大気圏降下兵団が降下を開始した時、地上。
『HQより全軍に通達! 大気圏降下兵団が降下を開始! 戦術データリンクに降下範囲と再突入殻の降下予想範囲を表示する! その範囲には、決して入らないように!』
総合作戦司令部からの通信と同時に、戦術データリンクでマップ上に降下範囲と再突入殻の降下予想範囲が表示された。戦術機は勿論、艦娘達も直撃を受けたら撃沈してしまう可能性が高い。
そうして、友軍が範囲から出た時
「つっ! 上を見て!」
一人の艦娘の言葉を聞いて、付近の艦娘達は空を見上げた。そして見えたのは、赤熱化気流を引きながら降ってくる幾多の火弾。
「あれが……!」
「大気圏降下兵団!」
感嘆の言葉を漏らした直後、その火弾は轟音をたてながら次々と落下。地上型・艦型問わずに深海艦を破壊する。その時、一機のFー15型。右肩の国旗マークから、大東亜連合軍機。が、一隻の船舶型空母の残骸に着地し
『今のはまだ前座だぜ、お嬢ちゃん達! 次来るのが、本隊だ!』
そう言いながら、近くのリ級に対して120mm砲を撃ち込んで撃破した。そしてその大東亜連合軍機はまた移動し、艦娘艦隊も移動を続行していた。その時
『よお……
『今まで作戦に参加出来なかった分は、ここで返す……アストライア中隊全機、俺に続け!!』
『了解!!』
降下してきた衛士達の声が、味方のオープンチャンネルに聞こえた。それと同時に、再突入殻の第二段が地表に落下。それを生き残った深海側が、対空砲撃を開始した。
その時、一人の提督が通信で
『全艦に通達! 深海艦を攻撃せよ! 彼らの降下を援護し、一機でも多く帰還させるんだ!!』
『了解!!』
提督の指示に従って、後退していた艦隊は反転し、攻撃を開始。大気圏降下兵団が降下出来るように対空砲撃をしている深海艦に対して、砲撃を集中させた。
大気圏降下兵団の生還率の低さは、最終降下フェイスが大半なのだ。衛士達は短くも激しい大気圏降下により、心身共に激しく疲労する。
そして再突入殻から放出された直後、戦術機は超音速まで減速しているが、戦術機はその超音速で機動出来るようには開発されていない。
高度4000で解放された戦術機は、高度200までに最低でも音速域にまで減速しないと、回避機動すら出来ず、そこに至るまでに砲撃を受けて撃破されるのも少なくない。
「やらせねぇよ!」
「あのヘ級を!」
「私が!」
艦娘達は、次々と見つけた対空砲撃艦を攻撃し、撃していく。だがそれでも、空中には炎の華が開く。
そんな中で、明日奈は目的の機体を見つけた。
見慣れた蒼い装甲の不知火弐型。祐輔の機体を。
「祐輔君……! 初音島艦隊も全力で砲撃支援! 祐輔君……いいえ、降下兵団を援護して!」
『了解!!』
指揮所からの明日奈の通信を受けて、初音島艦隊は全力砲撃を開始した。作戦は、いよいよ大詰めに差し掛かる。
場面は代わり、降下兵団として降下していた祐輔。
「高度200までに音速域にまで減速……最後の20mでスラストリバース……行ける……! ケストレル1より2番機、コール!」
『……こちら、ケストレル2! 01の後方100ってところだ! 流石はベテランチキンズ! 群れることにかけちゃあ譲らんな!』
祐輔からの呼び出しから少しして、相方の拓哉から返事が来た。そして二人は、眼下の海を見て
『対空艦全滅……ってわけには、いかなかったか』
「仕方ないさ……深海は数は無尽蔵って言えるから」
そうこうしている内に、更に砲撃が激しくなってきた。それを確認しつつ、祐輔は
「ケストレル中隊全機、コール!」
『ケストレル2、お前の後ろさ』
『ケストレル3、問題無し!』
『ケストレル4、オールグリーン!』
『ケストレル5、何時でも行けます!』
祐輔からの呼び出しに、拓哉が筆頭に次々と部下から報告が入ってきた。そして、ケストレル中隊が全機健在と確認出来た祐輔は
「ケストレル1からHQ! 第5軌道降下兵団ケストレル中隊は、全12機が無事に降下完了! これより、所定通りに泊地水姫に対して進攻を開始する!」
と総合司令部に報告。そして
「ケストレル1より
敢えて荒い言葉を吐きながら、祐輔は先頭に立って突撃。その後方を、技術研究厰の部隊が続く。その動きは、他の部隊とは一線を画していた。ある二機が交差する瞬間に、片方が戦艦タ級F改船舶型の艦橋に長刀を叩き込み、もう一機は艦尾の一ヶ所に無反動砲二発を撃ち込んだ。その数秒後、そのタ級F改は大爆発を起こして轟沈した。
別の二機は、空母ヲ級F改が放った艦載機を両手に持った複合突撃砲で根こそぎ破砕していき、また別の二機は浮砲台を破壊していく。そうして、ケストレル中隊は目標たる泊地水姫に接近していた。その時、一人の艦娘が
『なに、これ……頭の中に……歌が、聞こえる……』
と呟いた。
「歌……?」
と祐輔が首を傾げた、その時だった。
『あああぁぁぁぁぁぁ!?』
『うあぁぁぁぁぁ!?』
幾人もの艦娘が発狂し始め、敵味方問わずに攻撃を開始した。
『な、なんだ!?』
『よせ! こっちは味方だ!!』
制止するが、暴走を始めた艦娘達は止まらない。中には、別の艦娘により無力化され後方に搬送される艦娘も出始めた。
『くそっ! マズイぞ! 戦線が、瓦解する!』
『何としても維持しろ! 戦術機部隊は、機動撹乱戦法を開始! 艦娘艦隊は、暴走する艦娘の対処を!』
総合司令部でも混乱が起きているらしく、無線越しでも通信将校達の怒号が聞こえる。そんな中、祐輔は気付いた。
「ケストレル1よりHQ! 暴走してる艦娘は、練度50以下の艦娘だ! 色付き以外の出撃制限を要請する!」
艦娘の練度には、ある一定のラインが存在する。
それが、練度50。通称、色付きと呼ばれる練度だ。50以下は黒文字で表示され、50から水色、緑色と色付きで練度が表示されるようになるのだ。
祐輔は提督としての権限を使用し、発狂している艦娘としていない艦娘を見比べた。その結果、練度50以下の艦娘達が発狂していることに気付いたのだ。
『こちらHQ! 出撃制限の要請を受諾! 該当艦娘が居る艦隊は、一度後退を開始する!』
「ケストレル1より全戦術機に通達する! 艦娘艦隊が態勢を立て直すまでは、我々が態勢を維持する! 全機、続けぇ!!」
『了解!!』
衛士の中では最高階級な祐輔は指示を下すと同時に、戦術機の中でも最前衛に飛び出して戦闘を開始した。その頃、総司令部では
「急げ! 練度50より下の艦娘が居る艦隊は総員一時後退しろ! 暴走してる艦娘は、最悪無力化して引っ張れ!」
「最悪、轟沈する者が出で最前線が崩壊するぞ! 確実に、だが急がせろ!!」
作戦参謀や通信将校達の怒号が飛び交っていた。姫級の中には、特殊能力を有する個体が居ることは、以前から度々交戦していたから分かっていた。
今まで交戦し確認した特殊能力は、高い再生能力、一定以下の攻撃は効かない防御フィールド、天気に干渉し嵐を起こす、出撃制限といった物だった。
だが、精神に干渉する特殊能力は初めてだった。
「まさか、精神に干渉してくる異能持ちとは……全く予想もしておりませんでした……」
「仕方ありません、防人長官……我々の予想の範疇を相手が上まっていただけの話です……しかし、これはよくありません……今最前線に残ってる艦娘艦隊は、三割近くまで下がっています……戦術機部隊に想定を超える負担が掛かります……榊原中将が奮起し支えてくれていますが……早急に態勢を建て直さねば」
悠陽は長官と会話しながら、戦術データリンクと同期しているマップを見つめた。少しずつ後退を開始する味方の光点とそれを突破しようと圧力を強めてくる敵の光点。機敏に動く戦術機部隊だが、長くは保たないだろう。
少し考えた悠陽は、立ち上がり
「浮き足立つではありません。今は戦線の維持と再構築が肝要……ならば、出し惜しみなどせずに高い練度の艦娘艦隊を大至急編成し、最前線に出すのです……この一戦、負ける訳には参りません!」
『はっ!!』
悠陽の言葉に、その場に居た全将校は敬礼で答えた。
そこから、艦隊の再構築は早かった。ここまで各提督は、姫級がどう動くか見るために低練度の艦娘を混ぜていた。だが、最終段階かつ低練度に出撃制限が掛かった、更には悠陽が高い練度の艦娘の出し惜しみをする必要は無いと言ったために、切り札と呼べる高い練度の艦娘達による艦隊を編成し、後退してきた艦隊と入れ替わる形で出撃させた。
その時、総司令部のすぐ近くでは
「もうすぐだ……計画は最終段階に入る……そうすれば、世界に帝国軍ここにありと示せる……!」
「閣下! では、いよいよ……!」
「ああ……かつての軍国たる帝国の復活の時が来た……!」
一人の男の言葉の後に、何人かが
『大日本帝国万歳!!』
と声を揃えた。そして一斉に、弾倉を銃に叩き込み、初弾を装填する。そして、安全装置を解除して
「さあ……我々の時代の幕開けだ……!」
『はっ!!』
男達は、自らの権威のために動き出す。
どういう話を書いてほしいですか
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