カニバリズム出てるので一応こっちに。全然細かく書いてないし問題ない気もするんだけどね。
味覚とか、人の感覚は結構曖昧なものだと思う。
同じものを食べても好き嫌いはあるし、同じ本を読んだって感じるものは違うし、私達が感じたことは全て正しいけど、ある意味全て間違っていて。
「個人差」という言葉があるが、感覚はまさに個人差の塊だ。
それでも、私達は、「おいしい」や「うれしい」などといった言葉で繋がることが出来る。
好きな人が何かを食べて「おいしい」と言ってくれるのは一般的に「うれしい」ものだと思う。
でも、たとえばその食べ物が一般的でなかったとしたら?それが許されないものだとしたら?
それでも。私は自信を持って「うれしい」と言うだろう。
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第二ドックは、大浴場ににせた造りになっている。
深海棲艦にやられて長期修理が必要な娘は第一ドックに回されるので、この第二ドックは普通のケガやの修理や、単純に大浴場として利用できるように開放してあった。
私達の傷は、深海棲艦にやられたもの以外なら入渠ですぐに直った。だからまあ。
夕立にがぶりと噛み付かれたって、ナイフで肉をそぎ落とされたって、痛い以外は何も問題ない。
私は今第二ドックに夕立と2人っきりでいて、夕立が背中とか髪とかいろんなところを洗ってくれているのだけれども。
これから起こることを体が覚えてしまっているのだろうか。胸のドキドキが収まらない。
もう私は壊れてしまいそうだ。
心はいつ崩れてしまうかわからない。風が吹けば飛んでいってしまいそうだ。
もう私は壊れてしまいそうだ。
近頃は元気が出なくて、「村雨」を演じなければやっていけないことがある。
もう、私は壊れてしまいそうだ。
ボロボロに傷ついている。
ドックでは直せない傷。
おそらくは、致命傷。
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夕立の犬歯が肌に食い込む。
ある一定まで力が加わると、プツンと弾けるように突き刺さった。漏れ出そうになる悲鳴を抑えつける。
人間の歯は、肉食動物のそれに比べると幾分か鈍い。
かじりとる為に何度も歯を立てられると、その度に何かが切れるような音がした。
太ももに噛り付いている夕立の頭に手を伸ばして、毛の先の方を握りしめた。
ああ、痛い。
ここに姉さんが来ればどうするのだろうか。大切な妹がこんなになってしまっていたら、悲しむだろうな。
時雨なら?時雨にはこんなもの見せたくない。幸運艦のあの子は、こんなもの見なくていい。
春雨ならどうだろうか。心配してくれるかな。どちらを?齧られている私?それとも大好きな夕立姉さん?
残りの繋がっている部分を引きちぎるように、
夕立が顔をぶるぶると振った。
ああ、痛い。
ちょっと気持ちいい。
口をもごもごと動かしながら、夕立は私の身体を抱え上げた。
乳白色のお湯まで運んだ私を、ちゃぷんと降ろす。
どういう原理かは知らないが、溢れ出る血で白が赤く濁ることはなく。
私の理性を蝕む痛みも夕立が口の中身を飲み込む頃には消えていく。
アドレナリンが出ているわけでも、麻酔があるわけでもない痛みは脳にこびりつくように残る。
少し震えて、髪の毛を握り続ける手を夕立が優しく開いた。
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鼻歌を歌いながら、小さくフライパンを振るった。
あの後ナイフで脇腹のあたりをごっそりと切り取って、その肉を今料理している。自分を料理するのは変な気分だ。
鳳翔さんにはおそらくバレている。この前「村雨ちゃんって美味しそうですよね」と耳元で囁かれた。
もしかしたら鳳翔さんから提督に話が行っているかもしれない。そしたら姉さんにも。
フライパンの中身に塩胡椒をふりかける。
いい匂いがするな、とぼんやり思った。
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小さめの皿に盛りつけて夕立のところに持って行った。
夕立は机の上にある割り箸を一膳とって、ひとかけらずつ口の中に放り込んでいく。
あんまりおいしそうに食べるものだから、私も割り箸をぱきりと割って一つ口に含んだ。
味見なんて怖くてしたことなかったけど、なんだか豚さんに似ている気がする。そういう風に料理したらもっと美味しく食べてもらえるかな。
今度はキャベツを一口。
……。やっぱりお肉の方が美味しい。
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残念。私は壊れてしまった。
むらむらと湧き上がる衝動を抑えきれずにお皿を洗い終わった夕立の肩口に噛み付いた。自分でも驚いている。
溢れ出た血が舌先に触れる。小さな肉片を噛み締めた。
世界にはこんなに美味しいものがあったのか。
痛いよ、という声で我に帰る。
幸い傷はそれほど深くなかった。
夕立が小さくごめんと呟く。
ごめんなさい。やっぱり痛かったよね。怖かった?夕立、村雨にずっと……。
そんなに心配しなくてもいいのに。
「私はもう、夕立無しじゃ生きていけないんだから。」
夕立が涙を拭って、その手の肉をそのまま噛みちぎる。
口同士を重ね合わせてそのまま、舌で私の口に押し込んだ。
咀嚼してから飲み込んで、痛くないの?と聞く。痛くないわけないのに。
夕立は言った。痛いのは村雨といっしょ。それに。
「夕立ももう、村雨無しじゃ生きていけないっぽい」
残念。私は壊れてしまった。
誰か人が来てしまうかもしれないのに。大切な妹なのに。
大切な妹だからなのだろうか。
夕立といっしょという言葉でどうしようもなく昂ってしまう。
血が流れ続ける夕立の手をとって、舐め上げた。
抑えきれずに漏れ出た悲鳴は私のものとよく似ていた。
また、お風呂に行かないと。
残念。私は壊れてしまった。
壊れてしまえば楽になるのかと思ったのに。
すごく、痛い。
かなしいな。
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おまけ〜夕立の癒し〜
「って夢を見たのよ。」
「むらさめ、この前も私にかじられる夢みてなかったっけ」
「そうなの。…2回目になると少しは慣れたんだけどね。……慣れちゃったのがなんだか怖かった」
「大丈夫。村雨なら。……村雨夕立のことすき?」
「どうしたのよ急に。」
「いいから答えて」
「もう……好きよ。今のところ世界で一番。一番じゃなくなっても特別枠で一番以上に大切。」
「恥ずかしげもなくそんなことを」
「夕立が言えって言ったんじゃない!」
「ごめん。…でもね。私のこと好いてくれるんでしょ?なら、私が止めるから。村雨が嫌なことは、全部。」
「夕立のそれもけっこう恥ずかしいわよ」
「そんなことない。村雨を好きなのが恥ずかしいわけないから」
「……夕立はかっこいいわよね。どうしてそんな風に育ったの?」
「村雨もそんなに変わらないっぽい。気づいてないだけで。春雨ぜったい村雨に惚れてるよ」
「嘘…最近視線がくすぐったいとは思ってたけど…」
タイミング逃しちゃって、言葉にはできなかった。
ありがとうって。
でも、傲慢な気もするけど。夕立なら解ってくれるんだろうな。
私の全部を。
夕立と村雨のことってなんて呼ぶのが正解なんですかね?
むらゆう とか むらだち は聞いたことあるんですけど…
メジャーなのがどっちかはともかく個人的にはむらだちが好きです。音の感覚的に。