◇弘義side◇
ある昼下がり。
俺とはやては再び、海鳴大学病院に来ていた。定期検診である。そろそろ、赤ちゃんの性別もわかるらしい。男女どちらが良いとかは特にないが、元気に産まれてくれればそれだけで嬉しいのだ。強いていうなら、やはり長男がいいかなとは思う。
すると、石田先生がノックと共に病室へと入ってきた。
「お待たせしたかしら」
「いえ。大丈夫です」
俺達が興味津々な顔で石田先生を見つめると、石田先生はクスリと微笑をひとつこぼして、
「赤ちゃんは男の子よ健康に育っているわ」
男の子。俺は思わず小さくガッツポーズをとってしまう。そんな俺を見て、はやてがクスリと笑う。俺はなんだか気恥ずかしくなり、目を逸らす。
「経過は順調だけど、はやてさんはそろそろ入院してもらおうかな」
「わかりました。よろしくお願いします」
「俺は着替えとかとってくるな」
俺の言葉にはやては静かに頷く。
入院の準備は既に終えてある。俺は家への道を足早に歩くのだった。
「ただいまー」
「おかえり。島津」するとシグナムが出迎えてくれた。
「もう島津じゃないだろ?」
俺がため息と、共に指摘すると、シグナムは少し顔を伏せながら、
「うむ、わかっている。わかっては‥いるのだが」
「ほれほれ‥」
俺が急かすと、シグナムはまるで親の仇でも見るような顔でこちらを睨む。いや、そんなにかよ。
「ひろ‥y」
とぎれとぎれに声を絞り出すシグナムに若干の萌えを感じていると、
シグナムは後ろを向いてしまった。耳が真赤になっている。新鮮だなーと、俺が背中を眺めていると、
「それはそうと主はどうしたのだ?」
「はやては今日から入院だ。俺は着替えを取りに来た」
「入院だとっ!?どういう事だっ!?」
シグナムが慌てた様子で俺に掴み掛かる。
「予定日が近いからな。大事をとってってだけさ。母子共に、健康状態は問題ない」
「む。そうか‥それならそうと早く言え」
「言う暇すら無かったですやん」
「シグナムはほんとはやての事好きだよな」
「当たり前だ」
即答である。いつか寝取られるんじゃないかと本気で心配になる。
シグナムに攻められるはやて‥うむ。悪くない。
「この‥邪気は‥!?」俺がシグ×はやを妄想していると、シグナムが戦々恐々とした表情でこちらを振り向いた。
お前はどこの毒島さんだよ。勘が鋭くて、弘義困っちゃう。てか俺そんなだった?あんな危険生物と一緒にするんじゃない。手から電撃とか出せないからね。
」「そう言えば、子供は男だそうだ」
「ほう」
シグナムが嬉しそうな顔でこちらを向く。
「立派な騎士として鍛えてやろう」
やっぱりか。
「魔力があるかはまだわからないけどな」
「主の子だぞ。無いわけかなかろう」
「俺の子でもあるんだけど」
「今から籍抜いてこい」
「それ、なんにも意味ないからね?」
「ふっ冗談だ」
クスリとシグナムが笑う。
ホンマかいな。
「すげえな。そうやって笑ってると優しそうに見えるぞ」
「どういう意味だ!」
「そのままの意味だよ。ああ‥もう。レヴァンティンをしまえ。セットアップするんじゃない」
やめなさい。俺では、古代ベルカの肉体言語には付き合えない。
俺がなだめていると、シグナムはしぶしぶといった感じで剣を納める。
「ああ。そうだ、シグナムに頼みたいことがあったんだ」
「む。なんだ?」
俺は手早くパソコンを操作し、メモを印刷する。
「これお使い頼まれてくれないか?」
メモをしげしげと眺めるシグナム。
「なんだこれは?」
「年越しの準備だけど」
「このジャンクパーツとやらは何に使うのだ?」
「産まれてくる息子の為に、昔俺が自分用に作ってた、デバイスを完成させようかなって」
「ほう。そんなものを作っていたのか」
「うん。まあ途中で、デバイス起動の魔力すらないとわかって、作成やめてたんだけどねー」
「‥そうか」
そしてなんともいえない雰囲気が俺達を包む。
「今はもう全然気にしてないから、そんな顔しないでくれ」
「そうか。ではそのデバイスに相応しくなるよう、しっかり鍛えてやろう」
「ああ。よろしく頼む」
「ふっ。任せておけ」
「ああ。俺はそろそろ病院戻るな」
「ああ。主の事。頼んだぞ‥」
「おう!」
あれ?
シグナムがはやての事頼むって言ったの初めてじゃないかな。その事実に嬉しくなる俺マジチョロイン。やる気もでたし、最高のデバイス作ったるかな。待ってろ息子よ。とうちゃん頑張るからな。