※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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作戦準備と不穏

1月16日、午後1時。初音島鎮守府の大講堂に、第一と第二鎮守府の全艦娘が集まっていた。その数、約300名。その全員が、一様に緊張した表情を浮かべていた。

すると、壇上に祐輔が姿を見せて

 

『時間になりましたので、始めます。これより、大規模作戦……陽光作戦の概要を説明します』

 

と説明した。その瞬間、空気がピリピリとした物に変わった。陽光作戦、帝国国内では久しぶりの大規模作戦だ。それも、作戦を発案したのは現政威大将軍たる悠陽だ。緊張するな、という方が無理だろう。

 

『陽光作戦の目的は、帝国国内にある深海の大規模拠点の攻略。その場所は……ここです』

 

祐輔はそう言って、パソコンを操作。すると、祐輔の背後のスクリーンに、地図が表示された。その場所というのは、初音島から南に約100kmのあの島だ。

いよいよ、長年帝国の喉元に突き付けられた剣の切っ先の排除が行われるのだ。

 

『勿論ですが、我々も総出撃体制を取ります。そして、今回の作戦に合わせて、この島に名前が付けられました。名は、千州島(せんしゅうとう)』

 

千州島、それが深海棲艦が支配する島に付けられた名前。何人かの艦娘は、その名を小さく呟いている。

そして祐輔は、新たにパソコンを操作して

 

『今回の作戦には、国内の全鎮守府と国外の鎮守府から攻略部隊が動くようです。そしてなにより……殿下が総指揮を執ります』

 

祐輔のその言葉に、講堂内に動揺が走った。まさか、政威大将軍が総指揮を執るなど、予想していなかった。

 

『なお今作戦の間、僕の艦隊の指揮は明日奈さんに一任します』

 

祐輔のその言葉に、講堂がザワついた。なぜ、祐輔が指揮をしないのかと。

 

『僕ですが、衛士として参加します。参加する部隊は、大気圏降下部隊(オービットダイバーズ)』

 

祐輔のその発表に、一部は動揺した。大気圏降下部隊、狭き門の衛士の中でも、更に狭き門の部隊。攻略部隊の中でも、損耗が激しい部隊。その生還率は、約20%。つまり、108機投入しても、20機しか帰ってこないのだ。

 

『投入タイミングは、作戦開始後に公開されます。恐らくですが、深海の対空艦と砲台がある程度まで減ったら、投入されるでしょう……』

 

その言葉に、艦娘達はグッと拳を握った。なにせ、自分達の活躍如何によって、味方戦術機部隊の生還率が大きく変わるのだ。ならば、目に見えた対空艦や砲台は全て破壊する、艦娘一同はそう意気込んだ。

 

『作戦開始日は、二週間後の1月30日です……この作戦の成果には、この国の命運が関わってます。皆さんの奮闘に期待します』

 

その言葉の直後、全艦娘達は敬礼した。

そして、一週間後。祐輔は執務室にて書類を捌いていた。膨大な書類は、資源の輸送・艦隊の練度上げ・改装、その他諸々の書類を捌いていた。

 

(今回の作戦。相当大規模だな……帝国4軍だけでなく、国連軍に大東亜連合軍。そして、アメリカ軍が参加する……参加予定艦娘の総数は優に2000を超える……戦術機は、その3倍以上……国内の総備蓄弾薬の半分を投入予定……殿下も思い切ったな……)

 

祐輔がそう考えていると、吹雪が

 

「祐輔さん。面会希望だそうです」

 

と少し困惑した様子で告げた。それを聞いた祐輔は、書類を捌いたまま

 

「誰か分かる?」

 

と吹雪に問い掛けた。すると、吹雪が

 

「それがその……陸軍参謀本部の中将さんだと……」

 

と告げ、それを聞いた祐輔は手を止めた。

 

「……参謀本部の中将……?」

 

「はい。祐輔さんに大事な話がある、と……」

 

祐輔が怪訝な表情を浮かべると、吹雪はそう答えた。気付くと、明日奈も怪訝な表情をしている。少し考えた祐輔は

 

「……いいよ、通して」

 

と促した。それから数分後、応接室にその中将。

陸軍本部参謀本部統括、荒紙晋吾(あらがみしんご)中将が来た。

 

「ようこそ、荒紙中将。お席へどうぞ」

 

祐輔は着席を促しつつも、強く警戒していた。

荒紙晋吾中将。陸軍の軍人の中でも、かなり過激な軍人の一人だった。反米派の一人にして、生粋の国粋主義者。そして何より、反艦娘を掲げる一人であった。

その証拠に、今も部屋の隅に待機している大淀に侮蔑的な視線を向けている。

 

「して、荒紙中将。今日は何の要件で、当鎮守府に?」

 

「要件は一つだ、榊原中将……君に、我が派閥に属してほしい。君の衛士としての腕前は貴重だ。艦娘ごときの指揮官に収まるなど、勿体ない」

 

その言葉に、祐輔は予想通りと思った。自身の派閥への勧誘と艦娘を下に見た発言。

 

「申し訳ありませんが、自分は今の立ち位置に満足しています。元々は、繰り上げ任官の衛士が、今は提督という立ち位置。十分過ぎる出世と言えます。しかし、荒紙中将。先の発言は、艦娘保護法に抵触すると、自分は思うんですが?」

 

「艦娘保護法? そんな法、何時でも破棄出来る。今こそ、軍は我々のような純粋な人が担うべきなのだ。艦娘などという訳の分からん存在は切り捨てるか使い潰し、戦術機を前面に押し出す。その筆頭には、君のような若く腕前が立つ者が担うべきだ。そうすれば、後は私がどうにでもしよう。君の望む報奨を、望むままに与えてやる」

 

荒紙中将のその言葉に、祐輔はある確信を抱いた。

それは

 

「荒紙中将……貴方は、統帥派ですね?」

 

統帥派。それは、かの世界大戦時に、陸海軍双方に与えられた権利、統帥権から来ている。そして統帥権というのは、所謂事後承諾という形にするための権利だ。しかもその統帥権は、時の天皇と政威大将軍が与えた権利で、要するに天皇が承諾した、という扱いの権利である。なお海軍側は、その統帥権を即時返還しているが、陸軍はそのまま保持。結果、それが世界大戦時に災いしたのだが、今は割愛させていただく。

 

「……君がなにを言いたいかは分からないが、我が派閥に所属してくれれば、便宜を図ろう。どうだ?」

 

「何度も言いますが、お断りします……それに、ご存知ですか? 悠陽殿下は、その統帥権を陸軍から剥奪しようと考えているようですが?」

 

祐輔がそう言うと、荒紙は鼻で笑い

 

「それこそ、統帥権への干犯である。我々の統帥権は、時の天皇陛下から我々に与えられた権利。それを奪うなど、政威大将軍と言えどもさせん。それに、政威大将軍が代わったら、どうなるか分かるまい?」

 

荒紙のその言葉に、祐輔は目を細めた。

 

「それは、どういう意味か。荒紙中将」

 

「……すまんが、私にも時間の余裕は無くてね……最後にもう一度だけ聞くが、我々の派閥に所属する気は」

 

「ありません」

 

荒紙の言葉に被せるように、祐輔は拒否の言葉を告げた。それを聞いた荒紙は、立て掛けていた軍刀を掴むと立ち上がり

 

「私は、これで失礼する……後悔するなよ、小僧」

 

半ば吐き捨てるように言って、応接室を去った。少し間を置いてから、大淀が

 

「祐輔さん」

 

と短く呼び掛けた。しかし祐輔は、答えずに腕組みし何かを考え始めた。そして、数十秒後

 

「大淀さん。明日奈さんに、少しの間執務の代行をお願いすると伝えてください。僕は少し、やることが出来ました」

 

「分かりました」

 

祐輔の言葉を受け入れて、大淀は執務室に向かった。そして祐輔は、ため息を吐いてから

 

「これは、裏に何か居るなぁ……」

 

と呟いた。

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