スマホを持ったエリカの手が、ふらふらとベッドに着地する。
そのままエリカが固まってしまったのを見て、みほは静かに問うた。
「……どうだった?」
「話が、ある、って……」
「あーあ、お姉ちゃん怒っちゃったのかな?」
「……えっ、え!?」
――そんなはずはない。みほが大丈夫だって言ってくれたのだから。
エリカは、すがるような表情でみほを見る。
しかしみほは、困ったように笑うだけだ。
「どうしようか、エリカさん」
「ど、どうしよ、どうしよう! 私、どうしたら……どうしたらいいの……?」
どうすればいいのかなんて何も考えつかない。
エリカはただ、みほの言葉を求めていた。命令して欲しい、と思った。
だがみほは何も答えず、代わりにエリカの頭を抱く。
「エリカさんはどうしたいのかな……?」
クリーム色の、錦糸のような髪の毛を優しく撫でつけながら、みほが聞いた。
エリカはみほのなすがまま、ただその心地よい感覚に身を任せる。
そうしていると、真っ白だった思考の奥からぽつぽつと言葉が出てくる。
「……私、二人と仲良くしたくて……隊長もみほも大好きだから……それで……」
「ふーん……大好きな人でオナニーしちゃうんだ?」
「あっ、あっ、ちがっ……そ、そう、です……」
みほの指摘を慌てて否定しようとするが、今のエリカにはそれもできなかった。
実際にその通りなのだから、否定する理由がないのだ。
「そっか……それじゃあ、エリカさんは仲良くしたい人でオナニーしちゃう変態なんだね」
「ひゃ、ふ……はい……」
大好きな、仲良しになりたい人たちをあろうことか夜の慰みにしていたことは逃れようもない事実だ。
それをその相手から改めて、それも直接言われる。こんな状況、催眠音声でも味わったことがなかった。
そんなエリカをよそに、みほは細く艶やかな感触を楽しむようにして頭を撫で続けている。
「ふふ、気持ちいい?」
「きもち、いい……」
「あはは、こんな風にいじめられて……声だけで気持ちよくなっちゃうんだ……エリカさん、変態のうえに……マゾ、なんだね」
「あっあぁっ、イっ……くぅっ……!」
優しく抱かれながらの言葉責めは、エリカを容易く絶頂させた。
口調もいつもの柔らかさだというのに内容は過激で、そのアンバランスさがエリカの頭をかき回す。
「変態マゾのエリカさん…ほら返事して?」
「あっ、ひゃ、ひゃい…」
蕩けた顔で答えるエリカに、みほはさらに追撃をかけていく。
「さっきだってお姉ちゃんに本当のこと言いながら気持ちよくなってたよね?」
「あっ、あっ、ごめ、なさいっ、ごめんなさいっ!」
つい先程の記憶を巻き戻され、エリカはもじもじと悶えた。
本当ならすぐにでも毛布にくるまってしまいたいほどいたたまれないのに、身体が言うことを効かない。
みほの視線に晒されて膨らむ罪悪感と羞恥が、その言霊をエリカのより深い所まで入り込ませていく。
連動してせり上がっていく性感は、もはやエリカの制御できるレベルを遥かに超えていた。
「恥ずかしいこと言わされて気持ちよかったのかな?」
「で、でもっ、みほが、いえって……っ」
「エリカさん、知ってるよね。催眠をかけられていても本当にやりたくないことは無意識が拒否するって」
「ひっ、は、はひぃ……」
「ふふ……じゃあやっぱり気持ちよかったんだね。どうしようもない変態マゾ」
「あっ、あっ、あぁぁ……や、やぁ、だめぇ……!」
「どうしたのかな? 罵られながらいっちゃうの?」
「やっやっ、ごめんなさ、いっ、が、がまん、れきな、い……っ!」
身体の全てが性感帯になったように絶え間なく疼き、それをみほの声が、体温が、手が、匂いが、執拗に愛撫する。
エリカは耐えられずにみほの胸にすがった。
みほは震えるエリカの頭を抱きしめ、先程までと同じように撫で続ける。
「いいよ、エリカさん――イッちゃえ」
「――!! ひっ、あ、ああああぁぁぁっ!」
その瞬間、エリカはこの日で一番大きな声とともに昇りつめた。
瞼の裏を閃光が走り、過剰入力された快感がエリカの身体を駆け抜ける。
足をつっぱり、ぴくぴくと震えながら、エリカは激しすぎる快感の奔流に必死に耐えた。
少しでも気を抜けば、きっとまた気絶してしまう。それは嫌だ。
エリカは、もっともっとみほの声を聞きたかったのだ。
「はぁっ、はぁぁ……っ、あー……、あ、はぁぁぁ……」
「あーあ、いっちゃった……エリカさん、本当は自分が気持ちよくなれればなんでもいいんじゃないの?」
「えっ、ちっ、ちがう、ちがうの、みほっ」
息を整えていたエリカは、みほの言葉に慌てて反応する。
あれだけ深く強い絶頂の直後にも関わらず、自分でも驚くほどはっきりと声が出た。
しかしみほは同じトーンで続ける。
「違わないよね? だってエリカさん、どんなことされたって気持ちよくなっちゃうんだもん。ただ名前呼ばれるだけだって、なでなでされたって、耳元で囁かれたって、罵られたって」
「わっ、わたし、ほんとに、ほんとに、二人の、ことが……っ」
「ふーん。それならなんでそんなことしちゃうのかな?」
「私、みほがいなくなって、ずっと寂し、かった……っ!」
「!」
エリカの口をついて出たその言葉が、みほの動きをぴたりと止めた。
先程までの快楽にふやけた口調とは違っていたこと、そしてその――あまりにも素直すぎる内容に、みほは咄嗟に何も言い返せないようだった。
「やだ、きらわれちゃうの……やだよ……」
「……エリカ、さん」
「みほ、ゆるしてみほっ、わたし、わたしぃ……」
エリカはそのまま、みほの胸に顔を押し付けて泣き出してしまう。
みほは包み込むように、先程よりもずっと優しくエリカを抱きしめた。
「……だいじょうぶだよ、エリカさん。ごめんね。怒ってないよ。嫌いになんてならないから安心して」
「みほ……ひぐっ、ひっ、ひっく……」
「エリカさん……」
幼い子供のようにしゃくり上げるエリカを、みほは背中をさすってゆっくりとあやす。
そうしていると、足音が廊下を近づいてきた。
エリカは気付けなかったが、みほは耳ざとく聞きつけてエリカに告げる。
「……ほら、ちょうど来たみたいだよ」
「……?」
みほがそう言った直後、エリカの部屋のドアが開いた。
「エリカ。みほ」
そこに立っていたのは、まほであった。
「た、たい、ちょ……」
「お姉ちゃん!」
まほの姿を認めると、エリカは目に見えるほど動揺した。
先ほどの動揺で催眠状態が浅くなってきているのだろうか、それとも精神が不安定になっているのか。
みほが震える手を握り、指を絡めて来たおかげで少しだけ落ち着くことができた。
「た、た、たいちょ、ごめんなさい……」
「エリカ。お前は私達を誤解している」
「……へ?」
その言葉の意味がわからず、エリカは気の抜けた声をあげる。
混乱しているところに、みほが続いた。
「わたし達が……エリカさんの視線に気づいていなかったと思う?」
「そ、それって、どう、いう……」
まほが後ろ手にドアを閉める。直後に施錠の音が聞こえた。
「……お前のしていた行為について、全て知っていたということだ」
言いながら、まほはエリカの左側に腰掛けた。
ぎしり、とベッドが軋む。今や三人分の重みが、スプリングに負荷をかけていた。
「実はそうなんだ。黙っててごめんね、エリカさん」
「え、えと、あ……」
窒息したかのように口をぱくぱくと開閉しているエリカをよそに、まほは淡々と続ける。
「まず……試合中の無線データをダウンロードしていたのも分かっている。それも、私の車両のものだけ」
「わたし達の電話も盗聴してたんでしょ?」
「そのことがあって、お前の部屋のパソコンも監視していた」
「だから集めた音声でどんなことしてたのかも、筒抜けだったんだよ」
「何を買ってたかも全部知ってるし、それがどんなものかもちゃんと分かってる」
左右から次々につきつけられる真実はあまりにも衝撃的で、エリカの脳は半ば理解を拒んでいた。
自分が必死に隠していたつもりの秘密が、全て知られてしまっている。
それも一番最初の段階から、何もかも。
つまり、二人は知らないふりをして自分と話していたということである。特にまほに至っては三ヶ月近くにわたって座視していたと いうことになる。
「まさかあんなに効いちゃう体質だとも思わなかったし、よりによってわたしがここにくる日に解除を忘れてあんなことになってるなんて……思わなかったけど」
「……みほに言われるまでそんな状態だとは気づかなかった」
「ふふ、あんなにとろとろになってたのにね」
「な……なんで……」
エリカは恐る恐る疑問を口にしようとする。
知っているなら、なんで自分を追放するなりなんなりしなかったのか。
もしかして、それよりももっと怖い目にあうのだろうか。
二人の真意を図りかねて、いつしかエリカは怯えた表情を浮かべていた。
「じゃあ、まずは……お前が使っていたとかいうファイルを見せてもらおうか」
まほがそばに落ちていたエリカのスマホを拾い上げ、操作する。
しかし思ったように見つけられなかったようで、しばらく弄った後みほに差し出した。
「みほ、お願い」
「あ、うん……もうお姉ちゃん、まだ慣れてないの?」
「電話とメールしか使わないから」
「……あった。はい」
「ありがとう」
自分を挟んで行われる会話を、エリカはどこか夢の中の事のように眺めていた。
あまりにも日常的なやり取りのせいで、操作されているのが自分のスマートフォンであり、催眠音声などのファイルを目の前で探されているのだということを一瞬忘れそうになる。
まほは、音楽ファイルの一覧を表示されている画面を見せてきた。
「内容はみほに聞いたから分かっている。バカなやつだな……こんなものを自慰行為に使っていたのか?」
「は、はい……っ」
改めて証拠を提示されると、羞恥に身体が燃えてしまいそうだった。
だがそれ以上に、まほ本人に知られていたという事実がたまらなく恥ずかしく、たまらなく興奮した。
あれだけ必死に副隊長を演じていた自分の行為は全て無駄だったのだ。
まほには全てお見通しの状態で、自分だけバレていないと信じて振舞っていたのである。
そのことを思うだけでも、昏い快感でじわじわと内側を灼かれてしまう。
しかし、続くみほの言葉がエリカに冷水を浴びせることとなった。
「もういらないよね」
「え、えっ!?」
「ああ。これはもう必要ないな」
「や、ま、まってくださ、っ」
慌てるエリカだが、取り返すことはできない。
伸ばせば簡単に取れるだろうが、腕を動かそうと思えないのである。
「全部……ってどこだ?」
「ここで、こう。あとは「はい」を押すだけだよ」
「ん、ありがとう」
相変わらずどこか状況にそぐわないやり取りの中で、エリカの秘密は全て消去されようとしていた。
しかしまほの親指は、表示された「全て消去しますか? >はい >いいえ」という表記の上でぴたりと止まる。
「エリカ、消すぞ。いいな?」
「あ……あ……」
「ほら、はいって言ってごらん?」
「や、やめ、やめて……」
「ぜーんぶ消して、綺麗に、まっさらにしちゃおうね」
「ひっ、ひぅ」
涙目のまま言いあぐねているエリカに、まほは密着するようにして座り直す。
左肩に柔らかいものが当たり、みほのそれより少し低めの声が耳のすぐ側で語りかけてきた。
「全て消すんだ。私とみほの言葉を聞いて――」
「ひゃ、ひ……」
「――これは、命令だ」
「あっ、は、ひっ、ひゃ、いぃ……け、けし、ま、すぅ……」
命令。その言葉で、エリカは無意識下で続けていたであろう最後の抵抗を放棄した。
隊長の命令は、絶対。エリカにとっては考えるまでもない常識であった。
「みて、エリカさん」
みほの声に従い、スマホの画面を見る。
まほの親指が「>はい」を押す。
瞬間、全ての音声ファイルが消え去った。
「これでエリカさんは、まっしろ」
「――っ! いひぃっ、ひっ、あっ、あ゛ぁっ……あ、あー……」
最後に聞こえたみほの言葉で、エリカの意識は――その通りに、真っ白に染まった。
>
「エリカ」「エリカさん」
「ふぁ……」
いつから起きていたのか。それともまだ寝ているのか。
エリカは水の中にいるようにぼんやりとした感覚の中で、ただ朦朧としていた。
「聞こえるか?」「聞こえてるよね?」
左からは、まほの声。
右からは、みほの声。
作り物とは違う、吐息を伴った肉声である。
二人は、横たわるエリカにぴったりと寄り添っているようであった。温かく、柔らかい感触がエリカを挟んでいる。
「お前は今、深い、深い催眠状態の中にある」
「ふわふわしてる。とてもしあわせ」
「私達の声だけがはっきり聞こえている」
「わたし達の声が、すーっ……って、頭の奥に入っていく」
「そうすると気持ちいい」
「気持ちいい」
「声を聞くだけで気持ちいい」
「わたし達の声を聞くことは、気持ちいいこと」
「気持ちがいいことは、いいこと。そうだな、エリカ」
「ふぁっ、ふぁ……いぃ……」
二人の声は、もはやエリカにとって快感そのものであった。左右から交互に脳を犯される感覚が、すでに夢うつつのエリカをさらに塗りつぶしていく。
「身体中の力はもう入らない」
「糸が切れた操り人形みたいに、だらーんってしてる」
「その糸は私達の指に繋がっている」
「だからエリカさんはもうわたしたちのお人形さん」
「お前の身体はもう私達のもの」
「エリカさんの腕も、足も、お腹も、背中も、頭のなかも」
「全部私のもの」「全部わたしのもの」
「そうだな?」「そうだよね?」
「あっ、あっ、あぁぁぁ……」
不意にユニゾンされるだけで、エリカは軽く達してしまう。声、口調、内容の微妙な違いが心地よい混沌を引き起こし、エリカの頭をかきまぜた。
「私のものだから、お前は私の許可なしでは絶頂することができないのも当たり前。そうだな?」
「わたしのものだから、エリカさんはわたしが許可しなきゃ絶頂できないのは当たり前だよね? そうでしょ?」
「えっ、あっ……ひぁぁ……」
「そうだな?」「そうでしょ?」
「ひゃ、ひ……」
「それじゃ……始めるぞ、エリカ」
「準備は……いいみたいだね」
「今のお前は何を命令されてもそれだけで気持ちよくなってしまうだらしない雌犬だ」
「命令されることは気持ちいいことだもんね。エリカさん」
「首輪を付けられ、鎖で繋がれた私達の飼い犬」
「かわいいかわいい私達の飼い犬」
「ご褒美が欲しくてしっぽを振ってる」「いじめて欲しくてしっぽを振ってる」
「そうだな?」「そうでしょ?」
「い……っ、はぁーっ、はぁぁっ……」
深く深く息をつきながら、エリカはなんとか頷いた。二人の言葉が直接脳神経に働きかけ、イメージがありありと脳裏に浮かぶ。
「エリカがして欲しいことは、私たちはもう知っている」
「だから、エリカさんがしてほしいこと、してあげるね」
「私達の声を聞いているだけで、身体中の隅々までがむき出しの性感帯になってしまう」
「空気が触れるだけで、息をするだけで……わたしたちの声を聞くだけで、イッちゃいそうになる」
「あっ、あぁっ、あ゛っ」
「こうやって囁かれているだけで、子宮のあたりまで疼いてくる」
「声を聞くだけで、お豆も中も奥も全部、お腹の中も全部、体中全部、頭の中もぜーんぶ気持ちよくなる」
「いっ、ひっ、ひぃ゛ぃぃっ、きっ、ひぃっ」
「もっと気持ちよくなる」
「息をするだけでもっと気持ちよくなる」
「息を吸う度に気持ちいい、息を吐く度に気持ちいい」
「呼吸が気持ちいい、鼓動が気持ちいい」
「ひぃ、――っ、ふぅぅぅっ、はっ、あぁぁぁっ」
「お前はもういつでも絶頂できる」
「ふふ……エリカさん、イキたいよね?」
「い、いきたい、れすぅ……」
「だがまだ絶頂は迎えるな」「もうイっちゃってもいいよ?」
「ふぇ……!?」
左右から正反対の内容を突きつけられて、エリカは狼狽した。もうすでに正常な判断力を持ち合わせていないとはいえ、深い催眠は二人への服従を絶対にしていた。どちらかに従えば、どちらかに逆らうこととなる。その二律背反が、エリカの混乱を一層深めていく。
「私がいいと言うまで絶対に絶頂は迎えるんじゃない」「イキたいんだよね? だったらほら、イッちゃえばいいんだよ……?」
「あっ、あぁっ、うぅぅぅ……っ」
当惑が、涙となってエリカの顔を濡らす。合理的な答えなど、今のエリカに見つかるわけがなかった。
ただ、みほの言葉が断定的ではなかったことだけが救いであった。もし正反対の命令を出されていたら、エリカの心は壊れていただろう。
まほの声が、今度は少し遠のく。耳元から口を離したのだろうか。
「……みほ――」
「そうだね、そろそろ――」
まほの声は、何か不安そうな――心配そうな声だった。それに答えるみほの声も小さくなっていく。
エリカはこのまま二人が離れていってしまうような気がして、ただただ涙が止まらなかった。実際には二、三秒のことだったのだろうが、エリカにはそれが何時間にも感じられるほどであった。
「エリカ。あと3つ数えるまで我慢しろ。できるな?」
「あっ……はっ、は、いっ……!」
隊長の命令。エリカは深い催眠状態にありながらも、はっきりと、そして幸せそうに頷いた。
何より、二人の温もりが戻ってきたことがエリカには嬉しかったのだ。
「3つ数えるとふかーくふかーくいっちゃうよ……」
「3」「3」
絶頂へのカウントダウンが始まる。エリカの意識はほとんど快楽の渦の中に転げ落ちて、ただオーガズムの許可を待つだけの理性しか残されていなかった。
「あっ、がっ、あっあっあっ……」
「2」「2」
「あ゛ぁぁっ、あ、へぇっ」
「1」「1」
エリカは戻れないほどの高さへと一気に昇り詰めていく。今までにたどり着いたことのないほどの――
「ひっ、ひ――――」
「1」「1」
「い……っ!?」
登り切る直前、壁のような何かがそれを阻む。
「ひっ……!? いっ、ひぁぁぁ……!?」
「1、1、1、1、1」「1、1、1、1、1」
オーガズム寸前の状態の快感を何度も突き刺され、エリカはがくがくと痙攣した。それでもアクメを迎えることができず、後ろ髪を掴まれて引き戻されるようにして暴力的な波の中に囚われる。
しかしそれも、六回の「1」の後に解放されることとなった。
「ゼロ」「ゼロ」
「あ゛っ、あ゛あああぁぁぁぁっ! ぐっ、あ゛っ、いぃぃぃああぁぁっ!!」
豪雨の後にダムが決壊するように、溜めに溜められた快楽の濁流はエリカを押し流した。
「ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ」「ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ……」
「あっ、あ゛ひっ、いっ、イッて、ひぃぃっ、て、りゅ……ぅっ、ふぁぁぁあ゛ぁぁぁっ!!」
その言葉の度に累乗されていく快感に、エリカの全身はとろけていく。
脳裏を閃光が明滅し、その間隔がどんどん短くなる。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁ――――!! あ゛っ……」
獣のような絶叫を残して、ブレーカーを落としたようにエリカの意識は途絶えた。