12月31日、大晦日。初音島鎮守府全体では、年越しの準備が着々と進められていた。その指揮を執っていたのは、吹雪である。
祐輔はどうしたのかと言えば、今は自室にて待機状態だ。今年の大晦日は、祐輔は完全に休ませてアリア提督と吹雪達で準備することを決めたのだ。
「吹雪総秘書艦! ここは、こんな感じでいいですか?」
「ん……そうだね、バッチリ!」
海防艦娘の一人、対馬の問い掛けに、吹雪は親指を立てながら頷いた。吹雪は全体の指揮で内装を。アリア提督は外を担当している。
その時、通信で
『吹雪総秘書艦、芳野さくら博士がお出でになられました!』
「え、もう!? 分かりました、通してください!」
アリア艦隊の秋月からの通信に驚きながらも、来客たるさくらを通すように告げた。そして、内装の指示を出しながら待つこと、数分後
「やっはろー! みんな、元気かにゃー?」
と高めのテンションのさくらが、大食堂に現れた。
「お久しぶりです、芳野博士」
「やっほー、吹雪ちゃん! あれ、祐輔くんは?」
「祐輔さんでしたら、今日はお休みにして、自室に明日奈さんと一緒に居ますよ」
さくらの問い掛けに吹雪が答えると、さくらは
「んー……だったら、行かないほうがいいかな……あ、後で音姫ちゃんと由夢ちゃんも来るからね」
と伝えた。それを聞いた吹雪は
「なら、桜内少尉を呼びますか? 今は、年越しそばとお正月の料理を作っている最中ですが」
とさくらに問い掛けた。
「あ、そうだね! 久々に、義之くんに会いたい!」
「分かりました、では……桜内少尉、今大丈夫ですか?」
『吹雪総秘書艦、なんですか?』
吹雪が呼び掛けると、すぐに義之が応答した。
「実は、今しがた芳野博士がいらっしゃいまして、桜内少尉に会いたいと」
『え、さくらさんが!? わかりました、麻耶と一緒に行きます!』
義之がそう言った直後、通信の向こう側で一緒に居たらしい比叡や間宮に謝り、手伝っていたらしい麻耶に声を掛けるのが聞こえた。
金剛型戦艦娘の二番艦、比叡。提督達の間ではメシマズ勢と知られる彼女だが、実際は料理は凄く上手なのだ。極一部を除いて。
その一部というのが、カレー。何故かレシピ通りに作っても、
そして比叡は、海軍としてカレーが作れないことに酷く落胆していた。今も時々特訓しているのだが、一向に向上の傾向は見えない。
「さくらさん! お久しぶりです!」
「お久しぶりです、芳野博士」
大食堂にやって来た二人は、さくらを見ると駆け寄り挨拶した。
「麻耶ちゃん、そんなに堅苦しくなくっていいんだよ? どうせ、もうすぐで家族になるんだからね!」
「さ、さくらさん!」
「うぅ……」
さくらの言葉に、義之と麻耶は顔を赤くした。
「おや、まさか……」
「準備してるみたいだよー?」
吹雪が視線を向けると、さくらが嬉しそうに語った。昨年の法改正により、結婚出きる年齢は下げられており、二人はそれをクリアしている。
「それはそれは……おめでとうございます」
「せ、正式にはまだですよっ」
吹雪の言葉に義之は反論するが、麻耶は脇に抱えていたバインダーで顔を隠している。
そんな二人が初々しくて、吹雪は微笑んだ。そこに直哉が現れて
「吹雪、海防艦寮、駆逐艦寮、軽巡洋艦寮の大掃除は終わったぞ」
と報告してきた。
「ありがとう、直哉。島風ちゃんと夕張さんの部屋はどうだった?」
「予想通り、汚部屋だったからな……徹底的に掃除した。どうやったら、あんなになるんだか」
吹雪の問い掛けに、直哉は呆れた表情を浮かべながら答えた。島風と夕張の二人は以前から片付けが下手で、気付くと待機部屋やよく居る場所には物が散乱している。
今日、その二人の部屋は重点的に掃除したのだ。
「まあ、予想通りだね……後は、重巡洋艦、戦艦、空母、海外艦寮だけど……」
と吹雪は、鉛筆の後ろで頭を掻いた。そこに、古鷹、長門、蒼龍、ビスマルクが来て
「吹雪ちゃん、重巡洋艦寮終わったよ」
「戦艦寮も終わった」
「空母寮、終わりー!」
「海外艦寮も、問題なく終わったわよ」
と報告してきた。それを聞いた吹雪は、バインダーに挟んでいた紙のチェック欄にレ点チェックを入れた。
「よし、大掃除は終了!」
吹雪は大掃除と書かれた部分の横に、終了と記入。気合いを入れて
「後は、無事に年末を過ごすだけ! みんな、お願いね!」
『はーい!!』
吹雪の掛け声に、大食堂に居た艦娘達は一斉に答えた。
ゆったりと、年末を過ごしていく。
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