年末パーティーも終わりに差し掛かり、一部の艦娘は初詣に向かったり、寝るための準備を始めていたりしていた。そんな中、祐輔は明日奈と顔を見合わせると立ち上がり
『えー、既に寝てる子が出始めてるので、現時点で年越しパーティーは閉幕とします。このまま二次会になったりとするのを自由とします』
とマイクを使い宣言し、祐輔は講堂から出た。そうして、外に先に出ていた明日奈と合流し
「では、行きましょうか」
「うん♪」
二人は私服に着替え、胡ノ宮神社に向かった。
胡ノ宮神社は、初音島唯一の神社で、以前までは音姫も時々手伝いに来ていた。
「ふう……大分寒いですが、大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ。鍛えてるしね」
祐輔が気遣うと、明日奈は朗らかに返答した。そして祐輔は、腕時計を見た。
現在時刻は、23時55分。軍事式で言うと、フタサンゴーゴー。後五分で、年が変わる。
「あ、列が動き始めたよ」
「あ、本当ですね」
参拝客達の列が動き始め、祐輔と明日奈はゆっくりと移動を開始した。境内では屋台が列び、甘酒やリンゴ飴、チョコバナナ等を売っている。
二人はそれらの屋台を眺めながら、進んでいくと、不意に周囲の人達がカウントダウンを始めた。
どうやら、時間が来たようだ。
「5……4……3……」
「2……1……0」
『ハッピーニューイヤー!!』
回りの人達は楽しそうに新年を祝い、祐輔と明日奈は顔を見合わせて
「新年、明けましておめでとうございます、明日奈さん」
「明けましておめでとう、祐輔くん」
と手を繋いだ。
少し時は遡り、鎮守府
「ニャフフフフー……直哉ぁ」
「誰だー……こいつに酒飲ましたバカは」
顔を赤くした吹雪が、直哉に絡んでいた。どうやら、誰かに酒を飲まされて酔っているらしい。すると浜風が近寄ってきて
「それが……隼鷹さんが吹雪さんの飲み物に混ぜてたらしく……」
と説明してきた。それを聞いた直哉は、真顔で
「
と問い質した。
「あちらで、妙高さんにお説教されてます」
とある方向を指差した。視線を向けると、確かに妙高が隼鷹を正座させて説教していた。それを見た直哉は、深々と嘆息し
「しゃあない……戻るか」
と言って、吹雪を背負った。
「直哉ぁ……もっと飲むのぉ……」
「はいはい、明日を地獄にしたくないなら、止めとこうな」
吹雪はもっと飲みたいらしく直哉に絡むが、そんな吹雪を直哉は慣れた様子で止めた。そして近くに居た一夏と弾に
「悪い、吹雪を部屋に連れ帰って寝かしてくるわ」
「おーう」
「あいよー」
二人の返答を背に聞きながら、直哉は仕官寮に向かって歩き始めた。そんな直哉の隣には、浜風が居て直哉は
「浜風ちゃんよ、向こうに参加してていいんだぞ?」
と言った。出る時に見た時、まだ講堂には陽炎型が多数居て中には機材を使ってカラオケ大会に興じているのも居たからだ。
「いえ、そろそろ部屋に戻ろうかと思っていたので……それに、部屋の鍵開けられますか?」
浜風のその言葉に、直哉は僅かに黙考し
「まあ……確かに居てくれたほうが助かるが……」
と同意した。人を背負ったまま鍵を開けたりするのは、かなり苦労するのだ。そういう意味では、浜風が居たほうが苦労しなくて済む。
「えへへー……直哉の背中、暖かいー」
「はいはい……頼むから、吐くなよー」
吹雪が直哉の背中に顔を擦り合わせていると、それを見ていた浜風が
「吹雪総秘書艦が、そんなに甘える姿……初めて見ました」
「ん? こいつ、根っこは甘えん坊だぞ? 最近は、立場があるから我満してるだけだ……」
「立場……総秘書艦……ですか」
「ああ……俺だって、衛士……それも、大尉……今はまだ小隊の隊長だが、近いうちに増員が配置されて、中隊になるらしい……そうなると、中隊指揮官として部隊を指揮しないとならない……部下を死なせないように……本音を言うと、今から考えただけで、少し気が重くなるが……やらないといけない……今は篁少佐が居るが、本来は俺が戦術機隊の責任者だ……だったら、押さえ込んででもやるさ……っと、すまんな。こんな話をして」
「いえ、大変有意義な話でした。あ、この部屋ですか? 鍵は?」
「悪い、右の胸ポケットにある」
直哉の言葉を聞いた浜風は、直哉の右胸ポケットに手を入れて鍵を取り出すと、解錠してドアを開けた。
部屋に入ると直哉は、吹雪をベッドに座らせた。すると吹雪は、両手を広げて
「直哉ぁ……着替えさせて?」
と首を傾げた。
「はいはい……」
そんな吹雪に嘆息しつつ、直哉は手慣れた様子で吹雪の制服を脱がしていく。その間に浜風は、改めて部屋を見回した。
二人部屋にしては、少し広い部屋。入って部屋の左奥に大きめのベッドがあり、その少し手前に箪笥が二つと大きめの本棚。
右側の壁際に、机が二つ並んでおり、机の上の書籍から奥側が吹雪、手前が直哉と分かる。
几帳面な二人らしく、部屋は綺麗に保たれている。
「いや、ありがとうな。浜風ちゃん。おかげで助かった」
「いえいえ」
着替えさせ終わった直哉は、軽く頭を下げてきたので、浜風も頭を下げた。その時、ピピッと電子音が聞こえた。
「ああ……明けましておめでとう」
「え……ああ、なるほど。明けましておめでとうございます」
どうやら、年を越したようだ。
「小雪には、起きたら言うか……今年もよろしく」
「はい、今年もよろしくお願いします」
ゆっくりと年を越していく。
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