※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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陽光作戦 後

「前線の再構築は順調。現在、約6割の艦隊が最前線に戻りました」

 

「しかし、一部の艦隊からは再出撃が難しいと連絡が」

 

「……大本営からも、艦隊を出す……殿下、よろしいですかな?」

 

通信将校の報告を聞いた武仁は、そう言って悠陽を見た。

 

「構いません。今は、一刻も早く前線の建て直しと多くの戦力を送ることが重要……大本営の高練度艦隊を遊ばせる理由はありません」

 

「承りました……ワシの艦隊だけでなく、待機艦娘からも艦隊を編成! 大至急送れ!」

 

『了解!』

 

武仁の指示を受けて、その場に居た数人の将校達は立ち上がって司令部から出ていった。一部の参謀将校は、提督の資格を有しており、元ブラック鎮守府から保護し、残留していた艦娘や壊滅した鎮守府の生き残り等の艦娘の艦隊に指揮出来るのだ。

その時、悠陽の下に一人の近衛士官が歩み寄り、何かを耳打ちした。

それを聞いた悠陽は、神妙な表情で頷いて

 

「防人長官……どうやら、対象が網に掛かったようです」

 

「ほう、掛かりましたか……」

 

悠陽の言葉を聞いた武仁は、ニヤリと笑みを浮かべた。

実は初音島鎮守府には、地下司令部が二つあり、今悠陽達が居るのは予備の方の第二司令部になる。

しかし、その通路には敢えて、警備の人員は殆ど配備しておらず、祐輔達が使う第一司令部の方は、機能を第二に移した後、ダミーとして防衛設備を起動させておいたのだ。

そして、そこに荒紙中将率いる部隊が突入してきたのだが、待ち受けていたのは、裕也とティアナ率いる陸戦一個小隊と近衛の小隊だった。

しかも、裕也とティアナは前面装甲を強化した強化外骨格を装備しており、その火力は圧倒的差が出来ていた。

 

「バカな!? こちらの情報では、こんな戦力は居ない筈だぞ!?」

 

「中将! 後ろの隔壁が下ろされて、撤退が出来ません!!」

 

荒紙中将は自分の知る情報との食い違いに混乱し、退路を確保しようとしていた部下は慌てている。

そして、連合部隊側は

 

「施設の破壊の許可は出ている! 派手に歓迎してやれ!!」

 

「あ奴らは祖国に仇成そうという賊共だ! 加減するな!!」

 

『了解!!』

 

近衛小隊と連携して、統帥派に対して全火力を集中させていた。統帥派は、狭い通路で退路もなく、一人、また一人と戦力を減らしていき、それに対して連合部隊は形成していたバリケードと強化外骨格を活かして弾幕を形成し、確実に統帥派を追い詰めていた。

その時、統帥派の方に手榴弾が投げ込まれ、爆発。気付けば、荒紙中将以外は全員死亡した。

 

「荒紙元中将……国家反逆罪で拘束させてもらいます……抵抗するならば、ここで殺害することの許可も与えられています……抵抗するな」

 

そう言いながら裕也は、12.7mm機銃の銃口を突き付けた。そんな自身の現状に、荒紙元中将は

 

「バカな……何故、我々の計画が……!?」

 

と歯噛みした。荒紙元中将は知らなかったが、度々行っていた決起集会。そこに、悠陽が放っていた諜報員が紛れ込んでいたのである。そこに、祐輔からの報告も重なり、陽光作戦中に動く可能性が最も高いと判断し、罠を張っていたのだ。その罠に、荒紙元中将の部隊はまんまと掛かり、部隊は全滅。荒紙元中将は捕縛されたのであった。

場面は代わり、最前線。

そこでは、激しく砲火が交わっていた。爆発と悲鳴が響き、時には破砕音も交わる。

水面に砲弾が落ちると巨大な水柱が上がり、それに巻き込まれた戦術機がバランスを失って墜落する。

 

「残存戦術機……約半数……! くそっ!」

 

『あの姫級が堅すぎる! 戦術機の火力じゃあ、大したダメージを与えられないぞ!?』

 

残存戦術機の数を確認した祐輔は悪態を吐き、拓哉は残弾が無くなった120mmの弾倉を排出し、最後の弾倉を装填した。今戦術機部隊は、その機動性を活かして千州島の姫級。泊地水姫に最接近し、全火力を叩き込んでいた。しかし、泊地水姫の防御力の高さが完全に予想外で、戦術機の携行火器ではその防御を突破するのは非常に困難だった。

しかも、泊地水姫の火力の高さは尋常ではなく、泊地水姫一体に近づくことの出来た戦術機部隊は半数近くまで削られてしまった。

祐輔が率いるケストレル中隊は、辛うじてだが全機健在。しかし、一部の機体は盾を投棄していたり、残弾が二割まで減っていた。

だが、戦術機部隊が機動性を活かして切り込んだ甲斐あって、戦線の再構築はほぼ完了している。

だが、このまま泊地水姫の撃破が出来ずにいると、姫級の固有能力の通常級召喚能力で無尽蔵に深海艦が召喚されて、最悪は作戦が崩壊する危険性すらあった。

その証拠に、敵を示す赤い光点が増えて、一部の戦線は押されつつあった。

 

『01! このままじゃ……!?』

 

「分かってるけど……!」

 

焦りが募りつつあった、まさにその時

 

『マスタング0より最前線の各部隊へ。これより、対地榴散弾による飽和砲撃を開始する。予想範囲より離脱されたし』

 

平坦な声で通達され、戦術データリンクで予想範囲が表示された。

 

「ケストレル1より戦術機部隊全機に通達! 即時反転! 全速離脱!!」

 

祐輔が指示を出した直後、戦術機部隊は機敏に離れ始めた。その十数秒後、泊地水姫の居る一帯に凄まじい破壊の嵐が巻き起こった。

その砲撃位置は、現在地から西に約30kmは離れた場所からだった。

国連軍所属、第01特務遊撃部隊、デューカリオン。その旗艦であり、世界で唯一の飛行戦艦のデューカリオンからの砲撃だった。

飛行戦艦デューカリオン

妖精が作った反重力デバイスと全く新しい発電機の二つが無ければ、構想すら上がらなかった戦艦で、世界でも一隻のみであり、戦艦でありながら高い機動性を有しており、単艦で大気圏の突破と再突入すら可能な戦艦。

勿論だが、その火力も非常に高い。

46cm三連装砲が4基、VLSが8、40mm機銃が多数となっており、遠距離だけでなく近距離火力も高い。更に中隊規模の戦術機部隊の運用能力も有する万能艦となっている。

そこに、デューカリオン隊でも独立した動きが許されている界塚伊奈帆のアナリティカルシステムによる演算と伊奈帆本人の作戦立案能力と行動力。

それらが合わさり、デューカリオン隊は烏合の衆と揶揄される国連軍の中では、非常に高い戦果を上げている。

 

「ケストレル1よりマスタング0へ! 修正の要を認む! 上げ角2!」

 

『了解。修正後、本射を始める』

 

短いやり取りの数十秒後、先ほどよりも比較にならない程の破壊の嵐が巻き起こった。直撃を受けて、次々と破壊される泊地水姫の施設とその周囲に展開していた砲台小鬼。

 

「ケストレル1より艦娘艦隊へ! ポイントを指定する! そこに、火力を集中せよ! 今が好機だ!!」

 

『こちら連合艦隊! 了解した、火力を集中させる! 巻き込まれないように留意!』

 

長門からの返信の十数秒後、大口径砲による砲撃と艦載機による爆撃が開始された。次々と破壊される泊地水姫の施設、艤装。明らかに、大打撃を与えられている。

 

「全戦術機部隊、火力を集中させろ! 押しきれぇ!!」

 

『撃ちまくれぇ!!』

 

祐輔と拓哉の号令に合わせるように、最前線の戦術機部隊もあらゆる火力を集中させた。次々と命中しその威力を遺憾なく発揮する砲弾により、着実に泊地水姫は破壊されていた。

 

『クソッ!? ここまでか!? 後を頼みます!!』

 

『せめて……せめて、こいつだけでもおぉぉぉ!』

 

『畜生! 奴らの砲弾がまるでシャワーみたいに降ってきやがる!!』

 

『マズい! 奴らの数が……増えてきて……!』

 

『届かないのか!?』

 

一機、また一機とその数を減らす戦術機。だが、誰も撤退しようとしたなかった。自分達の戦いが誰かの為に、国の為に、世界の為になると信じ、己の恐怖を飲み込んで最前線に立ち続けた。例えここで己の命が尽きても、それが礎になると信じて。

 

『行けぇ、祐輔ぇ!!』

 

その通信を最後に、拓哉機のIFFが途絶え、祐輔は自機の残された最後の兵装の高周波短刀を装備。最大出力にして、ブラズマによる刃を形成。泊地水姫に最接近し

 

「これでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

雄叫びを挙げながら、ブラズマ刃を泊地水姫に突き刺した。最初は信じられないという表情をしてから、安らかな表情に代わり

 

「アア……ヤット……あの桜を、見られるのね……」

 

その言葉を最後に目を閉じて、崩れていった。

その数秒後

 

『HQより総員に通達! たった今、ケストレル1により泊地水姫の討伐が完了・確認された! それに伴い、深海艦隊は総崩れ! 動ける戦力は、残敵の掃討へ移れ! 繰り返す! 動ける戦力は残敵を掃討せよ!!』

 

その通信を聞きながら祐輔は、動かなくなった自機のコクピットから出て、茜色に染まりつつある空を見上げた。

そして数時間後、陽光作戦の終結が宣言され、約一週間に渡る作戦は幕を下ろしたのだった。

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