※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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年末2

吹雪達が年末年始の準備を進めている時、祐輔と明日奈はと言えば、朝から自室でゆっくりとしていた。とはいえ、祐輔は本棚の整理もしているのだが。明日奈と過ごす中で、自室に置いてある本が増えたので、分野別に分けていた。

 

(だけど、本当に色々と増えたなぁ……)

 

祐輔は一冊ずつ手早く確認しながら、分けていく。その時

 

「あた」

 

一冊の本が、祐輔の頭に当たった。見てみると、青い装調の大きな本。少し埃を株っている。

 

「大丈夫?」

 

「はい、大丈夫です……あ、これは……」

 

明日奈に答えながら祐輔は、中を確認するために開いて、思わず声を漏らした。二人の視界に入ったのは、大分幼い祐輔だった。

 

「これ……」

 

「僕がさくらさんに引き取られて、初音島に来てすぐの頃ですね……」

 

その写真に写っている祐輔は、部屋の隅で一冊の本を持っていた。うっすらと見える題名は、子供が読むには不釣り合いな戦術機に関する本である。

しかし明日奈が気になったのは、それよりも祐輔の表情だった。子供だと言うのに、無表情で目にも意志を感じない。

 

「……」

 

「この時の僕は、自分を責めて……生きる意味を見失ってましたからね……さくらさんや音姫さんがよく気にかけてくれてましたが……」

 

明日奈が沈痛な表情を浮かべていると、祐輔は説明しながらページを捲った。次のページの写真では、音姫や由夢、義之と遊んでいたり、昼寝しているらしい祐輔のお腹の上ではりまおが寝ていたりする写真があった。だが明日奈は、一枚の写真を見て

 

「祐輔くん、この女性は……」

 

と指差した。その写真に写っているのは、長い黒髪に音姫に似た顔立ちの女性だった。

 

「ああ……その人は、由姫(ゆき)さんと言います……音姫さんと由夢ちゃんのお母さんです」

 

「この人が……あれ、でも前に朝倉家にお邪魔した時は、居なかったような……」

 

「……由姫さんは、病気で亡くなってます……この写真の数ヵ月後に……」

 

「え……まだ、若いのに……」

 

予想外の言葉に、明日奈は驚いた。写真に写る由姫の見た目から察するに、漸く三十代後半といったところだろうか。

 

「……生まれつきの遺伝子のご病気だったそうで、本当なら子供が産まれるかも怪しかったそうです……だけど、二人も産まれて嬉しかったって、言ってました……とても優しい方で……義之だけでなく、僕も本当の子供みたいに接してくれました……」

 

「……そっか」

 

確かに、二枚目の写真では祐輔を膝に乗せて由姫が絵本を読んでいる。その表情は、優しさに満ちている。

 

「……考えてみれば、由姫さんが居たから……僕は少しずつ戻れたのかもしれません……」

 

祐輔はそう言って、更に一ページ捲る。体操着を着て走っていたり、桜公園でさくらや純一と花見をしていたり、少しずつだが、幼い祐輔にも笑顔が戻ってきていた。そんな時、一枚の写真を見て

 

「祐輔くん……これ……」

 

と指差した。その写真に写ってる祐輔は、一枚のポスターを見ていた。そのポスターは、衛士を募集するポスターだった。

 

「……これを見たから僕は、衛士訓練校に入ることを決めました……僕一人では、大したことにはならないとは思いましたが……本来なら最低でも中学校卒業が前提条件でしたが、僕の戦術機適性が非常に高かったこともあり、戦時特例により衛士訓練校に入校出来ました……そこからは、明日奈さんも知っての通りです」

 

訓練の途中で、深海棲艦の大規模侵攻が起きて、数多の訓練生が繰り上げ任官。最前線に多くが配置され、初戦で約半数近くが戦死。

祐輔は激戦地を担当する遊撃機甲部隊に配属となり、生存するも、部隊は全滅。その後も部隊の全滅を繰り返しながら、明星作戦まで生存するも、核爆弾に巻き込まれ、表向きは戦死となるが、実際は非合法部隊に送られる。

 

「……祐輔くん……本当に、よく生きてたね……」

 

「……守られて、ばかりでしたから……」

 

明日奈の言葉に答えながら、祐輔はアルバムを閉じて、一番下の棚に置いた。

 

「だから僕は、衛士から提督にもなりました……守られてばかりの僕でも、誰かを守られると思いたかったから……まさか、衛士兼提督になるとは思いませんでしたが」

 

「そうだね」

 

祐輔の言葉に、明日奈は苦笑しながら同意した。普通だったら、提督業務の方が優先されるからだ。だが祐輔は、提督と衛士を兼ねている。

それは単に、祐輔が提督としての能力でも衛士としての能力も優秀だったから、成立したことである。

極東五指に入る衛士としての力量に、防衛の最前線を維持し続ける指揮能力に、艦娘に好かれる性格。

それらが、今までの第一初音島鎮守府を支えてきた。

 

「……来年の一月末だよね、陽光作戦」

 

「はい……詳しくは知りませんが、殿下が発案された大規模作戦のようです……恐らくですが、あの名も無き島の姫級の攻略作戦でしょう……国内の安寧を殿下は願っていましたから……」

 

陽光作戦(オペレーションサンシャイン)。悠陽殿下が発案した国内の大規模作戦。そうなると、考えられるのは極僅かだ。

北方と沖縄方面。そして初音島から約100km離れた名も無き無人島の姫。

未だに、帝国は国内に深海の拠点があるのだ。

それらを攻略しない限り、帝国は深海の大規模侵攻の危険がある。

 

「……さて、そろそろ向こうの進捗具合を確認しましょうか」

 

「あ、そうだね」

 

年末はゆっくりと時間が過ぎていく。

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