あの日から私の体はおかしくなってしまいました。
普段は使わない電車に乗って登校するようになり、
駅構内は様々な個性に対応しているせいか広く大きく作られており、夢で見たほど人の密度は高くないようでした。
それに伴ってか電車内も広々としていて、痴漢被害にあうことは一度もありませんでした。もしかしたら雄英の制服を着ていることも関係があったのかもしれません。
そんな中で私はついあの方を探してしまいます。現実では一度しかお会いしてないのに、夢では毎日のように会いに来てくださってどんなピンチからも私を救ってくださるあの方を――――。
そして今日も八百万家の執事であり送迎車の運転手でもあるセバス・ティアヌスに一言断りを入れて、一列に並び頭を下げるお手伝いさん達に挨拶を返して駅へと足を向けた。
***
徒歩で最寄りの駅へ到着し、教えて貰った通りにスマートフォンを改札の読み取り部に当てたところでチャイム音が鳴り響き、改札の扉が勢いよく閉ざされる。突然の事でどうしたらいいか分からずに立ち尽くしていると、そんな姿を見兼ねた駅員に残高が足りていないことを教えられる。
初めて電車に乗ろうとしてからは券売機で切符を買うことを教えてもらい事なきを得たが、昨日クラスメイトに教えてもらったばかりの電子マネーアプリの使い方が未だ分からず悪戦苦闘しながらも何とかチャージを済ませる頃には乗るはずだった電車の発車時刻をとうに過ぎていた――――
―――今日は朝からツイてないと意気消沈しつつも次の電車に乗り込むと、いつも利用してる時間より格段に空いていることが見て取れる。頭の中で登校時間を計算して明日からはこの電車を利用するか迷いながら座席へ座ったところで、向かいに座っている男性の事が視界に入る。
「あっ!!」
突然大声を出した女性――八百万百――に周囲の視線が集まると、自身の行為を恥じるように頬を染めながら一言周囲への謝罪の言葉を口にして大人しく座り込む。
それでも百の内心はまるで、初めて憧れているヒーローに会った子供のような高揚感が渦巻いていた。
目の前の男性は大声を上げた際は驚いた様子で百へと視線を向けていたが、その後はまるで興味が失せたとばかりにスマートフォンを弄っている。
自分を知ってもらえてないことに一抹の寂寥感を覚えるも、ようやく会えた嬉しさでそれを塗りつぶし、意を決して声を掛ける。
「あ、あの!」
男性は声を掛けられた事に酷く驚いた様子で、しかしスマートフォンを仕舞い百へと視線を向けた。
***
……びっくりした。
今日もいつも通りバイトへ行くためにいつもの時間にいつもの電車に乗っていつもガラガラの車内でニュースアプリを流し読みしていたはず……だったんだが、どうしてこうなったのか絶賛実験中の白馬の王子様作戦を行っている八百万百ちゃんが目の前で僕を見つめていた。
かなり大きい声で叫んだせいか周囲の目が彼女へ向けられている事に気づいて、真っ赤になりながら謝罪の言葉を口にすると縮こまるように座席へと座り直す。……かわいいかよ。
こちらをチラチラ見ているけどここで僕から声を掛けたら事案になってしまうのですぐに視線を外し、敢えて興味がないフリをする。
ふむふむ、『またも東京で凶悪ヴィラン出現! 少年を狙った卑劣な犯行相次ぐ』か。
何々……『昨夜未明、繁華街の裏通りで下腹部が肥大化した少年(12)が裸で倒れていると通報がありました。少年は下半身から血を流しており重傷。すぐに病院へ搬送されるも命に別状はないとのこと。ここ数ヶ月で同様の事件が東京だけで3件起きているも犯人の足取りは未だ掴めず。警察はより一層の警戒を呼び掛け、プロヒーローへの協力を要請しています。』
……何とも恐ろしい事件だこと。少年の詳しい容態は書かれていないけど、まぁ十中八九肛門裂傷だろうなぁ。
あまりに凄惨な事件だからか、内容が内容だからかマスコミはあまりヴィランの名前や犯行内容、特徴を世間に公表したくはないようだ。
だが実はこのヴィランは、既にそれなりにディープなネットニュースや掲示板に目を通す人達の間ではちょっとした有名人になっているのである。
ヴィラン名『ゲイパレス』
子供が真上を見上げないといけない程の巨漢に筋骨隆々の鋼のような肉体をピッチリとしたワンショルダー式ビキニ一枚で飾り、目と口元に穴の開いたフルフェイスマスクを被った生粋のショタコンを自称する年齢不詳のヴィランだ。
海外の違法動画投稿サイトに自らの犯行動画を投稿し続けていて、三日と経たず消されるも、アカウントを変えた上に動画を1つ追加して全動画再アップを繰り返している。
その内容は自己紹介から始まり、攫ってきた子供に無理やり前戯をさせ、泣きながら懇願させたところにナニをぶち込み個性を使って滅茶苦茶にケツを掘る。簡ケツに言えばそんな感じの動画だ。SAN値が下がるので子細は割愛。
体の一部を肥大化させる個性を持っているみたいで、徐々に太くなっていくイチモツと許しを乞いながら泣き叫ぶショタに思わずいつの時代の拷問だとつっこみたくなったよ。
いや突っ込むのも突っ込まれるのも死んでも嫌なんだけどさ。
彼奴なりの拘りなのか1度の射精の後、子供をその場に残して逃走するシーンで動画が終わるのだが、それだけで腹が膨らむほど出るって本当に人間なのか疑いたくなる。
正直何が目的なのかは分からないが、僕は歳も見た目もショタじゃないので狙われる心配はないはずだ。多分、きっと、maybe……。
そんなことを考えていると、今度はちゃんと声のトーンを落とした百ちゃんに再度声を掛けられる。
「あ、あのっ! 先日は助けていただいてありがとうございました!」
そう言って頭を下げる百ちゃんだが、はて夢の中以外で何かした覚えがない僕はただ首を傾げることしかできない。
怪訝そうな表情をしていた百ちゃんだったが、そのことに気づいたのかアセアセという擬音がぴったりなくらい動揺しながら人違いだった、勘違いだったと言い訳の言葉を並べ始める。
そんな様子が面白くてつい笑ってしまった僕を責められる人はいないだろう。
笑われたことで冷静になったのか、再び頬を染めて縮こまってしまった百ちゃんに助け船を出してあげるとしよう。
「その制服、雄英だよね。残念ながら僕は雄英生を助けられるほど秀でた人間じゃないよ。 あ、僕は夢道操治。駅前の甘味屋でバイトしてるからもし良ければ帰りにでも寄ってね」
せっかく僕と会話しようと頑張ってくれたのだからこれは応えてあげなくちゃいけないよね。これで夢の中で名前を呼ばれても大丈夫だし、そろそろ手を出したいと思ってたんだよね。
「は、はいっ! 私は雄英高校1年A組、八百万百です! 是非行かせて頂ましゅわ!」
ガチガチになって噛んでしまった百ちゃんの自己紹介が面白くてまた笑みがこぼれる。再度クスクス笑う僕を見て百ちゃんは下を向いて分かりやすいほどに落ち込んでしまう。
あんまり弄りすぎて顔を合わせづらくなるのも困るし、そろそろ許してあげよう。確かバッグの中に割引券があったはずだし、これで機嫌を直してくれると良いんだけど。
「笑っちゃってごめんよ。お詫びと言っては何だけど、甘味屋の割引券をあげるから食べにおいでよ。丁度季節のお菓子が入れ替わったところだからお友達も誘ってさ」
そう言って割引券を6枚渡す。確かA組の女子も6人だったはずだから、丁度枚数が揃っていてよかった。
「よろしいのですか? ではクラスメイトの皆さんを誘って伺わせていただきますわ。ありがとうございます!」
百ちゃんが受け取った割引券を大切な物のようにカバンの中に仕舞ったところで丁度雄英高校駅前に到着する。楽しい時間はあっという間に過ぎて行くな。
改札を出たところで未だ恥ずかしそうにモジモジしている百ちゃんと別れ、バイト先へ向かう。
あぁ朝っぱらからムラムラしてきた。今夜は楽しくなりそうだ。
ここまでは前回の投稿から数日でほぼ書けていたんですが、私はどうもエッチな描写が苦手なようで、ずっと書いては消してを繰り返して最終的に投げてました。
ただR18物を漠然と読むのではなく、書き方や表現方法を意識して読むべきですね……
次がいつになるか分かりませんが、皆さんの記憶が消えたあたりで投稿できると良いですね。