次回から、各カップリングの絡み合いが連チャンする予定
作戦二日前。
初音島鎮守府は、まさしくてんやわんやだった。運びこまれる各種資材に、悠陽が宿泊するための専用宿泊施設の最終確認。それだけでなく、初音島鎮守府も各施設の保守点検や整備。場合によっては、修理等を行った。
それに合わせて、祐輔の机の上には大量の書類が山積みになり、吹雪からは祐輔の姿が見えない。
一応カリカリというペンを走らせる音やカタカタというキーボードを叩く音が聞こえるが、実は祐輔は徹夜二日目。頼みの綱の明日奈は、現在様々な調整で走り回っているために、期待は出来ない。
翌日には機体と共に宇宙に打ち上げられるので、それを考慮すれば、休まないといけない。
なお、他の秘書艦の古鷹と大井は漁業組合の方に赴いている。そちらに駐在している艦娘達を一度引き上げるので、その間は漁をしないように、と伝えに向かっている。
(どうすれば、祐輔さんに休んでもらえるかな……)
吹雪はそう考えながら、那珂からの申請(ステージの設営)書を却下の箱に入れた。その時、ドアが開き
「祐輔さん、これが最後の書類になります」
と大淀が入ってきた。量は、小脇に抱えている数cm程度だ。それを、書類の間から見た祐輔は
「ああ、漸く終わりが見えましたか……長かったですね」
と疲れを滲ませながら、安堵の言葉を告げた。祐輔としては、徹夜三日目を覚悟していたが、しなくて良さそうだ。
「さて、後は確実に終らせて……」
「という訳ですので、私も手伝います」
大淀はそう言って、祐輔の隣の机。明日奈の机に座って、ペンを握った。どうやら、執務の手伝いをするようだ。
「大淀さん……」
「二人でやるより、三人でやった方が早いですから……それに、祐輔さんは作戦上重要な形での投入ですから……不安要素は限界まで下げる必要があります」
確かに、二人で執務するより早く終わるだろう。更に言えば、大淀の執務能力は非常に高いので、処理速度は上がるのは確かだ。そう考えたのか、祐輔は
「感謝します、大淀さん……さて、早く終らせましょう……明日には、殿下がいらっしゃいますからね……その後、僕は宇宙に上がります」
『はっ』
祐輔の言葉に、吹雪と大淀は意識を集中し直してから執務に取り掛かった。その後は、三人の努力もあって稼業時間以内に書類を全て終らせることが出来た。そして、二日振りに自室に戻った。その時
「あ、祐輔君。お帰りなさい」
と明日奈が、祐輔を出迎えた。
「明日奈さん……すいません、自治体や地域の皆さんへの説明を任せてしまって」
「ううん、私は平気だよ。皆さん、初音島は防衛の最前線って理解してるから、直ぐに理解してくれた。それに、一部のお店とかは協力してくれるって言ってた。それに関しては、書類が行ってる筈だけど……」
「はい、確認してます。作戦終了後に、お礼をしに行こうと考えてます」
祐輔はそう言いながら、上着を脱いだ。それを、明日奈が受け取ってハンガーに掛けた。そして、祐輔が椅子に座ると、手早く用意したコーヒーモドキを祐輔に差し出した。
「祐輔君は、かなり大量の書類を捌いたって聞いた。ごめんね? 副官なのに、手伝えなくて……」
「いえ、提督ですから。書類はやらなくては……まあ、多少疲れたのは確かですが」
明日奈の謝罪に、祐輔は首を振ってからコーヒーモドキを飲んだ。すると、明日奈が
「ねえ、祐輔君……明日の夕方には、宇宙に打ち上げられるんだよね……」
心細い様子で囁きながら、祐輔の肩に頭を乗せた。それを聞いた祐輔は、コーヒーモドキを一口飲んでから
「そうですね……殿下を迎えたら、少し間を置いてから上がります……その後は、作戦終了まで僕は最前衛配置です……次は三回目……理論上は、生還率はたったの2%ですが……」
そう答えた。
生還率20%というのは、全体での平均値である。そしてその生還率は、繰り返し出撃していく度に下がっていく。二回目は、約10%。三回目で、2%だ。
そして大気圏降下部隊は、地上の戦術機部隊と違い、二回目を生還するとベテランと呼ばれる。
通称で、ベテランチキンズと呼ばれるのだ。敵の懐深くにまで飛び込みながら、その臆病さで生きて帰ってくる臆病者。故に、ベテランチキンズ。
そして祐輔は、大気圏降下部隊だけでなく、地上での出撃回数も全衛士の中でもずば抜けている。
「私、待ってるからね……祐輔君が、無事に帰ってくるの……だから、約束して……無事に、帰ってくるって」
「はい、約束します……必ず、帰ってきますよ」
祐輔はそう言うと、口づけしながら明日奈をベッドに押し倒した。
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