー!」
oh‥やらかした‥彼女の右手は俺が離さないとばかりに握り締め、彼女の左手には彼女がよく愛用している手提げカバンが握られていた。俺は慌てて、彼女の右手を解放する。
スンスンと鼻をならしながら、彼女は更に言葉を紡ぐ。
「プロポーズの言葉やし‥手振り払う事も出来へんし‥涙は止まらんし‥」
「ごめん‥締まらないプロポーズで、ごめんなさい!」
「ほな改めて、‥」
いつの間にか彼女は左手の薬指に指輪を嵌めていた。それを見ながら、俺を見つめる。
コホンと咳払いをひとつしてから、口を開いた。
「約束やで。ずっとこの手をはなさんといてな‥」そして彼女がふたたび右手をこちらに差し出す。
「ああ。約束する!」
そしてふたたび彼女の手をにぎる。
「」ウチな、別れてくれいわれるのかと思ってたわ‥少しシュンとした表情でそんな事を言い出す彼女。
俺が驚いていると、彼女は言葉を続ける。
「なのはちゃんやフェイトちゃんとデートしたやろ?それが上手くいって、ウチ邪魔になったんじゃないかって‥今日も来てくれるかずっと不安だったんや‥」
「バカだなぁ‥」
そんな彼女を俺は抱き締める。
と、そこで周りのギャラリーから拍手が巻き起こった。
「「おめでとー」」
「「お幸せにー」」
「彼女と別れたら俺のとここいよー」
降り注ぐ祝福?の言葉にペコペコと礼を返し。
俺は更に強くはやてを抱き締めた。
「ヒュー!」
「俺も抱いてー!」
なんかさっきから変なの混じってる‥
お尻に刺すような視線感じるし、早く帰ろう。
「はやて。早く帰ろう。」
「俺の家でいいよね?」
するとはやては赤面して
「‥スケベ」
と、囁いてきた。
どう考えてもご褒美です。ありがとうございました。
やはりはやての膨らみは大きくなっていましたまる