悪神の魂を宿した兵藤一誠 作:岩喰う
眼をつぶると、僕は精神世界にへとやってきた。
「中々に面白い事をやっているな、一誠。」
そう言って来るのはアエーシュマお姉さんだった。
「別に面白くないよ。」
アエーシュマお姉さんの言葉に対して僕がそう言った。
「いやいや、
僕の言葉に対してタルウィお姉さんが如何にも楽しいといった顔をしながらそう言って来る。
「ふーん、そうなんだ。」
興味なさげにそう言っていると、アンラお姉さんがこう言って来る。
「それであの猫又の姉妹をどうするの?」
そう言って来るマナフお姉さんに対して僕はこう言った。
「どうもしないよ、あの二人の好きにさせるよ。」
僕の言葉を聞いてザリチュお姉さんがこう言って来る。
「どうして?あの二人はあなたのお陰で助かったのよ、好きにしてもいいんじゃない?」
それに対して僕はこう言った。
「それだと見返り目的で助けたんだと思われるじゃん、それじゃあ駄目だ。自分の意志で着いて来るなら問題は無いけど無理やりそんなことしたらあのゴミと一緒になっちゃうじゃん。」
僕の言葉を聞いたザリチュお姉さんが納得したようでこう言って来る。
「確かにそうね、ごめんなさい。」
「別にいいよ、あんまり気にしてないし。」
そう言いながら僕は自分の手を見つめる。
「それに・・・。」
そこから言いよどんでいると、アンラお姉さんがこう言って来る。
「捨てられた時の自分と重ねた?」
そう言いながら僕の顔を覗き込んでくるアンラお姉さんに僕はこう言った。
「少しね。」
そう言い返す僕の事を見ながらアンラお姉さんはクスリと笑って見せる。
「何?」
「何でもないよ。」
そう言いながらも笑みを浮かべ続けるアンラお姉さん。
僕はその事に対して疑問に思いながら意識を現実にへと戻していく。
黒歌SIDE
私は黒歌、猫妖怪の猫又の中でも仙術という仙人の力を使う事の出来る猫魈という種族にゃ。
私にはたった一人の妹がいる、名前は白音。
私のたった一人の家族、この子を守れるのであればどんな事でもするつもりよ。
そんな時、私達姉妹はある上級悪魔の貴族がやって来て眷属にへと勧誘してくる。
それを断ると、その悪魔は無理やり眷属にしようと襲い掛かってきた、それで私は白音を守るために未熟ながらにも仙術と妖術で抵抗するけど脇腹に深手を負ってしまう。
何とか白音にはバレない様に立ち回りながら戦うけれど、とうとう私達は追い詰められてしまう。
すると、そこへ一人の少年が現れた。
その少年はどこから現れたのか解らなかった。
すると、少年は悪魔の貴族にこう言った。
「ねぇ、オジサン達さあの女の子達に何してるの?」
少年が無邪気に問いかけると、悪魔の男はこう言って来る。
「フン、あの猫又のガキ共は偉大なる上級悪魔であるこの私の眷属になる事を拒んだのだ、痛めつけて力の差を解らせてやっている所なのだ。」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながらそう言って来る悪魔に対して私ははこう思った。
「{この悪魔は最低のクソだ。}」と。
「それじゃあ、僕も混ぜてよ。」
そう思っているとその少年がそう言いながら私達の方を見て来て思わず体をビクつかせてしまう。
「ほう、いいだろう。寛大な私に感謝するんだな。」
逆に悪魔の男は少年の言葉に機嫌を良くしたのかそう言った。
「うん、感謝するよオジサン。それじゃあ始めようか、蹂躙を。」
少年がそう言った瞬間、悪魔の後ろに控えていた部下の男が雑巾の様に絞り上げられて血をまき散らしながら絶命した。
あまりの出来事に私と白音、悪魔の男とその部下は呆気に取られてしまったが、少年はそれに構うことなく次の行動に移った。
少年が両手を合わせると、部下の女の身体から湯気が出てくる。
それに対して動揺する女だったけど、それはもう遅かったみたいで十秒過ぎた頃にはミイラの様に乾涸びて絶命をする。
その頃には私も白音も意識を取り戻して目の前の光景に目を疑ってしまう。
その瞬間、さっき殺した女の事を叫びながら部下の男の一人が涙を流しながら少年に襲い掛かっていくけど、その攻撃が少年に当たる事はなかった。
それは何故かというと、黒髪の別の少年がが靴に仕込んでいる刃物で男の腕を切り落としたからだ。
あの少年の仲間なのだろうかと思いながらその激痛に耐え切れずに大声をあげようとした男に対して少年はパチンと指を鳴らすと、男の口の中から見る見るうちに大量の植物が生えていく、しかもそれら全てが魔力を餌とする毒草である。
男は毒草に持っている全ての魔力を吸い尽くされて乾涸びて絶命をしてしまった。
残っているのは私達を除いて悪魔の男と部下の女の二人だけだった。
部下の女は恐怖で足が竦んでいるが、そんなのは少年にとっては関係なかった。
少年が指をなぞる様に指を動かすと、その女は眼・耳・鼻・口から血が噴き出して破裂した。
それは何故かは解らないけど、あの少年の何らかの力を使ったのは確かだ。
「ひ、ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
さっきまで自分達を甚振っていた悪魔の男は何とも滑稽で無様な悲鳴を上げながら地面にへと倒れてしまう。
「あっれ~、どうしちゃったのオジサン?そんなに青褪めた顔しちゃってさ。」
少年がそう言うと、悪魔の男はさっきとは一変して恐怖に完全に支配され青褪めた顔をしている。
「・・・・・・・・!?」
「ねぇ、黙ってないで何か言ったらどうなのさ?」
そう言って睥睨とした眼で男を見ながら少年は言葉を続ける。
「き、貴様は・・・い、一体・・・・何者だ・・・。」
言葉が切れながらもやっと絞り出してそう言って来る男に対して少年はこう言った。
「言った所で無意味でしょ、どうせすぐに死ぬんだから。」
そう言って少年は男に対して指差すと、額に穴が開き絶命した。
圧倒的な力で上級悪魔とその眷属をいとも簡単に蹂躙したその少年は何事もなかったようにこう言った。
「それじゃあ、アークディウス後処理よろしくね。後、何か役に立ちそうな物があったら教えてくれる?」
「かしこまりました。」
さっきまで悪魔を殺していたとは思えないほどの顔をしながらそう言っている少年に対して
その言葉の後、メイドの女はさっき上級悪魔の剣族の腕を切り落とした黒髪の少年と筋骨隆々の大男と赤髪赤目の少女と共に悪魔の死体の後処理にへと向かっていく。
それと同時にその四人の主と思われる少年が私達の方へと歩いて来る。
私は怯える白音を背中で隠すように守りながらいつでも攻撃出来るようにした。
すると、少年はこう言って来る。
「君達って何であいつらに狙われてたの?」
そう聞いて来る少年に対して私はこう言った。
「別に、アンタには関係ないでしょ。」
素っ気ない態度でそう言うと、少年は私の脇腹を指差しながらこう言って来る。
「まぁ、確かにそうだね。でも、あいつらに負わされたその傷ではもうまともには動けないでしょ?」
「・・・!!」
「姉様、そんな・・・!!」
少年の一言に私は顔を歪ませ、白音は悲痛な声を出す。
そこへ少年は更に言葉を重ねてくる。
「しかも、そのままにしておけば出血多量で一時間で死ぬよ。」
「そんな・・・!!」
少年の言葉に絶望に染まった顔をする白音。
すると、後処理を終えたメイド達が少年のもとにへと集まってくる。
「主、後処理完了いたしました。そして、"フェニックスの涙"二つほどが悪魔の男の懐に忍ばれておりました。」
「うん、ご苦労様。」
少年はメイド達に労いの言葉を言っている所に白音がこう言った。
「お願いです、黒歌姉様を助けてください。何でもしますからお願いします、お願いします、お願いします、お願いします・・・。」
「白音!?」
白音の行動に私は声を上げてしまった。
土下座をしながら少年に懇願する白音、すると少年が口を開いた。
「いいよ。」
そう言った後、少年は魔法陣を展開させてどこかへと転移していった。
転移してやってきた場所は何の変哲もない異空間の様に見えたけど何かが違う気がする。
そうやって考えていると、私はいつの間にか存在していた治療台に下ろされて傷口を晒すような形で寝かされる。
「それじゃあ、治療を始めようか。」
すると、そう言いながら少年はあの悪魔から奪った"不死鳥の涙"を取り出して私の傷口に落とすとさっきまで私を苦しめていた激痛と傷口は跡形もなく消えていった。
これが"不死鳥の涙"、さっきまでの傷がいとも簡単に癒えてしまった。
「はい、終わったよー。」
そう言いながら少年は涙の入っていた瓶を黒いオーラで消滅させる。
私はその黒いオーラを見て目の前にいる少年はさっきの悪魔よりも断然上である事を再認識させられた。
でも、それなら尚更確かめておかなければならばならないことがある。
「黒歌姉様を助けていただいてありがとうございます!!」
「気にしなくていいよ。」
目じりにうっすらと涙を浮かべている白音が少年にお礼を言い、少年は何事もなかったようにそう言っている。
その間に入るような形で私は治療台から体を起こしてこう言った。
「それでアンタは何が目的なのにゃ?」
私が睨みながらそう問いかけると少年は平然とした顔でこう言って来る。
「何も。僕はあの悪魔の事が気に入らなかったから殺した、ただそれだけだ。」
そう返答する少年に対して私はもう一度問いかける。
「私達を助けてアンタに何のメリットがあるって言うのよ。」
「何もないけど、それが?」
キョトンとした顔でそう言って来る少年に私はこう言った。
「じゃあ、何で助けたのかにゃ?」
私の言葉を聞いて少年は語り始める。
「僕は両親に捨てられた、理由は解らない。」
「「!?」」
少年の言葉を聞いて私も白音も驚きを隠せなかったけど、そんな私達を無視して少年は語り続ける。
「だけど、明らかに弟が生まれてからおかしくなっていた。」
「「・・・。」」
語ってくる少年の言葉に私達は口を挟む事が出来なかった。
そして、語り続ける中で少年は自分の右の手のひらに向けた。
「捨てられたあの日、土砂降りの雨の中を傘を差さずに歩いていた。雨のせいで体の熱は奪われ、疲労のせいで倒れこんでしまった。」
「そんな時だ、僕の目の前に現れたお姉さん達が助けてくれた。」
この後、私と白音は少年の口から驚きの言葉を聞くことになった。
「そのお姉さん達の正体はゾロアスター教の悪神アンラ・マンユ、ザリチュ、タルウィ、アカ・マナフ、ドゥルジ、アエーシュマ、タローマティ、サルワ、アパオシャの九柱の神だった。」
私は耳を疑った、悪神とはいえ神がたった一人の人間に肩入れするというのは余りにも理解に苦しむ。
ましてや、悪神はその呼び名の通り"悪の神"なのだ。
たとえ気紛れだったとしても、人間の子供を助ける事をするのだろうか?
答えは否である。
だが、目の前にいる少年の力はあまりにも規格外であり、従えている四人の従者の様な存在も主の発言に動揺が見られないという事は本当の話なのだろうと理解出来た。
驚愕の発言をした少年は話を続ける。
「しかも、その九柱の悪神の魂と僕の魂とが適合しているがゆえに悪神達の力を授けて貰って行使する事が出来る。」
「だからこそ、この力を受け取った後悪神達との修行をつけて貰って力を得た。」
「だけど、本当に強くなれたのか解らずじまいだった所に度に出たらいいと言われて眷属を作った後に冥界にやって来たら黒歌達に出くわしたって所だよ。」
そう言い終えると、少年はオーラで作った椅子に座る。
「それで助けた理由ってのはただ純粋に君の事を思っている君の妹に頼まれたから。ただ、それだけだよ。」
少年はそう言って目を瞑ると、眠ってしまった。
私は少年の傍に控えている四人の従者に話しかける。
「ねぇ、アンタ達は本当にあの子に作られたの?」
そう問いかけると、アークディウスと呼ばれていたメイドがこう言って来る。
「えぇ、主は我ら四人を生み出されました。そして、我らに名と刻印を与えてくださった。」
すると、赤髪の少女がこう言って来る。
「それでお前らはこれからどうするの?」
その言葉に私達は口を閉ざしてしまう。
そう言って来る少女の言う通りでこのままではさっきと同じで別の悪魔に無理やり勧誘され、断れば眷属になると言うまでいたぶられるだろう。
そう考えていると、筋骨隆々の大男がこう言って来る。
「ならば、俺達の主と共に行動をするというのも一つの手段ではある。」
その言葉を聞いて私と白音をその大男の方を見る。
「何を考えているの?」
疑いの目を向けながらそう言う私に大男はこう言って来る。
「俺はただ提案を出しただけだ、それを選ぶのかはお前達次第だ。」
「確かにな、ベレイルヴァッロの言う通りだぜ。」
ベレイルヴァッロと呼ばれる大男の言葉に同意するかのように言って来るのは悪魔の腕を切り飛ばした黒髪の少年。
すると、さっきまで眠っていたこの四人の従者の主である少年が目を覚ました。
お姉さん達との会話を終えて現実世界に意識を戻した僕はこう言った。
「ふぁ~あ、それで君達はどうするの?」
僕がそう言うと、黒歌が白音と視線を交わした後こう言って来る。
「私達はアンタについていくわ。」
そう言って来る黒歌に対して僕はこう言った。
「いいよ。」
僕がそう言うと、面を食らったような顔をする黒歌。
「本当にいいのかにゃ。」
「あぁ、別に拒む理由もないし。」
そう言って僕は椅子から立ち上がって黒歌達の前まで行き、手を差し出す。
「僕の名前は一誠、イッセーって呼んでくれ。これからよろしくな、黒歌、白音。」
「わかったにゃん、イッセー。」
「分かりました、イッセー兄様。」
そう話しながら僕達は手を握り合うのだった。
こうして、僕は新しい家族を手に入れるのだった。