1月9日
初音島鎮守府は完全に通常に戻り、様々な業務が行われていた。その中のひとつに、新しく着任した新人もあったのだが
「まさか、全員知り合いだとは……」
「俺も予想してませんでした……」
なんと、全員が直哉、一夏、弾の知り合いだったのだ。篠ノ之箒は産まれた頃からの知り合いで、家族レベルでの付き合いがあり、鳳鈴音は小学生から。更識簪は訓練校で同じ班だった。そして、シャルロット・デュノア、セシリア・オルコット、ラウラ・ボーデヴィッヒの三人は、欧州派遣の時にドーバー海峡基地で知り合ったらしい。
そして、嵐により着任が遅れているが、来てない人員。ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、ベルベット・ヘルの二人は国連軍の欧州派遣部隊だったらしい。
それを直哉から聞いた祐輔は
(なーんか、変な思惑を感じるけど……今回は素直に受け入れよう。おかげで、今まで人数が足りなくて出来なかった試験項目が出来るし)
と考えていた。唯依の部隊以外は基本的に小隊編制だったので、出来ない試験内容が幾つかあったのだ。
それが出来るようになると考えれば、悪いことばかりではない。
「まあ、部隊編制に関しては直哉君に一任します……あと、吹雪ちゃんは自分でなんとかしてね」
「ガンバリマス」
祐輔は敢えて視界から外していたが、机に座って書類を捌いている吹雪は無表情である。実は新人が着任した際にひと悶着あったのだが、今は割愛させていただく。
直哉が視線を向けても、見向きすらされないことから、怒り心頭だという事が分かる。
(本当、どうしよう……)
直哉はどうやって吹雪の機嫌を治そうかと、心中で頭を抱えた。中々怒らない吹雪だが、一度怒ると簡単には直らないのが吹雪だった。
「取り敢えず、彼女達に与える機体はこれ……隼鷹だ」
「聞いたこと無い機体……新型機ですか」
「そう。試製04式、隼鷹。天枷研究所製の第二世代戦術機だ……」
「……なるほど、HI・LOWミックス構想のLOW側を担う機体ですか……流石は、かの天枷研究所製の機体ですね……此ほどの性能とは……確かにこれならば、不知火や弐型に追随出来ますね」
直哉は、祐輔から手渡された隼鷹の性能が書かれた書類を見ていた。確かに、第二世代戦術機は機動性の高い機体だが、隼鷹は第二世代でも最強と呼ばれるFー15E。ストライクイーグルに比肩するだろう、というのが直哉の分析だった。
「分かりました。試製04式、隼鷹の試験運用の任務を受領します!」
「うん、頑張ってね」
敬礼した後直哉は、祐輔の執務室から去っていった。それを、祐輔と明日奈が見送っていると
「すいません、トイレに行ってきます」
吹雪がそう言って、立ち上がって出ていった。
それを見送った二人は、顔を見合わせて
「あれなら、大丈夫そうですね」
「そうだね」
と微笑んだ。その後、廊下。直哉は一人、隼鷹の書類を見ながら歩いており
(実質、準第三世代戦術機だな……この性能ならば、問題なく中隊戦も可能だな……部隊編制は……)
と考えていた。その時
「直哉!」
と自分を呼ぶ声を聞き、直哉は振り返った。それと同時に、下腹部に衝撃を感じて、視線を僅かに下に向けると、吹雪が抱き付いていた。
「吹雪……」
「……ごめん。いきなりで、驚いちゃって……」
直哉が驚いた様子で呼ぶと、吹雪は囁くようにそう言った。
「いや、あれは俺も驚いた」
直哉が言っているのは、新人が着任した時のことだった。新人の一人、シャルロット・デュノアが突如として直哉に飛び付いたのだ。余りにも予想外かつ突然だったので直哉も反応出来ず、直ぐに引き離せなかったのだ。
それが吹雪からしたら、受け入れているように見えてしまった。しかし、冷静に考えてみれば、あんな事が起きれば、誰でも驚きで固まるに決まってる。と吹雪も気付き、謝ったのだ。
「それで、あの子とは……ドーバー海峡基地だったっけ?」
「ああ……初めて会ったのは、地下にあった射撃訓練場だったな」
直哉がシャルロット・デュノアと初めて会ったのは、地獄門ことドーバー海峡基地でのことだった。直哉は規定されている射撃訓練を行おうと、地下の射撃訓練場に向かって、そこで出会ったのがシャルロットだった。
当時シャルロットはまだ訓練生で、自主練をしていた。
そこで直哉は、構え方を指導したのが、シャルロットとの付き合いの始まりだった。
そこから度々、直哉は銃の構え方から格闘戦等を次々にシャルロットに指導した。そんなある日、直哉は地下射撃場に向かおうとしていた。その時、直哉はドアが僅かに開いていた部屋から、くぐもった悲鳴が聞こえて、ドアを蹴破って突入した。その部屋では、ドイツ軍衛士がシャルロットを押し倒し、着ていた制服を破いていた。
そこを、直哉が救助。その衛士は、懲罰部隊行きとなった。そしてシャルロットは、暫く後方の基地にて訓練することになり、直哉達はそのまま任期を終えて帰国したのだ。
「なるほどね……その時にあの子は、直哉に……」
「そうなんかね……俺には分からないが……」
吹雪の推察を聞いた直哉は、不思議そうに首を傾げた。
「それで、欧州の他の二人は?」
「えっと、セシリア・オルコットとラウラ・ボーデヴィッヒも同じくドーバー海峡基地だ。二人も訓練生で、俺達三人でちょっと指導した位だな。あ、オルコットはイギリス貴族の娘らしく、ボーデヴィッヒはドイツの軍人家系の養子らしい」
「……デュノアってもしかして、フランスの第三世代戦術機。ラファールの開発企業、デュノア社の娘? 全員、凄い身分……」
「ああ、そういえばそうだな……なんか、変な思惑を感じるな……」
吹雪の言葉を聞いた直哉は、思案顔を浮かべた。確かに、そのような身分の娘達が三人も来たとなれば、そう考えても不思議は無いだろう。
「取り敢えず、直哉……今夜、ちゃんと証明してよね」
「お姫様のご要望とあらば」
二人はそう会話すると、短く口付けして別れた。
そして、直哉は
(……更に国際色豊かになるな、この鎮守府)
と考えたのだった。
どういう話を書いてほしいですか
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