◇弘義side◇
病院から帰ってきた。夜。はやてを早目に寝かせ、俺と騎士達は集まっていた。
「チキチキ、第1回、八神家、緊急家族会議~!」
「「(わ~!)」」はやてがもう寝てるので、声のトーンをおとしつつ、家族会議を始める。
「さて。集まってもらってすまない。」
ふむ。まずは意思統一をしておくか。
「この中で何で今日集まったかわからない人~?」
手は挙がらない。みんな一応事情はわかってくれているのだろう。
「安心した。じゃあ会議を進めるな」
「まずは、はやてはこれから産休に入る。仕事は勿論、家事も休ませるつもりだ」
「え‥?」
と、ヴィータが青い顔でシャマルを見る。
わかってる。俺はヴィータを手で制す。みなまでいうな。ややこしくなるから。
ヴィータはひとまず、黙ってくれる。
「飯の支度は俺がする。」
それを聞いた瞬間ヴィータの顔が耀く。
「ただし‥」
続いた俺の言葉にまた不安そうな顔を見せるヴィータ。
「俺ははやての仕事の代行をするつもりだリィン、手伝ってくれな」
「はい。お任せですよ~」
「はやての仕事といっても、管理局の仕事だけじゃない。もうすぐ年末だからな年賀状や、年越しの準備等やることは多岐に渡る」
俺の言葉にゴクリと息を飲む一同。
「はやて‥いつもそんなに大変な事してたんだな‥」
「ああ。あの若さで二等陸佐で部隊司令というのは異常だからな。はやての優秀さも勿論あるが、並大抵の努力じゃないと思う」
俺の言葉に騎士達は黙り込む。
「それでな、俺が全部こなせればかっこいいんだけどな、正直家の家事迄は手が回りそうにない。すまないが皆に協力してほしい」
そこで言葉を切って俺は皆に頭を下げる。
シグナム「当たり前だ。それで、何をすればいい?」ヴィータ「ああ。何でも言ってくれ」
ん?何でも?
今何でもって言いましたね?
やめとこう。今は真面目な場面だ。
シャマルとザフィーラは洗濯。シグナムとヴィータで家の掃除を頼むリィンは各ポジションのフォローだ」
「「了解(ですぅ)」」
「後、シャマル先生は、はやての体調も気にしておいてくれすぐに連絡とれる状態のキープを頼む」
「任せてっ♪」
「しばらくは大変だろうけど、永遠に続く訳じゃない。すまないが協力を頼む」
そこで再び、俺は頭を下げる。
そんな俺をシグナムが制止する。
「お前はもう家族だ。家族のために尽力するのは当たり前の事だ。そうぽんぽんと頭を下げるんじゃない」
「ああ。ありがとう!」
「それでいい」
フッと穏やかに微笑むシグナムさんマジかっけーっす。
「他に質問や提案はあるかな?」
俺が皆を見渡し聞くと、
ヴィータ「いつ産まれるんだ?」
ヴィータがおずおずと手を挙げた。
「およそ半年後、5月頃の予定だ」
ザフィーラ「名前はもう決めているのか?」
「男だったら、久歳。女だったら、まだ考え中だ。はやては祝福の追い風、みたいな名前が良いと言っていたみんなもいい考えが有ったらジャンジャン教えてくれ」
ヴィータ「祝福の追い風‥そっか‥‥」
そこで騎士全員が微妙な雰囲気になる。
「よし。今日は解散!明日俺とはやては市役所に行って来る。シャマル先生、同行お願いします。他の皆は明日から家事の方頼む」
「「了解」」
そしてその日はお開きとなった。
「うーむ。さっぱりだな‥」
家族会議の翌日、俺は頭を抱えていた。
年賀状を書こうとしているのだが、相手の名前と顔が全く一致しないのだ。
それも当然である。いち技術者風情が管理局のお偉いさんに会う機会等早々ない。唯一会った事あるような方々は、はやてが自分で書くと言うことで、そもそもリストに入ってない。一応、顔と名前を一致させなければ、どんな失礼があるかわからないと、何とか一致させようと、朝から悩んでいるのだが、筆は止まったままである。と、そこで、ひとつの名前で目が止まる。
「レティ、ロウラン」
幼馴染であるグリフィスの顔が思い浮かぶ。
と、スマホを開き、グリフィスの番号を呼びだす。
コール音が鳴り、暫し後、グリフィスが出る。
「弘義?久しぶりだな!元気か⁉️」
「ああ。久しぶり。」
高校の頃とあまり変わらぬ声と調子に安心と、懐しさを覚える。
「それで?いきなり電話なんてどうしたんだ?」
「ああ。俺、結婚することになったわ」
「へっ⁉️シャーリーとか?」
「何でだよ!八神はやて‥知ってるだろ?」
「ああ。機動六課の‥そっか‥想いをかなえたんだな。おめでとう弘義!」
「ああ、サンキュ‥」
「で?他にも用事あるんだろ?」
「‥ははっまあな」
察しのいい幼馴染の親友に苦笑が零れる。
「おばさん‥レティ提督は息災か?」
「は?まあ元気だけど?」
「実ははやてが妊娠してな、それで今年は俺が年賀状を書く事になってな」
「ああ、そういうことか‥問題ないよ。普通の文面で平気だ。母さんもきっと喜ぶよ」
「わかった。助かるよ‥サンキュ!」
「それでさ‥はやてさんが妊娠したって話だけど、母さんには言わないでくれないか?」
急に暗いトーンになり、そんな事を言い出す、グリフィスに俺は困惑する。
「は?いや、そういうわけにはいかんだろ」
「何でだ?」
「いや、プレッシャーがキツくてさ‥」
そういうことかと俺は納得する。
「ルキノさんと上手くいってないのか?」
「そういうわけじゃないけど‥ってちょっと待て!何で知ってるんだ?」
「シャリオに聞いた」
「あいつ!何でああも口が軽いんだ!」
「諦めろ。シャリオに知られるということは、全世界に知られる事と同意だ。そんなの今さらだろ?」
「それはわかってるけど‥」
「とにかくすまんがそれは出来んぞ。俺個人なら別に構わんがはやての信用にも関わるからな」
「そうだよな‥すまない‥忘れてくれ‥」
「ああ。今度飲みに行こうぜ。愚痴くらい聞いてやるよ」
「ああ。久久に話せて嬉しかったよ」
「じゃあまたな‥」
久しぶりの親友との通話を切り、リストへと目を向けてげんなりする。
せめてフォ
ーマットだけでも作るかと、マウスを忙しなく動かし、キーボードを叩く。
「準備出来たで~」
出かける準備を終えたはやてが声をかけてきた。
「ほーい。これ、ここに名前書いて印鑑よろしく。俺の分は既に書いてあるから」
はやてに書類を渡し自分もイソイソとコートを羽織る。
「シャマル先生~?準備出来てます~?」
「はーい」
「ほい出来たで」
「サンキュ」
「それじゃ行こうか」
俺ははやてに手を差し出す。
はやては俺の手を不思議そうに見ると、すぐに笑顔になり、俺の手を握った。
「弘義はいつも手繋ぐな?」
「当たり前だろ?世界が許すなら一日中繋いでたいし」
「そ、そっか‥」
「ん?」
俯くはやてに不思議そうに俺は声を掛ける。
「何でもあらへんわ、アホ~」
そう言うはやての顔は真赤だった。
そんなはやてを見て、俺は手を握る力を強めるのだった。
今日は12月30日。今日、俺達は家族になるのだ。
「そういえば‥」
はやてが不安そうな顔で聞いてきた。
「弘義が八神性になるんでええのか?」
「ああ」
「ヴィータ達は、はやてと違う性になるの嫌がるだろうし、今更姓を変えさせるのもな‥」
「それは‥せやけど‥」
「両親には許可貰ってあるから平気だよ」
「そうなんか‥」
「その代わり早く孫見せに来いってさ」
俺が苦笑交りに言葉を重ねると、
「よし、なら頑張って可愛い子、産まんとな!」
「頑張らなくてもはやての子なら世界一可愛いに決まってるよ」「‥あほ」
「寒くないか?」
「弘義がいるから平気やで」
そう言って、繋いだ手を掲げるはやて。
「私もなんだか熱いわ‥」
げんなりした顔でシャマルさんが言ってくる
何故だ。解せぬ。これが異常気象ってやつか。
木枯らしが吹き、気温的には寒い筈なのだが、
確かに、はやてと繋いだ手が俺の身体を芯から温めていた。
今日から俺は。八神弘義である。
あ、戸籍謄本はあらかじめはやての分も俺の分も用意しておいてあるが、その描写はカットな。何故って?いわせんな。察してくれよ。
ゆっくりと窓口へと近付き、書類を提出する。
「よろしくお願いします」
「はい。この度はおめでとうございます」
受付の女性がニコニコしながら祝福してくれる。
「ありがとうございます」
「ラブラブですね」
受付の女性がクスリと笑いながら言ってくる。その視線は俺達のいまだに繋がれた手に注がれていた
「はい。そうなんです」
俺は誇らし気に返してやる。
それでも受付の女性は笑顔を崩さず、言ってくれる。
「どうかお幸せに」
「はい。ありがとうございます!」
これで俺も八神か。
なんだか感慨深いな。
俺達は再び手を繋ぎ、帰路に着くのだった。
そして家へと着いて、俺達は驚いた。
なんかキラキラしてる。玄関とか廊下が輝いてる。
ヴィータとシグナムが誇らしげに出迎えてくれる。
「おかえり」
「ただいま、これ‥すごいな」
「ありがとうな」
そう言って、俺はヴィータの頭を撫でてやる。
気持ち良さそうに目を弓にするヴィータは今日も可愛い。シグナムが羨ましそうにこちらを見ていたが、目が合うと、凄い勢いで逸らされてしまった。流石にシグナムは撫でれない。はやてに目をやると、わかったとばかりに頷くと、
「二人とも、ありがとうな」
そういってはやてはシグナムの頭を撫でる。
流石に目を弓にはしないが、口が弛んでいる。
と、今度はヴィータが羨ましそうにしている。俺は苦笑を溢すと、ヴィータの背中を押してはやてのそばに連れていく。
「ヴィータもありがとうな」
すぐにはやてはヴィータの頭を撫でてやる。
またヴィータの目が弓になる。だが俺の時よりも気持ち良さげだ。やはりまだまだはやてには叶わないようだ。
「はやて」
「はい?」
「晩飯、何か食いたい物ある?」
「せやな、なんか酸っぱいものたべたいな後、フライドポテト後、なんか炭酸飲みたいわ」
「は?」
予想外のメニューが来た。
「ちょっと待ってね」
俺ははやてに背を向けて、石田先生から教えてもらったメモを開く。
ふむふむ。
よし。
「シャマル先生、すみませんがマック行ってきて貰えます?」
「はーいポテトだけでいいのよね?」
「はい。あ、塩薄めでお願いします。あと、コーラもSで」
「はーい」
シャマル先生を見送ると、俺は冷蔵庫を確認する。サラダ位は出来そうか。明日は
食材の買い出しも、いかないとな。
サクサクっと、野菜を刻み、皿に盛り付けていく。はやての方にトマトを多めに盛り付ける。レモン汁を振り掛けて、ほい出来上がりっと。
後はヴィータ達の飯だな。はやても摘まめるように少し塩薄めの味付けで作るか。
味噌汁と、野菜炒め、(肉入り)をぱばっと手早く作る。
「鮮やかなもんやね」
すると、いつの間にかはやてが立っていた。
「独り暮らし長かったからね」
俺は苦笑交りに椅子を引き、はやてを座らせる。
「弘義が旦那様でウチは幸せやで」
「どしたのいきなり」
いきなり嬉しい事を言ってくれる。
「ふと思ったんよ」
「ヴィータ達の事も大事にしてくれるし、ウチにとってはこれ以上ない旦那様や」
「俺にとってもはやてはこれ以上ない奥様だよ」
俺の言葉にはやては真赤になって俯く。
「‥あほ‥」
俺達は気づかなかった。
そんな俺達を見て、
ヴィータ「今日の飯は甘口だな‥」
シグナム「マイソルトを用意しておくか‥」
こんな会話がされていたことを。