「君の名は?! ジャギ!!」略して「君ジャギ」 西… 作:高尾のり子
翌朝、四葉は仮住まいの自宅で目を覚ますと、すぐに紙とペンを持ち、速記のような速さで体験してきたこと、覚えていることを書き記していた。日の出から書き始め、一冊の辞書になるほどの書き物をした四葉は7時頃、玄関に司の気配を感じて一階におりた。廊下で祖母が心配そうに声をかけてくる。
「四葉、朝ご飯、できとるよ」
邪魔にならないよう静かにしていた一葉は食事も風呂も用意していたけれど、四葉は謝る。
「ごめん、時間がないの。心配かけて、ごめんね。もう、そう長くはないから。でも、その分、時間がない気がするの。今日は長い一日になりそう」
「四葉……」
「昨日の私、ジャギさんの言動を、主なところを手短に教えて」
そう言われて一葉は昨日のジャギの行動を伝える、とくに今が2020年であることに気づいたような納得していないような状態になったことに、四葉は頷いた。
「彼にも協力してもらわないといけないから、そろそろ気づいてもらった方がいいわ」
「……四葉、あんた……雰囲気が……。本当に、四葉なん? っ…、変なこと言うて、ごめんよ」
「今日は、四葉だよ。お婆ちゃん」
相当に困難な事態に直面しているはずなのに、高校2年生とは思えないほど、しっかりとしていて静かに落ち着いて見える孫娘へ、一葉は思わず問うたことを詫びたけれど、四葉は穏やかに聖母のように微笑んだ。そして、祖母に背中を向けて、四葉は自分が書いた物を持ち、玄関にいる司に声をかける。
「おはよう。ありがとう」
四葉は司が手に持っている書き物へ、礼を言った。
「おはよう、四葉。言われたこと、やったつもりだよ」
「頼りになる人で嬉しいわ。ありがとう」
「っ…、そんな…」
あまりにもストレートに礼を言われて、司は照れくさくて目を伏せた。
「じゃあ、それを持って糸守神社へついてきて」
「え? ああ、けど、学校は?」
司は早く四葉に完成した物を届けたくて、少し早めに来たのだったけれど、学校へ行くつもりの無さそうな様子に問い、四葉は平然と答える。
「欠席の連絡をいれてくれる?」
「わかった」
司は自分と四葉が欠席する連絡を学校と、あとで来るはずの沙耶香へも入れながら、四葉の隣を歩いて糸守神社に向かった。隕石落下で宮水神社は倒壊してしまったけれど、町にいくつかある神社の中で一番近い糸守神社へと二人で入った。
「本当なら身を清めたいけれど、せめて手と口だけ」
四葉は岩清水で作法通りに手を洗い、口を漱ぐ。なんとなく司も同じようにした。本殿に近づき、四葉は一般の参拝者は入れない奥まで入っていく。
「いっしょに来て」
「あ…ああ、いいのか? ここ、入って」
「今は、いいのよ」
「わかった」
司は入ったことがない本殿の奥まで、四葉の後に続いて入った。本殿は30畳ほどの広さで、正面の扉にある格子から光が入ってくる以外は、薄暗い造りになっていた。四葉は中央に立つと、自分が書いた物を足下に置き、司が持っている紙束を受け取る。
「よくできてるわ。本当に、ありがとう。これで世界は救われるかもしれない」
「四葉……」
司は訊きたいことが山ほど生まれたけれど、四葉の邪魔をしたくないので我慢する。四葉は静かに受け取った紙束と自分が書いた紙束を畳に並べて置いていっている。司が書いたのは1962年から1990年代にかけての各国の軍事や政治、経済についての資料だった。
「このウクライナの資料、もう少し細かいことを知りたいわ。ここと、ここ」
「ああ、それなら」
ときおり四葉は資料を並べながら、追加の情報を要求してくる。司がスマフォで調べて四葉に見せると、記号のような文字を書き加えていた。その記号のような文字は、四葉が書いた物には、びっしりと書かれている。司には、まるで読めなかった。
「それ、なんて書いてあるのさ?」
思わず、司が質問すると、少しだけ説明してくれる。ソビエト連邦を単にソと書いていたり、アメリカ合衆国をAとしか書いていないことや、戦闘機をキとしか書いていないことを教えてもらうと、少しは司にも意味が推し量れてくる。
「……QにソミB、62/10対Aキ54……これって、キューバにソ連がミサイル基地、62年10月対抗してアメリカが戦闘機54機を派遣、って意味?」
「……」
四葉が無言で頷いてくれたけれど、これ以上は話しかけないで欲しいという気持ちが伝わってきたので司は黙る。書くスピードを優先したために、ほぼ四葉にしか読めない紙片が円陣に並んでいくと、神聖な儀式にさえ見えてくる。二人が書いた物が所狭しと本殿に並びきると、司は本殿の隅までさがっていた。
「あとは、声を聞くだけ。糸の声を。歴史の糸の声を」
つぶやいた四葉は静かに立っていたり、歩き回って紙片を見たり、そんなことを2時間も、3時間も続けて、そして唐突に唾を吐いた。
「ぷっ」
「………」
司には何をしているのか、まったくわからないけれど、四葉が吐いた唾は紙片に落ちて、そこには人名があった。
「ぷっ」
さらに四葉が唾を吐く。また、人名に落ちている。
「ぷっ」
三度目も人名に落ちていた。
「この三人のこと、調べて」
「え? …あ、ああ、わかった」
四葉が選んだ3名は、ロケット技術者と政府の高官、大企業家だった。言われた通り司がスマフォで調べると、四葉は調べたことを書き記してタメ息をついた。
「はぁぁ……終わった……」
とても疲れた様子で座り込んでいる。
「大丈夫? 四葉」
「ええ。今、何時?」
「えっと……、11時20分だよ」
「もう、そんな時間……いえ、間に合っただけ、よかったのかな……。ねぇ、こっちに来て、司」
四葉に呼ばれて本殿の中央へ行きながら、問う。
「なんで、テッツーじゃないのさ?」
「テッツーっていう名前は、テッシーの2号、2番目って意味がこもってるでしょ。私は自分の伴侶をそういう風に呼びたくないの」
「はッ…伴侶…って…」
司が赤面していると、四葉が抱きついてくる。
「うわっ…」
告白はしたし、受け入れてもらえたような気もしていたけれど、あまりの進展の速さに、思わず司が一歩さがる。さがった分だけ、四葉が近づいて見つめてくる。
「抱いて」
「え……う……うん…」
抱きつかれている状態から、抱き返した。
「…………」
「………」
そのまま抱き合って、四葉は見つめてくるけれど、司は照れくさくて四葉の瞳を正視できない。大好きだった女の子を抱きしめている喜びより、急すぎる展開についていけず、また疑問も山ほどあるのに、四葉は抱きついていた手を自分のスカートへ入れて、ショーツをおろしていく。
「抱いて」
「そっ……そっちの意味で?!」
「うん」
「って! 待って、四葉! ちょっと待ってよ!」
司は四葉の肩をつかんで引き離した。
「どうしたんだよ?! 急に」
「………」
四葉が困ったように目をそらし、少し考えて、もう一度、求めてくる。
「お願い、抱いて」
「四葉……そんな、急に言われても…」
「…………。……ごめん……今の、なし……忘れて」
ものすごく悲しそうに、そして泣きそうな顔で四葉が諦めて離れていこうとすると、司も切なくなって抱き留めた。
「待って、四葉! せめて、少しは何か教えてくれよ!」
「…………」
「どうして急に?! それに、あの三人は、どうする気なんだよ?!」
「……質問は……しない約束…」
「それでもさ! …………四葉は伴侶になる相手に、何も言ってくれないのかよ?!」
「っ……それは……」
四葉の瞳が迷っているように彷徨い、涙を零してから、まっすぐ見つめてくる。
「お母さんは、お父さんに何も言わなかった。私も、こうなるまで悟れなかった。ずっと、黙っているのは司に悪いよね」
「四葉?」
「……何から話せばいいのかな……とにかく、びっくりしないで聞いて……私のお母さんが、私が小さい頃に亡くなったのは知ってるよね」
「……ああ」
「私も、あのくらい短い命なの、きっと」
「っ?! どうして?!」
「それが宮水の巫女の宿命だから」
「…宮水の……、もしかして、それは三葉さんが時間を跳躍したかもしれない話と、関係あるのか?!」
「ええ」
「っ、やっぱり、そうなのか……彗星落下を……あのウワサは本当だったのか………。けど、あの話は、そもそもが、おかしくないか?」
「どのあたりが?」
「だってさ、もしも、入れ替わりが時間を跳躍して起こっていたとして、彗星落下が感知できたから未来から過去へ危険を伝えたとしたら、その未来の方では犠牲者がいたはずで、そうでなければ未来から過去へ伝えようって動機が生じないし、かりに、うまくいったら、今度は、うまくいった未来から過去へ、伝えようって動機が生じないはずだろ?」
「うん、それは初歩的なタイムパラドックスのことでしょ」
「そうだよ、パラレルワールドってことなら、そうなのかもしれないけど。そもそも、ボクが、いや、町の人たちが、そんなことをウワサすること自体、もう、おかしな話じゃないのか?」
「司、まず自分が認識している世界が、認識の通りだとは限らないって考え方、できる?」
「……太陽は地球の周りを回っているとか。地球は丸くない、大地は巨大な像が支えてる、みたいな?」
「そう。人は見える世界を、観測できる事実を、それらが、すべてだと思ってしまう」
四葉は髪を一纏めにしていた組紐を解いた。
「パラレルワールドっていう考え方は、時間軸を数直線のように想定して語られたもの。だから、どこかで分岐が生じると、そこから先は平行線。向こうは、向こう。こっちは、こっちで関係ない」
四葉は組紐を司に見せる。糸は複雑に絡み合い、見事な模様を造って紐になっていた。単なる糸の束であるよりも、組まれて紐になっていることで、はるかに強靱で便利になっている。
「けど、時間軸、いえ、世界の軸は数直線でもパラレルでもないの。むしろ、この組紐のようなもの」
「ひも?」
「一つ一つの世界は、一本一本の糸のようなもの。その細い糸が組み合わさって、太い紐、世界になっていくの」
「………」
「紐だから、もしも一本の糸が切れても、紐でいられるの」
四葉が組紐の擦れて解れた箇所を見せる。
「途中で糸が切れても、他の糸が補完して、空いたところを分岐して埋めていく」
次に四葉は組紐の端を見せる。
「けれど、すべての糸が切れてしまったら、紐も切れてしまう。そして、糸と糸は、相互に干渉するの。良いことがあれば、良いことを。悪いことがあれば、悪いことを。どちらも隣接している糸へ影響してしまう。だから、一本の糸が焼き切れれば、その隣りの糸も焼き切れるかもしれない。さらに、それを放置しておけば、また隣りへ。そんな風に悪影響の連鎖が始まると、世界は終わってしまう。私たち宮水の巫女は、それを防ぐためにいるの」
「…………そんな……」
「7年前、奇跡が起こった、そんな記憶が町の人たちにあるのも、糸と糸が影響を与え合うから、記憶に揺らぎが生じるの」
「だ……、だとしても……、だとしてもさ……どうして……四葉が長く生きられないんだよ?!」
「私たち宮水の巫女は、この奇跡を行う度に、残りの寿命の半分を失うの」
「っ……半分?」
「そう、半分」
「そんな………、いや、でも! お婆さんは?! 一葉さんは、すごい長生きじゃないか! 長生きする方法だって、あるんじゃないか?!」
「お婆ちゃんは一度も飛んでないの。ううん、正確には飛べない。そんな夢を見たことがあるくらいで、幸か不幸か、お婆ちゃんには、その力が、ほとんど無かった。お姉ちゃんも、そう、よく飛べて3年か、5年。それも、本人の能力に対しての自覚が薄いから、口噛み酒を造ったとき、寿命の半分を捧げるのかもしれないって感じてもいないの。二人とも、ただの比喩だと思って口伝してる。けど、逆に私やお母さん、お婆ちゃんの母だった初葉さんは自覚がある。お母さんが死ぬ前に、私にだけ話してくれたこと、聞いたときは意味がわからなかったけれど、今になって世界が紐であること、自分が飛べること、命が長くないこと、わかってしまうの。そう、鳥が飛び方を、教わらなくても知っているように、蝉が来年の予定を入れないように」
「そんな……あんまりだ……ウソだと、言ってくれ」
「宮水の巫女に力があることは、他のことでも説明できるの。たとえば、司は酒税法って知ってる?」
「酒税法? いや、知らない。消費税みたいな?」
「知らないのが普通だよね。普通の高校生は知らない。けど、お姉ちゃんは知っていた。これは予知夢を見ていたから」
「予知夢?」
「宮水の巫女は、ときどき予知夢をみたり、予知、予感したりする。お姉ちゃんへ私が口噛み酒を商品化したら面白いよ、って小学校の頃に言ったときに、当時高校生だったお姉ちゃんは即答で酒税法違反だって言ったの」
「そんなことがあったのか……」
「あの後、私も予知夢を見た。予知夢というより、ちゃんと酒税法違反にならないよう商品化したら、どうなるかなって考えて寝たら、商品化は成功して爆発的に売れるんだけど、事業が軌道に乗り始めた頃、未成年の男の子が一人、食中毒で亡くなってしまう。それをきっかけに食品衛生法違反で、私もお姉ちゃんも逮捕される。そんな夢を見たの」
「それは、ただの……」
「うん、妄想かもしれない。けど、小学生が、そんな夢を見る? 高校生が酒税法を気にする?」
「………」
「お姉ちゃんは以前に私と同じことを考えて、酒税法違反で逮捕される夢を見たんだよ。そして、私が再チャレンジしても、同じくバッドエンド」
四葉が思い出したく無さそうに首を振った。
「しかも、二人とも逮捕されて有罪判決。なんとか執行猶予はつくんだけど、亡くなった男の子の遺族から、ものすごい損害賠償金を請求されて。やめようと思っていた事業を継続して、お金を稼ぐことにしたの。今度は絶対に食中毒を起こさないように、口噛み酒を蒸溜して滅菌したり、健康食品の会社から依頼を受けて、私たちの唾液をもとにしたジュースが宮水還元水って商品名で発売されて、それが腸内フローラを整えて、多発性潰瘍性大腸炎なんかにも効果があるって論文が発表されて…」
「すごいじゃないか…」
「でも、その健康食品の会社は論文データを改竄していて、私たちの唾液だけじゃなくて初めの身体検査のときに勝手に採取した腸内細菌を使っていたから、フローラが整えられただけだったし、そもそもの販売の方法が強引なマルチ商法だったから、ものすごい批難をあびて連日、テレビカメラが私たちの家や学校にまで押しかけてきて…」
かなりの悪夢だったようで、四葉が頭を抱えて小さくなる。大メディアに連日追い回されたというのは、かなりのトラウマのようだった。
「マルチ商法の被害者の会が結成されて、また賠償金が膨れあがって、私たちは何も知らなかったのに毎日毎日、電話や手紙で脅されて。ひどいことを、いっぱい言われて。なのに、健康食品会社の社長は韓国へ逃げて音信不通になるし、会社のお金は、いつのまにかキリスト教系の宗教団体に寄付されていて、金庫にも通帳にも残ってなくて。宗教法人という意味では同じでも、宮水神社には1円も入ってないのに疑われて、どんなに弁明しても信じてもらえなくて。注目されたおかげで、お父さんと勅使河原建設の癒着も、ささいな飲食接待くらいしかなかったのに針小棒大に週刊紙が報道して、そのうち、変電所爆破の件で社長の息子が逮捕、社長も危険物保管の不備で書類送検されて、中部電力から15億円もの賠償金が請求されて、産業らしい産業が勅使河原建設がメインだった町の経済は崩壊状態になるし、逮捕されたときに押収された雑誌が変な月刊誌が多くて、ムーとか、スカトロ倶楽部とか、唾液モノや嘔吐モノみたいなマニアモノばかりだったことに世間の注目が集まって、そしたら町の男性が、よく利用してる麓の市にあるビデオ店が、全国のマニアから知られる有名店で、普通のビデオ店は唾液モノとか、嘔吐モノなんてSMモノの片隅に2つか、3つあるくらいなのに、棚が一つ丸ごと唾液と嘔吐もので埋め尽くされていて、週刊紙の記者がビデオ店から個人情報を入手して、糸守町の男性の6割が、それらをレンタルしたり買ったことがあるって報道されて、もう海外からも取材にこられるくらい有名になって、私とお姉ちゃんは、どこにいてもカメラに追われるし、知らない男性が声をかけてきたり、追いかけてきたり、親切な人に見えたのに、うっかり差し出された食べ物を食べたら催吐剤が塗ってあって吐かされたり、洗濯物なんて、お婆ちゃんのまで盗まれるし、外でトイレに入ることもできなくなるし、とうとう町の人でさえ絶対に入らない宮水神社の聖地の大石へ奉納した口噛み酒まで盗まれて、お婆ちゃんは先祖に申し訳が立たないって入水自殺して、お父さんも勅使河原建設の件で落選した後に首を吊って、お姉ちゃんと私は、ある日、後ろから袋をかぶせられて誘拐され、どこだかわからないところに監禁されて、毎日お客さんって呼ばれる知らない男性の命令をきかされるの。お腹いっぱいご飯を食べさせられた後に殴られて吐かされたり、逆さに吊されて鼻から水を入れられて吐かされたり、苦しくて苦しくて、何年経ったのか、わからなくなった頃、鉄仮面のお客さんが15億円を積んで私たちを買い取ったの。そして生きたまま、身体の肉を少しずつ切り取られて、私の肉はお姉ちゃんへ、お姉ちゃんの肉は私の口へねじ込まれて食べさせられて、何度も吐いて、泣き叫んで、もう許して、いっそ殺してって懇願したら、鉄仮面の男が仮面を外して、火傷の痕を見せるの、そして言うの、この傷が痛むたびに貴様らへの憎悪を燃やしつのらせて生きてきたのだ! って、その顔は奥さんが放火で焼け死ぬとき助けに行こうとして負ったものだって、そしてオレの名を言ってみろ、わかるか、って言われても火傷がひどくてわからない、でも、お姉ちゃんが勅使河原建設の社長さんだって答えて、そしたら、貴様らのせいで倒産しかけた勅使河原建設を再建するのが、どれだけ大変だったかを延々と語られながら切り刻まれて、姉妹お互いの肉を食べさせられて、そして私は、ああ、これは先祖代々受け継がれてきた神聖な口噛み酒を商品なんかにしたバチが当たったんだ、って意識を最後に発狂して…ハァ…ハァ…」
早口で語っていた四葉が過呼吸を起こしかけている。瞳が落ち着きなくキョロキョロと動き、冷や汗まで流している。まるで、その不幸な世界を実体験してきて、フラッシュバックを起こしているかのような様子に心配になった司が話を中断させる。
「四葉! 四葉、しっかりして! 夢だったんだろ! 夢!」
「…ハァ……ハァ……そう……夢……」
四葉は青ざめた顔で頷いている。あまりに怯えているので、あえて司は別の可能性を指摘してみる。
「その夢ってさ、本当にそういう可能性の世界があったのか、単に商品化なんて罰当たりなことを口にしたから、夜になって小学生だった四葉の無意識が見せた夢なのか、わからないじゃないか?」
「………あったの…」
「何が?」
「中学生になって、麓のビデオ店に行ったら、夢の中に出てきた記事と同じ棚が」
「……………」
言われてみると、司も兄が秘かに集めているコレクションが四葉の夢と酷似していることや、クラスメートの男子で貸し借りしている18禁DVDなどが、全国平均より唾液モノが多い気がしてくる。もともと、この町の男性は幼い頃から、あの祭りを見て成長するし、三葉と四葉も美人だけれど、二葉も相当な美人だったという話だし、一葉も今でも80代前後の男性から根強い人気がある。そんな環境で育てば、この町の男性の性癖がやや偏ってくるのも仕方ないのかもしれない。インターネットの普及で若年層の視聴傾向はウェブ上がメインになっているけれど、18禁にアクセスできない高校生や中高年は今でもダウンロードより、ディスクを愛用しているのも事実だった。司自身、四葉とキスしたいと思う気持ちとは別に、四葉の唾液という言葉に扇情されないとは断言できない。今も、四葉の唇と見つめると、キスをしたいと思うのと同時に、話しているときに開いた口を濡らしている透明な液体にそそられるというのが正直な気持ちだった。
「ハァ……ハァ……ごめん、……この話は、するつもりじゃ……なかったのに……思い出したら、止まらなくて…」
四葉が気持ちを入れ替えるように深呼吸する。
「ハァァ……えっと、どこまで話したっけ? たしか、宮水の巫女は、入れ替わりと予知ができる、そして入れ替わって歴史を改変すると、残りの寿命が半分になる、だったよね」
「あ、ああ」
「これまで、宮水の巫女は何度か、歴史に干渉してる」
「どうして、それがわかるんだ?」
「歴史の教科書を見てると、なんとなく感じるの。たとえば、南北朝の頃、天皇家が割れて大変だった時期に、楠木正成、新田義貞なんかの主立った武将が、あっさり敗死していたり、朝鮮への出兵にこだわった豊臣秀吉が病死していたり、徳川慶喜が奇妙なほど、あっさりと新政府軍に恭順したりね」
「……戦乱を治める方向に?」
「そう。一番大変だったと感じるのは、ひいお婆ちゃんの初葉さんと、お母さん」
「ひいお婆さんは時期的に、太平洋戦争の頃?」
「そうだよ。あの日本の大敗戦で、何人が亡くなったか知ってる?」
「300万人から500万人くらいじゃなかったかな」
「それは人口の何%?」
「一億として、3~5%」
「あの破滅的な敗戦、徹底的な無差別空襲と原爆、なのに、悪い言い方をすると、たった3%しか、殺されずに済んだ。レーダーもない、いつ空襲があるか、わからないのに、人々は逃げ、生き延びることができた。私は、これ、絶対ひいお婆ちゃんが何度も何度も、たくさんの人と入れ替わって、危険を知らせたんだと感じてる」
「………たしかに、……あれだけの負け方で……意外と少ないのかも……。でも、お母さんは? その頃は平和だったはずじゃないか」
「冷戦を忘れたの?」
「冷戦……」
「キューバ危機の前後にも、何度も緊張は高まったよ。けど、とうとう、今の私たちの世界では核戦争は起こらなかった。きっと、お母さんが寿命を削って世界を守ってくれたから」
言いながら涙が滲んだ四葉は瞬きして、涙を払った。会ったことのない初葉のことは、誇らしく思えても、母親のことは誇らしさより悲しさが、はるかに強いようで唇も震えている。
「本当に核兵器って最悪よ。言ったでしょ、一本の糸が焼き切れると、隣の糸も影響を受けて、そうなるかもしれない。今の私たちの世界だって明日、絶対にミサイルは飛んでこないって言える? 1発のミサイルから始まって、応酬、そして破滅」
四葉が組紐を、もう一度、見せる。
「世界は紐のようなもの。糸と糸は、組み合わさるとき、その外周と内周で少しずれがあるよね。だから、1990年代の破滅が、2020年代に影響してくる可能性だって、大いにあるの。だから、放置しておけない」
「四葉………まさか……君も…」
「お母さんは頑張ってくれた。だから、私も頑張るの。今回が成功しても、あと2回か3回は、私に入れ替わりが生じて、また頑張らないといけない時が来る予感はあるの。だから、私の寿命は……きっと、長くない」
「そんな……そんなのって……」
「ごめん。……こんな、早く死んじゃう女で。……イヤだよね。お母さんは、お父さんに説明してなかったみたい。でも、私は言っておく。言ってしまうと、相手にしてもらえなくなりそうで怖いけど、黙っているのは悪いよね」
「四葉……そんな……でも、その運命は変えられないのか?! そうだ、さっき、揺らぎって言ったろ。過去を変えれば、当然、未来は変わる。そして、揺らぎがあるって。その揺らぎで、四葉の運命なり宿命なりを変えられないのか?」
「そんな代償なしに、成果だけなんて、ご都合主義は無理よ。揺らぎがあるっていっても、ほんの少し。たとえば、早耶香と沙耶香の名前が入れ替わってしまったりとか。もっと、古い過去の変え方が少し変わっていたら、お母さんが二葉じゃなくて、双葉になっていたりとか。そんな風に、揺らぎでは因果律は大きく変わらない。大きく因果を変えるのは宮水の巫女が意図して行うこと。揺らぎは、意図しなかった小さなこと、かな。人それぞれの決断のタイミングでも、未来は変わるよね。たとえば、進学先とか、結婚のタイミング。お姉ちゃんも、あんなに慌ててサヤチンさんの結婚式に合わせて挙式しなければ、もっと落ち着いて交際してからの結婚なら、うまくいっていたかもしれない。だから、私が1990年代の筋書きをかえることで、バタフライ効果のようなもので、今の世界も認識しているまま、認識している世界とは違っているかもしれない」
「それって、もしかして、ボクと四葉のことも、変わるかもしれないのか? だから、抱いてくれなんて、慌てたようなことを急に言い出してるのか」
「ううん、それは別の理由。私と司のことは、きっと変化ないよ」
「どうして、そう言い切れるんだよ?」
「だって」
四葉が指先で司に触れる。
「司の告白があったから、今の私と司がいて、私の決断があるからよ。あんなに、しっかりと因果律を成立させてくれたら、変わらないよ。絶対」
「……よかった……でも、じゃあ、どうして? とても焦った風に、さっき……その別の理由って何だよ?」
「それはね……」
四葉が愛おしそうに自分のお腹を撫でた。
「今日、二人が結ばれれば、赤ちゃんを授かれる予感があるから」
「っ……あ、赤ちゃん?」
「私の寿命は長くない。だから、早く産んで、少しでも、この子と長く過ごしたいの。一ヶ月でも、一週間でも長く、いっしょにいたい」
そう言って四葉が涙を零すので、司も胸が痛くなった。母親に早く去られたことが、どれほど悲しかったか、そして同じことを自分も繰り返すとわかっているので、せめて少しでもと想う気持ちに目頭が熱くなる。
「四葉……」
抱きしめて頷く。
「わかったよ。そうしよう」
「ありがとう、司」
礼を言って四葉は、さげかけていたショーツを膝までおろした。そしてスカートを自分でめくって下腹部を司に晒した。
「じゃあ、お願い」
「う、…うん…」
「早くかけて。時間がないの」
「………」
「早く」
「………、あのさ、四葉。この姿勢のまま、いきなりできるものでもないんだよ」
「そうなの? じゃあ、どうするの?」
「えっと……」
司は何か勘違いしている四葉が学校で受けた性教育を思い出してみる。ユキちゃん先生が課外として担当することになり、かなり恥ずかしそうに男女の身体の仕組みについて、プリントを読んでください、くらいの説明しかせず、あとはビデオを見せられた。ビデオの内容は鮭の一生で、川を上ってきた鮭が雄雌で産卵し、そこへ射精するというもので、たしかに生命の誕生ではあるけれど、人間の性教育としては、かなり抽象的で何も教えていないに等しい教育だった。それを、真に受けると男の子にかけてもらえば妊娠できるという誤解が生まれるのも、仕方ないとも思えた。宮水の巫女といえども、すべてのことが予知できたり、予感できるわけではないのだと、少し安心もするし、四葉を可愛くも思える。
「司……私だけ、こんな姿、恥ずかしい。……ニヤニヤして……イヤな気分…」
「ご、ごめん。……じゃあ…」
司もズボンのチャックを開けて男根を出した。四葉の下腹部を見ていたので、すでに勃起している。
「………」
「…………」
スカートをめくって下腹部を見せる四葉と、男根を出した司が向かい合って立っている。
「……司? まだ?」
「………四葉………、えっと、まずはキスから始めようか?」
「え……キス……」
四葉が困ったように唇を手で押さえた。その仕草でキスしたくないのが伝わってくる。
「司……キスとかは、いいから、抱いて。早く」
「…………」
司が額に手を当てて考え込む。
「司?」
「四葉、時間がないって、あと、どのくらい?」
「40分前後くらいかな……たぶん」
「それで、何が起こるの?」
「お父さんから連絡が入る。あとは、その用件を進めないといけない」
「そうか……40分。じゃあ、端的に説明するけど、四葉のイメージと実際のセックスは違うよ」
「どう違うの?」
「まず、かけるんじゃなくて、挿れるんだ」
「じゃあ、挿れて」
四葉が立ったまま少しだけ脚を開いた。ちょうど、司の男根と同じくらいの隙間が股間にできる。
「……うん、もう少し段階を踏んでから挿れるから」
「どんな段階?」
「キスをして、愛撫をして、それから挿れるんだ」
「………」
四葉がキスしたく無さそうに顔を伏せる。
「司……挿れるだけじゃダメ?」
「まあ、普通はダメだね。ボクとキスするのイヤ?」
「……そうじゃ……ないけど……」
「じゃあ、しようよ」
時間がないらしいので四葉の肩を捕まえると顔を近づけた。
「………」
四葉が唇をキュッと閉じて息を止める。
「四葉、そんなにイヤ? 何か、理由があるの?」
「………だって……今朝……」
「今朝?」
「時間がなくて、歯磨きしてないから……さっき、口を漱いだだけ…」
「なんだ。そんなことか」
「………ぅ~…」
四葉が顔を真っ赤にして恥じらっている。
「積極的かと思えば、こんなところは……」
ますます四葉が好きになって、やや強引にキスをする。
「あう…」
逃げようとした四葉の唇にキスをして、その唇を吸った。
「……ん~…」
四葉が、もうキスしたからいいでしょ、という意思を仕草と声で伝えてくるのが、わかるけれど男の本能が、ここまで強く刺激されると、止められない。
「…ぅぅ…」
四葉の唇に舌を入れて、その白い歯を舐める。歯磨きしていないといった四葉の歯は、ぬるりとして感じたことのない味がする。歯並びのキレイな前歯を舐めて、頬の奥へも舌を入れると、その味が濃くなる。
「……ぅう…」
二度目の止めて、という意思表示で一度離れる。
「…ハァ! ハァ…ハァ…」
ずっと呼吸を我慢していた四葉が、こちらへ息を吹きかけないように横を向いて、吐いて吸い、吐くと、小さな唾液の粒が飛んだ。
「四葉っ!」
もう衝動のままに、またキスをする。
「んんっ…」
イヤなのに、という意思が感じられるけれど、それほど強くない。キスすると、勃起した男根の先端が、四葉の下腹部に押しあてられる。先走り液で濡れて、とても熱くなっている男根を下腹部の皮膚で感じると、四葉も本能が刺激されて、身体から力が抜けていく。このまま下腹部の皮膚に挿入されれば、ちょうど子宮という位置を押されているからか、子宮と膣が熱く疼いて、四葉も下腹部を差し出すように押してくる。グリグリと男根の先端で下腹部を押されて、四葉は甘い疼きと尿意を覚えた。そういえば、起床してからトイレさえ行っていない。神がかった精神状態で空腹さえ覚えないけれど、尿意は弱くない。
「…………」
四葉は残りの時間と、未体験の性交に要する時間、一度トイレに行ってから再開する時間を考えて迷うけれど、キスを続けられると思考がまとまらない。二度目のキスは、より深くて、四葉の舌が吸われている。舌を吸われて、絡み合わされると、腰の力が抜けて立っているのが難しくなってくる。四葉の腰が落ちてくると、優しく抱き留められて、その場に座らせてもらえた。
「四葉……好きだよ」
「うん、……私も……好き…」
そう答えて頷いたけれど、ブラウスのボタンを外されると、また四葉は難色を示した。
「ま……待って、何するの?」
「何って……愛撫だけど」
「……それ、何するの?」
「ん~……おっぱい吸ったり、身体を舐めたり」
「っ……そ……それが普通なの? 省略しちゃダメ?」
ボタンを外されてしまったブラウスを四葉が押さえている。胸を見せたくないように両手で守っている。
「う~ん……省略すると、四葉が痛いと思うよ」
「………それって陣痛くらいに?」
「そういう言葉は知ってるんだ……。陣痛ほどじゃないと思うけど、けっこう痛いらしいよ。愛撫なしって普通は避けるかな」
「…………我慢する。もう挿れて」
「……はじめてのエッチが、そういうのは、ちょっと…」
「愛撫を……したいの?」
「したい」
「…………少しだけ…」
とても恥ずかしそうに、四葉がブラウスを少しだけ開いて乳首を見せてくれる。ここ数日、ときどき全開するのを見てきたけれど、見せ方に恥じらいが入ると、格段に魅力が増して、四葉の乳首に食いつくように吸いついた。
「はぅ!」
嫌がっていた四葉だったけれど、いざ吸われると、その感覚が驚くほど気持ちよくて喘ぎ声が漏れた。熱い男の唇に乳首が吸われるだけで、息が乱れるほど気持ちよくて、頭がぼんやりしてくる。もう座っていることもできなくて、その場に寝転がった。
「も…もう、いいでしょ。ハァ…」
四葉がブラウスを元に戻そうとする。
「もう少し。反対の乳首もさせてよ」
「………」
「どうして、そんなに嫌がるの、何かある?」
「…………………お風呂……ずっと入ってないから……」
髪や身体のベタつき加減から、入れ替わりが起こり始めて四日目、ずっと入浴していない自覚がある四葉は消えそうな声でいった。
「……こんな身体で……ごめん……時間なくて……」
「謝らなくていいよ。四葉、忙しかったから」
「でも……いくらなんでも……四日も……失礼だよ……これじゃ…」
「いいよ。四葉が好きだから」
そう言って手で守っている乳首を吸う。
「ぁぁぅ…」
かすかな塩味がして、これが四葉の味だと思うと、余計に興奮する。反対の乳房も手で揉みながら、四葉の乳首を味わい、胸の周りも舐めてブラウスを半脱ぎにさせる。ここが神社の本殿であることは覚えているので、裸にしてしまうのはやめて愛撫を続ける。四葉の首筋から鎖骨を舐めて、次に腋を舐めようとして、また抵抗された。
「ぃや……腋はやめて…」
「なんで?」
「だって……、きっと、すごい匂いするから…」
四葉はブラウスのボタンを外されてから、ずっと腕をしめて腋を閉じていた。今も舐められそうになって余計に力を入れて腋を閉じている。
「四葉の匂い………嗅ぎたい」
「っ?!」
「四葉が好きだから、四葉の匂いも、知りたい」
「そ……そんな……恥ずかしいこと……ヤダよ…」
「頼むよ、四葉」
「ぅぅ……ぅ……少しだけ、だよ」
四葉が右腕の力を抜いてくれたので、手首をとって四葉の腋を開いた。ずっと閉じていたので汗が溜まって蒸れている。
「……」
「じっと、見ないで…」
すぐに四葉が腋を閉じようとするけれど、手首を握って離さない。匂いを嗅ぐと、四葉の汗が蒸れて、桜餅のような不思議な香りがした。
「こんな匂いなんだ……四葉…」
「も、もう、いい? 離して」
「味も知りたい」
「っ…」
四葉の腋に舌を入れると、胸よりも強い塩味がして、美味しい。
「美味しいよ、四葉」
「……うう……変態…」
そう罵ったくせに、四葉も舐められた感覚が快感みたいで身もだえしている。だから、もっと舐める。
ペロ…ペロ…
四葉の匂いと四葉の味がして、四葉が喘いでる。
「はぅん…く…くすぐったいから……もう…あっ…あうん…」
「今度は、こっち」
左腋も味わいたくて開かせようとしたけれど、また拒否してくる。
「左はイヤ……絶対イヤ」
「絶対?」
「絶対」
「絶対知りたい」
「そんな……」
「右と何が違うのさ?」
「……………」
四葉の顔に知られたくない、恥ずかしいと描いてあるから、知りたくてたまらない。
「四葉、お願い」
「………バカ…」
そう言ったけど、四葉は諦めて左腕の力を抜いてくれる。手首をもって腋を開かせると、右と同じように汗で蒸れていたし、四葉の匂いも同じだった。でも、同じじゃなかったのは、毛が4本、生えていたこと。
「毛……生えるんだ」
「っ………バカ……ずっと、お風呂に入ってないって言ったでしょ……左は少し生えるのよ……見られたくなかったのに…」
四葉の腋毛は4本、5ミリくらい伸びている。
「毛なんか、そんなに、じっと見ないでよ」
「これは、これで、可愛いね」
「………」
四葉が顔を背けて怒ってるけど、両腕をあげさせて左右を見比べる。右腋の肌はすべすべしていて、真っ白で汗で濡れていても、毛は生えたことがないみたいだ。左腋も肌は白くて汗の滴も同じだけど、腋毛が4本だけ伸び始めてる。毎日、剃っていたみたいで右腋の肌にくらべて少しスベスベ感がなくて、肌が荒れてる。そのせいなのか、匂いも左腋が強い。
「左の方が、匂いするね」
「っ……バカ……バカバカ……」
「味は、どうかな」
四葉の腋毛が伸びた腋を舐めてみる。強い塩味がして、腋毛がチクチクする。
「美味しいよ、四葉」
「………変態……。こういうエッチが普通なの? ……あと、何をする気なの?」
「あとは、ここを舐めたら、もう挿入するよ」
そう言って四葉の股間に触れると、やっぱり拒否反応が返ってくる。
「っ、こんなとこ……舐めるの………私の、……」
四葉が顔を真っ赤にして困ってる。
「ね……ねぇ、……それだけは省略して……もう挿れて」
「ダメだよ。それが愛撫の本番なんだから」
「ぅっ……う~……」
四葉が真っ赤になった顔を両手でおおった。
「パンツを脱がせるね。足をあげて」
「………」
素直に足をあげてくれるから観念したみたいだ。脱ぎかけで膝のあたりまでさがってる四葉のショーツを脱がせる。
「脚を開いて」
「…………」
四葉は顔を隠したまま、脚を少し開いてくれるから、両膝を押して完全に開脚させる。
「……………」
「…………」
四葉の膣が丸見えになって、濡れてるのもわかる。
「四葉のおまんこも、可愛いね」
「っ……」
ずっと顔を隠して首を振ってる。
「じゃあ、舐めるよ」
「早く…、ううん! 少しだけにして!」
早く舐めてと言いそうになって訂正してる。あんまりにも恥ずかしがって可愛いから焦らしたくなってしまう。
「まずは匂いから」
「っ……」
四葉が膝を閉じようとしたけれど、押さえているから閉じるのを諦めてくれる。顔を近づけて匂いを嗅いでみる。
「へぇぇ……こういう匂いがするのか、四葉のおまんこ」
「っ……はぁ……はぁ…」
恥ずかしさが頂点に達してきたみたいで、まだ何もしてないのに息を乱して、四葉の膣がヨダレを垂らしてる。そのヨダレがお尻の穴まで流れていく。匂いも腋より強烈で、やっぱり四日も入浴してないから臭い。この匂いは拡がって四葉も自覚してるはずだから余計に恥ずかしがってる。
「…はぁ……はぁ…」
「今度こそ、舐めるよ」
「……はぁ……あっ!」
四葉のクリトリスを舐める。指で開いてクリトリスを剥いてみると垢が溜まっていて、ものすごく臭い。臭いけど四葉の匂いだと思うと、いい。すごく、いい。
「四葉のおまんこ、最高に美味しいよ」
「ぅぅ…んっ…」
舐められる快感で四葉が顔を隠したまま身もだえしている。舐める度に内腿と下腹部がピクピクするし、乳首が触って欲しそうに揺れてる。四葉のクリトリスを吸いながら、腿の外側から手を伸ばして左右の乳首を指先でつまんだ。
「ああっ!!」
四葉が大きな喘ぎ声をあげて、ギュッと腿で頭をしめつけてくる。イキそうになってる。
「はぁ…はぁ…、も、…もう、いいから…へ…変に……なりそう…」
「まだまだ、だよ」
四葉の乳首をクニクニとつまんであげながら、クリトリスを舌先でグルグル転がした。
「ああああ!! はあああぁん! ダメ! 変っ! ああああ! 私、おかしくなりそう!」
「それでいいんだよ」
身もだえする四葉の腿が何度も頭をしめつけてくるし、舌を動かす度に下腹部が激しくピクピクしていて、もうイキそうだ。
「はああん! あはんっ! あはんっ! ダメ……変……ハァ…ハァ…おしっこ、出そうなの……離して。あっあああ! もう舐めちゃヤダ! あああああっ!」
「ずっと顔を隠してないでさ。そろそろ四葉の顔を見せてよ」
「ハァ…ハァ………」
四葉が顔を見せてくれる。クリトリスを舐めながら四葉の顔を見ると、つまんでるおっぱいの向こうにトマトみたいに赤い、四葉の顔が見えた。目を潤ませて、唇からヨダレ垂れてる。
「ハァ…ハァ…あはんっ!」
「ねぇ、四葉」
「ああっ! あううん!」
「ボクの名を言ってみて」
「んんんぅう!」
四葉のクリトリスを舐めながら、喋るときも離さないから、ずっと身もだえしてる。もう四葉の顔は蕩けていて、何度かイってしまったみたいだ。
「ボクの名を言ってみて。今、四葉のおまんこを舐めてるのは誰?」
「はぁ、はぁ…あああっ! あああああん!!」
「さあ、ボクの名を。宮水四葉のおまんこを舐めて、気持ちよくさせてるのは誰?」
「ああああっ! あああっ! つ……つか…んうううう!」
「四葉、ボクの顔を見て誰だか言ってみて」
「つ…、ああああん!」
「もう一度だけチャンスをあげるね。ボクの名を言ってみて。ちゃんと、目を見て」
言えるように舐めるのを少しやめた。
「つ……司。ハァ……ハァ…あああん!」
ご褒美に、また舐めてあげる。
「次は、ちゃんとフルネームで。誰が誰に何をして、どうなってるのか。言ってみて」
「つ…司……てしがわ…勅使河原……が……私の……」
「勅使河原司が宮水四葉のおまんこを舐めて気持ちよくさせてる、って言って」
「そッ……そんな恥ずかしいこと……」
「言うまで、舐めるの、やめないから」
そう言って四葉のクリトリスを強く吸って、口の中に入ってきた先端を舐め回した。
「ああああああ!!!」
四葉の背中が弓みたいに反ってる。また、イってるんだ。
「ハァハァ、変なの! 身体が…」
「早く言わないと、もっと身体が変になるよ」
「そ…そんな…、て、勅使河原つ…ああああ! ああああんん!」
「ほらほら」
「勅使河原司が宮み…み…あああ! ああああん! 水、四葉の!! あああああ! いいいいんっ! おまんこっ! こおおおおお! ハァハァ、を! あああっ! ああああああ! 舐めて! きっ、…き、んんんんんっ! 気持ちよくさせて!! るの!! あああああああ!! ハァ! ハァ! ハァ…ハァ…」
言いながら何度もイってた四葉が、ぐったりとしてる。
「よく言えたね。これで愛撫、終了だよ」
「ハァ……ハァ……」
「いよいよ、挿れるね」
「うん……お願い……もう……気絶しそう…」
もう四葉は開脚したまま、ぐったりとして隠していた腋も見せてる。そんな四葉の上にかぶさって正常位で挿入していく。
「もし、痛かったら言って」
「…うん……ぅぅ…」
四葉の処女膜が少し抵抗するけれど、すぐに男を受け入れて、するっと膣が男根を包み込んでくれる。四葉の膣は熱くて柔らかくて、ものすごく気持ちがいい。
「いいよ、四葉。最高だよ」
「…んああぁ…」
四葉も気持ちいいみたいで喘いでる。ここから、もっと気持ちよくさせてあげる。
「上下に動くから、痛かったら言って」
「うん…」
四葉が抱きついてくる。ゆっくりとピストン運動して、四葉の膣を突くと、熱くて柔らかい粘膜がからみついてくる。
「痛くない?」
「うん…」
四葉の心臓の鼓動が伝わってくるくらい、一つになってる感じがしてピストン運動を3回したときだった。
ビュル! ビュるぅぅ! ビュ…ビュ…
「ううっ…」
「…ああぁあぁ…」
四葉は膣に射精されて気持ちよさそうにしてる。
「……………」
「………………」
射精した男根が急激に小さく萎えていく。すぐに、するっと膣から抜け落ちた。
「つ……司?」
「…………」
「おちんちんが…小さくなってる……これで、終わり?」
「っ……きょ、今日は、このくらいかな」
「……そうなの? ……これで、ちゃんと赤ちゃんできる?」
「な、中に出したから。……出すのは、思いっきり中に出しちゃったから、あとは運次第というか、性交は成功した! なんて! あはははは!」
「…………」
四葉がジト目で見てくる。どことなく満足してない感じで、とくに下半身が不満そうだ。
「愛撫って本当に必要だったの? 挿入だけでも、よかったのに」
「ぁ、愛撫が無かったら、ものすごく四葉が痛いんだって! こんなにスムーズに挿入が終わったのは愛撫のおかげなんだよ?! 気持ちよかっただろ?!」
「………気持ちよかったけど……身体が変だった……恥ずかしかったし…」
「それがセックスなんだって! ま、まあ、ボクもさ、初めてだったから、ビデオとかの知識でやったから、挿入してからが、やや難しくて、四葉が早く終わって欲しそうだったから、早めに出したんだよ。うん! 本当なら、もっと気持ちよくさせられるはずなんだ! あえて早めに出したんだよ!」
力説する司の男根がプラプラとゆれている。
「そう。とにかく、ありがとう」
四葉は納得したようにブラウスのボタンを直そうとしたけれど、ブルっと震えた。
「四葉、どうしたの?」
「おしっこ、ずっと我慢してたから。ここ、トイレ、どこだっけ?」
四葉は両脚を擦り合わせながら、ボタンを留めて本殿を出ると駐車場の方にあるトイレへ駆け込んだ。
「ぅう……ギリギリ、アウトだったかも…」
駆け込む途中から漏らしていたけれど、ショーツを着けていなかったので下着は汚れず、内腿を濡らしただけだった。神社のトイレは小さくて狭い和式だった。しゃがむ時間がなかったのでスカートの裾を持ち上げて、脚を開いて便器を跨いでいる。
「はぁあぁぁ…」
ショワァァアァ…
朝から我慢していた尿意を解放すると、四葉は気持ちよさでタメ息をついた。
ドロっ…
けれど、その気持ちいい顔が一瞬で凍りつく。
「えっ?!」
放尿しながら、膣に違和感を覚えて自分の股間を見ると、白い粘液が垂れ落ちてきている。
「っ! これ、精液なんじゃ?!」
四葉は慌てて、垂れ落ちている精液を両手で受けとめる。
ビチャビチャ…
放尿中だったので、おしっこも両手に降ってくる。小水と精液を両手で受けとめながら司に助けを求めた。
「た、助けて! 司!!」
薄い木戸のトイレなので、外に声は届いて、司が玉砂利を踏んで駆けつけてくれる気配がする。
「どうしたんだよ?!」
「助けて! 大変なの!」
「開けていいのか?」
「開けて!」
四葉に頼まれて、司はトイレの木戸を開ける。鍵らしい鍵のない、一円玉や自転車の鍵でも開けられる木戸を開くと、四葉が半泣きになっていた。
「どうしたんだよ?!」
「ぅっ…ぅうっ……赤ちゃんが……できないかも…」
四葉は両手に受けとめた精液と小水を司に見せた。
「おしっこしたら、いっしょに出ちゃったの……せっかく、司が挿入してくれたのに」
「………」
「ううっ……もう一回、穴に戻したら、できるかな? 赤ちゃん」
四葉が両手を股間へ近づけるので、司は止める。
「いや、それは、やめた方がいいよ。おしっこも混ざってるし、空気に触れると精子って活動を停止するらしいから」
「っ…、そんな…」
あまりにも四葉が絶望的な顔をするので司は失笑しそうになるのを我慢して慰める。四葉は不妊治療に200万円を投じて月経が来てしまった残り妊娠可能な期間の少ない女性のように、うろたえている。小水が指の間から滴って零れ、精液だけになってしまい、大切そうに温めるように握りしめると、胸に抱いて泣きかけている。
「四葉、落ち着いて。もう一回、挿入しようか?」
「できるの?!」
「たぶんね」
「お願い! あ、でも、時間が…」
「あと、何分くらい?」
「5分もないかも」
「5分か……」
司は境内を見渡した。誰もいない。平日の昼時で祭りも行事もない日のようで、さきほど本殿にいたときも誰の気配もしなかった。高齢者の参拝は朝夕が多いし、子供は学校に行っている時間で、まるでエアスポットのように広い神社の境内には誰もいない。
「四葉、あそこのベンチに」
司が指したベンチに二人で駆け寄る。
「ボクに背中を向けて、そこに両手をついて」
「こう?」
四葉は背中を向けると、ベンチの座面に両手をついた。前屈したのでスカートの裾があがるけれど、性器が丸見えになるほどではない。
「スカートをまくるよ」
「うん」
四葉のスカートをまくるとお尻と性器が丸見えになる。
「足を肩幅くらいに開いて」
「こ、こう?」
四葉は言われる通りにしているけれど、再び羞恥心が刺激されて顔を真っ赤にしてきている。お尻を突き出すようなポーズを真っ昼間の神社で巫女がしているのだから、当然だった。
「そうそう」
白くて細い四葉の足首からお尻までの曲線を見ると、司はムクムクと勃起した。
「いきなり、突っ込んでいい?」
「いい!」
ズブッ…
勃起した男根が、まだ濡れている膣に入っていく。処女膜から血が出た。
「うぐっ…」
「痛い?」
「平気」
「動くよ」
「早く出して」
「わかってる」
司が腰をふって四葉を突く。
パン…パン…パン! パン!
後背位なので、突かれる度に四葉のお尻が音を立てて鳴る。
パン! パン! パン!
四葉はベンチに両手を着いて身体を支えたまま、振り返って問う。
「ま…まだなの?」
「二回目は、そんなに、すぐには出ないんだよ」
催促されて司は、より激しく四葉の膣を突く。まだまだ射精しそうにない。
パン! パン! パン!
突かれている四葉の白いうなじが少し紅潮してきた。
「……あぁあぁ…」
再び性感が高まってきて喘ぎ声を漏らし始めた。突かれるだけだった膣の粘膜が男根にからみついてくる。
パン! パン! パン! パン!
「あはんっ! あはんっ! ああんっ! あうんっ!」
四葉の蕩けた喘ぎ声が境内に響き、より激しく突く。
パン! パン! パン!
「あふんっ! あはう! まだ?! あはあっ! また、私、身体が変に!」
「もう少し! ハァ…ハァ…」
「んんんっ! あああんん!」
四葉のうなじが赤く染まっている。ぐっと腰をつかんで、ねじり込むように男根を膣の奥まで入れた。
「あああはああん!!」
四葉の膣がキュゥと男根を締めつけてきて絶頂しているのがわかる。その時だった。
チャラッチャア~♪ チャララタララチャチャタラタァ~♪
四葉のスマフォが鳴っている。
「ハァ…ハァ…」
四葉が姿勢を維持したまま片手をスカートのポケットに入れて電話に出る。
「もしもし…ハァ…私」
「私だ」
父の俊樹だった。
「今、電話、かまわないか?」
「ええ…はぁ…」
四葉は赤く紅潮した顔で、なるべく冷静な声を出しているけれど、どうしても熱っぽく息を吐いてしまう。
「声がおかしいけれど、大丈夫なのか、四葉?」
「大丈夫よ。用件をお願い。パパ」
「………」
いつになく優しい声でパパと言われて、俊樹は少し嬉しかった。思い返せば、パパと呼ばれること自体、何年ぶりだろうか、町長になってからも別に外では町長と呼びなさいと指導したことは一度もないのに、パパと呼ばれなくなった。
「ハァ…ハァ…」
「息が荒いようだが?」
「用事があって走っていたの。ハァ、用件を早くお願い」
「そうだな。北斗神拳について調べがついた」
「そう、よかった。ありがとう、パパ」
「うむ」
嬉しそうに俊樹が返事している。司は悪いニュースではないようなのでピストン運動を再開した。
パン! パン! パン!
「はうん! ちょっ…」
四葉が送話口のマイクを押さえて、振り返る。
「司、今は…」
「もう少しで出そうなんだ。このチャンスを逃すと萎えるかも」
「………。わかったわ。続けて」
「四葉? どうかしたのか?」
「何でもないよ。パパ」
パン! パン!
「……。いつになく四葉の声が優しいな」
パン! パン!
「頼み事を実行してくれた人に対する礼儀よ」
パン! パン!
「お前も大人になったな」
パン! パン!
「ええ。…んっ…」
四葉が身をよじって鼻声を漏らしながら、スマフォを持っている手の小指を自分で噛んでプルプルと震えた。再び絶頂してしまったようで喘ぎ声をあげないように指を噛んで耐えている。
パン! パン! パン!
「…四葉?」
「ぉ…お願い、早くして。ハァ…ハァ…」
四葉は父と恋人に懇願した。
「そ、そうだな。まず北斗神拳は暗殺拳だそうだ」
パン! パン!
「諸説あるが1800年から2000年の歴史があると自称している」
パン! パン!
「にせ、んっ…」
また四葉が絶頂して身もだえする。喘ぎ声を耐えるために噛んでいる小指にヨダレが流れて、スマフォも濡らしている。防水仕様のスマフォなので問題はなかった。
「形としては寺院だが、宗教法人格はないようだ。檀家や信徒もおらず、ごく少数の弟子がいるようで、寺宝は巨大な阿吽の像だが、文化庁による年代測定を拒否している。作風から鎌倉期のものと思われるそうだ」
パン! パン!
「代表者は? ぁハァ…」
「現在の伝承者は北斗ラオウというらしい」
「ラオウさん…んっ…。在籍者にジャギさんか、ケンシロウさんの名前はある? ハァ…」
パン! パン!
「いや。手元の資料にはないな。本当に息が荒いな。大丈夫なのか?」
「んっ…、うんっ、…大丈夫よ…、つ、続けて」
パン! パン! パン!
四葉は突き続けられて、また絶頂する。
「あはっ…んんっ…」
喉の奥から喘ぎ声が溢れて、四葉は唾を飛ばしてよがった。
「ハァっ…ハァ…」
パン! パン!
「四葉、とても大丈夫とは思えないのだが………息が、それに声も…」
「は、走ってるの。…他にも用事があって…ハァ…急いでハァるから…ハァ…んっ…」
パン! パン!
「それなら、あとにしようか?」
「ううん、パパとの…ハァ…話も大切だから…ハァ…お願い…続けて…ハァ…」
パン! パン!
「わかった。え~っと……とても大きな馬を飼育しているらしい。…いや、これは、どうでもいいか。なにか、質問はあるか?」
「ハァ…ラオウさんは今どこに? ハァ…連絡を取る方法はあるの?」
パン! パン!
「東京の八王子に寺院があり、そこにいるようだ」
「八王子……たしかに、そのあたりなら都心が爆心地なら生き残れて…ハァ…ハァ…連絡は?」
パン! パン!
「直接の連絡は難しいようだ。電話も引かれていない。ただ、八王子にあるトキ鍼灸院が窓口になっているそうだ」
パン! パン! パン! パン! パン!
「ハァ…トキ鍼灸院…んんっ!」
「ううっ! 出る! 出る!」
「んっ、んあああ! あああ!」
喘ぎ声が絶叫になり、四葉は送話口を指先で押さえながら身もだえする。四葉の膣がキュゥキュウと男根に吸いつき、射精を受けとめる。
ビュル! ピュルルル!
膣の奥に大量に射精された。
「ハァ…ハァ…トキ鍼灸院ね…ハァ…」
「……、ああ」
もう立っていられないので男根が抜けていくと四葉はベンチに座った。また精液を垂らしてしまうと悲しいので、スマフォを持っていない手で股間を押さえながら父親との会話を続ける。
「ハァ…お姉ちゃんの容態は?」
「あのままだ。点滴はしているが、容態は悪い。医師は栄養補給のために鎖骨下静脈からの点滴が必要だと言うのだが、とても太い針を胸のあたりに刺さなければならない。そうすると三葉が精神的ショックで死んでしまうかもしれないとも言っている。だが、どんどん衰弱している。もう時間が残されていない」
「ドクターヘリを呼んで」
「ヘリを? だが、どこに搬送する気だ?」
「トキ鍼灸院よ」
「……東京だぞ?」
「東京だからヘリなの。私も乗るわ。ラオウさんに会わないといけないから」
「それも、また、とても大切なことなのか?」
「ええ、お願い。パパもついてきてくれると助かるわ」
「……頼ってくれるのはいいが……、わかった。そうだな、そうするしか、あるまい。お前は宮水の巫女なのだから」
「ありがとう。パパ」
「ただ、一つだけ言っておく」
「何かしら?」
「父親との電話口でセックスをするな! お前は行動が二葉に、そっくりだ。いいところも悪いところもな!」
「ぅっ……ごめん…なさい。お父さん」
「わかったら、町のヘリポートは知っているな?」
「はい。病院の裏駐車場よね?」
「そうだ。すぐに来いよ」
「はい」
電話を終えると四葉が頭を抱える。
「あ~んっ…もお、どんな顔して、お父さんに会えばいいのよ?!」
「ご……ごめん。……けどさ、お母さんに、そっくりだってことは、同じこと、してたってことじゃない?」
「あ、そっか……こうやって、私も産まれたのかな……ね、五葉」
お腹に語りかける四葉を見て、司は大変な一族に関わることになったのかもしれないと思い、澄んだ空を見上げて深く考えないことにした。